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【無料ひな形付き】取締役会議事録とは?記載事項・作成手順・閲覧謄写請求への対応などを弁護士が解説

取締役会を開催したときは、取締役会議事録を作成しなければなりません。

取締役会議事録の記載事項は法令によって定められており、所定の記載事項を漏れなく記載する必要があります。株主や債権者から閲覧・謄写を求められることもあるので、適切に取締役会議事録を作成してください。

本記事では取締役会議事録について、記載事項・作成手順・閲覧謄写請求への対応などを解説します。

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取締役会議事録とは

「取締役会議事録」とは、取締役会における議事の経過の要領や結果などをまとめた議事録です。会社法369条3項によって作成が義務付けられています。

取締役会議事録は本店に10年間備え置く必要があり、一定の場合には株主や債権者などによる閲覧・謄写請求が認められています。取締役会の運営を透明化し、株主や債権者などによる検証に役立てることが取締役会議事録の役割です。

取締役会議事録の原則的な記載事項

取締役会議事録には、原則として以下の事項を記載します(会社法施行規則101条3項)。

①開催された日時と場所
②特別取締役による議決の定めがある場合は、その旨
③招集手続きについて特別の事情がある場合は、その旨
④議事の経過の要領と、その結果
⑤決議事項について特別の利害関係を有する取締役の氏名
⑥述べられた一定の意見または発言の内容の概要
⑦出席した役員等や株主の氏名・名称
⑧議長の氏名

開催された日時と場所

(例)
第1 開催日時
2026年○月○日 午前10時30分第2 開催場所
当会社本店○○室

取締役会が開催された日時と場所を記載します。日時は時間まで記載しましょう。

特別取締役による議決の定めがある場合は、その旨

以下の要件をすべて満たす場合には、取締役の中からあらかじめ3人以上の特別取締役を選任し、その過半数をもって取締役会決議ができる旨を定めることが認められています(会社法373条1項)。

(a)取締役会設定会社である
(b)指名委員会等設置会社でない
(c)監査等委員会設置会社の場合は、以下のいずれにも該当しない
・取締役の過半数が社外取締役である
・重要な業務執行の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めている
(d)取締役の数が6人以上である
(e)取締役のうち1人以上が社外取締役である

特別取締役による議決の定めがあるときは、特別取締役以外の取締役は、以下の事項を決定する取締役会に出席することを要しません(会社法373条2項)。

・重要な財産の処分および譲受け
・多額の借財

上記の規定により、特別取締役以外の取締役の出席を要しない取締役会を開催する場合は、その旨を取締役会議事録に記載する必要があります。

招集手続きについて特別の事情がある場合は、その旨

取締役会は原則として各取締役が招集しますが、以下に挙げる例外的方法によって招集された場合は、その旨を取締役会議事録に記載する必要があります。

・定款または取締役会によって一部の取締役が招集権者に指定されている場合に、招集権者以外の取締役の請求を受けて招集されたとき
・招集権者以外の取締役が、自ら招集したとき
・株主の請求を受けて招集されたとき
・株主が自ら招集したとき
・監査役の請求を受けて招集されたとき
・監査役が自ら招集したとき
・監査等委員会が選定した監査等委員が招集したとき
・氏名委員会等の委員の中から選定された者が招集したとき
・執行役の請求を受けて招集されたとき
・執行役が自ら招集したとき

議事の経過の要領と、その結果

(例)
第5 議事の経過の要領および結果
定刻において、議長は本取締役会の開会を宣言した後、議事に入った。まず、下記の報告事項について報告がなされた。【報告事項】
第1号報告 ○年○~○月の業務執行状況に係る報告の件
取締役○○○○、取締役××××及び取締役△△△△が、各々の担当部門における業務執行状況について詳細な報告を行った。第2号報告 本店移転の検討状況に係る報告の件
従前から検討されている本店の移転に関する検討状況につき、担当している取締役××××が詳細な報告を行った。引き続き、議長は、本取締役会の目的事項である下記の議案について、大要以下のとおり説明を行った。【決議事項】
第1号議案 第○期に係る予算の件
第○期の予算案について、過去の計算書類、中期事業計画及び業績見通しその他の資料を示しながら説明した。第2号議案 ○○銀行からの借入れの件
××株式会社の株式を100%取得するため、○○銀行から○億○万円を借り入れる件について、その必要性や返済計画などを説明した。議長は上記各説明の後、参加者からの質問その他の発言を受け付けた。
第1号議案については、取締役△△△△から……との質問がなされたところ、議長が○○○○と回答した。
第2号議案については、取締役××××から……との質問がなされたところ、議長が○○○○と回答した。参加者からの発言が出尽くしたところで、議長は、十分審議を尽くしたので各議案の採決を行う旨を述べ、採決に入った。第1号議案及び第2号議案の採決を逐次行ったところ、いずれも取締役全員の賛成によって承認可決された。以上をもって議事のすべてを終了したので、議長は午後11時30分に閉会を宣言した。

取締役会における議事の経過の要領と、その結果を記載します。取締役会議事録の中で、最も重要な部分です。

開会から閉会に至るまで、どのような経過で議事が行われたのかを要約しつつ記載しましょう。報告事項や決議事項については、項目名だけでなく、その概要の説明や質疑の状況などを記載することが望ましいです。

決議事項について特別の利害関係を有する取締役の氏名

決議事項について特別の利害関係を有する取締役は、その議決に加わることができません(会社法369条2項)。該当する取締役がいる場合は、その氏名を決議事項ごとに取締役会議事録へ記載する必要があります。

述べられた一定の意見または発言の内容の概要

取締役会において以下の意見または発言が述べられたときは、その内容の概要を取締役会議事録へ記載しなければなりません。

意見・発言等の内容 意見・発言等をした者 根拠条文
競業取引に関する重要な事実の報告 取締役 会社法365条2項
取締役による目的外行為・法令違反・定款違反に関する意見 株主総会の招集を請求し、または株主総会を自ら招集した株主 会社法367条4項/td>
計算書類の承認に関する意見 会計参与 会社法376条1項
取締役による不正行為、法令違反・定款違反・著しく不当な事実の報告 監査役
監査等委員
監査委員
会社法382条
会社法399条の4
会社法406条
監査役としての意見 監査役 会社法383条1項
補償契約に基づく補償についての重要な事実の報告 補償契約に基づく補償をした取締役、および当該補償を受けた取締役 会社法430条の2第4項

出席した役員等や株主の氏名・名称

(例)
第3 出席者
取締役 ○○ ○○
取締役 ×× ××
取締役 △△ △△
監査役 □□ □□なお取締役△△△△は、自宅よりウェブ会議システムを通じて参加した。

取締役会に出席した執行役・会計参与・会計監査人・株主の氏名または名称の記載が必須とされています。

取締役と監査役は末尾に記名押印をするので、ここでの記載は必須ではないですが、出席者として明記しておくのが分かりやすいでしょう。

議長の氏名

(例)
第4 議長
代表取締役 ○○ ○○

議長の氏名を記載します。「代表取締役」などの肩書とともに記載するのが一般的です。なお、議長がいなければ記載する必要はありません。

特殊なケースにおける取締役会議事録の記載事項

取締役会における決議や役員等の報告は、一定の場合には省略が認められています。決議や報告を省略したときは、取締役会議事録に所定の事項を記載しなければなりません。

取締役会決議を省略した場合の記載事項

取締役会設置会社は、以下の要件を満たす場合には可決の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます(会社法370条)。

①議決に加わることができる取締役全員が、書面または電磁的記録により同意の意思表示をした
②監査役がいる場合は、監査役が異議を述べていない

上記の規定によって取締役会決議があったものとみなされたときは、以下の事項を取締役会議事録に記載しなければなりません(会社法施行規則101条4項1号)。

(a)取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
(b)(a)の事項の提案をした取締役の氏名
(c)取締役会の決議があったものとみなされた日
(d)議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

役員等による取締役会への報告を省略した場合の記載事項

取締役・会計参与・監査役・会計監査人・執行役が取締役会に報告すべき事項につき、取締役および監査役の全員に対してその事項を通知したときは、取締役会への報告を省略することができます(会社法372条1項・3項)。

上記の規定によって取締役会への報告が省略されたときは、以下の事項を取締役会議事録に記載しなければなりません(会社法施行規則101条4項2号)。

(a)取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
(b)取締役会への報告を要しないものとされた日
(c)議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

取締役会議事録には、署名・記名押印・電子署名のいずれかが必要

取締役会議事録を書面(紙)で作成する場合は、取締役会に出席した取締役と監査役の全員が、署名または記名押印をしなければなりません(会社法369条3項)。

電磁的記録(電子データ)で作成する場合は、同じく出席取締役と出席監査役の全員が電子署名を行う必要があります(会社法369条4項、会社法施行規則225条1項6号)。

取締役会議事録を電子データで作成することで、保管場所が不要になる、検索や管理がしやすい、紛失しにくい、閲覧・謄写請求にもスムーズに対応できるなどのメリットがあります。

電子契約システムなどを利用すれば、電子署名を簡単に付与できるので、この機会にぜひ取締役会議事録の電子化をご検討ください。

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取締役会議事録の作成手順

取締役会議事録の作成手順は、以下のとおりです。

①議事録のドラフトを作成する
②取締役と監査役が議事録の内容を確認し、署名・記名押印・電子署名のいずれかを行う
③議事録を本店に10年間備え置く

議事録のドラフトを作成する|記載事項が漏れていないことを要確認

取締役会が終わったら、取締役会議事録のドラフト(草案)を作成します。取締役が自ら作成しても、従業員などに作成させても構いません。

すでに解説したとおり、取締役会議事録の記載事項は法令によって定められています。必要な事項を漏れなく記載しましょう。

取締役と監査役が議事録の内容を確認し、署名・記名押印・電子署名のいずれかを行う

出来上がった取締役会議事録のドラフトを、取締役会に参加していた取締役と監査役の全員に回覧します。内容につき問題なければ、書面であれば署名または記名押印、電子データであれば電子署名を行います。

議事録を本店に10年間備え置く

完成した取締役会議事録は、取締役会の日から10年間、本店に備え置かなければなりません(会社法371条1項)。

なお株主総会議事録とは異なり、取締役会議事録は本店のみに備え置けばよく、支店への写しの備置きは不要とされています。

取締役会議事録の閲覧・謄写請求

会社の株主や債権者などは、一定の要件を満たす場合に限り、取締役会議事録の閲覧・謄写を請求できます。会社が取締役会議事録の閲覧・謄写請求を受けたときは、その要件を満たしているかどうかの確認を含めて、適切な対応に努めましょう。

閲覧・謄写請求ができる人|株主や債権者など

取締役会議事録の閲覧・謄写請求ができるのは、株式会社の株主・債権者・親会社社員(=親会社の株主その他の社員)です。

それぞれ、以下の要件を満たす場合に取締役会議事録の閲覧・謄写を請求できます(会社法371条2項~5項)。

閲覧・謄写を請求する人 請求の要件
株主 権利を行使するため必要があること

※監査役設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社の場合は、裁判所の許可も必要

債権者 役員または執行役の責任を追及するために必要があり、裁判所の許可を得たこと
親会社社員 権利を行使するために必要があり、裁判所の許可を得たこと

閲覧・謄写請求を受けた場合の対応

取締役会議事録の閲覧・謄写請求を受けた会社は、まず請求者が上記の要件を満たしているかどうか確認しましょう。

閲覧・謄写請求を認めるべきと判断した場合は、以下の対応を行います(会社法371条2項、会社法施行規則226条19号)。

(a)取締役会議事録が書面で作成されている場合
その書面または写しの閲覧・謄写をさせます。(b)取締役会議事録が電磁的記録で作成されている場合
その電磁的記録に記録された事項を紙面または映像面に表示し、その閲覧・謄写をさせます。

まとめ

取締役会議事録は、取締役会の開催後に必ず作成しなければなりません。法令で定められた記載事項に漏れがないように注意しつつ、実際の議事の状況を適切に反映して作成しましょう。

取締役会議事録は、電子データで作成することもできます。株主や債権者などから閲覧・謄写請求を受けた際にも対応しやすく、検索や管理もしやすいので便利です。取締役会議事録の電子化を積極的にご検討ください。

なお、クラウドサインでは取締役会議事録を電子化する場合の法的規制と電子署名の要件について解説した資料をご用意しております。以下フォームからダウンロード可能ですので、株主総会議事録や取締役会議事録の非効率な「ハンコ集め」から脱却し、電子署名に切り替えたい方は参考にしてみてください。

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この記事の監修者

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阿部 由羅

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

この記事を書いたライター

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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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