電子契約の基礎知識

建設業法で規定された電子契約の技術的基準に関するガイドラインとは?

労働環境や労働条件の改革を進めるために施行された「働き方改革関連法」の適用が来年4月から開始するため、建設業界においては36協定の特別条項における残業の上限規制に対応する必要が出てきています。

業務の効率化を目指して契約書の電子化を検討している方のなかには「建設業法で電子契約がどのように規定されているのか」気になっている方もいるのではないでしょうか。

当記事では建設業法で規定された電子契約の技術的基準に関するガイドラインについて解説しておりますので、建設業で契約書の電子化を検討している方は参考にしてみてください。

そもそも建設業で電子契約は利用できるのか?

ガイドラインの説明に入る前に、そもそも建設業で電子契約は利用できるのかどうかを確認しておきましょう。結論から言うと、建設業で電子契約を利用することは可能です。平成13年4月の建設業法改正により、建設工事における請負契約について電子契約で締結できるようになりました。

直近のトピックとして、2022年に入ってから新たに申請された建設業グレーゾーン解消申請に対する回答によれば電子署名法上の電子署名を利用しない「電子印鑑」や「電子サイン」と呼ばれる電子契約サービスであっても、建設業法上適法な電子契約が締結できることが確認されています。

建設業で電子契約が可能になった背景や押さえるべき要件を知りたい方は「建設業で電子契約を利用できるのか?法律や要件などのポイントを解説」も確認してみてください。

国交省は建設工事における電子契約のガイドラインを用意している

平成13年4月に施行された「IT 書面一括法」により、民間における商取引に関する書面の交付や書面による手続きを義務付けている関係法律 50 本について、書面の交付等に代えて相手方の承諾を得たうえであれば書面に記載すべき事項を電磁的措置によって行えるようになりました。

これにより、建設業法19条も改正され、建設業において電子契約ができるようになったため、国交省は建設業法施行規則に定める技術的基準の改正とそのガイドライン(正式名称「建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン」)を平成 13 年 3月に定めています。

また、国土交通省総合政策局建設業課はこのガイドラインをさらにわかりやすくまとめた資料「建設工事の電子契約についての解説」も用意しています。

ガイドラインで定められた建設工事で電子契約を利用するための技術的基準とは

国交省のガイドラインでは、建設工事における電子契約の技術的基準として次の2つの要件を定めています。

  • 見読性の確保
  • 原本性の確保

それぞれの要件について次項で詳しく確認しておきましょう。

見読性の確保

「見読性の確保」について、ガイドラインでは以下の内容で説明されています。

情報通信の技術を利用した方法により締結された建設工事の請負契約に係る建設業法第19条第1項に掲げる事項又は請負契約の内容で同項に掲げる事項に該当するものの変更の内容(以下「契約事項等」という。)の電磁的記録そのものは見読不可能であるので、当該記録をディスプレイ、書面等に速やかかつ整然と表示できるようにシステムを整備しておくことが必要である。
また、電磁的記録の特長を活かし、関連する記録を迅速に取り出せるよう、適切な検索機能を備えておくことが望ましい。

わかりやすく言い換えると、電子契約における「見読性の確保」とは、電子データを保存したシステムから情報が必要な時に速やかに閲覧・印刷できるようにしておくことを意味しています。

原本性の確保

「原本性の確保」について、ガイドラインでは以下の内容で説明されています。

建設工事の請負契約は、一般的に契約金額が大きく、契約期間も長期にわたる等の特徴があり、契約当事者間の紛争を防止する観点からも、契約事項等を記録した電磁的記録の原本性確保が重要である。このため、情報通信技術を利用した方法を用いて契約を締結する場合には、以下に掲げる措置又はこれと同等の効力を有すると認められる措置を講じることにより、契約事項等の電磁的記録の原本性を確保する必要がある。

わかりやすく言い換えると、電子契約における「原本性の確保」とは、請負契約書が原本であり、改ざんされていないということです。電子契約では契約書の電子ファイルにタイムスタンプを付与することで、タイムスタンプを付与した時刻以降は電子ファイルの内容が改ざんされていないことを証明できるようになっています。

タイムスタンプについて詳しく知りたい方は「タイムスタンプとは?電子契約を支える時刻認証技術」も参考にしてみてください。

2020年10月1日には技術的基準の要件に「本人性の確保」も追加されている

「原本性の確保」「見読性の確保」に加えて、2020年10月1日に見直された建設業法施行規則では建設工事における電子契約の技術的基準の要件に「本人性の確保」も追加されています。

電子契約における「本人性の確保」とは、当該契約の相手方が本人であることを確認することができる措置を講じていることを指しています。本人であることの確認とは、身元確認を意味していますが、この身元確認の方法についてはさまざまな議論を呼びました。

そこで「本人であることを確認することができる措置」の具体的なやり方は、2022年に入ってから新たに申請された建設業グレーゾーン解消申請に対する回答によって、以下4方式が示されています。

方式 名称 概要
1 当事者署名型電子署名 ID、パスワードを用いたログイン認証(1要素認証)を行い、認証局が本人確認を行い発行する電子証明書、タイムスタンプにて署名する電子署名
2 事業者署名型電子署名(2要素認証) ID、パスワードを用いたログイン認証、及びSMSでのパスコード入力(2要素認証)を行い、事業者の証明書、タイムスタンプにて署名する電子署名
3 事業者署名型電子署名(1要素認証) ID、パスワードを用いたログイン認証(1要素認証)を行い、事業者の証明書、タイムスタンプにて署名する電子署名
4 電子捺印 ID、パスワードを用いたログイン認証(1要素認証)を行い、印影イメージ(名前、会社名、スキャン画像など選択可)、タイムスタンプを付与する方式

この建設業グレーゾーン解消申請に対する回答により、電子署名法上の電子署名を利用しない、いわゆる「電子印鑑」や「電子サイン」と呼ばれる簡易な電子契約サービスであっても、建設業法上適法な電子契約が締結できることが確認されました。

なお、建設業における電子契約の適法性についてより詳しく知りたい方は「建設業法グレーゾーン解消制度による電子契約の適法性確認—建設工事請負契約の電子化がさらなる規制緩和」も参考にしてみてください。

建設業における業務効率化において電子契約が取り組みやすい理由

建設業における業務効率化の手段としては基幹システムや会計システムの入れ替えなどさまざまな方法が考えられる一方、これらのシステムは導入までのハードルが高く、利用開始までの時間も一定かかってしまう傾向があります。

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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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