電子契約の基礎知識

特定商取引法のクーリング・オフ書面交付義務—電子契約で完全電子化は可能か?

消費者と事業者との間のトラブルを防止することを目的に制定された「特定商取引法」は契約書を電子化する際に押さえておきたい法律のひとつです。2023年6月にこの特定商取引法が改正されたことで、電磁的記録によるクーリング・オフが可能となりました。

当記事では、クーリング・オフとはそもそもどのようなものなのか、また現行法においてクーリング・オフ書面の電子化はどこまで可能なのかを解説します。

クーリング・オフとは?

国民生活センターの公式サイトによれば、クーリング・オフとは「いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度」です。クーリング・オフ制度は消費者の利益を守ることを目的とした「特定商取引法(正式名称:特定商取引に関する法律)」で定められています。

原則として、契約は一方的に解約することはできず、もし解約して相手に損害を与えた場合、損害賠償しなければなりません。ただし、クーリング・オフはこの原則の例外です。割賦販売法や特定商取引法などによって、一定期間は契約申込の撤回や契約解除が認められています。

特定商取引法のクーリング・オフ書面交付義務とは

契約トラブルを生じやすい以下の 7つの取引類型に対して、これを防止し消費者を保護するための特別なルールを定めている法律が特定商取引法 です。

取引類型 説明 CO期間
訪問販売 消費者の自宅等を事業者が訪問し、商品の販売等を行うもの(キャッチセールス・SNS勧誘も対象) 8日間
通信販売 消費者がテレビやHP等の広告を見て、電話、インターネット等で申込みをするもの 8日間
電話勧誘販売 消費者に事業者が電話をかけて勧誘し、商品の販売等を行うもの 8日間
連鎖販売取引 「他の人を販売員にするとあなたも収入が得られる」と勧誘し、商品等を買わせるもの 20日間
業務提供誘引販売取引 「仕事を紹介する」と消費者を勧誘し、その仕事に必要であるとして商品等を買わせるもの 20日間
特定継続的役務提供 美容医療・語学・学習塾・パソコン教室等7つのサービスについて、長期・高額契約を締結するもの 8日間
訪問購入 消費者の自宅等を訪問し、消費者の物品を事業者が買い取るもの 8日間

上記の取引を行う場合、事業者は消費者に対して 契約内容およびクーリング・オフができることを示す書面(いわゆる「クーリング・オフ書面」)を交付する義務 とともに、交付した日から8日間または20日間、無条件で解約を受け付ける義務 を負います。

Zoomやベルフェイスなどのウェブ会議ツールが身近なものとなりオンラインでの商談が定着してきた昨今、この書面義務の電子化についてのご相談が増えています。

2022年6月から電磁的記録によるクーリング・オフが可能に

2022年6月の特定商取引法改正により、従来書面(紙)での交付が義務づけられていた申込書や契約書面等について、消費者からの事前の承諾があれば、電磁的記録での交付が可能になりました。これにより事業者からの「クーリング・オフ書面」の交付も電磁的記録による対応ができるようになっています。

「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式のほか、人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録のことを指しています(参考「特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」|消費者庁)。

具体的には、電子メールやUSBメモリなどの記録媒体、そして事業者が自社のウェブサイトで提供するクーリング・オフ専用フォームを通じた通知が「電磁的記録」に該当します。

事業者から「クーリング・オフ書面」を交付する際の注意点

事業者は各自の事業環境等を踏まえ、電子メールやSNS、Webフォーム等を用い、合理的に可能な範囲で電磁的記録による通知の方法に対応する必要があります。

契約書面等に「電子メールでクーリング・オフを行う場合には、以下のアドレスにお送りください。」と記載する等、クーリング・オフに係る電磁的記録による通知の方法を特定することで、消費者にとって合理的な範囲内で検討しましょう。

事前承諾を得る手続きに不備がある場合は罰則の可能性も

クーリング・オフ書面の電磁的方法による提供は書面の交付に代わるものです。特定商取引法第 71 条第1号では、消費者から事前に承諾を得る手続に不備が認められた場合、当該書面を交付したものとみなされず、書面交付義務違反として罰則の対象ともなる旨が規定されています。

次項でクーリング・オフ書面を電磁的方法により提供する際の流れを紹介しますので、電子メールやWeb上の専用フォーム、電子契約等の方法で書面交付を電子化したい方は確認しておきましょう。

クーリング・オフ書面を電磁的方法により提供する際の流れ

クーリング・オフ書面を電磁的方法により提供する際の具体的な手順については、消費者庁が2023年04月21日に公表した「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」において以下の図を用いて説明されています。

 契約書面等に記載すべき事項を電磁的方法により提供する際の流れ

出典:契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン|消費者庁

上記の図の通り、クーリング・オフ書面を電磁的方法により提供する際にはまず事業者から消費者へ「電磁的方法の種類・内容の提示」「承諾の取得に当たっての説明」「承諾の取得に当たっての適合性等の確認」「第三者への提供の確認」を行った上で、電磁的方法による提供に対する承諾の手続きを行う必要があります。

承諾の手続きを終えた後には、事業者から改めて「承諾を得たことを証する書面の交付」を行うことが義務付けられており、この交付については物理的な紙の書面で交付する必要がある点に注意が必要です。

なお、契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供を希望しない旨の意思を表示した消費者に対し、電磁的方法による提供に係る手続を進める行為は特定商取引法第18条9項により禁止されています。

電磁的方法による提供を希望しない旨とは、契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供を受ける意思がないことを明示的に示すものが該当します。

例えば「契約書面は紙で受け取りたい。」「パソコンで契約書面等を受け取るつもりはない。」「スマートフォンは使っていないので、結構です。」など、電磁的方法による提供を受ける意思がないと表明した消費者に対して、事業者が承諾の取得に当たっての説明や承諾の取得に当たっての適合性等の確認を行う場合、当該規定に該当することになります。

より詳しくクーリング・オフ書面の電子化の流れを確認したい方は「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」も確認しておきましょう。

特定商取引法のデジタルファースト改正で加速するBtoC契約の電子化

2022年6月の特定商取引法改正により、従来書面(紙)での交付が義務づけられていた申込書や契約書面等について、消費者からの事前の承諾があれば、電磁的記録での交付が可能になりました。事業者からの「クーリング・オフ書面」の交付も電磁的記録による対応ができるようになったことで、BtoCにおける契約の電子化が加速することが予想できます。

BtoC契約の電子化を効率よく、かつセキュリティ対策も万全に実施するなら、クラウドサインのような電子契約サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

電子契約は紙の書面とは異なり、電子契約は契約の送信〜締結〜管理まで一貫してオンラインで完結可能です。クラウド上で書面の管理・保存ができるため、契約書を紛失することがなくなり、情報漏洩のリスクも低減することができます。さらに、過去の契約にすばやくアクセスできるため、業務プロセス全体のスピードアップにもつながります。

なお、クラウドサインではこれから電子契約サービスを比較検討する方に向けて「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しています。無料でご入手いただけますので、下記リンクからダウンロードフォームに必要情報を入力の上、資料をご活用ください。

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画像:nonpii / PIXTA(ピクスタ), EKAKI / PIXTA(ピクスタ)

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