行政手続の「デジタルファースト」に対する霞ヶ関の本気度がわかる6枚のスライド

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内閣官房、総務省、経産省といった霞ヶ関の方々との情報交換や接触の機会が増える中で、行政手続きのデジタル化・オンライン化への熱意は、従来のそれよりも数段高まっていると感じています。

しかもどの省庁も、「オンラインと紙の申請書の並存」といった生ぬるいゴールではなく、対面・押印・書面主義を徹底的に見直し「オンラインを原則」とすることをミッションとして取り組まれていて、お話をしていると、これまでの行政に感じられた腰の重たさとのギャップに都度驚かされます。その動きをキャッチアップしておかないと、むしろ民間の我々が置いていかれるかもしれないと焦るほど。

そこで今回は、特に電子契約とも関連する部分を中心に、キーとなるスライドと資料をご紹介したいと思います。

「デジタルもOK」ではなく「デジタルを原本」に

中心となって推進している会議体は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)です。その中の、電子行政分科会の第32回会合(平成30年3月1日)のスライドから、デジタル・ガバメント実行計画の全体像と、キーワードが散りばめられたこのスライドを抑えておきましょう。

いの一番に「デジタルファースト」のスローガンが掲げられ、

各種手続のオンライン原則の徹底
押印や対面等の本人確認等手法の在り方を再整理

が書かれています。特に電子契約との関連では、どんな手続きにもつきまとう申請書への記入と押印、そして本人・代理人による窓口への提出義務について、強い問題意識があることがわかります。

その問題意識の中でも、改革すべき具体的アイテムの1つとして、

法人設立手続のオンライン・ワンストップ化

が槍玉に挙げられている点は、要注目です。

これについては、規制改革推進会議の行政手続部会という会議体が集中的に整理検討を進めており、第5回行政手続部会 第2検討チームの資料を見ると、

このように、「24時間以内にワンストップで法人設立」を目指すことが明記されています。これを実現するためには、紙の申請書を前提とする法人代表者の実印制度自体を廃止して電子化を図り、定款認証においての対面主義や公証人制度そのものの見直しにも手をつける必要がある、というわけです。

こうした方針には法務省などの反対意見もあるものの、推進しているのが内閣官房ということもあって、実現可能性は高いと見て良さそうです。

実印 → ID・パスワードの世界へ

また、先述のデジタル・ガバメント実行計画にある「押印や対面等の本人確認等手法の在り方を再整理」については、第32回新戦略推進専門調査会電子行政分科会等合同会議で整理がなされています。

その「本人確認の検討状況」と題するスライド2枚に、かなり大胆な案が記載されています。

現在法人が代表者印(印鑑証明書なし)で手続きできるものについては、オンライン化に当たってID・パスワード方式に簡素化すべし、とするもの。ここまで簡素化されれば、確かに「行政サービス改革」という言葉にふさわしい変化です。

なお、ここでいうID・パスワード方式の本人確認とはどういうものか。具体的な言及はないのですが、個別の手続きごとにID・パスワードを発行するのでは、印鑑よりマシとは言ってもあまり望ましいものではありません。理想としては、いわゆる「ソーシャルログイン」のような、行政ポータルに一度ID・パスワードを登録してログインすることで他の省庁の手続きの際にもボタン一つで認証できるOAuth認証のようなものが構築されれば便利では、と期待しています。

そのほかにも、「『紙から電子へ』を基本原則」「厳格な本人確認が必要なケース以外は印鑑を不要」「ガイドライン 3月」「法案提出 年内」など、徹底度合いとスピード感を感じさせるワードがたくさんならんでいます。

ここまで政府・行政を駆り立てているものは何か

このように、ゴールを明確に設定しこれまでにないスピード感と覚悟で進めているのを見ると、ひと昔前の小泉内閣郵政民営化の雰囲気にも似た勢いを感じます。今回、ここまで政府・行政を駆り立てているものは何なのでしょうか。

内閣官房 日本経済再生本部による、事業環境改善のための関係府省庁連絡会議(第1回)配布資料にあるこのスライド「世界銀行Doing Business 2018による日本の評価と対応方針」に、その理由が現れています。

成長戦略のKPIとして、世界銀行”Doing Business”のランキングにおいて「2020年までに先進国(OECD加盟35か国)で3位以内を目指す」としていたにもかかわらず、むしろランクを落とし続けている日本。そしてその主な原因となっているのが、法人設立・建設許可・不動産登記・契約執行といった行政手続きと法律の分野であり、これをなんとか改革しなければならない、というわけです。

3月に入り、公文書の改ざんという事件が明るみになって、霞ヶ関の情勢が不安定になっているものの、世界の中の日本という意味で課題がクリアになっているこれらのテーマについては、すでに定められている工程表どおりに粛々と進んでいくのではないかと思います。

画像:
naka / PIXTA(ピクスタ)

(橋詰)