契約実務

【弁護士監修テンプレートあり】身元保証書とは?記載すべき事項や注意点などを解説

【弁護士監修テンプレートあり】身元保証書とは?記載すべき事項や注意点などを解説

会社が労働者を雇い入れる際には、不正行為や情報漏洩などのリスクを軽減するために親族などに「身元保証書」の提出を求めるケースがあります。身元保証人の役割は、労働者本人が会社に与えた損害を賠償することです。

身元保証書のひな形を整備する際には、「身元保証に関する法律」の規定を踏まえなければなりません。本記事では、身元保証書に記載すべき項目や注意点を解説しますので、従業員の採用などの場面で身元保証書を準備する予定のある方は参考にしてみてください。

本記事では身元保証書について、記載すべき事項や注意点などを解説します。そのまま利用できるテンプレートもご用意していますので、必要に応じてダウンロードいただきご利用ください。

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身元保証書とは

「身元保証書」は、会社が労働者を雇い入れる際に、その労働者の親族などから提出を受ける書面です。身元保証人は、労働者本人が会社に与えた損害を賠償する責任を負います。

身元保証書の目的

身元保証書の直接的な目的は、労働者が不適切な行為をした場合などに、会社が被った損害を身元保証人に賠償させることです。

業務上の重大なミスや横領などによって、会社が何らかの損害を被った場合に、身元保証書の提出を受けていれば、身元保証人に対して損害賠償を請求できます。

その他の副次的な目的としては、以下の各点などが挙げられます。

・本人がきちんとした人物であることを証明してもらう
・身元保証人に迷惑をかけないように、本人が誠実に業務へ取り組むようになる
・本人に何かあったときに備えて、身元保証人へ連絡できるようにしておく

など

身元保証人が負う責任とリスク

身元保証人は、本人が会社に対して何らかの損害を与えた場合に、本人と連帯してその損害を賠償する責任を負います。

身元保証人が負担する損害賠償の額は、身元保証書で定められた極度額が上限です。極度額の範囲内では、さまざまな原因によって会社に対する損害賠償責任を負う可能性があります。

身元保証人が損害賠償責任を負う場合の具体例

身元保証人が会社に対して損害賠償責任を負うのは、たとえば以下のようなケースです。

・本人が会社のお金を横領した。
・本人が無断欠勤を繰り返し、会社の業務に穴をあけた。
・本人が他の従業員に対してハラスメントを行ったので、会社が被害者の損害を賠償した。
など

本人が何らかの不適切な行為をした結果、会社に損害が生じた場合には、身元保証人がその損害を賠償しなければなりません。

身元保証書に記載すべき事項|条文例も紹介

身元保証書に記載すべき事項は、以下のとおりです。

各記載事項の内容を、条文例とあわせて紹介します。

身元保証をする旨

(例)
私は、貴社がその業務のために使用する第1条記載の者について、以下のとおり身元保証をいたします。

身元保証書の冒頭(前文)では、提出者が身元保証をする旨を宣言します。身元保証の具体的な条件は、前文に続く本文で定めます。

身元保証の内容と極度額

(例)
第1条(身元保証)
下記の者(以下「本人」といいます。)が、在職中または退職後に、貴社と本人の間で締結した雇用契約に基づく義務に違反し、または故意もしくは過失によって貴社に損害を与えたときは、私は金_________円を限度として、本人と連帯して、貴社に対してその損害を賠償します。記住所________________________氏名__________________生年月日__________________
以上

身元保証の内容は、本人が使用者(会社)に対して損害を与えた場合に、身元保証人がその損害を賠償するというものです。身元保証書では、その旨を明記します。

身元保証は「根保証(ねほしょう)」に当たります。

根保証とは、あらかじめ特定されていない債務を保証することです。身元保証は、本人が会社に及ぼすあらゆる損害を賠償の対象としており、損害の原因が事前に特定されていないため、根保証に該当します。

2020年4月から施行された民法改正により、個人が行なう根保証については「極度額」の定めが必須とされました。極度額とは、損害賠償の上限額をいいます。

身元保証は根保証に当たるため、身元保証書において極度額を定めなければなりません。極度額の定めがないと、身元保証が無効となってしまうのでご注意ください。

身元保証の対象となる本人の情報としては、住所・氏名・生年月日を記載しておきましょう。

身元保証の期間と更新の方法

(例)
第2条(有効期間)
1. 前条に基づく身元保証の期間は、本書作成日から起算して5年間とします。
2. 本人が貴社に在職している間に、前項の期間が終了するときは、私は速やかに、貴社に対して、身元保証書を再提出いたします。

身元保証の有効期間を、5年以内の範囲で定めます。

有効期間が満了した時点で本人が在職している場合は、速やかに身元保証書を再提出する旨も記載しておきましょう。

ただし後述するように、期間の途中で身元保証書を解除されるケースがあるほか、身元保証書の再提出を強制することはできない点に注意が必要です。

身元保証人に対する通知の方法

(例)
第3条(通知)
本書に係る貴社の私に対する通知は、本書末尾記載の住所宛の郵便、または本書末尾記載のメールアドレス宛のメールにて行うようお願いいたします。

身元保証書の提出を受けた使用者は、法律の規定により、身元保証人に対して通知を行なうべきケースがあります(後述)。身元保証書において、通知の方法を明記しておきましょう。

上記の例では郵便またはメールとしていますが、郵便のみとすることも考えられます。

【2020年民法改正対応版】身元保証書のテンプレート

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身元保証書 テンプレート

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身元保証書に関する注意点

身元保証書の内容は、「身元保証に関する法律(以下「法」といいます。)」を踏まえて定める必要があります。具体的には、以下のポイントに念頭に置いたうえで身元保証書のひな形を準備しましょう。

身元保証の期間は最長5年|自動更新は不可

身元保証の期間は最長5年とされています。5年より長い期間を定めた場合は、自動的に5年に短縮されます(法2条1項)。身元保証書の有効期間を定める際には、5年以内の期間を記載しましょう。

身元保証を更新することはできますが(法2条2項)、法律上、自動更新は無効となります。したがって身元保証を更新する際には、改めて身元保証書の提出を受けなければなりません。

身元保証書において、雇用継続の場合は身元保証書を提出すべき旨を定めたとしても、身元保証人に対する強制力はありません。身元保証人は、更新を拒絶して身元保証書を再提出しないこともできます。

身元保証人の責任が発生しそうな場合などには、通知が必要

身元保証人の責任が発生しそうな場合や、責任が重くなりそうな場合には、使用者は身元保証人に対してその旨を通知しなければなりません(法3条)。

具体的には、以下のようなケースで身元保証人に対する通知が必要になります。

 

(a)本人が不適切な行為をした疑いがあるとき

本人が不適切な行為をした疑いが生じた場合には、その時点で身元保証人に具体的な事情を通知しなければなりません(法3条1号)。身元保証人に損害賠償責任が生じるおそれがあるところ、それに備える機会を与えるためです。

身元保証人に通知すべき不適切な行為としては、横領、過度な無断欠勤、ハラスメントなどが挙げられます。

(b)昇進などにより、本人の業務上の責任が重くなるとき

本人の任務を変更したために、業務上の責任が重くなる場合には、その旨を身元保証人に通知しなければなりません(法3条2号)。身元保証人の損害賠償責任も重くなる可能性があるところ、それに備える機会を与えるためです。

身元保証人に通知すべき任務の変更としては、重要な管理職ポストへの昇進などが挙げられます。

(c)本人を遠方に転勤させるとき

本人の勤務地を変更したために、身元保証人による監督が困難になる場合には、その旨を身元保証人に通知しなければなりません(法3条2号)。本人を監督する方法を再考するなどの機会を与えるためです。

特に遠方への転勤については、身元保証人に対する通知が必要になると考えられます。

身元保証を解除されるケースがある

使用者から上記の4-2記載の各事項について通知を受けた身元保証人は、将来に向かって身元保証を解除することができます。また、使用者が通知すべき事項を身元保証人自ら知ったときも、同じく身元保証の解除が可能です(法4条)。

身元保証の解除は、身元保証書の有効期間の途中でも行なうことができます。

解除される前に発生した損害は身元保証人に対して賠償を請求できますが、解除時以降の原因によって発生した損害の賠償を請求することはできません。

身元保証人の損害賠償責任は限定されるケースが多い

身元保証人の損害賠償責任の有無および額は、以下の事情を考慮して定めるものとされています(法5条)。

・本人の監督に関する使用者の過失の有無
・身元保証人が身元保証をするに至った事由(経緯や理由)
・身元保証人が身元保証をする際に払った注意の程度
・本人の任務または身上の変化
・その他一切の事情

身元保証は親族同士の「情」によって行われることが多く、事前に予期できないような損害が発生するケースも少なくありません。そのため、本人が不適切な行為をしたからといって、身元保証人にも全責任を負わせるのは酷な側面があります。

このような身元保証の特徴を踏まえて、身元保証人の責任は法律上限定される傾向にあります。

特に、本人の業務上のミスによって生じた損害は、本人に対してさえ全額の賠償は認められないのが通常です。これは「報償責任(=労働者を使用して利益を得ている者が、労働者の行為によって生じた損失も負担すべき)」という考え方によります。

身元保証人の損害賠償責任は、本人が負う損害賠償責任と同額か、それよりさらに少なくなります。

上記のとおり、本人の行為によって会社に損害が生じても、その全額の賠償を身元保証人に対して請求できる可能性は低いと考えておくべきです。

身元保証書が提出されない場合の対処法

雇い入れる際に身元保証書の提出を求めても、労働者側がそれに応じないケースが稀にあります。まだ内定を出していない場合は、不採用とすれば問題ありません。一方、すでに内定を出しているか、または雇い入れている場合には、以下のいずれかの方法で対処しましょう。

リスクを受け入れて雇用する

労働者を雇用するに当たって、身元保証書の提出を受けることは必須ではありません。労働者の人格や能力に問題がないと判断できるなら、リスクを受け入れて雇用することも選択肢の一つです。

内定を取り消す、または解雇する

身元保証人がいないことによるリスクを許容できない場合は、内定取り消しや解雇を検討しましょう。

ただし、内定取り消しや解雇の要件はかなり厳しく、安易に行なうと無効になるおそれがあります。

会社としては、身元保証書の提出を拒否されたことに加えて、本人の不適切な行為に関する事情を併せて主張できるように準備するなど、慎重な対応が求められます。必要に応じて顧問弁護士などのアドバイスを受けましょう。

身元保証書の電子化で採用業務の効率化を

昨今の労働市場においてスピード感を持って人材の採用を進めるために、企業はそのプロセスを可能な限り効率的にする必要があります。

従来の紙書類での運用では、身元保証書の印刷〜入社予定者への署名・捺印依頼〜郵送〜回収・管理という一連の作業を行う必要がありますが、入社予定者の負担となるだけでなく、企業側にとっても書類の送付や回収に手間がかかります。

これらの課題を解決する方法が身元保証書の電子化です。電子化とは、紙の書類をPDFなどの電子データに変換したうえで、電子契約サービスなどのツールにより送信・締結・管理を行うことを指します。

電子契約サービスにより身元保証書を電子化した場合、印刷、郵送、ファイリングといった物理的な作業が不要になるため、それに伴う時間とコストを大幅に削減できます。

また、相手方の同意を得た身元保証書は電子データとして一元管理されるため、必要な身元保証書を瞬時に検索し、閲覧することが可能です。これにより、人事担当者の業務効率も格段に向上します。

なお、当社の提供するクラウド型の電子契約サービス「クラウドサイン」は導入社数250万社以上の実績を持ち、導入時の課題解決や運用定着化のサポートも充実しています。人事部門における電子契約システムの導入実績も多数あるため、電子契約の導入を検討中の方はお気軽にご相談ください。スムーズな電子化移行をサポートします。

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まとめ

雇い入れようとする労働者の親族などから身元保証書の提出を受ければ、本人の不適切な行為による損害の発生に備えられるほか、本人の身元もある程度明らかになります。会社としては、身元保証書の提出を内定や雇用の条件としておくのが安心です。

身元保証書の内容については、「身元保証に関する法律」との関係でさまざまな注意点があります。本記事で紹介した条文例やテンプレートを参考にして、適切な形で身元保証書のひな形を準備しておきましょう。

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この記事の監修者

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阿部 由羅

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

この記事を書いたライター

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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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