法律・法改正・制度の解説

ドローンをもう一度飛ばしたい その意思表示の手段


ハンコ規制が緩和されるのを横目に、気づけばドローンユーザーは規制強化で宝の持ち腐れ状態になっている。こうなる前に、政や官に意思表示する手段はなかったのかを省みたい。

ハンコ規制緩和の傍で飛ばせなくなったドローン

デジタル社会形成関係整備法案が衆院を通過し、デジタル庁の9月成立も確実となった。

「脱はんこ」関連法案が衆院通過 99%超の押印廃止(日本経済新聞2021年4月6日)

衆院は6日の本会議で、行政手続きの押印廃止を盛ったデジタル社会形成関係整備法案を可決した。政府は押印が必要なおよそ1万5000の手続きのうち99%超を廃止する方針だ。

こうして ハンコの規制緩和は進む一方だが、日本の治安や国防を脅かすテクノロジーとなると全く別の話で、むしろ規制が強化されていく 傾向にある。

そんな状況の被害者となった自分が、「誰にどうやって伝えたらいいんだろうか。同じ考えを持った人もいそうだけど」と考えたのは、つい最近のことだ。

家にあるドローンが、相次ぐ規制強化の果てに、簡単に遊べなくなってしまった からだ。仕方がないなと思う反面、月日が進むにつれ、どんどん不自由になり、今とても損をした気分になっている。

航空法改正は、どういった議論の末に決定されているのか。その内容を知った時に、自分の意思をどこで伝えればよかったのか。実際にアクションした人がいたのか。後の祭りだが、気になることばかりだ。

そう考えると、過去自分自身の意思が直接政治に反映された記憶がないことにも気づく。意思表示を記録に残し、手応えを得られるようになる仕組みはないものだろうか。

規制強化の果てにたどり着いたドローン運転免許制度

冒頭で「仕方がない」と書いたのは、ドローンの安全性の問題が現実のものとなったからだ。

2015年、首相官邸、そして長野善光寺と、ドローン落下事故が相次いだ。特に首相官邸への事件に関しては問題視せざるを得なかったようで、同年9月の航空法改正で、ドローンを含めた「無人航空機」が以下のように定義された。

飛行機、回転翼航空機等であって人が乗る事ができないもの(ドローン、ラジコン機等)のうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(200g未満のものを除く)。

その飛行条件も厳格に定められた。違反した場合は、50万円以下の罰金もある。

  • 日中(日出から日没まで)に飛行させること
  • 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
  • 第三者又は第三者の物件との間に距離(30m)を保って飛行させること
  • 祭礼、縁日など多数の人が集まる催し場所の上空で飛行させないこと
  • 爆発物など危険物を輸送しないこと
  • 無人航空機から物を投下しないこと

2020年には、規制の対象を200gから100g以下まで制限する 方針が発表になるなど、容赦無く規制は強められていく。

さらに2021年3月9日には、国土交通省が提出した「航空法等の一部を改正する法律案」が閣議決定された。法案の中では、

ドローンなどの無人航空機に関し、政府目標である2022年度を目途に、「有人地帯上空での補助者なし目視外飛行」いわゆる「レベル4」を実現するため、機体の認証制度や操縦ライセンス制度等を設けることを主な内容とするものです。

と、乗用車のように運転免許制度を作る方針となっている。

乗用車と聞いてピンときた人も多いだろう。ドローンの所有者に対して機体登録を義務付ける航空法改正案 が2020年6月に可決成立しており、セットで運用になる見込みにもなっている。

また免許制度について、詳細は判明していないものの、国家資格のような形態を取る可能性は十分にある。DJIスペシャリストといった民間資格の保有者への待遇がどうなるかは明らかになっていない。いくつかの課題が免除になるといった可能性もあるが、あくまでも可能性だ。

これらの資格取得者への考慮が一切なく、国家資格化した際に再度時間と受験料を費やすという結末を迎えることが、考えられる最悪の状況だ。これまでの資格取得の受講費用だって馬鹿にならない。

よく訓練された傍観者である前に

ドローンで遊ぶ時間を少しでも長くするために買ったバッテリーの束と、今回の一連の流れを見ていると、こうなる前に、他にやれることはなかったのだろうか、と考えてしまう。

ドローンに限らず、新しいテクノロジーの数だけ問題は起こる。問題への対策として起案される法改正の過程で、パブリックコメントを提出することもできるのかもしれないが、素人には少々敷居が高い。かといって、普通選挙の「清き一票」では、そのタイミングも、論点の粒度も噛み合わない。既存の方法で意思表示するのでは、あまりにも手応えがない。

昨今ではSNS、特に Twitterで形成される「世論のようなもの」 が、対象に対しての意思の集合として影響を与えられるケースも稀にある。ただし、外国のサービスであり、複数のアカウントの作成運用も容易だ。目立たせるための特定のアルゴリズムがあり、公平性という点に疑問が残る。

オンラインで署名を集めるサイト も存在しているものの、セキュリティや運営に不安の残る仕組み上で飛び交うオンライン署名には、価値はない。

かつて紙の契約書類が通った道に学ぶ意思表示の仕組みづくり

電子投票の現在地はどうなっているのだろう。

調べてみると、2020年2月にインターネットを使った在外投票の実証実験行われていた。その実験では、

「投開票の操作は全体的に分かりやすかった」という評価をいただいておりますけれども、一方で、「インターネット投票する者のシステムへの事前登録をいかに円滑に行うか」、「インターネット投票と投票用紙による投票との二重投票をどう防止するか」

など、運用フロー面での課題があったようだ。

その延長線上にあるテクノロジーの中で、発展の兆しが見えるのが、ブロックチェーン投票システム だ。クラウドサインと業務提携関係にもあるLayerX社が、行政のデジタル化推進施策の一つとして、つくばスマートシティ協議会を通じ、透明性と秘匿性を両立した電子投票の実現に向けて取り組んでいる。

コロナ禍で押印廃止のための規制緩和が進み、紙の契約書類が電子化されたことで、民民の契約場面において多くの人が恩恵を受けている。

そこに止まらず、民から政官への新しい意思表示の仕組みも確立すれば、人の行動を大きく変え、想像もしてなかった幸せを運んできてくれるんじゃないかな、と飛ばせないドローンを見て思う。

(写真・文 宗田)

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