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取適法(旧下請法)に則った発注書とは?記載項目、2026年改正のポイントを解説

取適法(旧下請法)に基づいた発注書の作成は、企業にとって単なる事務手続きではなく、コンプライアンスにおける重要事項の一つです。特に2026年1月からは法改正により下請法が「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わり、規制内容がさらに厳格化されます。

本記事では、取適法(旧下請法)に則った発注書の作り方と、実務上の注意点、そして改正による変更点を詳しく解説します。

なお、取適法(下請法)が適用される取引の種類や要件を確認したい方は下記記事もご一読ください。

取適法(旧下請法)では、なぜ発注書の交付が義務付けられているのか

取適法(旧下請法)において発注書の交付などが義務付けられている最大の理由は、取引条件を明確にすることでトラブルを未然に防止し、中小受託事業者(下請事業者)の利益を保護するためです。

口頭のみでの発注は、発注時の取引条件等が不明確でトラブルが生じやすく、立場の弱い中小受託事業者は不当な不利益を被るおそれがあります 。

そのため、取適法(旧下請法)では発注の都度、取引条件(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法)等を書面などによって具体的に明示させることで、不当な減額や返品、支払遅延などの違反行為を防ぐ仕組みを整えています。

取適法(旧下請法)に沿った発注書の記載事項

委託事業者(親事業者)が法的義務を果たすためには、中小受託事業者に対する発注に当たり、取適法(旧下請法)が定める必須記載事項をすべて明示する必要があります。取適法によって発注書への記載が義務付けられている事項を解説します。

発注書の記載事項

発注書には、以下の項目を漏れなく、明確に記載する必要があります。

発注書の記載項目 概要
委託事業者及び中小受託事業者の名称 社名などを記載する
製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、
役務提供委託又は特定運送委託をした日
発注日を記載する
中小受託事業者の給付の内容 発注する業務の内容を記載する
中小受託事業者の給付を受領する期日
(役務提供委託の場合、役務が提供される期日又は期間)
納期などを記載する
中小受託事業者の給付を受領する場所 納入を受ける場所などを記載する
中小受託事業者の給付の内容について検査をする場合は、
検査を完了する期日
納品物の内容を検査する期日(検収日)を記載する
製造委託等代金の額 発注者が支払う金額を、
具体的な金額又は算定方法によって記載する
製造委託等代金の支払期日 代金を支払う期日を、納入等の日から60日以内かつ、
できる限り短い期間内で記載する
金融機関名、貸付け又は支払可能額、
委託事業者が製造等委託代金債権相当額又は
製造等委託代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
一括決済方式で支払う場合に記載する
電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日 電子記録債権で支払う場合に記載する
※支払期日までに満額現金化できない電子記録債権による支払いは不可
品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日、決済方法 原材料等を有償支給する場合に記載する

発注書の様式そのものには法的な決まりはないため、上記の項目を満たしていれば、自由な様式を用いることができます。

あらかじめ定められない項目がある場合の対応

実務上、発注時点で一部の仕様や単価が決まらないことがありますが、その場合でも書面を交付しないのは違反となるため注意が必要です。例えば、ソフトウェアの作成業務において発注者が求める仕様が確定しておらず,正確な委託内容を決定することができない場合などが挙げられます。

この場合には、以下の手順による「2段階交付」が認められています 。

  • 当初書面の交付: 発注時において、その時点で決まっている事項を記載して交付します。このとき、未定事項については「内容が定められない理由」と「内容を定める予定期日」を必ず記載しなければなりません。
  • 補充書面の交付: 未定事項が確定した後、直ちにその内容を記載した書面を交付します。この際、当初書面との関連性を明確にする必要があります。

ただし、具体的記載事項の内容について決定できるにもかかわらず決定しない場合や、製造等委託代金の額として「算定方法」を記載することが可能である場合には「正当な理由がある」とはいえませんので、注意してください。

参考:中小受託取引適正化法ガイドブック|公正取引委員会・中小企業庁

取適法(旧下請法)に沿った発注をするために知っておくべき注意点

ここでは、取適法(旧下請法)が適用される発注を正しく行うために知っておきたい実務的なポイントを解説します。委託事業者(親事業者)の立場となる企業は、特に次の3点に注意してください。

発注者側が行っていけない禁止行為がある

発注者側が行っていけない禁止行為として次の11個の項目が設けられています。

禁止行為 具体的な内容
受領拒否 中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等の受領を拒否すること
支払遅延 支払期日までに代金を支払わないこと(支払手段として手形払等を用いることなどを含む)
減額 中小受託事業者に責任がないのに、発注時に決定した代金を発注後に減額すること
返品 中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等を受領後に返品すること
買いたたき 発注する物品・役務等に通常支払われる対価に比べ著しく低い代金を不当に定めること
購入・利用強制 正当な理由がないのに、指定する物品や役務を強制して購入、利用させること
報復措置 公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁に違反行為を知らせたことを理由に、
中小受託事業者に対して取引数量の削減・取引停止など不利益な取り扱いをすること
有償支給原材料等の対価の早期決済 有償支給する原材料等を用いて中小委託事業者が物品の製造等を行っている場合に、
代金の支払期日より早く原材料等の対価を支払わせて、
中小受託事業者の利益を不当に害すること
不当な経済上の利益の提供要請 自己のために金銭や役務等を提供させて、中小受託事業者の利益を不当に害すること
不当な給付内容の変更、やり直し 中小受託事業者に責任がないのに、発注の取消しや発注内容の変更を行ったり、
無償でやり直しや追加作業をさせたりして、中小受託事業者の利益を不当に害すること
協議に応じない一方的な代金決定 中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、
必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定して、
中小受託事業者の利益を不当に害すること

出典:2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!

下請法においても親事業者の禁止行為が定められていましたが、2026年1月から施行された取適法では「支払手段として手形払等を用いること」が一律禁止されたほか、「協議に応じない一方的な代金決定」が禁止行為として追加されました。

たとえ中小受託事業者の了解を得ていても、これらの禁止行為を行った場合には取適法に違反することになるため、十分ご注意ください。

支払期日の起算日は「受領日」になる

製造等委託代金の支払期日は、納入物などの内容を検査するかどうかを問わず、納入又は役務の提供を受けた日(受領日)から数えて60日以内かつできる限り短い期間内で定めなければなりません。この規則は「60日ルール」とも呼ばれており、厳密な運用が求められています。

なお、中小受託事業者の責めに帰すべき理由でやり直しをさせた場合は、やり直し後の物品等を改めて受領した日が「60日ルール」の新たな起算日となります。

取適法(旧下請法)の支払期日について詳しく知りたい方は下記記事もご一読ください。

取引に関する書類又は電磁的記録を作成・保存する必要がある

取適法(旧下請法)が適用される取引を行ったときは、委託事業者(親事業者)は当該取引に関する書類又は電磁的記録を作成し、2年間保存することが義務付けられます。

委託事業者が記録・保存すべき事項は、以下のとおりです。

(a)中小受託事業者(下請事業者)の名称
※番号や記号等による記載も可(b)製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託又は特定運送委託をした日(c)中小受託事業者(下請事業者)の給付の内容
※委託の内容が分かるように、明確に記載する(d)中小受託事業者(下請事業者)の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)(e)中小受託事業者(下請事業者)の給付の内容について検査をした場合は、以下の事項

  • 検査を完了した日
  • 検査の結果
  • 検査に合格しなかった給付の取扱い

(f)中小受託事業者(下請事業者)の給付の内容を変更させ、又はその給付の受領後に給付をやり直させた場合には、その内容及びその理由

(g)製造委託等代金(下請代金)の額

(h)製造委託等代金(下請代金)の支払期日

(i)製造委託等代金(下請代金)の額に変更があった場合は、増減額及びその理由

(j)製造委託等代金(下請代金)の支払について金銭を使用した場合は、その支払額、支払日及び支払方法

(k)製造委託等代金(下請代金)の支払について金銭以外の支払手段を使用した場合は、以下の事項

  • 当該支払手段の種類、名称、価額その他当該支払手段に関する事項
  • 当該支払手段を使用した日
  • 中小受託事業者が当該支払手段の引換えによって得ることとなる金銭の額その他その引換えに関する事項

※(l)又は(m)に当たる場合を除く

(l)製造委託等代金(下請代金)の支払について、中小受託事業者(下請事業者)が債権譲渡担保方式、ファクタリング方式又は併存的債務引受方式を利用できることとした場合は、以下の事項

  • 当該金融機関から貸付け又は支払を受けることができる額及び期間の始期
  • 当該代金債権又は当該代金債務の額に相当する額の金銭を当該金融機関に支払った日
  • その他当該貸付け又は支払に関する事項

(m)製造委託等代金(下請代金)の全部又は一部の支払いにつき、電子記録債権の発生記録又は譲渡記録をした場合は、以下の事項

  • 当該電子記録債権の額
  • 中小受託事業者(下請事業者)が製造委託等代金(下請代金)の支払を受けることができる期間の始期
  • 当該電子記録債権の支払期日
  • その他当該電子記録債権の使用に関する事項

(n)製造委託等に関し原材料等を委託事業者(親事業者)から購入させた場合は、以下の事項

  • 品名
  • 数量
  • 対価
  • 引渡しの期日
  • 決済期日
  • 決済方法

(o)製造委託等代金(下請代金)の一部を支払い、又はその額から原材料等の対価の全部もしくは一部を控除した場合は、その後の製造委託等代金(下請代金)の残額

(p)遅延利息を支払った場合は、その支払った額及び支払った日

(q)中小受託事業者に対して明示すべき事項のうち、内容が定められないことにつき正当な理由があるために明示しなかった事項がある場合は、以下の事項

  • 当該事項の内容が定められなかった理由
  • 当該事項の内容を明示した日及びその内容

取適法(旧下請法)に違反した場合のペナルティ

発注書などによる取引条件の明示義務、委託事業者の禁止行為又は取引に関する書類の作成・保存義務に違反した場合、委託事業者は以下のペナルティを課されるリスクがあります 。

  • 是正勧告と公表: 公正取引委員会から是正勧告を受けた場合、原則として事業者名と違反事実の概要が公表され、社会的信用を損なうおそれがあります。
  • 罰則: 取引条件の明示義務や取引に関する書類の作成・保存義務に違反した場合、50万円以下の罰金に処される可能性があります。
  • 遅延利息: 支払遅延が発生した場合は、支払期日を経過した日から年率14.6%の遅延利息を支払う義務が生じます。

2026年改正で変わる書面の電子化の条件【事前承諾不要で電子化が可能に】

2026年1月施行の取適法では、IT化の流れを受け、書面交付の電子化(電磁的方法)について従来の要件が変更されています。

電磁的方法(電子交付)による「承諾」が不要に

下請法では、発注書(3条書面)をメールやシステムで交付する場合、あらかじめ相手方の「承諾」を得る義務がありました。しかし、2026年1月から施行された取適法では、この「事前承諾」の手続きが不要となりました。

現在では、委託事業者(親事業者)は、中小受託事業者(下請事業者)の承諾がなくても、電子メールや電子契約システムなどの電磁的方法で取引条件を明示することができます。

「書面交付の請求」への対応義務

電磁的方法(電子データ)取引条件を明示した場合でも、中小受託事業者が、紙の「書面」の交付を求めてきた場合、委託事業者はそれに応じて遅滞なく書面を交付しなければなりません。

電子化を推進する場合でも、相手方のIT環境や要望に応じて紙の書面も発行できる体制を整えておきましょう。

※参考:中小受託取引適正化法ガイドブック(P13、P24)

取適法改正にあわせて電子契約サービス「クラウドサイン」を導入する選択肢も

今回の取適法改正により、多くの企業で既存の契約書・発注書のフォーマットを見直す必要が出てきますが、複数の取引先に対し「契約を巻き直す」作業により、膨大な事務負担(印刷、封入、郵送、押印依頼、回収、管理)が発生すると予想されます。

そこで、この「契約を巻き直す」作業にこそ、電子契約サービス「クラウドサイン」の「一括送信機能」の活用がおすすめです。

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まとめ

取適法(旧下請法)が適用される取引において、委託事業者(親事業者)が発注書などによって取引条件を明示することは、適正な取引を行うための法的義務です。特に2026年からの新法移行に伴い、代金の手形払が一律禁止されるなど、多岐にわたる事項について運用の見直しが必要となります。

委託事業者(親事業者)の立場となる企業は、自社の発注体制が取適法の要件を満たしているか再点検することをお勧めします。多数の取引先との間で契約の巻き直しが必要となる場合は、一括送信が可能な「クラウドサイン」などの電子契約サービスを活用すれば、事務負担を大幅に削減することが可能です。

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この記事の監修者

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阿部 由羅

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

この記事を書いたライター

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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

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