定期建物賃貸借契約書とは?主な記載事項や借地借家法上の注意点などを弁護士が解説

「定期建物賃貸借契約」は、建物の賃貸借に関する契約のうち、更新がないものをいいます。
定期建物賃貸借契約書を作成する際には、借地借家法に定められた手続きを踏むことが必要です。契約の内容についても、締結する前にきちんとチェックしましょう。
本記事では定期建物賃貸借契約書について、主な記載事項や借地借家法上の注意点などを解説します。
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「建物賃貸借契約」とは、有償で建物を貸し借りする旨の契約です。
建物賃貸借契約のうち、更新がないとされているものを「定期建物賃貸借契約」といいます。
建物賃貸借契約は更新ありが原則ですが、借地借家法に基づく一定の条件を満たす場合に限り、更新がない定期建物賃貸借契約とすることができます。なお、更新がある通常の建物賃貸借契約を「普通建物賃貸借契約」と呼ぶこともあります。
「定期建物賃貸借契約書」は、定期建物賃貸借の内容を明記した文書に当たります。定期建物賃貸借契約書を作成する際には、借地借家法のルールを念頭に置きつつ、事前に内容を慎重にチェックしてください。
定期建物賃貸借契約書の主な記載事項|例文も紹介
建物賃貸借契約書には、主に以下の事項を定めます。
②契約期間
③建物の使用目的
④賃料
⑤共益費
⑥敷金
⑦借主の遵守事項
⑧契約の解除
⑨借主による中途解約
⑩明渡し時の原状回復
⑪その他
各事項について、条文例を示しながら解説します。
定期建物賃貸借をする旨
第1条 (定期建物賃貸借)
甲は、下記の建物(以下「本建物」という。)を乙に賃貸し、乙はこれを賃借する(以下「本賃貸借」という。)。
記
所在:○○
家屋番号:○○
種類:○○
構造:○○
床面積:1階○○㎡、2階○○㎡
建物を特定するための情報を明記したうえで、その建物を賃貸借する旨を定めます。建物の情報は、登記事項証明書のとおりに記載してください。
契約期間|更新がない旨を明記する
第2条 (契約期間)
1. 本賃貸借の期間(以下「契約期間」という。)は、○年○月○日から○年○月○日までとし、更新がないものとする。ただし、契約期間の終了後、甲乙協議のうえで、本建物に係る新たな賃貸借契約を締結することを妨げない。
2. 乙は、本賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により本賃貸借は終了すること(以下「要説明事項」という。)について、甲から要説明事項を記載した別紙様式による書面の交付を受けたうえで、要説明事項の説明を受けたことを確認する。
3. 契約期間が1年以上であるときは、甲は、契約期間の満了の1年前から6か月前までの間(以下「通知期間」という。)に、乙に対し、期間の満了により本賃貸借が終了する旨の通知をしなければならない。
4. 甲が前項の通知を怠ったときは、通知期間の経過後、甲が乙に対して当該通知をした日から6か月が経過するまで、契約期間が存続するものとする。
定期建物賃貸借契約書では、契約期間の更新がない旨を明記する必要があります(上記1項)。
また、契約の更新がなく、期間満了によって賃貸借が終了することにつき、貸主が借主に対して書面を交付したうえで説明しなければなりません(上記2項)。
さらに、契約期間が1年以上である場合は、貸主が期間満了の1年前から6か月前までの間に借主へ通知しなければ、借主に契約終了を対抗できないものとされています(上記3項・4項)。
契約期間については注意すべきポイントが多いので、特に貸主側は慎重に対応してください。
建物の使用目的
第3条 (本建物の使用目的)
乙は、本建物を、【○○の事業に係る店舗/事務所】として使用するものとし、その他の用途に本建物を使用してはならない。
建物の使用目的を定めます。目的外使用をすると、貸主に契約を解除されるおそれがあるので、借主は十分ご注意ください。
賃料
第4条 (賃料)
1. 本賃貸借の賃料(以下「本賃料」という。)は月額〇○円とする。1か月に満たない期間の賃料は、1か月を30日として日割計算により精算する。
2. 乙は、甲に対し、毎月○日までに、その翌月分の本賃料を、甲が別途指定する口座へ振り込む方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。
3. 借地借家法第32条の規定にかかわらず、甲及び乙は、契約期間中、本賃料の額の増減を請求することができない。
賃料の金額や支払方法を定めます。
賃料の金額は、原則として借地借家法32条により増減請求が認められています。貸主側からの増額請求は期間を定めて制限できるものの、借主側からの減額請求の制限はできないのが原則です。
ただし定期建物賃貸借契約については、特約によって貸主・借主双方からの賃料増減請求を排除することができます(上記3項)。
共益費
第5条 (共益費)
1. 本建物の共用部分の維持管理に充てるため乙が負担すべき共益費(以下「本共益費」という。)は、月額○○円とする。1か月に満たない期間の共益費は、1か月を30日として日割計算により精算する。
2. 本共益費の支払いについては、前条第2項を準用する。
3. 第1項の規定にかかわらず、維持管理費の増減その他事情により本共益費の額が不相当となったときは、甲乙協議のうえで、本共益費の額を改定することができる。
借主が負担する共益費の額や支払方法を明記します。月々の賃料と共益費はまとめて支払うため、支払方法は共通とするのが一般的です(上記2項)。
敷金
(例)
第6条 (敷金)
1. 乙は、甲に対し、本契約に基づき乙が甲に対して負担する一切の金銭債務(以下「本債務」という。)を担保するため、敷金として○○円(以下「本敷金」という。)を預託する。
2. 甲は、乙が本債務を履行しないときは、本敷金を当該債務の弁済に充てることができる。この場合において、乙は、甲に対し、敷金を当該債務の弁済に充てることを請求することができない。
3. 次に掲げるときは、甲は、乙に対し、本敷金の額から本債務の額を控除した残額を無利息にて返還しなければならない。
① 本賃貸借が終了し、かつ、乙から本建物の返還を受けたとき。
② 乙が適法に本賃貸借に係る賃借権(以下「本賃借権」という。)を譲り渡したとき。
敷金は、定期建物賃貸借契約に基づいて借主が負う債務の一切を担保するために、借主が貸主に預けるものです。貸主は未払賃料や損害賠償などを敷金から控除できますが、契約終了時には敷金の残額を返還する必要があります。
定期建物賃貸借契約書における敷金条項では、金額や充当の条件、返還すべきケースなどを定めておきましょう。
借主の遵守事項
(例)
第7条 (乙の遵守事項)
乙は、本賃貸借に関し、以下の事項を遵守しなければならない。
① 甲の事前の書面による承諾がない限り、第3条に定めるもの以外の用途に本建物を使用してはならない。
② 甲の事前の書面による承諾がない限り、本建物を増築、改築又は再築してはならない。
③ 甲の事前の書面による承諾がない限り、第三者に対して本賃借権を譲渡し、又は本建物を転貸してはならない。
④ 第三者に対して前条第3項に基づく本敷金の返還請求権を譲渡し、又は担保に供してはならない。
建物の使用などに当たり、借主が遵守すべき事項を定めましょう。
上記の例では、目的外使用、増築・改築・再築、賃借権の譲渡・無断転貸、敷金返還請求権の譲渡・担保提供の禁止を明記しています。
契約の解除
(例)
第8条 (契約の解除)
- 甲は、次に掲げるときは、何らの通知又は催告を要せずに、本契約を解除することができる。
① 乙が本賃料の支払いを連続して3か月以上怠ったとき。
② 乙が前条に定める遵守事項に違反したとき。
- 甲及び乙は、次に掲げるときは、何らの通知又は催告を要せずに、本契約を解除することができる。
① 相手方の本契約に基づく債務のうち、全部又は重要な一部が社会通念上履行不能となったとき。
② 相手方が本契約に基づく債務のうち、全部又は重要な一部の履行を明示的に拒否したとき。
③ 甲乙間の信頼関係が著しく害されたと認められるとき。
- 前二項に定める場合のほか、甲及び乙は、相手方が本契約に違反し、その是正を書面で催告したにもかかわらず、当該催告の翌日から起算して○日以内に当該違反が是正されなかったときは、本契約を解除することができる。
貸主および借主が、定期建物賃貸借契約を解除できる場合を定めます。
重大な契約違反等については無催告解除(上記1項・2項)、比較的軽微な契約違反等は催告を要する解除(上記3項)とするのが一般的です。
借主による中途解約
(例)
第9条 (乙による中途解約)
- 乙は、契約期間の途中でも、甲に対して通知することにより、本契約を解除することができる。
- 前項に基づく解除通知が甲に到達した日(以下「解除通知到達日」という。)から3か月が経過したとき、本契約は終了する。
- 解除通知到達日よりも前に契約期間が満了するときは、前二項の規定は適用しない。
契約期間の途中での解約を認める場合は、その条件や手続きを定めておきます。中途解約条項がない場合は、契約期間中の解約は認められません。
中途解約は貸主・借主の双方について定めることができますが、貸主による中途解約は正当の事由がなければ認められません。上記の例では、借主の中途解約権のみを定めています。
明渡し時の原状回復
(例)
第10条 (契約終了時の明渡し及び原状回復義務)
- 本契約が終了したときは、乙は本建物を原状に復したうえで、甲に対して返還しなければならない。
- 乙が前項の義務を履行しないときは、甲は自ら本建物を原状に復することができる。この場合、乙は甲に対し、当該原状回復に要した費用を支払わなければならない。
- 第1項に定める本建物の返還が遅延したときは、乙は甲に対し、本賃料の倍額に相当する遅延損害金を支払わなければならない。
定期建物賃貸借契約の終了時に、借主が原状回復を行うべき旨を定めます。
原状回復の対象となるのは、特約がない限り、借主の責に帰すべき事由によって生じた損傷のみです。通常損耗や経年変化は、原則として原状回復を要しません。
その他
上記のほか、定期建物賃貸借契約書には次の事項などを定めます。
・反社会的勢力の排除
→当事者が互いに暴力団員等でないことを表明および保証し、暴力的な要求行為をしないことなどを誓約します。
・連帯保証人
→連帯保証人を立てる場合は、その旨および条件を定めます。連帯保証人が個人の場合は、極度額の定めが必要です。
・合意管轄
→定期建物賃貸借契約に関して紛争が発生した場合に、訴訟を提起する裁判所を定めます。
定期建物賃貸借契約書を締結する際のチェックポイント
定期建物賃貸借契約書を締結する際には、借主側・貸主側はそれぞれ、特に次のポイントに注意してください。
・【借主側】遵守事項や解約の条件などを確認する
・【貸主側】借主に対して更新がない旨を説明する|契約書とは別に書面等の交付が必要
【借主側】遵守事項や解約の条件などを確認する
借主としては、事前に想定していた方法で建物を使用できるかどうかを確認することが先決です。使用目的が想定と異なる場合や、遵守事項が厳しすぎる場合は、貸主に対して修正を求めましょう。
また、中途解約の可否や明渡し時の原状回復の範囲なども、契約を締結する前に確認すべきです。特に原状回復の範囲が広すぎる場合は、借主の責に帰すべき事由による損傷に限定するよう求めましょう。
また定期建物賃貸借の場合は、貸主が借主に書面を交付して説明することなどを条件に、契約の更新がないものとすることができます。
【貸主側】借主に対して更新がない旨を説明する|契約書とは別に書面等の交付が必要
貸主は、定期建物賃貸借契約書を締結するに当たり、借主に対して契約期間の更新がなく、期間満了によって賃貸借が終了することを、書面を交付したうえで説明しなければなりません(借地借家法38条3項)。
書面の交付または説明のいずれか一方でも怠ると、契約の更新がないこととする定めが無効となり、普通建物賃貸借契約になってしまうので十分ご注意ください(同条5項)。
なお、あらかじめ借主の書面または電磁的方法による承諾を得れば、電子メールの送信等によって書面の交付に代えることもできます(同条4項)。
定期建物賃貸借契約書に収入印紙は必要?
定期建物賃貸借契約書を作成する際には、原則として収入印紙の貼付は不要です。
ただし、土地と建物を併せて賃貸借する場合には、第1号文書として印紙税が課される点にご注意ください。
印紙税額は、契約金額(=権利金・礼金・保証金のうち返還されない部分・更新料などの合計額)に応じて200円~60万円です(契約金額が1万円未満の場合は非課税)。
なお、土地と建物を併せて賃貸借する場合でも、電子契約なら収入印紙の貼付は不要となります。

まとめ
定期建物賃貸借契約書を作成するに当たっては、借地借家法のルールを念頭に置く必要があります。
特に貸主側は、借主側に対する書面の交付と説明が義務付けられており、いずれか一方でも怠ると更新ありの普通建物賃貸借契約になってしまうので十分ご注意ください。
定期建物賃貸借契約書は、電子契約によって締結することも認められています。電子契約は管理や検索がしやすいため、業務の効率化に繋がる可能性があるので、積極的に活用してください。
なお、電子契約は、業務効率化とコスト削減を実現する強力な選択肢のひとつですが、「導入の具体的なステップがわからない」「法的に有効な契約方法を知りたい」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。当社では電子契約の導入から運用までを網羅した「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しております。以下のリンクから無料でダウンロードが可能ですので、ご活用ください。
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阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。