【無料ひな形付き】著作権譲渡契約書とは?主な記載事項や注意点などを弁護士が解説

著作権を他人に譲渡し、または他人から著作権を譲り受ける場合には「著作権譲渡契約書」を締結します。
著作権譲渡契約書を締結する際には、譲渡する権利の範囲を明確化すること、譲渡対価や著作者人格権の取り扱いを適切に定めることなどが大切です。不当な契約条項が含まれていないかどうか、締結前にしっかりチェックしてください。
本記事で著作権譲渡契約書について、主な記載事項や注意点などを弁護士が解説します。
なお、クラウドサインでは弁護士監修の「著作権譲渡契約書」ひな形をご用意しています。無料でダウンロード可能ですので、これから代理店契約を締結する方はぜひ入手ください。
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目次
著作権譲渡契約書とは
「著作権譲渡契約」とは、譲渡人から譲受人へ著作権を移転させる旨の契約です。著作権譲渡契約書は、著作権譲渡契約の内容を明記した文書に当たります。

著作権の譲渡では権利の範囲を明確化する必要がある
広義の「著作権」には、「著作財産権(=狭義の著作権)」と「著作者人格権」が含まれています。
①著作財産権著作物の活用によって得られる財産的な利益を保護する権利です。以下の権利が著作財産権に当たります。
- 複製権(法21条)
- 上演権および演奏権(法22条)
- 上映権(法22条の2)
- 公衆送信権等(法23条)
- 口述権(法24条)
- 展示権(法25条)
- 頒布権(法26条)
- 譲渡権(法26条の2)
- 貸与権(法26条の3)
- 翻訳権、翻案権等(法27条)
- 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(法28条)
②著作者人格権
著作者の人格的利益を保護する権利です。以下の権利が著作者人格権に当たります。
- 公表権(法18条)
- 氏名表示権(法19条)
- 同一性保持権(法20条)
著作者人格権は譲渡することができず、著作財産権は譲渡できるものとされています(法59条、61条1項)。
したがって著作権譲渡契約書では、著作財産権の譲渡について定めることになります。ただし、譲受人が著作財産権を実効的に行使できるように、著作者人格権の不行使についても定めるのが一般的です(後述)。
著作権譲渡契約書の主な記載事項|例文も紹介
著作権譲渡契約書には、主に以下の事項を定めます。
②対価|金額・支払期限・支払方法など
③著作権の移転|時期・登録など
④著作者人格権の取り扱い
⑤表明保証|第三者の権利を侵害していないことなど
⑥その他
各事項について、条文例を示しながら解説します。なおこれ以降、単に「著作権」と言う場合は「著作財産権」を意味します。
著作権の譲渡|著作物の内容・譲渡する権利の種類など
第1条 (著作権の譲渡)
甲は、本契約に定める条件に従い、甲の著作に係る下記の著作物(以下「本著作物」という。)に係る一切の著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含むが、これらに限らない。以下「本著作権」という。)を乙に対して譲渡し、乙はこれを譲り受ける(以下「本譲渡」という)。ただし、本契約に別段の定めがある場合には、その定めに従うものとする。
記
名称:○○
内容:○○
……
著作権を譲渡する旨と、その著作権に関する情報を記載します。
前述のとおり、著作権にはさまざまな種類が含まれています。上記の例では「一切の著作権」を譲渡するものとしていますが、一部のみ譲渡する場合は権利の種類を明記しましょう。
また、著作権法27条の権利(翻訳権、翻案権等)と同法28条の権利(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)を譲渡する場合は、その旨を契約書において明示しなければなりません。
詳しくは後に「著作権法27条・28条の権利の取り扱いが明記されているか」で解説します。
対価|金額・支払期限・支払方法など
第2条 (譲渡対価)
- 本譲渡の対価(以下「譲渡対価」という。)は、○○円とする。
- 乙は甲に対し、○年○月○日までに、甲が別途指定する銀行口座に振り込む方法によって譲渡対価を支払うものとする。振込手数料は乙の負担とする。
著作権の譲渡に係る対価について定めます。具体的には、対価の金額や支払期限、支払方法などを明記しましょう。
著作権の移転|時期・登録など
第3条 (著作権の移転)
- 前条に基づき、甲が乙から譲渡対価を受領した時点をもって、甲から乙へ本著作権が移転するものとする。
- 本譲渡につき、乙が著作権の譲渡の登録を申請しようとするときは、甲はこれに協力しなければならない。ただし、登録に要する費用は乙の負担とする。
譲渡人から譲受人へ著作権が移転する条件と時期を定めます。公平の観点から、譲渡対価の支払い(受領)と著作権の移転を同時履行とするのが一般的です。
また、著作権については登録制度が設けられています。不動産の登記などとは異なり、著作権の譲渡時に登録を行うケースは必ずしも多くありません。
しかし、譲受人がさらに第三者へ著作権を譲渡する場合など、著作権譲渡の登録を行った方がいいケースもあります。将来的に著作権の登録が必要となる場合に備えて、譲渡人の協力義務を定めておくとよいでしょう。
参考:著作権登録制度|文化庁
著作者人格権の取り扱い
第4条 (著作者人格権)
- 前条に基づき、甲から乙へ本著作権が移転した時点以降、甲は乙に対し、著作者人格権を行使又は主張してはならない。ただし、本条において別途定める場合については、この限りでない。
- 乙は、本著作物を利用するに当たり、著作者として甲の氏名又は名称を表示しなければならない。
- 乙は、本著作物を利用するに当たり、その内容につき重大な変更を加えようとするときは、事前に甲の許諾を得なければならない。
著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)は譲渡することができません。したがって著作権を譲渡しても、著作者人格権は著作者である譲渡人に残ります。
しかし、著作権の譲渡後も著作者人格権が行使されると、譲受人による著作権の行使が制限されます。
そのため譲受人としては、著作者人格権を行使しない旨を譲渡人に約束してもらうことが望ましいです(=著作者人格権の不行使規定)。
他方で譲渡人としては、全く著作者人格権を行使できないとなると、著作物に自分の名前(クレジット)が表示されなかったり、著作物が意に沿わない形で改変されたりするおそれがあります。
このような事態を避けたいなら、著作者人格権の不行使規定に例外を設けるなどの対応をとるべきです。
上記の条文例では、1項で著作者人格権の不行使を原則としつつ、2項と3項でその例外を定めています。
表明保証|第三者の権利を侵害していないことなど
第5条 (表明保証)
甲は乙に対し、本契約の締結時及び第3条に基づく本著作権の移転の直前時において、以下の事項がいずれも真実かつ正確であることを表明及び保証する。
① 本譲渡に係る本著作権の一切が甲に帰属していること。
② 本譲渡が第三者の著作権その他の権利を侵害するものでないこと。
著作権の譲渡を行うに当たって前提となる事項につき、譲渡人による表明保証を定めます。具体的には、著作権が譲渡人に帰属していることや、著作権の譲渡によって第三者の権利を侵害しないことなどを明記しましょう。
表明保証違反が判明した場合は、損害賠償や契約解除の対象とするのが一般的です。損害賠償規定や契約解除規定において、その旨を定めておきましょう。
その他
著作権譲渡契約書には上記のほか、以下の事項などを定めます。
・契約上の地位の譲渡等の禁止
→契約上の地位や契約に基づく権利・義務につき、第三者への譲渡や担保提供を禁止します。
・損害賠償
→契約違反や表明保証違反が判明した際の損害賠償責任の範囲などを定めます。
・契約の解除
→契約違反や経営破綻などの契約を解除できる事由と、解除に要する手続きを定めます。
・反社会的勢力の排除
→暴力団員等に当たらない旨や、暴力的な要求行為をしない旨などを定めます。
・合意管轄
→著作権譲渡契約に関してトラブルが生じた場合に、訴訟を提起する裁判所を定めます。
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著作権譲渡契約書を締結する際のチェックポイント
著作権譲渡契約書を締結する際には、特に以下のポイントに注意してください。
②著作権法27条・28条の権利の取り扱いが明記されているか
譲渡の対価は適切か
著作権の譲渡の対価は、著作物が持つ経済的な需要や魅力などを踏まえて適切に設定することが大切です。
特に著作者である譲渡人の側では、自分が生み出した著作物の価値を正しく把握しておらず、譲受人の提示額を鵜呑みにしてしまうケースが散見されます。譲受人以外のクリエイターやコンテンツ事業者などの意見も聞いたうえで、譲渡対価が適切であるかどうか慎重に検討することをお勧めします。
著作権法27条・28条の権利の取り扱いが明記されているか
著作権法27条の権利(翻訳権、翻案権等)と同法28条の権利(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)は、著作権譲渡契約において譲渡する旨が明記されていない限り、譲渡人に留保されたものと推定されます(同法61条2項)。
したがって、著作権法27条・28条の権利も併せて譲渡する場合は、その旨を著作権譲渡契約書に明記しなければなりません。
×「一切の著作権を譲渡する」
○「一切の著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む。)を譲渡する」
予期せず譲渡の対象外とならないように、著作権法27条・28条の権利の取り扱いを確実に記載してください。
著作権譲渡契約書に収入印紙は必要?
著作権譲渡契約書を紙で作成するときは、契約金額に応じた額の収入印紙を貼る必要があります。これに対して、電子契約で著作権譲渡契約書を締結するときは、収入印紙の貼付は不要です。
紙で作成するときは収入印紙が必要(第1号文書)
紙で作成された著作権譲渡契約書は、印紙税法上の課税文書(第1号文書)に当たるため、収入印紙を貼る必要があります。
貼付すべき収入印紙の額は、以下のとおりです。
| 契約金額 | 印紙税額 |
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上10万円以下 | 200円 |
| 10万円超50万円以下 | 400円 |
| 50万円超100万円以下 | 1000円 |
| 100万円超500万円以下 | 2000円 |
| 500万円超1000万円以下 | 1万円 |
| 1000万円超5000万円以下 | 2万円 |
| 5000万円超1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超 | 60万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
収入印紙を貼った箇所には、文書と印紙の彩紋にまたがるように消印を押すか、または署名をして印紙を消さなければなりません(印紙税法8条2項、印紙税法施行規則5条)。
電子契約なら収入印紙は不要
著作権譲渡契約書を電子契約の方式で締結する場合は、収入印紙を貼る必要がありません。電子契約は、印紙税法上の課税文書に当たらないと解されているためです。
紙の契約書から電子契約に移行すれば、印紙税を削減できることに加えて、契約内容の検索や管理がしやすくなるなどのメリットがあります。著作権譲渡契約書だけでなく、他の種類の契約書についても幅広く利用できるので、未導入の企業は電子契約の導入をご検討ください。
まとめ
著作権譲渡契約書を作成する際には、譲渡する権利の範囲や譲渡対価、著作者人格権の取り扱いなどを明確かつ適切に定めることが大切です。
著作物の価値や、譲渡後に想定される利用方法などを踏まえて、十分に内容を検討したうえで著作権譲渡契約書を締結してください。
著作権譲渡契約書は、電子契約の方式で締結することもできます。紙の著作権譲渡契約書には収入印紙を貼る必要がありますが、電子契約であれば収入印紙は不要です。
過去に締結した契約の検索や管理もしやすくなるので、特に業務の効率化を目指す企業は電子契約の導入を積極的にご検討ください。
なお、電子契約は、業務効率化とコスト削減を実現する強力な選択肢のひとつですが、「導入の具体的なステップがわからない」「法的に有効な契約方法を知りたい」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。当社では電子契約の導入から運用までを網羅した「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しております。以下のリンクから無料でダウンロードが可能ですので、ご活用ください。
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ダウンロードする(無料)この記事を書いたライター
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
