データで見る契約DX成功の秘訣とポイント—企業の契約電子化状況調査より

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弁護士ドットコムのアンケート調査結果から、企業においてすでに電子契約化がすすんでいる契約類型と、これから電子化予定の契約類型をそれぞれ分析します。本記事を読むことで、いま企業がどのように契約DXを実現しようとしているかがわかります。

「法務のDXはスモールスタートがセオリー」は本当か?

法務業務もDXしたい。その皮切りに、まず契約を電子化しよう。

そうお考えのお客様からよくいただくのは、「どのような契約書から電子化を進めるのがよいか?」というご質問です。電子契約導入コンサルティングの場面でも、お客様からもっともご相談をいただくポイントの1つでもあります。

これには、お客様が所属する業界や企業ごとの特性もあるため、「この書類から電子化すれば間違いなし」という方程式はないはずですが、電子契約業界の関係者がセミナー・書籍等で語る一般論として、

契約相手方が電子化を受け入れやすい、秘密保持契約や雇用契約から導入し、スモールスタートするのがセオリーである

という言説があります。

果たして、それは本当なのでしょうか?

 「法務のDXはスモールスタートがセオリー」は本当か?
「法務のDXはスモールスタートがセオリー」は本当か?

秘密保持契約や雇用契約よりも先に電子化すべき契約類型

これに関し、弁護士ドットコムでは、「電子契約サービスの利用実態に関するアンケート」を実施し、調査したことがあります。

このアンケート調査を見てみると、実際に電子契約サービスを導入し契約DXを進めている企業は、実は導入のしやすさだけにこだわらず、当初からさまざまな類型の契約電子化にチャレンジしている ことがわかります。

弁護士ドットコム「日本のリーガルテック 2021」電子契約サービスの利用実態に関するアンケートより
弁護士ドットコム「日本のリーガルテック 2021」電子契約サービスの利用実態に関するアンケートより

特に驚きなのは、すでに電子契約化済みの契約類型ナンバーワンが、「電子契約導入の登竜門」として語られることの多い秘密保持契約書(32.1%)・雇用契約書(7.8%)ではなく、導入障壁が高かったであろう取引基本契約書(41.4%)である、という点です。

「取引基本契約書は、社内規程によりすべての取引先と締結しなければならないので量が多く、これを電子化することによる効果が大きい」
「印紙税法により基本契約書に貼付が必要となる4,000円×2通分の印紙税コストが、電子契約導入により削減でき、導入コストを上回る直接の経済的メリットが得られる」
「その企業と今後取り交わす契約を電子化することの合意をしっかりと残すためにも、取引基本契約書から電子契約に移行した」

といったユーザー企業の声を聞くと、当初の導入のしやすさ・交渉ハードルの低さだけを優先するのは正しくないことを思い知らされます。

本当は電子契約に移行したいが、まだできていない類型とは

次に、これから電子契約の導入を予定している契約類型についても、質問をしてみました。

弁護士ドットコム「日本のリーガルテック 2021」電子契約サービスの利用実態に関するアンケートより
弁護士ドットコム「日本のリーガルテック 2021」電子契約サービスの利用実態に関するアンケートより

グラフだけを眺めていても、先に挙げた青のグラフ「すでに電子契約化済みの契約類型」と変わり映えしないようにも見えます。

そこで、違いをわかりやすく見える化するために、契約類型ごとに「電子化予定」から「電子化済み」を引き算し、そのギャップが大きい順に上位10類型を並べてみた のが、以下の表です。

契約類型 電子化予定(a) 電子化済み(b) ギャップ(a-b)
雇⽤契約 33.3% 7.8% 25.5P
売買契約 32.1% 15.8% 16.2P
派遣契約 21.7% 5.7% 16.0P
システム・ソフトウェア開発委託契約 24.1% 8.4% 15.6P
請負契約 37.6% 24.7% 12.9P
ライセンス契約 21.3% 8.6% 12.7P
データ提供契約 14.6% 3.0% 11.6P
賃貸借契約 14.3% 3.0% 11.4P
業務提携契約 17.9% 7.2% 10.8P
リース契約 11.0% 1.7% 9.3P

ここにギャップが大きく現れた契約類型は、「企業が電子契約を導入したいと本当は思っているが、まだ電子化できていない契約類型」と言ってよいでしょう。

今後電子化を予定する契約類型上位に見えた共通点

こうした電子化ギャップが現れた表の上位を眺めてまず目に入るのは、

  • 雇用契約(25.5ポイント)
  • 派遣契約(16.0ポイント)

といった、労働関係の契約書類です。

この2つの類型は、いずれも 2019年以降の法改正によりようやく完全電子化が認められた分野であり、これから徐々に電子契約への移行が進むと期待 されています。

一方、その他上位を占める以下の契約類型には、共通した特徴はなさそうにも見えます。

  • 売買契約(16.2ポイント)
  • システム・ソフトウェア開発委託契約(15.6ポイント)
  • 請負契約(12.9ポイント)
  • ライセンス契約(12.7ポイント)

ところが、この点について企業にヒアリングをしてみると

「印紙税法1号課税文書となる不動産売買契約で電子化が認められれば、金額的メリットは大きい」
「請負でも、工事の契約書であれば収入印紙を反射的に貼るが、システム・ソフトウェア開発では請負(2号課税文書)と準委任(不課税文書)の解釈で迷ったり、貼り忘れたりすることもある」
「準委任型のシステム開発契約やライセンス契約の中に、知的財産権の譲渡やアサインバックに関する条項が入っているケースもあり、1号文書該当の判断に迷う」

というように、電子契約化により印紙税判定にかかわる手間が解消できること、費用対効果の計測が容易であることを理由として挙げる企業は、無視できない数いらっしゃる のです。たかが印紙税、されど印紙税、というわけです。

効果が確実に計測できる契約類型からDXすべし

デジタル・トランスフォーメーションは、必ずしもコストメリットだけを追求して推進すべきものではありません。

しかし、社内外のステークホルダー全員にとってわかりやすいコストメリットがあり、それが効果として計測できるからこそ、社内でのDX推進力が生まれその後の「弾み車」になるというのも、厳然たる事実です。

契約DX推進に成功している企業は、導入のしやすさだけで易きに流れることなく、導入したことの効果が明確に計測できる契約類型を当初から合理的に選択し、本丸からDXに取り組んでいる ことが、このような調査からも実証できます。

(文:橋詰)

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