【2026年改正】社会保険の加入条件とは?基礎情報や改正による変更点、106万円・130万円の壁を解説

社会保険制度が2026年4月から段階的に変更されます。今回の改正は、106万円の壁の撤廃や130万円の壁の判定方法変更など、パート・アルバイトで働く方や中小企業の経営者に大きな影響を与える内容です。
この記事では、現行制度における加入条件や2026年以降の変更点、事業所が行うべき手続きなど、社会保険の適用拡大に関する最新情報を網羅的に解説します。
目次
社会保険の適用事業所と加入基準の基本
社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は、事業所単位で判断されます。すべての法人や一定規模以上の個人事業所では加入が義務づけられており、そこで働く従業員は原則として被保険者となる仕組みです。
4分の3基準の定義と対象者
正社員の従業員は、原則として社会保険に加入します。パートやアルバイトが社会保険に加入するかを判断する際は、「4分の3基準」を確認しなければなりません。
これは「1日または1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が、正社員のおおむね4分の3以上である場合、社会保険への加入義務が生じる」という基準を指します。
適用事業所の範囲
社会保険の適用事業所は、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2種類に分けられます。
| 区分 | 条件 |
| 法人事業所 | 業種・従業員数を問わず、すべての法人が対象 |
| 個人事業所 | 常時5人以上の従業員を使用する場合 |
法人事業所の場合は、業種や従業員の人数に関係なくすべてが強制適用事業所です。一方、個人事業所の場合は常時5人以上の従業員を雇っている場合、強制適用で社会保険に加入します。(一部例外の業種あり)
健康保険・厚生年金の同時加入原則
健康保険と厚生年金は、加入要件が同一に設定されており、同時に加入する義務があります。どちらか一方だけに加入することは認められていません。
手続きときに使用する「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」も、両者が1枚の書類にまとまっています。この書類で厚生年金と健康保険の加入手続きを同時に行うため、どちらか一方のみに加入することは想定されていません。
短時間労働者の5つの要件と106万円・130万円の壁
短時間労働者の社会保険加入は、5つの要件によって判断されます。また、2024年10月からは「従業員数51人以上の企業」が適用対象となり、より多くのパート・アルバイトが新たに社会保険の加入対象になりました。
週20時間以上の判定基準
1つ目の要件は「週の所定労働時間が20時間以上」であることです。判定にあたっては、雇用契約書や就業規則に定められた通常の勤務時間で確認します。1カ月単位で所定労働時間が決まっている場合は、その時間を12分の52で割って週所定労働時間を算出します。
残業等で一時的に週20時間以上となっても、直ちに加入するわけではありません。ただし、「週20時間以上が2カ月を超えて継続」する場合は、加入対象となることがあります。
月額8.8万円(106万円)の壁
2つ目の要件は、月額賃金が8.8万円以上(年収換算で約106万円)であることです。この金額は基本給と手当の合計額であり、残業代・賞与・通勤手当・臨時的な賃金等は含みません。
雇用見込みと学生除外規定
「雇用期間が2カ月を超える見込みがあること」と「学生でないこと」も、社会保険加入の要件です。「学生でないこと」については、学生とは高等学校や大学、短期大学などに在学する生徒などを指します。
130万円の壁と扶養認定の仕組み
130万円の壁は、社会保険の「被扶養者」として認定されるかどうかの基準です(60歳以上または障害者の方は180万円)。年収130万円を超えた場合、配偶者や親の社会保険の被扶養者から外れ、自分で社会保険料を負担する必要があります。
106万円の壁との違いを整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 106万円の壁 | 130万円の壁 |
| 性質 | 勤務先の社会保険に加入する基準 | 扶養から外れる基準 |
| 判定基準 | 雇用契約上の所定内賃金 | 残業代・交通費等を含む実収入見込み |
| 企業規模要件 | 従業員数51人以上(2024年10月時点) | なし |
| 労働時間要件 | 週20時間以上 | なし |
実務上、130万円の壁が適用されるのは、「106万円の壁」対象外である小規模事業所で働く人や週20時間未満で働く人です。130万円の壁を超えた場合、国民健康保険と国民年金に加入しなければなりません。
従業員数51人以上の企業規模要件
2024年10月からは、従業員数51人以上の企業は「特定適用事業所」に該当します。週20時間以上の就労や月額賃金8.8万円以上などの要件を満たす従業員がいる場合、社会保険に加入させる手続きが必要です。
「従業員数」とは、厚生年金保険の被保険者数を指します。具体的なカウント方法は以下のとおりです。
- フルタイムで働く従業員
- 週の所定労働時間および月の所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の従業員(パート・アルバイト含む)
これらの合計が「51人以上」かで判定します。年間で従業員数に変動がある場合は、連続する12カ月のうち6カ月以上において、従業員数が基準を超える場合に適用対象となります。
2026年施行の社会保険制度改正による変更点
2026年に予定されている、社会保険制度の主な変更点を見ていきましょう。
企業規模要件の段階的廃止
現行では「51人以上」の企業規模要件は、2027年10月から2035年10月にかけて段階的に縮小・撤廃されます。
| 時期 | 企業規模要件 |
| 2027年10月以降 | 36人以上 |
| 2029年10月以降 | 21人以上 |
| 2032年10月以降 | 11人以上 |
| 2035年10月以降 | 完全撤廃 |
将来的には、週の所定労働時間が20時間以上であれば、勤務先の規模に関係なく社会保険に加入することになります。
51人未満の企業への適用拡大
2026年10月からは、まず賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃されます。これにより、いわゆる「106万円の壁」がなくなり、収入の多少にかかわらず、週20時間以上働く短時間労働者は社会保険の加入対象となります。
なお、個人事業所についても適用範囲が拡大されます。2029年10月以降は、従業員5人以上の個人事業所について、すべての業種が社会保険の適用対象となる予定です。(ただし、2029年10月時点で既に存在する事業所は当分の間対象外)
労働契約による扶養認定の明確化
2026年4月から、健康保険の被扶養者認定における「130万円の壁」の判定方法が変わります。従来は「過去・現在の収入実績」や「将来の収入見込み」を総合的に判断していましたが、改正後は「労働契約(労働条件通知書)に記載された年収見込み」を基準に判定されます。
事業主側は、労働条件通知書の記載内容がより重要になるため、時給・所定労働時間・勤務日数・諸手当・賞与などを明確に記載しなければなりません。
在職老齢年金の見直し内容
在職老齢年金とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、賃金(総報酬月額相当額)と年金月額(基本月額)の合計が一定額を超えると、超過分の半分が年金から支給停止される仕組みです。
2026年4月から、在職老齢年金の支給停止基準額が現行の51万円(2025年度)から62万円に引き上げられます。これにより、高齢者の就労参加が増えると考えられるでしょう。
事業所側が行う社会保険の加入手続き方法
従業員が社会保険の加入要件を満たした場合、事業主は速やかに届出を行う必要があります。手続きを怠ると罰則の対象になるだけでなく、従業員の年金記録や医療給付にも影響を及ぼすことがあるため、正確かつ迅速な対応が求められます。
資格取得届の提出期限と届出方法
従業員を雇用した際には、年金事務所または管轄の事務センターへ「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」の提出が必要です。「従業員の雇用開始から5日以内」に提出する必要があるため、速やかに手続きを進めましょう。
電子申請を利用する場合は、事前に登録したアカウント(GビズID)を使って、e-Gov電子申請からオンラインで手続きが可能です。
本人確認とマイナンバーの取り扱い
被保険者資格取得届には、基礎年金番号または個人番号(マイナンバー)の記載が必要です。なりすましによる健康保険被保険者証の不正取得を防止するため、資格取得時の本人確認が厳格になっているため注意してください。
マイナンバーの管理にあたっては、特定個人情報の適正な取り扱いに関するガイドラインに従い、取得・保管・利用・廃棄の各段階で安全管理措置を講じましょう。
被扶養者異動届の同時提出ルール
入社する従業員に配偶者や子どもなどの扶養家族がいる場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」を資格取得届と同時に提出します。被扶養者異動届の提出期限は「異動が生じた日から5日以内」です。
提出が遅れると、保険証が手元にないことで従業員に不都合などが生じる可能性があるため、迅速に対応できるように、手続きの流れを理解しておきましょう。また、配偶者が被扶養配偶者(被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の方)に該当する場合は、「国民年金 第3号被保険者関係届」も併せて提出します。
保険証の発行と交付の流れ
2024年12月2日以降、従来の健康保険証の新規発行は終了し、マイナンバーカードを保険証として利用する仕組み(マイナ保険証)に移行しました。マイナ保険証を利用しない方には「資格確認書」が発行されます。
資格確認書が届くまでには通常2~3週間程度かかり、4月などの繁忙期は日本年金機構での審査に時間がかかり、1カ月以上要する場合もあります。資格証明書の有効期間は「証明日から20日以内」です。受診予定がある従業員には、あらかじめ資格証明書の申請を案内しておくとよいでしょう。
制度改正に伴う労務管理のデジタル化が急務である理由
2026年以降の社会保険適用拡大は、企業の労務管理に大きな影響を及ぼします。特に、これまで対象外だった中小企業や個人事業所にとっては、手続き業務の急増に対応するための体制整備が急務です。
事務負担の爆発的増加への対応
2026年10月には賃金要件撤廃、2027年10月以降は企業規模要件の段階的撤廃が予定されています。これにより、これまで社会保険の適用対象外だった小規模事業所でも、新たに加入手続きが必要となる従業員が増加するでしょう。
社会保険の資格取得届は「従業員の雇用開始から5日以内」に提出しなければなりません。対象者が増加するなかで、手書きの届出書作成や郵送による管理では、この期限を漏れなく守ることが困難になります。届出の遅延は、従業員の資格確認書発行の遅れや、年金事務所からの指導につながる可能性があるため、できる限り早めに準備を進めておきましょう。
「労働契約」に基づく証跡管理の重要性
2026年4月からの被扶養者認定の新ルールでは、「労働契約(労働条件通知書)に記載された年収見込み」が判定基準となります。これにより、労働条件通知書の記載内容がこれまで以上に重要な意味を持ちます。
電子契約サービスを活用すれば、契約締結日時のタイムスタンプが自動的に記録され、改ざん不能な形で契約内容を保存することが可能です。調査時にも、検索機能を使って該当する契約書を瞬時に提示できるため、コンプライアンス対応の強化にもつながるでしょう。
労働条件変更に伴う「合意」のスピード化
社会保険への新規加入は、従業員の手取り額に直接影響を与えます。保険料の負担が発生することで、月々の手取りが減少するケースもあるため、従業員への丁寧な説明と、労働条件の変更に関する合意形成が不可欠です。
電子契約サービスを活用すれば、労働条件変更の通知と同意取得をオンラインで一括して行えます。リアルタイムでの同意状況の確認と、未対応者へのリマインド送信の自動化により、全社的な周知と合意形成を迅速に完結できるため、トラブルも未然に防げるでしょう。
労働条件通知書の電子化について詳しく知りたい方は下記記事をご一読ください。
期限管理による加入漏れリスクの回避
社会保険の加入要件には、「雇用期間が2カ月を超える見込み」という期日に関する条件が含まれています。契約上は2カ月以内であっても、実労働時間が2カ月連続で週20時間以上となり、なお引き続く見込みがある場合は、3カ月目から加入対象となる点に注意しなければなりません。
こうした加入漏れリスクがあるケースにおいても、デジタル管理システムの導入が効果的です。システムで管理すれば、契約期間や労働時間のデータをもとに、加入要件を満たすタイミングを自動的に検知し、担当者にアラートを通知できます。人為的なミスが起きる構造を排除し、法令遵守と経営リスクの低減を両立させることができるでしょう。
まとめ:2026年の改正に準拠した社会保険対応を
2026年以降の社会保険適用拡大により、これまで対象外だった多くの短時間労働者が新たに加入対象となります。企業には、増加する事務手続きへの対応と、労働条件通知書の適切な管理が求められます。
加入漏れや届出遅延を防ぐため、電子契約システムや労務管理ツールの導入など、デジタル化による業務効率化が不可欠です。制度改正を機に、自社の労務管理体制を見直し、コンプライアンス強化と従業員の安心につながる環境整備を進めましょう。
この記事を書いたライター
柴田充輝
社会保険労務士・FP1 級技能士・行政書士・宅建士
FP1 級技能士/社会保険労務士/行政書士/宅建士 厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。多くの家庭に対して、家計・保険見直しやアドバイスを行うほか、各資格を活かした記事監修や、講演などを行っている。
