ブックレビュー 髙田寛『アメリカ契約法入門』

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英文契約を読み書きする前に最低限抑えておきたい米国契約法の知識について、180ページ弱のコンパクトサイズにまとめた書籍が新刊で登場しました。

書籍情報

アメリカ契約法入門
  • 著者:髙田寛/著
  • 出版社:文眞堂
  • 出版年月:20180320

入門書の空白地帯だったアメリカ契約法

日本の企業法務においても、米国をはじめとする外国企業との英文契約の審査・締結は珍しいものではなくなっています。

先日も、ある大手企業の法務部門と契約書の管理について情報交換をさせていただいたところ、「海外子会社も増えて、英文契約書の審査割合が全契約件数の15%を下回る月が無くなった」というお話を伺いました。製造業などでは、中小企業こそむしろ外国企業との取引がない方が珍しいはずです。

その一方で、英文契約の読み書きに必要な法的知識が学べる書籍の数は、かなり限定されているのが現状です。定番として樋口範雄『アメリカ契約法』、平野晋『体系アメリカ契約法』などが挙げられますが、いずれも400〜600ページを超える大部な専門書であり、入門の1冊目とするには無理があります。薄くて手軽な石原坦『アメリカ契約実務の基礎』は評判が良いですが、実務解説寄りで契約法を体系的に学ぶ書としては書かれていません。

こうした入門書空白地帯を埋めるべく、180ページ弱というコンパクトなボリュームでアメリカ契約法のエッセンスをまとめたのが、本書『アメリカ契約法入門』です。

髙田寛『アメリカ契約法入門』P50-51

アメリカ契約法は4層構造

さて、ここまでの説明ですでに何度か「アメリカ契約法」という言葉を使ってきましたが、厳密にはアメリカ契約法という名の法律は存在しません。

法律を条文として定める大陸法(Civil Law)の法体系を採用した日本では、民法という法律の中に債権法と呼ばれるパートを設け、ここに契約の基本ルールを具体的な条文で定めています。

他方、判例法(Common Law)の法体系を採用した米国は、契約ルールを具体的な条文では定めていません。とはいえ、すべての法源を判例に委ねたのでは不便も多いということで、判例等を整理したリステイトメントと呼ばれる文書が存在します。さらに、合衆国として州ごとに異なる法律が作られている歴史も踏まえ、州間取引もスムーズにできるよう、統一商事法典(モデル法)も作成されています。

つまりまとめると、

  1. 判例 (Common Law)
  2. 契約法第2次リステイトメント (Restatement (Second) of Contracts)
  3. 統一商事法典 (Uniform Commercial Code)
  4. 州法 (State Law)

この4層からなる法源を総称して、便宜上「アメリカ契約法」と呼んでいるわけです。当然、この4つすべてをくまなく体系的に理解するのは容易なことではありません。

そこで上記の4法源を横串に刺し、契約において法的問題となりやすい申込と承諾/錯誤/担保責任/免責/危険負担/損害賠償といった項目ごとに、入門者向けにポイントをかいつまんで、しかもすべてを事例・設例ベースで解説していく構成を取ったのが本書です。このボリュームに納めるには、取捨選択の苦労があったことと推察します。

英文契約用語の学習用途にも

本書のもう一つの特色が、生きた文脈の中で英文契約用語を学べるという点。

本来であれば,英文の判例や,アメリカの著名な大学教授や弁護士が英語で書いた外書を読み,英語で理解するのが理想的であるが,多忙な者にとっては非効率的であり,初学者には勧められない。
しかし,重要な英語表現は,実務上,後で役に立つことが多い。そのため,本書では,重要な用語については,できるだけ英語を併記した。(はしがきより)

どういうことかというと、こういうことです。

髙田寛『アメリカ契約法入門』P120

全ページに渡ってこの調子で、しつこいほどにリーガルタームにカッコ書きで英単語が添えられていて、入門者にとってはありがたい英語教材にもなっています。本書にカッコ書きで出てくる単語を書き出して、英文契約用語集を作ってみてもいいかもしれません。

と、ここで、英文契約の読み書きや法務英語に課題意識をお持ちの方向けに、ちょうどよいセミナーをご案内したいと思います。今月5月25日(金)開催「法務トーク vol.2:企業法務の現場で活きる、リアルな英語活用術」です。

法務トーク Vol.2

英語を努力で身につけた法務パーソンから、英語を使った法務業務のノウハウを直接聞くことができます。懇親会には英語に課題意識がある方が集まりますので、お互いの悩みを相談するのもいいですね。

法務トークVol.2 参加申し込みページ(Peatix)

ご興味をお持ちいただけましたら、こちらにもぜひご参加ください。

(橋詰)