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【弁護士監修テンプレートあり】不動産売買契約書とは?主な記載事項・チェックポイント・収入印紙の要否などを解説

不動産売買の取引をする際は売買代金が多額に及ぶため、トラブルを避けるためにきちんと「不動産売買契約書」を作成・締結する必要があります。不動産売買契約書は、不動産を売買する際に締結する契約書です。

本記事では不動産売買契約書について、主な記載事項やチェックポイント、収入印紙の要否などを弁護士が解説しますので、不動産業に従事する方はぜひご一読ください。

なお、不動産売買契約書のひな形(テンプレート)を探している方のために、無料でダウンロードできるWordファイルも提供いたしますので、ぜひ下記フォームからダウンロードしてご活用ください。

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不動産売買契約書とは

「不動産売買契約」とは、不動産(=土地または建物)を売買する契約です。「不動産売買契約書」は、不動産売買契約の条件などを定めた書面に当たります。

不動産は価値が高く、売買代金が高額となるケースが多いため、万が一取引先とのトラブルが生じるとその影響は甚大に及ぶ可能性があります。できる限りトラブルのリスクを防ぐため、不動産売買契約書を作成して取引の条件を明確化しておきましょう。

不動産売買契約書の主な記載事項|例文も紹介

不動産売買契約書には、主に以下の事項を記載します。

①不動産の表示、不動産を売買する旨
②売買代金|金額・支払期日・支払方法など
③手付|手付解除に関するルールなど
④所有権の移転・引渡し・登記手続き
⑤物件状況の告知
⑥負担の消除
⑦印紙代・公租公課等の負担、収益の帰属
⑧契約不適合責任
⑨ローン特約(買主がローンを組む場合)
⑩その他

各事項について、条文例を示しながら解説します。

不動産の表示、不動産を売買する旨

(例)
第1条 (不動産の売買)

  1.  甲は、下記の不動産(以下「本不動産」という。)を乙に売り渡し、乙はこれを買い受けた(以下「本売買」という。)。

    【土地】
    所在:○○県○○市○○一丁目
    地番:○番〇
    地目:宅地
    地積:○○㎡
    【建物】
    所在:○○県○○市○○一丁目○番地〇
    家屋番号:○番〇
    種類:居宅
    構造:○○造××○階建
    床面積:1階 ○○㎡
    2階 ○○㎡
  2.  (略)

売買の対象となる不動産を表示し、その不動産を売買する旨を明記します。不動産の表示は、登記事項証明書の記載に揃えてください。

売買代金|金額・支払期日・支払方法など

(例)
第1条 (不動産の売買)

  1.  (略)
  2.  本売買の代金(以下「本代金」という。)は総額○○円とし、その内訳は下記のとおりとする。乙は甲に対し、本代金を下記の期日までに、甲が別途指定する口座へ振り込む方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。

    ① 手付金
    ○○円を、本契約締結時に支払う。
    ② 中間金
    ○○円を、○年○月○日までに支払う。
    ③ 残代金
    ○○円を、○年○月○日(以下「決済期日」という。)までに支払う。売買代金の金額・支払期日・支払方法などを明記します。

不動産の売買代金は、手付金と残代金に分けて支払うのが一般的です。また、売主の転居費用などに充てるために、中間金が設けられることもあります。売買代金の配分や支払時期などは、売主と買主の協議によって決定します。

手付|手付解除に関するルールなど

(例)
第2条 (手付)

  1.  前条第2項に定める手付金(以下「手付金」という。)は、解約手付とする。
  2.  甲は乙に対し、受領済みの手付金の倍額を現実に提供して、本契約を解除することができる。
  3.  乙は、支払い済みの手付金を放棄して、本契約を解除することができる。
  4.  前二項による解除は、次の各号のいずれかの事由が到来した時点以降はできないものとする。
    ① 相手方が本契約の履行に着手したとき。
    ② ○年○月○日が経過したとき。

手付金の取り扱いについて定めます。

手付金は原則として、売主は倍額の償還、買主は放棄をすることで契約を解除できるという性質を有します。これを「解約手付」といいます。

上記の条文例では、手付金が解約手付であることを確認したうえで、解除権の行使に関するルールを定めています。特に手付解除の期限を設ける場合は、必ずその期限を明記してください。

所有権の移転・引渡し・登記手続き

(例)
第3条 (本不動産に係る所有権の移転、引渡し及び所有権移転登記の申請)

  1.  本不動産の所有権は、乙が本代金の全額を支払い、甲がこれを受領した時に、甲から乙へ移転する。ただし、当該時点において決済期日がまだ到来していない場合は、決済期日が到来した時に、本不動産の所有権が甲から乙へ移転する。
  2.  甲は、前項に定める所有権の移転と同時に、乙に対して本不動産を引き渡す。
  3.  甲は、第1項に定める所有権の移転の日(以下「所有権移転日」という。)と同日付で(同日付の登記が実務上不可能又は困難である事情が存する場合は、当該事情が解消される最短の日付で)、本不動産につき、乙を新たな所有者とする所有権移転登記手続きをしなければならない。
  4.  前項の登記手続きに要する費用は、乙の負担とする。ただし、本不動産の売渡しに要する所有権登記名義人の住所及び氏名の変更登記手続き、並びに本不動産に係る抵当権その他の負担を消除するために要する登記手続きに要する費用は、甲の負担とする。

売買する不動産の所有権の移転・引渡し・登記手続きについて定めます。

これらの手続きは、すべて売買代金全額の支払いと同日付で行うのが一般的です。
日付がずれるといずれかの当事者がリスクを負うことになるので、登記申請先の法務局の窓口が開いている平日に決済日を設定することをお勧めします。

物件状況の告知

(例)
第4条 (物件状況の告知)

  1.  甲は乙に対し、本不動産の状況を別添「物件状況確認書(告知書)」(以下「告知書」という。)によって告知する。
  2.  乙は、告知書に記載された事項を了承して本不動産を買い受けるものとする。乙が当該事項に起因して損害を被った場合でも、乙は甲に対し、当該損害の賠償請求その他の法的請求をすることができない。

不動産の状況について、特にリスクが懸念される事項がある場合は、売主から買主に告知しておく必要があります。物件状況の記載は個別性が高く詳細にわたるので、「物件状況確認書(告知書)」などの書面を別添する形が見やすいでしょう。

告知済みの事項については、損害賠償請求などの対象外となる旨も明記しておきましょう。

負担の消除

(例)
第5条 (負担の消除)
甲は、第3条第1項に基づき本不動産の所有権を乙へ移転するまでに、本不動産に係る抵当権等の担保権、賃借権等の用益権、その他乙の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を消除しなければならない。当該負担の消除に要する費用は、甲の負担とする。

不動産に抵当権などが設定されている場合は、買主へ所有権を移転する前に売主の責任で解消しておく必要があるので、その旨を明記しましょう。

印紙代・公租公課等の負担、収益の帰属

(例)
第6条 (印紙代・公租公課その他の負担金の負担)

  1.  この契約書に貼付する収入印紙の購入費用は、甲乙が同額ずつ負担する。
  2.  本不動産に対して賦課される公租及び公課、並びに本不動産に関して発生するその他の負担金は、所有権移転日の前日までの分を甲が、所有権移転日以降の分を乙がそれぞれ負担するものとし、第1条第2項に定める残代金の支払時に清算する。

第7条 (収益の帰属)
本不動産から生ずる収益の帰属については、前条第2項を準用する。

印紙代は売主と買主で平等に負担し、公租公課などの負担金や収益は所有権移転日を境に分けるのが一般的ですが、別の定め方をすることもできます。いずれにしても、売主と買主のどちらが負担する(収益を得る)のかを明記しておきましょう。

契約不適合責任

(例)
第8条 (契約不適合責任)

  1.  引き渡された本不動産の種類又は品質が本契約に適合しない(以下「不適合」という。)ものであるときは、乙は甲に対し、本不動産の修補を請求することができる。ただし、不適合が乙の責めに帰すべき事由によるものであるときは、この限りでない。
  2.  前項に定める修補は、乙の請求した方法によるものとする。ただし甲は、乙に不相当な負担を課するものでないときは、乙が請求した方法と異なる方法によって修補をすることができる。
  3.  乙が相当の期間を定めて前二項の規定による修補を催告したにもかかわらず、その期間内に甲が修補をしないときは、乙は甲に対し、不適合の程度に応じて本代金の減額を請求することができる。ただし、不適合が乙の責めに帰すべき事由によるものであるときは、この限りでない。
  4.  次に掲げる場合には、乙は前項の催告をすることなく、直ちに本代金の減額を請求することができる。ただし、不適合が乙の責めに帰すべき事由によるものであるときは、この限りでない。
    ① 不適合に係る修補が不能であるとき。
    ② 甲が不適合に係る修補を拒絶する意思を明確に表示したとき。
  5.  前各項に定めるほか、乙は甲に対し、甲の責めに帰すべき事由によって生じた不適合に起因して受けた損害の賠償を、相当因果関係の範囲内で請求することができる。
  6.  乙が相当の期間を定めて第1項及び第2項の規定による修補を催告したにもかかわらず、その期間内に甲が修補をしないときは、乙は本契約を解除することができる。ただし、不適合が本契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
  7.  次に掲げる場合には、乙は前項の催告をすることなく、直ちに本契約を解除することができる。
    ① 本契約に基づく甲の債務(以下「甲の債務」という。)の全部の履行が不能であるとき。
    ② 甲が、甲の債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
    ③ 甲の債務の一部の履行が不能である場合、または甲が甲の債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは本契約の目的を達することができないとき。
  8.  乙は、本契約締結時において不適合があることを知っていた場合、又は本不動産の引渡しを受けた日から2年以内に甲に不適合がある旨を通知しなかった場合は、甲に対して本条に定める権利を行使することができない。

不動産の状態が契約内容と異なる場合、買主は売主に対して契約不適合責任を追及できます。契約不適合責任に基づき、買主ができることは修補請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約の解除の4つです(民法562条~564条)。

上記の条文例では、これらの4つの方法について、おおむね民法のルールに沿った内容を記載しています。契約によってルールを変更することもできますが、事業者が売主で消費者が買主となる場合などには、変更が制限されることがあるのでご注意ください。

契約不適合責任の期間は原則として、買主が不適合を知った時から1年とされています(民法566条)。

しかし「買主が不適合を知った時」がいつかは曖昧となることがあるのを踏まえて、不動産の引渡時を基準とする例がよく見られます。この場合、売主が宅地建物取引業者であり、買主が宅地建物取引業者でないときは、引渡時から2年以上の責任期間を設けなければなりません(宅地建物取引業法40条)。

ローン特約(買主がローンを組む場合)

(例)
第12条 (融資利用時の特約)

  1.  乙は、本契約締結後速やかに、下記の融資のために必要な書類を揃え、その申込手続きをしなければならない。

    融資申込先:○○銀行
    融資承認予定日:○年○月○日まで
    融資金額:○○円
  2.  ○年○月○日までに、前項の融資の全部又は一部について承認を得られないとき(当該日において融資審査が完了していない場合を含む。)は、本契約は自動的に解除される。この場合、甲は乙に対し、乙から受領済みの金員を無利息で遅滞なく返還しなければならない。

買主がローンを組んで不動産を購入する場合は、ローンの審査に通らなかったときは売買契約をペナルティなしで白紙に戻す特約を定めるのが一般的です。この特約は「ローン特約」「融資利用特約」などと呼ばれています。

ローン特約では、融資申込先・融資承認予定日・融資金額や、特約に基づく契約解除の期限などを定めます。

その他

上記のほか、不動産売買契約書には以下の事項などを定めます。

・契約不適合を除く契約違反による解除
→売買代金の不払いなどを原因とする契約の解除について定めます。・危険負担
→売主と買主のどちらにも責任がない不動産の滅失や損傷が生じた場合につき、契約の解除や売買代金の取り扱いを定めます。・反社会的勢力の排除
→売主と買主の双方が、暴力団員などの反社会的勢力に該当しないことを表明および確約します。・準拠法、合意管轄
→契約解釈に当たって適用される法(=準拠法)と、紛争の発生時に訴訟を提起する裁判所(=合意管轄)を明記します。

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不動産売買契約書のひな形は、以下のリンクからダウンロードできますので、必要に応じてご利用ください。

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不動産売買契約書を締結する際のチェックポイント

不動産売買契約書を締結する際には、自分の立場(売主または買主)に応じて、主に以下のポイントに注意して内容を確認してください。

【共通】売買代金・手付解除・所有権の移転・契約不適合責任などの規定は明確か

不動産売買に関するトラブルを避けるためには、売買の条件を明確に定めることが大切です。特に売買代金・手付解除・所有権の移転・契約不適合責任などの規定は重要度が高いので、曖昧な部分がないかどうかを注意深く確認しましょう。

【売主】潜在的なトラブルのリスクを、買主に告知したか

売主としては、不動産に関する潜在的なトラブルのリスクを、買主に対して漏れなく告知することが重要です。

告知していない事項が原因でトラブルが生じると、買主から契約不適合責任を追及されるおそれがあります。少しでも心配事があれば、告知事項に追加しておきましょう。

【買主】不動産の利用方法について、許容できない制約がないか

買主としては、想定している不動産の利用方法について、障害になるような制約がないことを確認する必要があります。売主から告知された事項を注意深く読み込むとともに、現地にも足を運んで、問題がないかどうかをよく確認してください。

不動産売買契約書に収入印紙は必要?

不動産売買契約書を紙で作成する場合は、収入印紙を貼る必要があります。一方、電子契約で不動産売買契約を締結する場合は、収入印紙の貼付は不要です。

不動産売買契約書を紙で締結する場合は、収入印紙が必要(第1号文書)

紙で作成した不動産売買契約書は、印紙税法上の「第1号文書」に当たるため、収入印紙の貼付が必要です。ただし、令和9年3月31日までは軽減税率が適用されるため、印紙税額がやや減額されます。

【不動産売買契約書(第1号文書)の印紙税額】

契約金額 本則税率 軽減税率
1万円以上10万円以下 200円 軽減措置の対象外
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1千円 500円
100万円超500万円以下 2千円 1千円
500万円超1000万円以下 1万円 5千円
1000万円超5000万円以下 2万円 1万円
5000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
5億円超10億円以下 20万円 16万円
10億円超50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円

参考:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(国税庁)
※令和9年3月31日までは軽減税率を適用
※契約金額が1万円未満のものは収入印紙不要
※契約金額の定めがないものは200円

電子契約なら、収入印紙は不要

電子契約で不動産売買契約を締結するときは、収入印紙を貼る必要がありません。電子契約で締結した契約書の電子ファイルは、印紙税法上の課税文書に当たらないと解されているためです。

不動産売買契約書の印紙税は数万円〜数十万円程度かかるため、契約書の電子化によりそのコストがなくなることだけを考えても、電子契約を導入するメリットは大きいと言えます。まだ電子契約を導入していない方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

不動産売買契約書を作成する際には、取引の条件が明確に記載することが大切です。また、不動産の状態に関する告知事項は、契約不適合責任の範囲に影響を及ぼすので、よく確認する必要があります。

不動産売買契約書は、電子契約によって締結することもできます。高額になりがちな印紙税を節約できるうえに、管理がしやすいのが電子契約の大きなメリットです。まだ電子契約を導入していない企業は、導入の検討をおすすめします。

また、不動産取引における電子契約は、業務効率化とコスト削減を実現する強力な選択肢のひとつですが、「導入の具体的なステップがわからない」「法的に有効な契約方法を知りたい」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。当社では電子契約の導入から運用までを網羅した「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しております。以下のリンクから無料でダウンロードが可能ですので、ご活用ください。

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この記事を書いたライター

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阿部 由羅

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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