経理のデジタル化と電子契約の税務—PwC税理士法人『電子帳簿保存法の制度と実務』

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電子署名に課されていた法規制が次々撤廃されていく中で、最後の障壁としていま経理担当者を騒がせているのが、電子帳簿保存法との関係です。本書『電子帳簿保存法の制度と実務』は、税務専門家の立場から、電子契約導入を中心とする経理業務のデジタル化と税務上の注意点をまとめています。

税務の観点から経理業務のデジタル化に関する法規制を整理

これまで、法務観点での有効性ばかりが取り沙汰されてきた電子署名・電子契約。

ところが、この直前期になって、契約書等押印文書を証憑として取り扱う経理担当者のみなさまが証憑文書デジタル化にあたり税務上の適法性をどう担保すべきかで頭を悩ませています。2022年1月に電子帳簿保存法が改正されるためです。

当メディアの電子帳簿保存法の改正ポイントまとめ記事(関連記事:電子取引における電子帳簿保存法改正対応のポイント)、企業の取引に関する電磁的なやりとり(EDI・ネットバンキング・電子メール・電子契約)について、紙に印刷するのではなく、電子取引データのまま一定期間保存し、国税等の調査の際に容易に検索でき、その真実性を担保できるようにしておく義務が、違反時の罰則とともに強化されます。

電子帳簿保存法の改正自体は1年以上前から周知されていたものの、同法の規定ぶりのわかりにくさもあいまって、経理担当者における電子取引データ保存義務の認知度は必ずしも高くありません。この点に関し様々な機関がアンケートを実施していましたが、2021年11月時点で30%前後の認知度にとどまっているとされています。

エン・ジャパン株式会社11月24日リリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000051333.html
エン・ジャパン株式会社11月24日リリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000051333.html

経理書類をデジタル化するにあたり、税務担当者としてどのような法令を学び、どこから手をつけるべきか?電子帳簿保存法の法令解説に加え、全体像の把握と実務への落とし込み両面を担保するのが、本書『電子帳簿保存法の制度と実務』です。

書籍情報

令和3年度改正に対応 電子帳簿保存法の制度と実務


  • 著者:PwC税理士法人
  • 出版社:清文社
  • 出版年月:20211209

文書デジタル化に関する税務の全体像が学べる

「経理業務に関する書類の電子化」を考えるとき、税務の観点からは、帳簿書類の備付けと保存の原則を定める

  • 法人税法(青色申告法人・連結法人/普通法人)
  • 消費税法

の2つと、それらの例外について定める

  • 電子帳簿保存法

との関係を理解することがポイントです。なぜなら、企業のバックオフィスを支える経理担当者としては、令和5年(2023年)10月1日よりはじまる適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)のスタートを見据えた上で、書類のデジタル化を考えておく必要があるからです。

ところが、電子帳簿保存法を解説し、その中で契約書の保存義務について言及する文献はあっても、原則としての法人税法との関係、消費税法および電子インボイス制度との関係まで企業実務に照らして論じた文献はなかなか見当たりません。

これに対し本書は、電子インボイス制度の実務対応についてもカバー。細かな実務への落とし込みが必要になるからこそいきなり各論に飛び込まず、全体像を大きく捉えたいという読者ニーズに応えるものとなっています。

PwC税理士法人『電子帳簿保存法の制度と実務』(清文社, 2021)P57
PwC税理士法人『電子帳簿保存法の制度と実務』(清文社, 2021)P57

議事録や登記への活用を含めた電子署名法制の全体像が学べる

さらに、本書のオビに

経理DXを加速させる改正電子帳簿保存法への対応と電子契約導入のすべて

とあるとおり、後発の強みを生かし、これまでのどの法律書よりもすっきりと電子署名法制の全体像をまとめているのも特徴です。

電子契約導入をガイダンスする書籍のほとんどが、取引先との契約の電子化に関する言及にとどまる中、

  • 内部者に権限を移譲する電子委任状
  • 議事録等の内部文書の電子化
  • 法務局に提出する登記申請書類への電子署名の活用

についても、最新の情報に基づく解説があります。本書のメインテーマである電子帳簿保存法の観点からの指摘とあわせ、電子署名法制をここまで幅広く捉えて整理した書籍は貴重です。

一般企業のバックオフィス部門の皆様は、電子署名法に関しては、ここに書かれた知識を把握しておけば、2025年までは十分に戦える網羅性を備えていると言ってよいでしょう。

PwC税理士法人『電子帳簿保存法の制度と実務』(清文社, 2021)P260
PwC税理士法人『電子帳簿保存法の制度と実務』(清文社, 2021)P260

諸外国の経理デジタル化と税務に関する法制度まとめつき

最終章は、グローバルネットワークを持つPwCならではの付加価値情報として、以下8カ国に関する経理書類のデジタル化法制を解説

  1. 米国
  2. 英国
  3. ドイツ
  4. 中国
  5. 香港
  6. 台湾
  7. シンガポール
  8. インド

電子帳簿・電子取引の保存義務を課す(日本の電子帳簿保存法に該当する)各国法令の概要に加え、「税務上、電子署名・電子契約を用いることに懸念はあるか」という視点から端的にまとめています。

PwC税理士法人『電子帳簿保存法の制度と実務』(清文社, 2021)P350
PwC税理士法人『電子帳簿保存法の制度と実務』(清文社, 2021)P350

本書によれば、ドイツ・香港はやや注意を要するものの、それ以外の国々ではデジタル原則が導入され、大きな支障はないようです。

諸外国における法務的な観点から電子署名の有効性や利用上の注意点をまとめた文献はいくつか存在しますが(関連記事:事業者署名型のクラウド契約は外国でも使えるか?—佐々木穀尚=久保光太郎編『電子契約導入ガイドブック[海外契約編]』)、税務面に注目した情報はほとんどなく、概要を把握できるだけでも購入の価値はあります。

(橋詰)

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