商業登記電子証明書とは?取得方法からオンライン申請の手順を解説

商業登記とは、株式会社等の会社に関する重要事項(社名・所在地・役員・資本金など)を法務局の登記簿に記載し、一般に公開する制度です。商業登記の手続きは、オンラインで電子申請することが可能なことをご存知でしょうか?
当記事では、商業登記の電子申請(オンライン申請)を行う際に必要な商業登記電子証明書について解説します。取得方法からオンライン申請の手順を解説しますので、これから法人登記を予定している方はぜひ参考にしてみてください。
目次
商業登記電子証明書とは
商業登記電子証明書とは、商業登記の電子申請(オンライン申請)を行う際に申請書類に電子的な「押印」をするために用いる証明書です。この電子証明書により、相手方(法務局や自治体など)は、その電子文書の作成者が誰であるのかを確認することができるとともに、その電子文書が改ざんされていないことを確認することができます。

言い換えれば、商業登記電子証明書はこれまで法務局(登記所)の窓口で実施していた本人確認をデジタル上で代替するような役割を担っています。
商業登記電子証明書を発行できるのは法務局のみ
商業登記電子証明書を発行できるのは法務省(管轄の登記所)のみであり、民間事業者や他省庁は発行することができません。
商業登記のオンライン申請自体は以前から可能でしたが、2022年2月以降、商業登記電子証明書の発行申請手続きもオンラインで完結できるようになりました。
商業登記電子証明書をオンラインで取得するには、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」から「申請用総合ソフト」と「商業登記電子認証ソフト」を導入し、専用ソフトで鍵ペアと申請ファイル(SHINSEIファイル)を作成します。
その後、マイナンバーカード等の電子証明書で署名して申請を送信し、インターネットバンキング等で手数料(1か月500円〜27か月8,300円)を電子納付すると、後日ソフト経由で商業登記電子証明書をダウンロードできます。
参考:オンラインによる商業登記電子証明書の請求等について(法務局)
商業登記電子証明書でできるオンライン上の手続き
商業登記電子証明書を用意すれば、次のような手続きがオンラインで可能になります。
- 会社設立登記
- 役員変更登記
- 本店移転登記
- 商号変更登記
- その他、代表者権限に基づく各種商業登記
なお、商業登記電子証明書は「申請書への電子署名」として利用されるため、添付書類(定款、株主総会議事録など)の署名には利用できません。添付書類については、民間の電子署名サービス(クラウドサインなど)を用いてPDFに電子署名を付与する方法や、紙の書類に代表者印を押印したうえで別途提出する方法などを利用する必要があります。
詳しくは「民間の電子署名サービスが使えるのは「添付書類」のみ」の項目で解説しています。
紙の申請から「電子申請」へ切り替える3つのメリット
商業登記電子証明書を利用して、紙の申請から「電子申請」へ切り替えるメリットとして次の3点が挙げられます。
時間と移動のコスト削減
紙の申請では、申請書の作成・押印・印鑑証明書の取得・法務局への持参(または郵送)が必要でした。一方、オンライン上での電子申請であれば、PC上で申請書を作成し、商業登記電子証明書で署名して送信するだけで完了します。
本店所在地を管轄する法務局が遠方の場合、移動時間や交通費を削減できるため、コスト削減の効果は小さくありません。
各機関の窓口まで行かずに済む
電子申請の場合、オンライン上で申請を完結できるため、紙の申請と違って法務局の窓口受付に行かずに済みます。急な体調不良などの予定変更があっても、オフィスや自宅から落ち着いて申請ができるため、柔軟な対応が可能です。
なお、電子申請の利用時間は、月曜日から金曜日まで(国民の祝日・休日、12月29日から1月3日までの年末年始を除く)の8時30分から21時までです。登記・供託オンライン申請システムの運転状況は、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」の「利用時間・運転状況」からご確認ください。
添付書類のスキャン作業による負担軽減
紙の申請では、定款や議事録などの添付書類をすべて紙で用意し、原本またはコピーを提出する必要がありました。
一方、電子申請では、これらの書類をPDF化して添付すればよいため、原本の持ち運びやコピー作成の手間が減ります。準備の負担を軽減し、業務効率化・ペーパーレス化にも貢献するため、商業登記の手続きをするタイミングで「電子申請」に切り替えるのがおすすめです。
民間の電子契約サービスで商業登記の申請はできる?
近年、ペーパーレス・DX化に伴い電子契約サービスが普及していますが、電子契約サービスで商業登記の申請もすべて民間サービスで完結するのでしょうか?
結論から言うと、民間の電子契約サービスでは商業登記のオンライン申請はできません。申請書本体には、法務局発行の商業登記電子証明書(またはマイナンバーカード)が必須です。
民間の電子署名サービスが使えるのは「添付書類」のみ
民間の電子署名サービス(クラウドサインなど)は商業登記の「添付書類」に対して電子署名を行なう用途には利用できます。例としてあげられるのは次のような書類です。
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 取締役の就任承諾書
- その他、会社内部で作成する登記添付書類
これらの書類をPDF化し、民間サービスで電子署名を付与したうえで、登記申請ソフトに添付することは可能です。
電子契約サービス「クラウドサイン」は、商業登記のオンライン申請において「添付書類として利用可能な電子署名」として、法務省より正式に指定を受けています(参考:商業・法人登記のオンライン申請について | 法務局)。
公的に認められた信頼性の高いツールとして、登記手続きにも安心して活用いただけるため、書類の電子化をお考えの方はぜひ導入をご検討ください。
なお、クラウドサインでは、書類の電子化をこれから検討する方に向けた資料を5点セットにして無料でご提供しています。気になる方はぜひダウンロードのうえ、ご活用ください。
無料ダウンロード

クラウドサインではこれから電子契約サービスを検討する方に向けた「クラウドサイン サービス説明資料」をご用意しました。クラウドサインの特徴や使い方を詳しく解説していますので、ダウンロードしてご活用ください。
ダウンロードする(無料)商業登記の申請書には法務局発行の電子証明書(またはマイナンバーカード)が必須
商業登記のオンライン申請では、申請書に付与する電子署名について、法務局が定めた技術要件・運用要件を満たす必要があります。そのため、次のいずれかの電子署名が必須です。
- 商業登記電子証明書:会社専用の電子証明書。代表者または代理人が利用します。
- マイナンバーカード(個人番号カード)の電子証明書:会社代表者個人のマイナンバーカードに格納された電子証明書を利用する方法です。ただし、法人としての登記申請には、商業登記電子証明書の方が使い勝手が良い傾向があります。
商業登記電子証明書の具体的な取得ステップは次項で確認しておきましょう。
商業登記電子証明書の取得ステップ
商業登記電子証明書を取得するには、法務局で行う手続きと、自社PCでの作業が組み合わさります。ここでは、代表的な取得フローをステップごとに解説します。
ステップ1:専用ソフト「商業登記電子認証ソフト」のインストール
まず、商業登記電子証明書を利用するための専用ソフトをPCにインストールします。
このソフトは、法務省のWebサイトから無償でダウンロードできます。
- 法務省の「登記・供託オンライン申請システム」にアクセス
- 「商業登記電子認証ソフト」のダウンロードリンクを選択
- インストーラを実行し、指示に従ってインストール
インストール後は、証明書の登録や署名操作をこのソフト上で行います。複数人で利用する場合は、利用者ごとにインストールが必要です。
ステップ2:電子証明書発行申請書の作成と法務局への提出
次に、商業登記電子証明書の発行を法務局に申請します。2022年2月以降は、すべてオンラインで完結する方法が推奨されているため、ここではオンラインで完結させる方法と窓口・郵送で申請する方法を解説します。
【オンラインで完結させる場合(推奨)】
①申請ファイル(SHINSEIファイル)の作成
法務省の公式サイトにある「商業登記電子認証ソフト」に会社の商号、本店所在地、代表者氏名などを入力し、申請用のファイル(SHINSEIファイル)を作成します。
②電子署名と送信
作成したファイルに対し、代表者個人のマイナンバーカード等を用いて電子署名を付与し、「登記・供託オンライン申請システム」を通じてオンラインで送信します。その後、インターネットバンキング等で手数料を電子納付します。
【窓口・郵送で申請する場合】
①申請ファイルと申請書の作成
「商業登記電子認証ソフト」で作成した申請ファイル(SHINSEIファイル)をCD-RやUSBメモリ等のメディアに保存します。あわせて、法務局の窓口またはWebサイトから「商業登記電子証明書発行申請書」を入手し、必要事項を記入します。
②添付書類の準備
「商業登記電子証明書発行申請書」には、通常、次の書類を添付します。
- 会社の登記事項証明書(発行から3か月以内のもの)
- 代表者または代理人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
申請書に「法務局へ提出している会社実印(代表者印)」を押印し、収入印紙(発行手数料分)を貼付します。申請ファイルを保存したメディア(CD-R等)と共に、会社の本店所在地を管轄する法務局の窓口へ提出(または郵送)します。
※法務局は自庁で会社の登記簿を確認できるため、登記事項証明書や代表者の本人確認書類の添付は原則不要です。
ステップ3:シリアル番号の受取と証明書ファイルのダウンロード
申請が受理されると、法務局から「シリアル番号」が通知されます。
このシリアル番号を使って、実際の電子証明書ファイルを取得します。
1. シリアル番号の受領
申請時に指定した方法(郵送、窓口での受け取りなど)でシリアル番号を受け取ります。
2. 証明書ファイルのダウンロード
インストール済みの「商業登記電子署名ソフト」を起動し、シリアル番号を入力して、法務省のサーバから電子証明書ファイルをダウンロードします。
3. パスワードの設定
ダウンロード時に、証明書利用時のパスワードを設定します。このパスワードは、後日、申請書に署名する際に必要になるため、忘れないように管理してください。
4. ファイルの保存
ダウンロードした電子証明書ファイルは、USBメモリやPCの安全な場所に保存します。
紛失・漏えいすると第三者に悪用される恐れがあるため、厳重に管理してください。
有効期間ごとの発行手数料一覧
商業登記電子証明書は、有効期間によって発行手数料が異なります。下記の表に有効期間ごとの発行手数料一覧をまとめているので、証明書を発行する際は確認しておきましょう。
【有効期間ごとの発行手数料一覧】
| 有効期間 | 発行手数料 |
| 1か月 | 500円 |
| 3か月 | 1,100円 |
| 6か月 | 2,000円 |
| 9か月 | 2,900円 |
| 12か月 | 3,800円 |
| 15か月 | 4,700円 |
| 18か月 | 5,600円 |
| 21か月 | 6,500円 |
| 24か月 | 7,400円 |
| 27か月 | 8,300円 |
※最新の発行手数料は法務省の公式サイトにある料金表から確認いただけます。
有効期間の設定目安
商業登記電子証明書有効期間をどのくらいにするかは、登記申請の頻度や会社の状況によって変わります。目安として下記のようなイメージです。
- 登記申請が年に1回程度の場合
12か月または15か月を選ぶと、無駄なコストを抑えられます。 - 役員変更や本店移転が頻繁に発生する場合
27か月を選ぶことで、更新手続きの手間を減らせます。 - 電子申請への移行直後で、利用頻度が読めない場合
まずは12か月で試し、実際の利用状況を見てから次回の期間を決めるのも一案です。
有効期間が切れる前に更新手続きが必要になるため、証明書の有効期限はカレンダーやシステムで管理しておくのがよいでしょう。
商業登記を電子化して申請する方法
商業登記の電子申請は「申請書の作成・署名・送信」をすべてオンライン上で行なう手続きです。 ここでは、必要な環境と準備から完了までの4ステップを確認しておきましょう。
商業登記の電子申請に必要な環境
商業登記の電子申請を行うには、次のような環境が必要です。
- PC環境
Windows 10 以降(MacやLinuxでは対応ソフトが限られるため、Windowsが推奨)
インターネット接続環境
ブラウザ( Google Chrome、Microsoft Edgeなど) - ソフトウェア
商業登記電子認証ソフト(後述)
登記・供託オンライン申請システムに対応した申請ソフト - その他
商業登記電子証明書ファイル(USBメモリなどに保存)
証明書利用時に必要なパスワード(発行時に設定)
これらを整えることで、自社内で登記申請を一貫して処理できるようになります。
準備から完了までの手順(電子証明書取得〜申請ソフト送信)
商業登記の電子申請は、おおむね次の流れで進みます。
商業登記電子証明書の取得
まず、会社の代表者または代理人が、商業登記電子証明書を取得します。商業登記電子認証ソフトのインストール、申請書の提出、シリアル番号の受領、証明書ファイルのダウンロードという流れです。
申請ソフトの準備
商業登記の電子申請には、法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム」に対応した申請用総合ソフトが必要です。 PCにインストールし、会社情報や申請内容を入力できる状態にします。
申請書の作成と電子署名
申請ソフト上で、登記の種類(役員変更、本店移転など)を選択し、必要事項を入力します。
添付書類(定款、議事録など)はPDF化して添付します。
最後に、取得済みの商業登記電子証明書を使って、申請書に電子署名を行います。
オンライン送信と受付結果の確認
署名済みの申請データを、インターネット経由で法務省のオンライン申請システムに送信します。
送信後、システムから受付番号が通知されるので、それを控えておきます。 法務局側で書類審査が行われ、不備があれば補正依頼が届きます。無事に受理されれば、登記完了となります。
クラウド型署名と商業登記電子証明書の「ハイブリッド運用」がおすすめ
ここまで見てきたように、商業登記を電子化する場合は「申請書には法務局の商業登記電子証明書、添付書類には民間サービス」というハイブリッドな運用が現実的かつ効率的です。
| 書類の種類 | 対応方法 |
| 申請書 | 商業登記電子証明書(またはマイナンバーカード)で電子署名 登記・供託オンライン申請システムから送信 |
| 添付書類(議事録など) | クラウドサインなどの民間サービスで電子署名 PDFとして申請ソフトに添付 |
このようにすることで、
- 登記申請書は法務局のルールに従いつつ
- 内部文書(議事録など)は民間サービスでスピーディーに処理
という両立が可能になります。
商業登記電子証明書の今後の動向:令和8年(2026年)7月にリモート署名導入予定
今後の動向として、法務省およびデジタル庁は令和8年(2026年)7月に「商業登記リモート署名」の導入を予定しています(参考:商業登記リモート署名-特設ページ-)。
「商業登記リモート署名」は、会社や法人の代表者が、行政へのオンライン申請や企業間の電子契約などに使う電子証明書と署名鍵(※)を、法務省が用意した安全性の高いクラウド環境に保管する仕組みです。

画像の出典:商業登記リモート署名-特設ページ-
これにより、自宅や外出先など、場所を選ばず、パソコンやスマートフォンなど様々な端末からオンラインで電子署名ができるようになります。これは、従来の商業登記電子証明書の新しい利用方法です。
※署名鍵:電子署名に使う電子データで、紙の文書でいう「実印」に相当します。
※電子証明書:その署名が本人の署名鍵で行われたことを証明するもので、紙の文書でいう「印鑑証明書」に相当します。
情報は随時更新・変更されるため、最新情報は法務省の公式サイトにある「商業登記リモート署名-特設ページ」を確認してください。
商業登記の電子化でバックオフィスを効率化しよう
商業登記電子証明書の取得とオンライン申請への移行は単に「紙が減る」だけではなく、バックオフィス業務全体の効率化にもつながります。
- 書類管理のデジタル化:申請書や添付書類をPDFで保存できるため、紙のファイリングが不要になります。過去の登記履歴も、キーワード検索で素早く参照可能です。
- 申請ミスの減少:申請ソフトには入力チェック機能が備わっているため、記載漏れや形式不備を事前に防ぎやすくなります。
- 役員変更手続きのスピードアップ:役員が交代するたびに、新しい代表者印の印鑑証明書を取得する手間が省けます。電子証明書の有効期間内であれば、同じ証明書を継続利用できます。
- 法務局とのやり取りの効率化:補正依頼や問い合わせも、オンラインシステム上で行われることが多く、郵送や電話に比べて対応が迅速になります。
一方で、電子証明書の管理にはセキュリティ面での注意も必要です。パスワードの厳重な管理、ファイルのバックアップ、利用者変更時の再発行手続きなど、ルールを整備しておくことが重要です。
商業登記電子証明書を活用し、紙ベースの登記申請からオンライン申請へと切り替えることで、会社の法務・総務部門はより戦略的な業務にリソースを割けるようになります。自社に合った運用方法を模索してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いたライター
弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
