これからの100年、新しい契約のかたち。

契約専門書籍レビュー

起業の直後にチェックする契約書といえば?—出澤秀二・丸野登紀子・大賀祥大『現代型ビジネスシーン別 契約条項例とチェックポイント』

民法に並んだ順でもビジネス頻出度順でもなく、「会社を起業し、事業が成長し、軌道に乗るまでのタイムラインに沿って遭遇する順」に契約書を並べてレビューのポイントと注意点を解説する、新しい切り口の書籍です。

知るべき知識を知るべきタイミングで—契約書チェックの新しい切り口

契約書チェックの実務書は次々と新しいものが出版されているものの、定番書と位置付けられたものとそうでないものとの格差が広がりつつあります。そんな中、加除出版様からご恵贈いただき目を引いたのがこちらの新刊です。

書籍情報

現代型ビジネスシーン別 契約条項例とチェックポイント


  • 著者:出澤秀二/著 丸野登紀子/著 大賀祥大/著
  • 出版社:日本加除出版
  • 出版年月:20201207

本書では、定番書に対する「チャレンジャー」らしい、他にはなかった特色が打ち出されています。それが、事業のステージごとに知っておくべき契約類型を順を追って整理した「現代型ビジネスシーン」分類。計18の契約類型を、

  1. 立上げステージ
  2. 遂行ステージ
  3. 拡大・展開ステージ
  4. その他(ステージを問わないもの)

の4つに分類し、その順番でチェックポイントを解説していくスタイルです。

事業のステージごとに順を追って契約類型を整理した「現代型ビジネスシーン」分類
事業のステージごとに順を追って契約類型を整理した「現代型ビジネスシーン」分類

法務部門が無いようなベンチャーの管理担当者はもちろん、子会社や投資先をハンズオンでフォローしなければならない投資家・親会社法務の方にとっては、この並びは嬉しいと思います。

企業の生き死にを何度も見つめてきたようなベテランの方でもなければ、契約書に関する大量のノウハウを一度に全てインプットすることは不可能ですが、これなら、いま知るべき契約書知識だけを無駄なくインプットできる からです。

出澤秀二・丸野登紀子・大賀祥大『現代型ビジネスシーン別 契約条項例とチェックポイント』(日本加除出版,2020)P76-77
出澤秀二・丸野登紀子・大賀祥大『現代型ビジネスシーン別 契約条項例とチェックポイント』(日本加除出版,2020)P76-77

官公庁作成契約ひな形を積極的に踏襲

著者らによる「はしがき」には、このような記述もあります。

執筆に際しては、実務書としての使いやすさを心掛けた。また、それぞれの契約に関し、官公庁から契約書ひな形が公表されている場合には、これを積極的に取り上げて参考にした。

たとえば、以下の契約類型については 経産省・国税庁の条項例を修正しながら条項例を作成 したと書かれています。

  • 投資事業有限責任組合契約
  • データ提供契約
  • クラウドサービス利用契約
  • コミットメントライン設定契約

法務機能にリソースや予算が避けない企業にとって、官公庁が出すひな形を活用する機会は多いはずです。そうでない企業にとっても、さまざまなステークホルダーが関与して作成されることの多い官公庁のひな形は、バランスのとれた優れたものが多いのは事実です。

即実戦型学習を迫られる現代型法務パーソン向けOJTテキスト

このような本書の作りから、ビギナー向けに限定されたもののように見えるかもしれませんが、各契約類型に共通する一般条項をまとめて解説した第2章は、契約書レビューに自信のある方も一読いただく価値があると思います。

特に、

  • 2020年4月に施行されて以降、今もなお混乱が続く瑕疵担保→契約内容不適合責任の修正
  • 責任限定および免責規定について、通常・特別/現実/直接/過失・重過失といった文言にこだわることの効果

について、少ない紙幅の中でも近時の裁判例も引用しながら端的な整理がなされており、参考になりました。

出澤秀二・丸野登紀子・大賀祥大『現代型ビジネスシーン別 契約条項例とチェックポイント』(日本加除出版,2020)P34-35
出澤秀二・丸野登紀子・大賀祥大『現代型ビジネスシーン別 契約条項例とチェックポイント』(日本加除出版,2020)P34-35

指導者と新人とがオフィスで肩を並べてOJTができた時代と違い、後進の育成が難しくなった現代。実戦に放り込まれる中で本書を逆引きしながら法的課題を発見し、契約書のレビュー力を培っていかざるをえなくなった、アフターコロナな現代のニーズに適した構成 とも言えます。

(橋詰)

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この記事の監修者

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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

電子契約サービス「クラウドサイン」を運営する、弁護士ドットコム株式会社の編集部です。電子契約・電子署名法・電子帳簿保存法のほか、契約管理、契約審査・レビュー、AIを活用した法務業務の効率化について解説しています。法令の解釈にかかわる記事で弁護士等の専門家による監修を受けている記事には、記事末に監修者名を表示しています。

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