顧問契約書とは?業務委託との違いや主な記載事項などを弁護士が解説

弁護士・税理士などの専門家や、コンサルタントなどにアドバイザリー業務を委託する場合は「顧問契約書」を締結します。顧問業務の内容や報酬の条件などを明確に定めましょう。
本記事では顧問契約書について、業務委託との違いや主な記載事項などを弁護士が解説します。
顧問契約書とは
「顧問契約」とは、一方当事者が相手方に対して専門的な見地からの助言等(アドバイザリー業務)を行う内容の契約です。「顧問契約書」は、顧問契約の内容を定めた書面に当たります。
顧問契約は口頭でも成立しますが、契約トラブルのリスクを軽減するためには、顧問契約書を作成して契約条件を明確化することが大切です。実務上、顧問契約を締結する場合は顧問契約書を作成するケースが大半となっています。
顧問契約と業務委託契約の違い
「顧問契約」と「業務委託契約」は似ている面があるので、その関係性や違いを整理しておきます。
「顧問契約」も「業務委託契約」も、法律上定義された用語ではありません。あくまでも実務上用いられている契約の名称という位置づけです。
「業務委託契約」は一般的に、一方当事者が相手方に対して何らかの業務を委託し、相手方がこれを受託する内容の契約をいいます。
一方で「顧問契約」は、アドバイザリー業務の委託・受託を内容とする契約です。業務の受委託を内容としている点では、業務委託契約の定義にも当てはまると考えられます。
したがって、顧問契約は業務委託契約の一種であると整理するのが適切でしょう。業務委託契約は幅広い業務を対象としており、その中にアドバイザリー業務を対象とする顧問契約が含まれているとの整理が分かりやすいと思われます。
顧問契約書の主な記載事項|例文も紹介
顧問契約書には、主に次の事項などを定めます。
②報酬
③費用の負担
④契約期間
⑤契約の解除
⑥その他
各項目につき、条文例を示しながら解説します。なお、本記事における条文例は経営コンサルタントと締結する顧問契約を想定したものです。
顧問業務の内容
第1条 (顧問業務の内容)
- 1. 甲は、乙に対して次に掲げる事項(以下「対象事項」という。)に関する助言、支援及び指導(以下「助言等」という。)に係る業務(以下「顧問業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。
① 甲の経営に関する事項
② 前号に定める事項に付随関連する事項
③ 前二号のほか、甲乙間で別途合意した事項 - 顧問業務に基づく助言等は、別紙記載の要領にて行うものとする。
- 乙は、顧問業務を善良なる管理者の注意をもって遂行しなければならない。
- 甲は、対象事項に係る意思決定を自らの責任において行うものとする。乙は、顧問業務に基づく助言等を行ったとしても、当該意思決定によって特定の結果が達成されることを一切保証するものではない。
―――――――――
別紙(助言等の要領)
顧問業務に基づく助言等は、次の要領によって行うものとする。
【方法】
甲及び乙が別途合意する方法(対面、電話、メール、SMS、メッセージアプリ等、適宜の方法を選択することができる。
【相談の回数・時間】
① 対面、電話その他の口頭による会話を要する相談(以下「口頭相談」という。)は、月〇回、1回当たり○分を上限とする。
② 口頭相談を行う際には、甲乙間の合意により、事前に日程を定めるものとする。ただし、乙に異存がなければ、事前に日程を定めることなく口頭相談を行っても差し支えない。
③ 口頭相談を除く相談については、特に回数の制限を設けない。乙は当該相談に対し、実務上合理的な範囲内で速やかに回答するものとする。
……
【顧問業務に含まれない業務】
次の業務は、顧問業務に含まれないものとする。
① ……
② ……
③ ……
以上
顧問業務の内容や範囲などを明記します。上記の例では、主に経営に関する助言・支援・指導が顧問業務の内容とされています(1項)。助言等の要領についても、できる限り具体化しておくことが望ましいです(2項・別紙)。
一般的に、顧問業務としての助言・支援・指導はあくまでも参考にすべきもので、実際の判断や行動は助言等を受けた側が行います。顧問業務を行う側は、その業務によって何らかの結果を保証するものではない旨を明記しておくとよいでしょう(4項)。
報酬
第2条 (報酬)
- 顧問業務の対価たる報酬(以下「本報酬」という。)の額は、1か月当たり○○円(消費税及び地方消費税別途)とする。
- 本報酬の計算及び支払いは、暦月ごとに行うものとする。1か月に満たない月に係る本報酬の額は、当該月の暦日数に応じた日割(1円未満切り捨て)によって計算する。
- 乙は、甲に対し、毎月末日までに、当該月に係る本報酬の請求書を書面又は電磁的方法で交付しなければならない。
- 甲は、乙に対し、前項に定める請求書を受領した日が属する月の翌月末日までに、当該請求書に係る本報酬を支払わなければならない。支払いに要する費用は甲の負担とする。
顧問業務の報酬について、金額・請求方法・支払方法などを定めます。特に金額の計算方法については、日割計算等も含めて疑義がないように記載しておきましょう。
費用の負担
第3条 (費用の負担)
- 顧問業務の遂行に要する費用は、乙の負担とする。
- 前項の定めにかかわらず、甲が自ら負担することについて事前に同意した費用については、甲の負担とする。当該費用の精算方法については、前条第3項及び第4項を準用する。
顧問業務の遂行に当たっては、さまざまな費用が発生することが想定されます。たとえば、郵送料・印刷費・官公庁に支払う手数料などが挙げられます。これらの費用について、誰が負担するのかを定めておきましょう。
上記の例では、原則として顧問業務を行う側の負担としています(1項)。この場合、顧問業務を行う側としては、かかる費用の額を想定したうえで報酬額を定めるべきでしょう。
助言等を受ける側が費用を負担する場合については、その費用の精算方法を定めておきましょう。上記の例では、報酬に準じて請求書を交付し、その内容を受けて精算する旨を定めています(2項)。
契約期間
第4条 (有効期間)
- 本契約の有効期間(以下「有効期間」という。)は、契約締結日から1年間とする。
- 有効期間が満了する1か月前までに、甲又は乙のいずれかが書面により契約終了の申出を行い、かつ当該申出が相手方に到達していない限り、本契約は従前と同一の条件でさらに1年間更新されるものとし、以降も同様とする。
- 前二項の定めにかかわらず、第2条、本項、第6条、第7条、第8条第5項及び第9条は、有効期間の満了後も存続するものとする。ただし、第2条は本報酬の支払いが完了するまで、第7条は有効期間の満了後3年間に限る。
顧問契約の有効期間を定めます。上記の例では、契約期間を1年間としたうえで、その後は1年毎の自動更新を行う旨を定めています(1項・2項)。
顧問契約の条文の中には、契約終了後も存続させた方がよいものが含まれています。どの条項を存続させるのか、および存続させる期間についても定めておきましょう(3項)。
契約の解除
第5条 (契約の解除)
- 甲及び乙は、相手方が本契約に違反し、その是正を書面で催告したにもかかわらず、当該催告の翌日から起算して7日以内に当該違反が是正されなかったときは、本契約を解除することができる。
- 甲及び乙は、相手方が次の各号のいずれかに該当したときは、何らの通知又は催告を要せずに、本契約を解除することができる。
① 営業停止処分を受けたとき、又は営業に必要な許認可の取消処分を受けたとき
② その財産について仮差押、仮処分、差押、強制執行又は担保権の実行としての競売の申立てを受けたとき
③ 破産、民事再生、会社更生若しくは会社整理の申立てがあったとき、又は清算手続きに入ったとき
④ 手形若しくは小切手の不渡り処分を受けたとき、又は銀行取引停止処分を受けたとき
⑤ 支払を停止し、又は支払不能となったとき
⑥ 前各号に準じて、経営を著しく困難とする事象が生じたとき
顧問契約を解除できる場合について定めます。上記の例では、1項で催告を行ったうえでの解除(催告解除)、2項で催告を要しない解除(無催告解除)を定めています。
なお上記のほか、反社会的勢力の排除に違反した場合についても、無催告解除を認めるのが一般的です。
その他
顧問契約書には上記のほか、次の事項などを定めます。
→契約違反時の損害賠償責任の範囲を定めます。・秘密保持
→契約に基づいてやり取りした秘密情報の開示等を、原則として禁止します。・反社会的勢力の排除
→暴力団員等の反社会的勢力に該当しないこと、および暴力的な要求行為をしないことの表明・確約を定めます。・準拠法
→契約の解釈に用いる法を定めます。特に当事者の国籍が異なる場合は、準拠法の定めが重要です。
・合意管轄
→当事者間で契約トラブルが生じた場合に、訴訟を提起する裁判所を指定します。
顧問契約書を締結する際のチェックポイント
顧問契約書を締結する際には、特に次のポイントに注意しながら内容を検討してください。
②報酬や費用の条件を明確に定める
顧問業務の内容や範囲を明確に定める
顧問業務の内容や範囲は、できる限り明確に定めておきましょう。
特に顧問業務を行う側は、あまりにも頻繁に相談が来ると、報酬額に釣り合わない労力が生じてしまうおそれがあります。相談の回数を制限する、顧問業務に含まれない業務を明記するなどの対策を検討した方がよいでしょう。相談頻度が流動的になりそうなら、報酬をタイムチャージ制とすることも考えられます。
報酬や費用の条件を明確に定める
報酬や費用などの経済的な条件は、あらゆる契約において重要です。
顧問契約書においても例外でなく、報酬と費用は明確に定める必要があります。誰が負担するのかに加えて、請求の方法や支払期限などもはっきり明記することをお勧めします。
顧問契約書に収入印紙は必要?
顧問契約書の内容は、多くの場合「委任」または「準委任」であると解されます。
準委任:当事者の一方が法律行為でない事務を相手方に委託し、相手方がこれを受託する取引
契約内容が委任または準委任である場合は、印紙税法上の課税文書に当たらないので、顧問契約書への収入印紙の貼付は不要です。
ただし、顧問契約の内容が「請負(=仕事の完成を目的とする契約)」であると解されるケースもあります。この場合の顧問契約書を紙で作成するときは、単発の依頼なら「第2号文書」、継続的な依頼なら「第7号文書」に当たり、収入印紙の貼付が必要になります。
<第2号文書>
| 契約金額 | 印紙税額 |
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 1000円 |
| 300万円超500万円以下 | 2000円 |
| 500万円超1000万円以下 | 1万円 |
| 1000万円超5000万円以下 | 2万円 |
| 5000万円超1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超 | 60万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
<第7号文書>
4000円(契約書に記載された契約期間が3か月以内であり、かつ更新の定めのない場合は非課税)
なお、顧問契約を電子契約で締結する場合は、内容にかかわらず収入印紙は不要になります。電子契約で収入印紙が不要になる理由を知りたい方は下記記事もご一読ください。
電子契約は印紙税の節約だけでなく、リモートでも締結できる、契約管理がしやすいなどのメリットがあります。まだ電子契約を導入していない企業は、積極的に導入をご検討ください。
まとめ
顧問契約書は、弁護士・税理士などの専門家や、コンサルタントなどから助言等を受ける際に締結する契約書です。顧問業務の範囲や、報酬・費用などの経済的条件を明確に記載し、当事者間のトラブルのリスク軽減に努めましょう。
顧問契約書は、電子契約によって作成・締結することもできます。内容を問わず収入印紙が不要であるほか、締結後の管理がしやすいなど、電子契約には多くのメリットがあります。
なお、当社の提供する電子契約サービス「クラウドサイン」は、契約書はもちろんのこと、発注書・発注請書や申込書等の電子化が可能なクラウド型の電子契約サービスです。クラウドサインを導入することで、「紙と印鑑」を「クラウド」に置き換え、契約作業をオンラインだけで完結できます。
当社では電子契約の導入から運用までを網羅した「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しております。「導入の具体的なステップがわからない」「法的に有効な契約方法を知りたい」といった疑問をお持ちの方は、以下のリンクから無料でダウンロードが可能ですので、ご活用ください。
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ダウンロードする(無料)この記事を書いたライター
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
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