契約実務

入札の基礎知識—官公庁・地方公共団体との契約時の注意点

入札の基礎知識—官公庁・地方公共団体との契約時の注意点

この記事では、入札の基礎知識について解説します。官公庁・地方公共団体との契約時には、民間企業同士に一定の前提条件を課し見積もり等を競わせ、最も適切な事業者を選定する「入札」手続きによることが原則となっています。この入札を義務付けている法令や、入札談合を禁止する法令について押さえておきましょう。

入札と契約方式の基礎知識

入札とは

入札とは、売買契約や請負契約案件についてその当事者と複数の契約希望者がいる場合に、金額等の契約条件を記した文書を提出させ、その上で発注者にとって最も評価できる条件を提出者を落札者として決定する仕組みや方法のことをいいます。

特に国・地方自治体など、いわゆる官公庁が物品の販売や業務を民間に発注する場合には、原則として入札が行われます。日本政府の調達手続きは「政府調達に関する協定」などに定められています。

入札における主な契約方式

一般競争入札

「一般競争入札」とは、不特定多数の事業者が参加できる、標準的な入札方式です。

地方公共団体が発注を行う場合には、「一般競争入札」が原則とされています(地方自治法234条1項、2項)

指名競争入札

「指名競争入札」とは、発注者が複数の特定企業を指名し、その中から発注者に一番有利な条件を出した入札者と契約する方式です。

指名競争入札によることができる要件は、以下のように規定されています(地方自治法施行令167条)

  1. 契約の性質・目的が一般競争入札に適しない契約をするとき。
  2. 契約の性質・目的により、入札に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要がないと認められる程度に少数である契約をするとき。
  3. 一般競争入札に付することが不利と認められるとき。

指名がなければ入札すらできない点が、一般競争入札との大きな違いとなります。

随意契約

「随意契約」とは、官公庁が入札を行うことなく、契約相手を決定することをいいます。

次のいずれかに該当するときは、随意契約によることができます(地方自治法施行令167条の2第1項)。

  1. 契約の予定価格が自治令別表第五で定める額の範囲内において地方公共団体の規則で定める額を超えない契約をするとき。
  2. 契約の性質・目的が競争入札に適しない契約をするとき。
  3. 法令で定められている障害者関係施設、認定生活困窮者就労訓練事業を行う施設、シルバー人材センターで生産される物品を買い入れる契約または役務の提供を受ける契約をするとき。
  4. ベンチャーとして総務省令で定める手続による地方公共団体の長の認定を受けたものより新商品として生産する物品を買い入れ若しくは借り入れる契約または新役務の提供を受ける契約をするとき。
  5. 緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
  6. 競争入札に付することが不利と認められるとき。
  7. 時価に比べて著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。
  8. 競争入札で入札者がないとき、または再度の入札に付し落札者がないとき。
  9. 落札者が契約を締結しないとき。

入札と比較すると、金額の妥当性が判断しにくくなります。そこで、随意契約であっても複数の企業から見積書を提出してもらい、より有利な条件の相手と契約することもあります。

政府調達契約での注意点

政府調達において、入札を経て契約締結となった場合、入札条件となった契約内容は変更ができません。

そのため、不明点は入札手続きの期間内に入念に問い合わせておくことが重要です。

入札の参加方法と手順

入札参加資格の取得

入札に参加するためには、資格の取得が必要です。多くのケースで発注者が指定する必要書類を提出する必要があります。より多くの資格を取得することで、参加できる入札案件を増やすことができます。

地方自治体の場合、複数の自治体で共通の入札参加資格を設けていることがあり、1つの入札参加資格でより多くの案件に参加することも可能です。

入札参加資格の更新

入札参加資格は、一度取得した後も更新が必要です。

その更新時期については、抜け漏れなく管理しておかないと、いざ入札の際「資格が更新されておらず参加できなかよう、資格を取得する際には各発注機関に更新時期等を確認した上で、抜け漏れなく管理することが重要です。

入札談合の禁止

談合とは

談合とは、入札に参加する事業者の話し合いにより、落札者や落札額についてあらかじめ合意しておくことをいいます。入札という制度を悪用した違法行為の典型例です。

談合の意図や明確な合意がなかったとしても、事業者同士でそれに類する話し合いを行なっていたり、暗黙の了解のようなかたちであっても、違法となるケースがあります。

公正取引委員会「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」に、談合行為の参考例が示されていますので、これを確認しておくのがよいでしょう。

談合に対する法的制裁

談合には法的制裁もあります。談合に関与すると

  • 刑法96条
  • 独占禁止法95条
  • 入札談合等関与行為防止法8条

によって、重い法的制裁が課されます。

特に独占禁止法においては、談合防止を徹底するため数年おきに改正がされ、課徴金が引き上げられる等制裁が厳格化しています。令和3年度だけでも、

  • 日本年金機構が発注するデータプリントサービスの入札等の参加業者による談合事件 17億4161万円
  • 独立行政法人地域医療機能推進機構が発注する医薬品の入札参加業者による談合事件 4億2385万円
  • 国、地方公共団体等が発注する群馬県の区域に所在する施設を対象にした機械警備業務の競争入札等の参加業者による談合事件 1480万円

以上、3件の事案に課徴金が課されています。

デジタル庁による情報システム調達改革

デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月7日閣議決定)を踏まえ、デジタル庁は、情報システムの調達プロセスの効率性と透明性を向上させることを目的として、情報システム調達改革に取り組んでいます。

この改革には、

  • 調達手続きの標準化
  • ベンダー間の競争促進
  • オープンソースソフトウェアの使用
  • クラウドコンピューティングの利用促進
  • 機密情報のセキュリティ確保

などが含まれます。

また、調達情報管理のための一元化されたプラットフォームの構築も含まれる予定です。この改革の目的は、調達コストとリードタイムを削減し、同時に調達したシステムの品質とセキュリティを向上させることにあります。

デジタル庁は、令和3年8月25日付「デジタル庁における入札制限等の在り方に関する検討会・報告書」において、調達契約の形態や単位の柔軟化、多種多様なベンダーの参入機会の拡大等、調達全般に係る課題が指摘されたのに対し、専門家・有識者で構成する「情報システム調達改革検討会」を設置しました。

国内外の情報システム調達に係る制度・体制・手法等の先進的な事例を調査・整理しつつ、情報システム調達に必要な施策を議論しています。

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この記事を書いたライター

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