【2024年10月最新】業務委託契約書の書き方とは? 業務委託契約のポイントを解説
この記事では、業務委託契約書の書き方と書式について、ポイント・主な記載事項・印紙税等の作成コストについて解説します。業務委託契約書は、電子契約サービスの公式テンプレートを使うことで簡単に作成・締結・管理ができますが、リスクについても押さえておく必要があります。
自社以外の企業や個人(フリーランス)に業務を委託する予定のある方は、本記事にある「業務委託契約書」ひな形の無料ダウンロードフォームから、ぜひひな形を入手してご活用ください。
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目次
1. 業務委託契約書とは—業務委託契約と請負・委任・準委任契約の関係
業務委託契約とは、自社以外の企業や個人(フリーランス)等に業務を委託し遂行してもらうための契約であり、その内容を書面にしたものが業務委託契約書となります。
業務委託契約は、その内容によって大きくは「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つの種類に分類されます。もっとも、必ずしもすべての業務委託契約がこれらの3つの分類のどれかにそのまま当てはまるわけではなく、複数の分類の混合契約である場合もあります。
1.1 請負契約
請負契約とは、受託者による仕事の完成を目的とした契約です。
受託者は、契約で合意した仕事を期日までに完成させる義務を負い、委託者は、完成を確認した上で対価を支払います。
建設請負工事や特注家具の製造のようなわかりやすい物もあれば、ソフトウェアプログラムの納入や俳優による映画出演など、有形物の成果物の引き渡しのみならず無形のサービス(役務)の提供も、請負契約で完成責任を負う仕事の対象になります。
1.2 委任契約
委任契約とは、受託者に法律行為を遂行してもらうことを目的とした契約です。
弁護士・司法書士・税理士といった法律行為をする専門家に専門業務を委託する際の契約で、仕事の完成ではなく、一定の事務の処理が目的となります。業務をどのように遂行するかは専門家である受託者に委ねられますが、受託者は善良な管理者の注意をもって業務を遂行する義務を負います。
1.3 準委任契約
準委任契約とは、受託者に法律行為以外の業務を遂行してもらうことを目的とした契約です。
委任契約は法律行為を委託する際の契約でしたが、準委任契約は医師・コンサルタント・技術者等の法律以外の業務が対象となります。「準」の文字はつきますが、受託者が善良な管理者の注意義務を負って業務を遂行する点は、委任契約と変わりません。
2. 業務委託契約書の書き方とポイント
業務委託契約書に書くべき内容には、どのようなものがあるのでしょうか。以下では、無料でダウンロード可能なクラウドサインの業務委託契約書公式テンプレートを元に、業務委託契約書の書き方と書式について、ポイント・主な記載事項・具体的な条文例について解説します。
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2.1 業務委託契約の目的
まず最初に、委託者と受託者が業務委託契約を締結することについて合意します。契約書によっては、ここで請負・委任・準委任のいずれであるかを明記する例もあります。
第1条(契約の目的)
1. 本契約は、委託者が本契約に定める業務を受託者に委託し、受託者が当該業務を受託するに際して、当事者間の権利義務の基本的な事項について定めることを目的とする。
2. 委託者及び受託者は、法令を遵守し、信義誠実の原則に従い、誠実に本契約上の義務を履行する。
2.2 委託する業務の内容
業務委託契約書を作成するにあたって、まず最初に重要になるのがこの業務の内容に関する取り決めです。この内容から、請負・委任・準委任のいずれに該当するかが自ずとわかります。
公式テンプレートでは、表の中に業務の内容を記載する形式を採用しています。このような限られたスペースでは正確に仕事の内容を記載できないような場合には、仕様書として別途まとめ、契約書に添付するケースも多くあります。
第2条(業務の内容)
受託者が委託者より受託して行う業務(以下「本件業務」という。)の内容は、上記表のとおりとする。
2.3 個別契約の成立
継続的な取引を前提とする場合、基本契約とは別に、個別契約書を作成するケースがありますが、この場合、
- 個別契約についても、基本契約の合意内容の適用があること
- 基本契約と個別契約の内容が異なる場合は、当該内容に限り個別契約の定めが優先的に適用されること
このように、基本契約と個別契約の優先関係を規定します。
第3条(個別契約の成立)
1. 個別契約は、委託者から業務内容等を記載した個別契約書(注文書又は発注書等の形式を問わない。)を受託者に交付し、受託者が委託者に対し当該個別契約書(注文請書又は受領書等の形式を問わない。)を交付することにより成立する。なお、受託者が上記個別契約書を受領後、合理的期間内に何らの異議を申し述べない場合には、委託者の申し込みの内容を受託者が承諾したものとみなす。
2. 本契約は、前項に基づき成立する個別契約に共通して適用され、個別契約の内容が本契約の内容と異なる場合には、当該内容に限り、個別契約の内容が優先的に適用される。
2.4 納入と検収
仕事が完成したら、成果物を引渡し(納入)、その内容が事前の取り決め通りとなっているかチェック(検収)を受けることになります。
業務委託契約書では、納入された成果物が事前に取り決めた性能や品質を満たしていなかった時の補修・再納入の手続き等が定められることが通常です。
第4条(納入及び検収)
1. 受託者は、個別契約にて定める期日までに、個別契約に定める納入物を委託者指定の納入場所に納入する。
2. 委託者は、前項に従い納入物の納入がなされた日から個別契約で定める検収期限までに、検収を実施し、分量不足、品質不足等を含む内容の検収結果を受託者に通知する。なお、同期限までに委託者から受託者に対し何らの通知が発せられないときは、同期限が経過したときに検収に合格したものとみなす。
3. 受託者は、納入物が前項に定める検収に合格しなかった場合、委託者と協議の上決定した期限内に、納入物を無償で修正して委託者に納入し、前項に定める検収を再度行い、以後も同様とする。
2.5 契約不適合責任
契約不適合責任とは 目的物の種類・品質・数量について、契約の内容に適合しなかったときに、受託者が委託者に対して負担する責任をいいます。2020年4月に施行された改正民法により、新たに定められた文言であり、それ以前は瑕疵担保責任とも呼ばれていました。
納入物に契約不適合が存する場合、委託者は受託者にその責任を追及することができます。公式テンプレートにもある通り、通常の契約では、その責任を負う期間を6ヶ月以内とか1年以内といったように、一定期間に限定するケースが多いです。
第5条(契約不適合責任)
受託者が前条に従い委託者に対して納入した納入物に関し、本契約の内容に適合しないものであった場合、上記表に定めた期間内に発見された不適合に限り、受託者は、当該不適合の原因を究明し、委託者の指示に従い無償にて修補する。但し、当該不適合の発生が委託者の責めに帰すべき事由に起因して生じた場合はこの限りでない。
2.6 報告
業務委託契約は、仕事の完成や委託期間の終了まで長期間にわたるケースがあります。このようなケースで、委託者が受託者に対し、中間報告を求めることができるよう定めます。
第6条(進捗報告)
委託者は、受託者に対し、必要な範囲内で本件業務の進捗状況について報告を求めることができ、受託者は速やかに本件業務の進捗状況について報告を行う。
2.7 業務委託料
業務委託料の支払い条件を定めます。一般的には、成果物の納入後に委託者がそれを検収した上で支払うことになります。
その際、成果物に知的財産権が含まれているようであれば、その移転の対価が業務委託料に含まれることなども明記しておきます。
第7条(業務委託料)
1. 委託者は、受託者に対し、本件業務の対価として、個別契約で定めた委託料を受託者の指定する銀行口座に振込んで支払う。なお、振込手数料は委託者の負担とする。
2. 委託者は、前項に定める委託料を、個別契約に定める支払期日までに支払う。ただし、支払日が土曜日、日曜日、祝日その他の金融機関休業日にあたる場合には、その前営業日までに支払う。
3. 受託者が本件業務を遂行するために要した費用及び次条に規定する知的財産権の対価は、全て個別契約に定める業務委託料に含まれるものとし、受託者において別途の作業又は実費等が発生する場合においても、事前に委託者が承認したもの以外、委託者は費用負担しない。
4. 第1項の定めにかかわらず、本契約が解除その他の事由により契約期間の途中で終了したときの委託料は、第1項の額に当該終了時までになされた履行の割合を乗じた額とする。ただし、その終了が委託者の責めに帰すべき事由によるときの委託料は、第1項に定める全額とする。
2.8 知的財産権
成果物に含まれる知的財産権の帰属について取り決めておきます。公式テンプレートでは、一切の成果物に関する知的財産権が、納入と同時に受託者から委託者に移転する旨を規定しています。
受託者が開発した知的財産権を受託者に帰属させ、委託者はその利用権だけを得るかたちで合意することも少なくありません。
第8条(知的財産権)
1. 受託者が本件業務を遂行する過程で行った発明、考案等又は作成した一切の成果物から生じた、著作権(著作権法第27条及び第28条の権利も含む。)、商標権、意匠権、特許権その他の権利(以下総称して「知的財産権等」という。)については、受託者から委託者に対する納入物の納入と同時に、受託者から委託者に移転する。
2. 受託者は、納入物に関する著作物に関し、著作者人格権を行使せず、権利者をして行使させないものとする。
2.9 所有権
納入物が存在する場合、その所有権がいつ移転することになるかは、前述の知的財産権と別に規定しておく必要があります。
第9条 (所有権)
納入物の所有権は、受託者から委託者に対する納入物の納入と同時に、受託者から委託者へ移転する。
2.10 再委託
請負契約では、仕事の完成が目的であり、誰が完成させるかは通常問題とならないことから、再委託は原則として可能です。他方、委任・準委任契約では、委託者は受託者の能力等を信頼して委託するのが通常であり、受託者自身が業務を行わず再委託することは、委託者の承諾ややむを得ない事由がない限り認められません。
公式テンプレートでは、再委託するために委託者の事前の承諾を要することとしています。
第10条(再委託)
1. 受託者は、委託者の事前の書面又は電磁的記録の方法による承諾なく、本件業務の全部又は一部を第三者に再委託することはできない。
2. 受託者が前項に定める承諾を得て第三者に本件業務を再委託する場合においても、受任者は、当該第三者の選任及び監督その他の一切の行為について、委託者に対して責任を負う。
2.11 その他一般条項
その他、以下条件は業務委託契約に限らずどのような契約においても定められているので、取り決めておくのが良いでしょう(関連記事:基本契約および一般条項の民法(債権法)改正対応)。
- 反社会的勢力の排除
- 解除
- 損害賠償
- 有効期間
- 準拠法及び裁判管轄
- 協議
3. 業務委託契約の締結時には偽装請負リスクに注意
なお、業務委託契約の締結時に注意すべき点として、偽装請負リスクがあります。
3.1 偽装請負とは
偽装請負とは、委託者と受託者が形式上は「業務委託契約」を締結しているものの、その業務に従事する受託者の従業員に対し委託者が指揮命令をしているケースを言います。
委託者が受託者の従業員に直接指揮命令を下せば、実態としては「労働者派遣」に該当することになりますが、労働者派遣法上の法規制が遵守されていないことがほとんどなので、「偽装」の請負と評価されることになるわけです。
指揮命令関係の有無の判断にあたり、参考となる基準・Q&Aとして、厚生労働省による以下文書があります。
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)
- 厚生労働省「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」
- 厚生労働省「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集(第2集)」
- 「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集(第3集)」
3.2 偽装請負が発覚した際のリスク
偽装請負が発覚した場合、委託者に発生するリスクとして、受託者の従業員との間に直接の雇用関係が成立していたものと認められてしまう点が挙げられます。
労働者派遣法第40条の6第1項第5号では、委託者が同法等の適用を免れる目的で請負等の名目で契約を締結し、一定の条件で労働者派遣の役務の提供を受けた場合には、委託者から受託者の従業員に対し労働契約の申込みをしたものとみなされる旨規定されています。
どのような場合に、労働者派遣法等の適用を免れる目的があったと認められるかについて、例えば、東リ事件控訴審判決(大阪高裁令和3年11月4日)は、
日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、労働者派遣の役務の提供を受けている法人の代表者又は当該労働者派遣の役務に関する契約の契約締結権限を有する者は、偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認するのが相当である。
と判示し、同目的を認めました。本判決は、直接の無期雇用契約の成立を認め、その間の賃金支払いも命じており、その後、2022年6月に最高裁で確定しています。
3.3 裁判所等により偽装請負と認定されやすい事例
偽装請負が疑われ認定されやすい典型例としては、以下のような事例が挙げられますので注意が必要です。
- 委託者であるメーカーの工場で働く受託者従業員(工場労働者)に対し、委託者が業務上の指揮命令を行うケース
- システム開発業務において、受託者従業員が委託者の事務室に常駐し、委託者の業務上の指揮命令を受けているケース
- 労働者派遣が禁止されている業種(建設業・警備業など)において、業務委託を装って人員を派遣しているケース
4. 業務委託契約書に収入印紙は必要か?
業務委託契約書には、収入印紙を貼付すべき場合と不要な場合がそれぞれあります。契約の内容からこれらを見極めることが必要です。
4.1 請負契約に該当する場合
本記事の1で解説した業務委託契約の3分類のうち、請負契約に該当する場合については、印紙税が課税されます。
この場合、以下の表に従って契約書に契約金額に応じた収入印紙を貼付し、消印をする必要があります。
契約書に記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上 100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 1,000円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下のもの | 1万円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの | 2万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
4.2 継続的な業務委託契約の取引条件を定める場合
印紙税法が定める20種類の課税文書において、委任契約・準委任契約は含まれていないため、請負契約に当たらなければ印紙税が課税されないように見えますが、そうではありません。
委任契約・準委任契約であっても、印紙税額一覧表の第7号文書の「継続的取引の基本となる契約書」に該当する場合は、印紙税を納付する義務があります。
この場合、1通につき4,000円の収入印紙が必要です。
4.3 請負契約にも継続的取引契約にもいずれも当たらない場合
請負契約でもなく、また委任契約・準委任契約に分類される契約書であっても継続的取引契約に該当しなければ、原則として収入印紙は不要です。
ただし、契約の内容に見落としがないかは確認した方が良いでしょう。
5.2024年11月1日に施行される「フリーランス新法」で業務委託契約書の見直しが必要な場合も
2024年11月1日に施行される「フリーランス新法」により、業務委託契約書を見直す必要がある場合も出てきます。フリーランスに業務を委託する事業者は、フリーランスに業務委託をした場合には直ちに、契約条件を書面や電磁的方法で明示する義務を負うためです(フリーランス新法3条)。
明示を義務付けられている具体的な契約条件については、下記の関連記事からご確認ください。
6. 無料でダウンロードできる「業務委託契約書公式テンプレートWordファイル」
今回ご紹介した業務委託契約書公式テンプレートのWordファイル版は、以下DLフォームより無料でご提供しています。
- 業務委託基本契約書
- 業務委託個別契約書
の2つを、1つのWordファイルにまとめたものとなっています。
業務委託契約書の作成、送付には、人件費や郵送費に加え、保管費用や印紙税等のさまざまなコストがかかります。
一方、書面で締結するのではなく電子契約を利用すれば、契約書を簡単に作成でき、郵送費もかからず、収入印紙も不要です(関連記事:収入印紙が電子契約では不要になるのはなぜか?—印紙税法の根拠通達と3つの当局見解)。さらに契約締結がスピーディになり、締結済み契約書はクラウド上でいつでも・どこからでも検索してアクセスすることができます。
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今すぐ相談この記事を書いたライター
弁護士ドットコムクラウドサイン事業本部リーガルデザインチーム 橋詰卓司
弁護士ドットコムクラウドサイン事業本部マーケティング部および政策企画室所属。電気通信業、人材サービス業、Webサービス業ベンチャー、スマホエンターテインメントサービス業など上場・非上場問わず大小様々な企業で法務を担当。主要な著書として、『会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A』(日本加除出版、2021)、『良いウェブサービスを支える 「利用規約」の作り方』(技術評論社、2019年)などがある。