【無料ひな形付き】退職合意書とは?主な記載事項や作成時の注意点を弁護士が解説

労働者(従業員)が退職する際には、会社はその労働者との間で「退職合意書」を締結することが望ましいです。退職の条件を明確に記載し、退職後のトラブル防止に努めましょう。
本記事では退職合意書について、主な記載事項や作成時の注意点などを弁護士が解説します。
なお、クラウドサイン公式の契約書ひな形(テンプレート)12選パックもご用意しております。Word形式なのでダウンロード後すぐにお使いいただけます。ぜひあわせてご活用ください。
無料ダウンロード
目次
無料ダウンロード


クラウドサインではこれから電子契約サービスを検討する方に向けた「クラウドサイン サービス説明資料」をご用意しました。クラウドサインの特徴や使い方を詳しく解説していますので、ダウンロードしてご活用ください。
ダウンロードする(無料)退職合意書とは
「退職合意書」とは、退職に関する使用者(会社など)と労働者の合意事項を記載した文書です。退職の条件を明確化し、退職後のトラブルを防ぐことを目的としています。
退職合意書は、使用者と退職する労働者が共同で作成します。労働者が単独で作成する誓約書などとは異なり、使用者も退職合意書の内容に拘束されます。
【例文あり】退職合意書の主な記載事項
退職合意書には、主に次の事項などを記載します。
②退職日までの勤務等
③賃金
④退職金
⑤年次有給休暇
⑥競業避止義務
⑦清算条項
⑧その他
各事項につき、条文例を示しながら解説します。なお条文例では、甲が退職する労働者、乙が使用者を指します。
退職の合意
第1条 (退職の合意)
- 甲及び乙は、双方の合意に基づき、〇年〇月〇日(以下「退職日」という。)をもって、甲の乙における勤務を終了し、甲乙間の雇用契約(以下「本雇用契約」という。)を解除する。
- 本退職の理由は次に掲げるとおりとする。乙は、退職に関する証明書その他の書類において退職理由を記載する必要があるときは、当該理由を記載するものとする。
退職理由:○○
合意に基づき労働者が退職し、雇用契約を解除する旨を記載します(1項)。退職の年月日も明記しておきましょう。
退職の理由については、雇用保険の基本手当の受給手続きなどに関して、会社が書類に記載すべき場面が生じることがあります。その際、自己都合退職か会社都合退職かを巡り、労働者と揉めてしまうケースが少なくありません。
そのため可能であれば、退職理由についても労働者と合意したうえで、退職合意書に記載しておくことが望ましいです(2項)。
ただし、雇用保険の離職理由は、最終的にハローワークが事実関係を確認して判定します。会社からの退職勧奨に応じた退職は特定受給資格者(いわゆる会社都合)の範囲に含まれるため、事実と異なる退職理由を合意・記載することはできません。
退職日までの勤務等
第2条 (退職日までの勤務等)
- 甲は、本合意の締結後、退職日に至るまで、本雇用契約に適用される定め(法令、本雇用契約及び乙の社内規程を含むが、これらに限らない。以下「本雇用契約等」という。)に従い、乙のために勤務するものとする。
- 甲は、退職日までに、乙の指示に従い、甲が担当している業務等につき、乙の従業員等に対して引き継ぐために必要な対応を行うものとする。
- 前各項にかかわらず、乙はその裁量により、甲の勤務の全部又は一部を免除することができる。
退職合意書の締結日よりも退職日が後の日付である場合は、その期間の勤務の取扱いを明記しておきましょう。
上記の条文例では、原則として退職日までは通常どおり勤務しながら業務の引継ぎを行うものとしつつ(1項・2項)、使用者の裁量によって勤務を免除することを認めています(3項)。
これに対し、退職合意書の締結後退職日に至るまでの勤務を免除することも考えられます。
賃金
第3条 (賃金)
- 乙は、本雇用契約の定めに従い、退職日に至るまでの期間につき、甲に対して通常の賃金を支払う。
- 退職日までに支払われない賃金(次条で定める退職金を除く。)があるときは、乙は甲に対し、退職日の翌日から起算して7日以内に、別途甲が指定する銀行口座へ振り込む方法により、当該賃金を支払うものとする。
退職前の期間に係る賃金の取扱いを定めます。
上記の条文例では、退職日まで一貫して通常の賃金を支払う旨(1項)と、退職日までに支払われない賃金の精算方法(2項)を定めています。
なお、退職合意書の締結後退職日に至るまでの勤務を免除する場合は、その期間は平均賃金の6割以上の休業手当(労働基準法26条)を支払うことも考えられます。
会社の都合で勤務を免除する期間について賃金をまったく支払わない場合は、同条違反となるおそれがある点にも注意が必要です。
ただし、後に労働者から賃金全額を請求されるなど、トラブルに発展するリスクがあるので注意が必要です。特に、勤務免除や賃金の減額・不支給を会社側から提案した場合は、労働者が任意の意思で同意したと言えるのかどうかなど、合意の経緯が問題視される可能性がある点に留意しなければなりません。
退職金
第4条 (退職金)
【退職金を支払う場合】
乙は甲に対し、〇年〇月〇日までに、別途甲が指定する銀行口座へ振り込む方法により、本退職に係る退職金として〇円を支払うものとする。【退職金を支払わない場合】
本退職に関し、乙は甲に対して退職金を支払う義務を負わない。
退職金を支払う場合は、金額・支払期限・支払方法を明記します。退職金を支払わない場合も、念のためその旨を明記しておきましょう。
年次有給休暇
第5条 (年次有給休暇)
- 甲は、退職日に至るまで、乙に対する請求により、本雇用契約等に従って付与された年次有給休暇を取得できるものとする。
- 前項にかかわらず、乙は法令の定めに従い、甲の請求に係る年次有給休暇について時季変更権を行使することができる。
- 退職日が経過した時点において未消化の年次有給休暇は、消滅する。乙は、当該年次有給休暇に関し、買取りによる金銭給付その他一切の甲に対する債務を負わない。
年次有給休暇の取扱いを定めます。
労働者には、労働基準法に従って付与された年次有給休暇を取得する権利があります。その一方で、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、使用者は他の時季にこれを与えることができます(=時季変更権、労働基準法39条5項)。
上記の条文例でも、労働者が年次有給休暇を取得できる旨(1項)および使用者の時季変更権(2項)について確認的に記載しています。
ただし退職直前の時期においては、使用者の時季変更権の行使が認められにくいため、退職する労働者には自由に年次有給休暇を取得させることが望ましいです。
未消化の年次有給休暇は、退職時をもって消滅します。使用者は、未消化の年次有給休暇を買い取る義務を負いません。上記の条文例でもその旨を記載しています(3項)。
ただし、労働者の納得感を高めてトラブルを防止するなどの観点から、未消化の年次有給休暇を買い取るケースもあります。その場合は、買い取りの条件を明記しておきましょう。
競業避止義務
第7条 (競業避止義務)
甲は、退職日の翌日から起算して〇か月間、事前に乙の書面又は電磁的方法による承諾を得ることなく、乙の事業と同種若しくは類似の営業若しくは営業の部類に属する取引を自ら行い、又は第三者をして行わせ、又は当該取引を行う事業者において勤務してはならない。
退職する労働者に競業避止義務を負わせる場合は、その期間や業種・地域などの範囲を定めます。ただし後述するように、労働者の立場などに照らして広範すぎる競業避止義務は無効となるおそれがあるので注意が必要です。
清算条項
第11条 (清算条項)
甲及び乙は、本合意に定めるもの及び本合意の締結後退職日までに本雇用契約に基づき発生するものを除き、甲乙間に何らの債権債務関係が存在しないことを相互に確認する。
「清算条項」とは、当事者間に合意書に書かれていない債権債務関係が存在しない旨を確認する条項です。後から追加請求などを巡るトラブルが生じないようにすることを目的としています。
退職合意書においても、賃金や退職金などの精算すべき事項をすべて明記したうえで、それ以外には債権債務関係が存在しない旨の清算条項を定めておきましょう。
その他
退職合意書には上記のほか、次の事項などを定めます。
- 貸与物の返還等
- 秘密保持
- 誹謗中傷等の禁止
- 損害賠償
- 準拠法、合意管轄
【弁護士監修】退職合意書のひな形ダウンロード(無料)
退職合意書のひな形は、下記のリンクからダウンロードできます。実際の退職条件などに応じて、適宜調整したうえでご利用ください。
ひな形無料ダウンロード
退職合意書を締結する際のチェックポイント
会社が労働者と退職合意書を締結する際には、特に次に挙げるポイントに注意してください。
②過度に重い競業避止義務を定めない
退職の主要な条件を明確に定める(賃金・退職金・年次有給休暇など)
賃金・退職金・年次有給休暇などの退職に関する主要な条件は、退職合意書において明確に取扱いを定めておきましょう。
たとえば賃金については、退職合意書締結後の期間に係る賃金をどうするのか、退職時点で未払いの賃金をどのように精算するのかなどを明確化する必要があります。
退職金については、会社の退職金規程などに基づいて適切に計算したうえで、金額・支払期限・支払方法などを明記しましょう。
年次有給休暇については、特に会社が買い取る場合はその条件を具体的に定める必要があります。
上記の事項などについて、疑義のないよう明確な文言で定めることが重要です。曖昧な内容が含まれていると、後に退職者とのトラブルの原因になり得るので注意してください。
過度に重い競業避止義務を定めない
退職後の労働者に競業避止義務を課すことは、職業選択の自由(日本国憲法22条1項)との関係で問題になることがあります。労働者の職業選択の自由を過度に制限する競業避止義務は、公序良俗違反(民法90条)によって無効となり得るので注意が必要です。
退職者の競業避止義務が有効かどうかは、次の要素などに照らして判断されます。
(b)従業員の地位
(c)地域的限定
(d)期間
(e)禁止行為の範囲
(f)代償措置
特に、経営に関与していなかった元労働者に対して、代償措置を講じることなく重い競業避止義務を課すことは、無効と判断される可能性が高いと考えられます。
経営に関与していた元労働者に対しても、地域や期間を限定するなど、競業避止義務の範囲を合理的な範囲内に抑えるべきです。特に競業避止義務の期間が1年を超えると、無効と判断される可能性が高まるので注意してください。
退職合意書に収入印紙は必要?
退職合意書には原則として、収入印紙を貼る必要はありません。印紙税法上の課税文書に当たらないためです。
ただし、退職合意書の中に退職合意以外の契約事項が記載されている場合は、念のためそれらの事項が印紙税法上の課税文書に該当しないかどうかを確認してください。
なお、退職合意書を電子契約で締結する場合は、内容の如何を問わず収入印紙の貼付は不要です。
退職合意書は電子契約で締結できる?
退職合意書は、紙ではなく電子契約で締結することもできます。退職者が出社しない時期でもスムーズに合意でき、締結後の管理もしやすくなります。
電子契約で締結しても法的に有効
契約は、当事者間における申込みと承諾の合致によって成立するところ(民法522条1項)、法令に特別の定めがある場合を除き、その方式は自由とされています(同条2項)。
退職合意書の作成については、法令によって特別の方式は定められていません。そのため、電子契約で締結した退職合意書も、紙の退職合意書と同じく有効です。
電子契約で退職合意書を締結するメリット
- 退職者が出社しなくても締結できる
退職日の前に年次有給休暇をまとめて取得する場合など、合意書を締結する時期に本人が出社しないことは珍しくありません。
電子契約なら、退職者は届いた案内から合意書の内容を確認し、オンラインで同意できます。郵送でのやり取りが不要になるため、退職日が迫っている場合でも、締結までの時間を短縮しやすくなります。 - 誰がいつ合意したかの記録が残る
電子契約では、合意書を誰に送り、相手がいつ同意したかが記録として残ります。【社内確認:記録される項目】
後日、退職者から「内容を見ていない」「合意した覚えがない」と主張された場合にも、事実関係を示しやすくなります。
ただし、記録で示せるのは、同意した事実と日時です。退職者が自由な意思で同意したかどうかは、合意に至るまでの経緯も含めて判断されます。条件の説明内容や、検討期間を設けたことなども、あわせて記録しておきましょう。 - 締結後の保管・検索がしやすい
退職合意書は、退職後の問い合わせや紛争に備えて保管しておく書類です。
電子契約なら、退職者ごとの合意書を一元管理でき、必要なときにすぐ取り出せます。紙の原本を保管するスペースや、ファイリングの手間もかかりません。
電子契約で締結する際のポイント
送信先には、退職後も本人が確認できるメールアドレスを使いましょう。
社用のメールアドレスは、退職と同時に使えなくなるのが一般的です。社用アドレス宛てに締結すると、退職者が後から合意書を確認できなくなるおそれがあります。本人と事前に送信先を確認し、締結済みの合意書の控えを本人も保管できるようにしておくと安心です。
また、退職合意書だけでなく、雇用契約書や入社時の誓約書などの入社から退職までに必要になる書類も電子契約で締結・管理できます。
なお、労働条件通知書を電子メールなどで交付する場合は、労働者本人が希望していることが必要です(労働基準法施行規則5条4項)。
人事書類を電子化する方法は、無料ダウンロード可能な以下の資料で詳しく紹介しています。
無料ダウンロード

クラウドサインでは人事労務業務の効率化を両立するポイントをまとめた「人事・採用担当者のための電子契約活用ガイド」をご用意しました。電子契約の活用方法について詳しく知りたい人事・採用担当者の方はダウンロードしてご活用ください。
ダウンロードする(無料)※退職条件の決め方や合意書の有効性は、個別の事情によって判断が異なります。具体的な対応は、弁護士などの専門家にご相談ください。
退職合意書についてよくある質問(FAQ)
従業員が退職する場合、退職合意書の作成は必須ですか?
退職合意書の作成は必須でなく、作成しないケースも実際によく見られます。ただし、後日労働者との間でトラブルが生じるリスクを防ぐ観点から、退職合意書を締結することが望ましいです。
従業員が退職合意書へのサインを拒否した場合、解雇してもいいですか?
解雇が認められるのは、法律上の解雇要件を満たす場合に限られます。たとえば懲戒解雇は、就業規則上の根拠があることに加えて、労働者の行為の性質や態様などに照らして客観的・合理的な理由があり、かつ社会通念上相当である場合でなければ認められません。
従業員を解雇しようとする際には、その適法性について慎重な検討が求められます。解雇が認められないと考えられる場合は、退職合意書を締結することなく労働者を退職させることもやむを得ないでしょう。
まとめ
退職する労働者との間で退職合意書を締結する際には、賃金・退職金・年次有給休暇の取扱いなど、退職に関する条件を明確に記載しましょう。適切な内容の退職合意書を締結すれば、退職者とのトラブルの予防に繋がります。
退職合意書は、電子契約によって締結することもできます。電子契約は管理がしやすく、契約業務の効率化に役立つので、まだ導入していない企業は積極的に導入をご検討ください。
この記事を書いたライター
弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
電子契約サービス「クラウドサイン」を運営する、弁護士ドットコム株式会社の編集部です。電子契約・電子署名法・電子帳簿保存法のほか、契約管理、契約審査・レビュー、AIを活用した法務業務の効率化について解説しています。法令の解釈にかかわる記事で弁護士等の専門家による監修を受けている記事には、記事末に監修者名を表示しています。
