委任契約書に収入印紙は必要?判断基準や金額一覧を解説
委任契約とは法律行為にかかわる業務を外部に委託する際に締結する契約です。例として、弁護士や税理士といった専門家に法律行為を有償で依頼する場合に締結されます。
この委任契約書を作成する際、収入印紙が必要かどうか判断に迷う場面もあるでしょう。印紙税を見落とすと後々の税務リスクにもつながるため、正しい知識が必要になります。
本記事では、委任契約に収入印紙が必要かどうかを判断する基準や、金額の目安、貼り方・消印の注意点をわかりやすく解説します。
契約業務を担当する方、法務・総務部門で契約書の管理をする方は、ぜひ参考にしてください。
目次
委任契約書に収入印紙は必要?
委任契約書に収入印紙が必要かどうかは、その契約書が法律上の「課税文書」に該当するかによって決まります。課税文書とは、印紙税が課税される文書のことで、国税庁の公式サイトにある「印紙税額一覧表」から課税文書に該当するかどうかを確認できます。
結論としては、「印紙税額一覧表」には委任契約に関する記述がないため、一般的な委任契約書の場合、収入印紙は不要です。
ただし、委任契約書の内容が第1号文書または第7号文書の課税文書に該当する場合には収入印紙が必要になるため注意が必要です。
なお、電子契約サービスを利用して契約書を締結する場合や契約書が電子データ(PDFなど)で作成された場合は、印紙税の対象外となります。紙での契約書作成と電子契約では、印紙税の取り扱いが大きく異なる点に注意しましょう。
「そもそも委任契約とはどのような契約なのか確認したい」という場合には下記記事も参考にしてみてください。
印紙税が課される委任契約書の具体例
前述の通り、委任契約書すべてに印紙が必要というわけではありません。では、どのような契約書が課税対象になるのでしょうか?
ここでは印紙税法における分類に基づき、印紙税が課される委任契約書の具体的なケースを見ていきましょう。
なお、作成した委任契約書が第1号文書または第7号文書の課税文書に該当するかどうか判断できない場合や判断が難しい場合には、弁護士などの専門家に問い合わせるようにしてください。
第1号文書に該当する場合
国税庁の「印紙税額一覧表」によると、第1号文書は以下のように定義されています。
- 不動産、鉱業権、試掘権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
- 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
- 消費貸借に関する契約書
- 運送に関する契約書
委任契約の場合、たとえば知的財産権などの無体財産権の譲渡に関する内容が含まれている場合は、印紙税法上の第1号文書として課税対象となります。
第7号文書に該当する場合
国税庁の「印紙税額一覧表」によると、第7号文書は以下のように定義されています。
- 継続的取引の基本となる契約書
具体的には、売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約定書などが第7号文書に該当するため、委任契約であってもこれらの契約に該当する場合には第7号文書に該当するため、収入印紙が必要になります。
ただし、 契約期間が3か月以内かつ更新の定めのないものは第7号文書には該当しないため、収入印紙は必要ない点に注意が必要です。
「継続的取引の基本となる契約書」の考え方を確認したい場合には国税庁の公式サイトもご一読ください。
委任契約書に必要な収入印紙の金額一覧表
委任契約書の内容が1号文書または7号文書に該当する場合には、収入印紙が必要になるため、ここではその場合の収入印紙の金額一覧をご紹介します。
1号文書の場合は契約書に記載された金額の範囲によって必要な収入印紙額が異なる点に注意してください。
【1号文書または7号文書の収入印紙金額一覧表】
契約金額 | 印紙税額 | 軽減措置対象の印紙税額※ | |
---|---|---|---|
1号文書 | 1万円未満 | かからない | (軽減措置対象なし) |
1万円〜10万円 | 200円 | (軽減措置対象なし) | |
10万円〜50万円 | 400円 | 200円 | |
50万円~100万円 | 1,000円 | 500円 | |
100万円~500万円 | 2,000円 | 1,000円 | |
500万円~1,000万円 | 1万円 | 5,000円 | |
1,000万円~5,000万円 | 2万円 | 2万円 | |
5,000円~1億円 | 6万円 | 6万円 | |
1億円~5億円 | 10万円 | 10万円 | |
5億円~10億円 | 20万円 | 20万円 | |
10億円~50億円 | 40万円 | 40万円 | |
50億円を超えるもの | 60万円 | 60万円 | |
契約金額の記載のないもの | 200円 | (軽減措置対象なし) | |
7号文書 | 一律 | 4,000円 | (軽減措置対象なし) |
※「不動産の譲渡に関する契約書」の場合、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成されるものは、記載された契約金額に応じ、右欄のとおり印紙税額が軽減されています。
参考:「印紙税額一覧表|国税庁」
印紙税の金額は定期的に改定されることもあるため、国税庁の公式サイトから最新情報を参照しましょう。
なお、委任契約書以外の書類の収入印紙金額を確認したい方は「契約書に貼る収入印紙の金額はいくら必要?種類ごとに解説|一覧あり」も参考にしてみてください。
印紙を貼り忘れたら?過怠税のリスクと対処法
印紙を貼り忘れた場合、税務上のペナルティが発生します。税務調査を受けた際に収入印紙の貼り忘れが発覚した場合は、実際に貼り付けるべきだった収入印紙の3倍に相当する額が過怠税として徴収されます。
印紙税法第20条において、印紙税を納付しなかった場合の過怠税について以下のように規定しているためです。
(印紙納付に係る不納税額があつた場合の過怠税の徴収)
第二十条 第八条第一項の規定により印紙税を納付すべき課税文書の作成者が同項の規定により納付すべき印紙税を当該課税文書の作成の時までに納付しなかつた場合には、当該印紙税の納税地の所轄税務署長は、当該課税文書の作成者から、当該納付しなかつた印紙税の額とその二倍に相当する金額との合計額に相当する過怠税を徴収する。
具体例を挙げると、200円の印紙を貼り忘れた場合には600円が過怠税として課される可能性があります。場合によっては、税務調査によって過去の契約書に遡って追徴されることもあるため、注意が必要です。
ただし、自主的に納付していないことを申し出たときは、過怠税が1.1倍まで軽減される措置が適用されます。
また、収入印紙に消印がなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されます。
契約書への収入印紙の貼り方を知りたい場合は下記記事も参考にしてみてください。
印紙の貼付と消印の方法
収入印紙を貼る際は、作成した契約書に必要な印紙税額分の収入印紙を糊付けして貼付します。納めるべき印紙税額の合計金額に達していれば、複数の収入印紙に分けて貼り付けても問題ありません。
収入印紙を貼る場所は法律的には決まっていませんが、契約書の表紙または契約書のタイトル部分の左右どちらかの余白に貼るのが一般的です。
収入印紙を貼付したら、その文書の作成者が自分で消印を行ないます。印影又は署名等で「消印」することで印紙税を納付することが、法令によって定められているためです(印紙税法第8条第2項、印紙税法施行令第5条)。
消印については、収入印紙と契約書本体にまたがる形でおこないます。法令上は、必ずしも印影(ハンコ)を用いなくてもよく、収入印紙にかかるように何らかの署名を行なっておくことでも可とされています。
ただし、署名の場合は氏名・通称・商号等を表すものである必要があり、記号や斜線では消印とはみなされませんので、注意が必要です。(印紙税法基本通達第65条)。
委任契約書を電子契約で締結した場合は収入印紙は不要に
書面の内容によっては収入印紙が必要になる委任契約書ですが、実は「電子契約サービス」を利用して書面を電子化し、契約締結する場合は収入印紙の貼付が不要になります。
印紙税において課税文書の作成は用紙、つまり紙の書面への記載によるものと定義されており、電子契約に対しては印紙税はかからないためです。
また、電子契約サービスの導入による効果は印紙代の削減に限りません。従来の紙の契約書を電子化するため、紙代や印刷費、郵送費、人件費も削減できる上、契約締結までのリードタイムも削減可能です。
【クラウドサイン導入によるコスト削減のイメージ図】
収入印紙の貼り忘れや貼り間違いのリスクを回避しつつ、スムーズな契約プロセスを実現するために、電子契約の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
当社の提供する「クラウドサイン」は、電子署名を電子ファイルに施し、スピーディーかつ安全に当事者間の合意の証拠を残すことのできる電子契約サービスです。導入社数250万社以上、累計送信件数 1000万件超の国内シェアNo1の電子契約サービスとして、業界業種問わず多くの方にご利用いただいております。
なお、クラウドサインでは契約書の電子化を検討している方に向けた資料「電子契約の始め方完全ガイド」も用意しています。電子契約を社内導入するための手順やよくある質問をまとめていますので、電子契約サービスの導入を検討している方は以下のリンクからダウンロードしてご活用ください。
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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
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