特定商取引法改正によるサブスク規制導入と申込み画面表示規制の強化

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特定商取引法の改正案が国会に提出されています。特商法書面の電磁的交付が可能となる一方で、サブスク規制を強化、さらには通販・ウェブサービスの表示義務が厳格化される見込みです。

デジタル社会化に合わせた特定商取引法の改正

特定商取引法の改正案について、2021年の通常国会で成立が見込まれています。

同改正により、消費者の申込みの内容を記載した契約書面を交付する義務(特定商取引法4条ほか)について、消費者の承諾を条件として、電磁的交付とすることが認められます

https://www.caa.go.jp/law/bills/assets/consumer_transaction_cms202_210303_01.pdf 2021年4月22日最終アクセス

総務省統計でも、いまやモバイル端末の個人別普及率は81.1%、スマートフォンに絞っても67.6%を超え、「持たざる者」の方が少なくなったこのデジタルファースト社会で時代遅れとなっていた特商法が、ようやく現実を直視したと言って良いでしょう。

サブスク取引規制にも同時に強化

さて、こうして「書面の電子化」について順当なデジタル規制緩和が進んでいく一方で、今回の改正では、サブスクリプション課金を悪用する詐欺的な定期購入商法への規制強化も盛り込まれる こととなりました。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_210114_03.pdf 2021年4月22日最終アクセス

これに加えて、ウェブサービス事業者全体に影響を与えそうな規制として注目しておかなければならないのが、改正により第12条の6として新設される「特定申込みを受ける際の表示」義務 です。

第十二条の六 販売業者又は役務提供事業者は、(中略)電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により顧客の使用に係る電子計算機の映像面に表示する手続に従つて顧客が行う通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込み(以下「特定申込み」と総称する。)を受ける場合には、当該特定申込みに係る書面又は手続が表示される映像面に、次に掲げる事項を表示しなければならない。
 一 当該売買契約に基づいて販売する商品若しくは特定権利又は当該役務提供契約に基づいて提供する役務の分量
 二 当該売買契約又は当該役務提供契約に係る第十一条第一号から第五号までに掲げる事項
2 販売業者又は役務提供事業者は、特定申込みに係る書面又は手続一 が表示される映像面において、次に掲げる表示をしてはならない。
 一 当該書面の送付又は当該手続に従つた情報の送信が通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みとなることにつき、人を誤認させるような表示
 二 前項各号に掲げる事項につき、人を誤認させるような表示

一部省略しても長く・読みにくいこの表示規制の趣旨は、「初回無料」などとうたいながら、複数回の購入継続を要件とする、悪質な「定期縛り」を規制する目的のはずでした。

しかし新設されたこの12条の6の条文をよく読むと、そうした悪質なサブスク規制に止まらない、BtoCウェブサービスの注文画面表示に対する規制の厳格化を伴うものとなっている ことに気づきます。

https://www.caa.go.jp/law/bills/assets/consumer_transaction_cms202_210303_04.pdf 2021年4月22日最終アクセス

ウェブサービスの申込み画面における表示規制を拡大—URLリンクによる表示は認められるか?

どのような点で、「注文画面表示に対する規制の厳格化」となるのでしょうか?

今までの特定商取引法対応といえば、返品特約を含む法定文言をまとめた「特定商取引法に基づく表示」のページへのURLリンクを、購入申込み画面等に設置 するのがスタンダードでした。例えばAmazonでは、注文確定画面に以下のようなURLリンクが設置されています。

Amazonの注文確定画面には、特定商取引法に基づく表示やプライバシーポリシー等へのリンクが設置されている。

この点に関し、今回の改正法で先に紹介した12条の6が新設され、あわせて11条も改正されたことにより、「当該特定申込みに係る書面又は手続が表示される映像面」に、下記事項を表示する義務 が課されます。

これを素直に解釈すると、ウェブサービスの場合には、上記箇条書き項目すべてを「映像面」=ウェブサービス申込み画面に一体となって表示する必要があり、URLリンク設置では表示義務の要件を満たさない、と読めます。

そう解釈するに至ったのは、もしURLリンク方式でOKと解釈すると、特定申込みを「書面」で受け付けた際も、その申込み書面に「特商法表示義務項目については、印字されたURLリンクからご自身でご確認ください」とだけ書き、その書面上には項目を印字しないという脱法的対応が認められることになってしまうためです。

サブスク規制が目的だったはずの今回の特商法改正が、結果的になぜか通販ビジネスやウェブサービス全般の表示義務にまで飛び火して拡大してしまったようにも見えます。

施行規則・ガイドラインの動向に注目

特定商取引法は、本来、消費者取引において特にトラブルが多発するビジネス方式に限定し、消費者保護法を超える具体的な行為規制を課す法律です。

それだけに、規制対象になれば、消費者庁が定める施行規則・ガイドラインに沿って、該当事業者が箸の上げ下ろしまでを拘束されることになります。例えば、通信販売における返品特約の表示だけをとっても、それだけで25ページにわたるガイドラインが定められるほどです。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/amendment/2012/pdf/130220legal_6.pdf 2021年4月22日最終アクセス

D2C(Direct to Consumer)がビジネスキーワードとなっているように、ウェブを通じて消費者に直接販売を行わない事業者はむしろなくなっていくトレンドの中で、インパクトの大きな改正 となることは必至で、サブスク事業者はもちろん、多くのウェブサービス各事業者が対応を求められることとなるでしょう。

現在の法改正案審議の段階では、まだ施行規則やガイドラインがどのようなものになるかは不明ですが、今後の動向を注視すべき法改正です。

(橋詰)

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