委任契約とは? 準委任契約・請負契約との違いや締結時の注意点を解説
委任契約とは法律行為にかかわる業務を外部に委託する際に締結する契約です。ビジネスの現場では締結する機会が少なくない委任契約ですが、具体的な定義や準委任契約・請負契約との違いを理解しておかなければ、締結後にトラブルを招く可能性があります。
当記事では、委任契約の基本から、準委任契約・請負契約との違い、契約時に気を付けるべきポイントやリスクを解説します。外部への業務の委託を検討している人は確認しておきましょう。
委任契約とは
委任契約とは、法律行為にかかわる業務を外部に委託する際に締結する契約です。具体例としては、訴訟行為代理を弁護士に依頼したり、確定申告を税理士に依頼したりといった法律行為を有償で依頼する場合が挙げられます。
委任契約は民法643条で次のように規定されており、委任者が受任者に対して法律行為をすることを依頼し、受任者がこれを承諾することで成立します。
(委任)
第六百四十三条
当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約
出典:民法(明治二十九年法律第八十九号)|e-GOV 法令検索
委任契約の特徴として、受任者が委任者のために行動することや、仕事の完成ではなく業務遂行そのものが求められる点が挙げられます。

法律行為にかかわる業務を外部に委託する際は委任契約を締結する
委任契約では、委任者が業務の指示や意思決定を行い、受任者がそれに基づき業務を遂行します。民法により受任者には「善管注意義務」が課されています。
善管注意義務とは、委任された業務に対して通常要求される注意を払う義務のことです。つまり、受任者には委任された業務を適切に遂行する責任があるということになります。
なお、下記の図で示されている通り、委任契約は業務委託契約に含まれる契約のひとつです。
委任契約に似た言葉としては「準委任契約」や「請負契約」が挙げられます。次項からは委任契約とそれらの契約の違いを詳しく解説するので、確認しておきましょう。
準委任契約との違い
委任契約と準委任契約との違いは、法的な定義にあります。
委任契約は前述の通り民法第643条に基づくもので、特定の法律行為を他者に任せるための契約です。一方の準委任契約は法律行為以外の事実行為を含む広範な活動を委託するための契約で、法律行為に関与しない点で委任契約と異なります。
【委任契約と準委任契約との違い】
委任契約 | 準委任契約 |
---|---|
特定の法律行為を他者に任せるための契約 | 法律行為以外の業務の遂行を目的とした契約 |
準委任契約はコンサルティング業務などの専門的なアドバイスを必要とする業務に広く適用されます。それに対して、委任契約は代理権授与など法律上の代理行為が主な対象です。
報酬の支払い方法や基準においても、両者は異なったアプローチをとります。委任契約は法律行為の遂行が報酬の対象となるため、業務の完了後に支払われる形態が一般的です。
一方、準委任契約では業務遂行の過程が重視され、時間ごとの報酬や一定期間における成果に応じた報酬体系が採用されることが多いです。
このように、契約の種類によって報酬の対象が異なるため、いずれの契約であっても契約時に報酬条件を明確にし契約当事者双方の合意を得ることが重要になるでしょう。
なお、準委任契約についてより詳しく知りたい方は下記記事も確認してみてください。
請負契約との違い
委任契約は、受任者が自己の裁量で業務を遂行する自由度が高い点が特徴です。一方、請負契約は特定の成果物を完成させることを目的とし、請負人がその完成責任を負います。つまり、委任契約では業務遂行の過程が重視され、請負契約では最終的な成果物を完成させることそのものが重視されるという違いがあります。
【委任契約と請負契約との違い】
委任契約 | 請負契約 |
---|---|
業務の過程が重視され、業務遂行に費やした時間や労力に対して報酬を支払う契約 | 最終的な成果物や、業務遂行の結果に対して報酬を支払う契約 |
リスクの所在に関しても、両契約は異なります。委任契約では、受任者に業務遂行における注意義務が課され、業務の質に応じて責任が問われることがあります。一方請負契約では、請負人が成果物の完成責任を持ち、完成しない場合には契約不履行と見なされ、損害賠償の請求を受ける可能性があります。
さらに、報酬の支払い基準にも違いがあります。委任契約では業務の過程が評価されるため、基本的に業務遂行に費やした時間や労力が報酬の基準となります。
一方で請負契約では、完成された成果物の対価として報酬が支払われるため、成果物の質が報酬に大きく影響します。成果物に不備がある場合には、請負人が修繕や作り直しなどの責任を負う必要がある点にも注意が必要です。
なお、準委任契約と請負契約の違いも知りたい方は下記の記事もご一読ください。
委任契約を締結する際には、具体的な業務範囲や責任の範囲を契約書に明記することが重要です。これにより、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
加えて、委任者と受任者の間で効率的なコミュニケーション方法を確立し、定期的な報告義務を設けることも欠かせません。業務の進捗状況を双方で把握しやすくすることで、プロジェクトの透明性が高まり、委任者の不安も生まれにくくなるでしょう。
委任契約を締結する際の注意点
委任契約を締結する際には、具体的な業務範囲や責任の範囲を契約書に明記することが重要です。これにより、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
加えて、委任者と受任者の間で効率的なコミュニケーション方法を確立し、定期的な報告義務を設けることも欠かせません。業務の進捗状況を双方で把握しやすくすることで、プロジェクトの透明性が高まり、委任者の不安も生まれにくくなるでしょう。

委任契約では契約の当事者同士で業務の進捗を共有することが重要になる
また、契約期間や終了条件、更新手続きについても契約書内で詳細に記載し、双方の合意を得ておくことが求められます。
さらに、報酬の支払い条件や支払い方法についても具体的に取り決めておくことで支払いに関する誤解を防ぐことができます。これらの点をしっかりと確認しながら契約を締結することで、長期的に良好な関係を築くことが可能になるでしょう。
業務内容などの取り決めは契約締結前に行なう
委任契約においては業務内容を明確に決めておき、契約当事者双方の認識を一致させることが不可欠です。業務範囲が不明瞭なまま契約が進行すると、後々のトラブルの原因となり得るためです。したがって、事前の協議で業務の詳細な範囲を具体的に設定することが重要となります。
たとえば、具体的な業務内容や遂行にかかる時間、必要な人員などを明確にすることで、双方の期待値を合わせます。
さらに、契約締結前にどのような条件下で業務を遂行するのか、を明示的に合意しておくべきです。
合意事項をすべてクリアにしておくことで、後々の認識のズレの発生や契約当事者からの不満を避けることができ、円滑な契約履行が可能となります。
収入印紙が必要な場合もある
基本的に委任契約書に印紙は不要ですが、ある特定の条件を満たす場合では収入印紙を貼り付ける必要があります。収入印紙を貼り付けるかどうかは、契約内容の実質的な意味に応じて判断されるからです。
たとえば、業務委託契約のような継続的な取引が基本となる「7号文書」の契約書に該当する場合は印紙が必要になるため、1通あたり4,000円の収入印紙を用意しておく必要があります。
なお、収入印紙を貼らなかった場合には未納分に対する過怠税が発生するなどの税務上のペナルティが課される可能性があるため、委任契約の内容に応じて収入印紙の要否を判断し、慎重に契約を進めましょう。
収入印紙の要否や必要な収入印紙額を確認する際に判断に迷った場合には、税理士などの専門家に相談するか税務署に確認をするのがよいでしょう。
契約書に貼る収入印紙の金額について詳しく知りたい方は下記記事もご一読ください。
委任契約に必要な7項目
委任契約に必要な項目としては次の7つが挙げられます。委任契約書を作成する際の参考にしてみてください。
【委任契約に必要な7項目とその概要】
委任契約に必要な項目 | 概要 |
---|---|
委任する業務内容とそれに伴う責任の範囲 | 後々のトラブルを防ぐために、どのような業務を委任するのかと その責任の範囲を明確にする |
契約期間 | 契約の開始日と終了日のほか、 契約更新の見込みがある場合には契約の更新に関する条件や手続きを記載する |
報酬金額・支払の方法と期日 | 委任業務への報酬金額とその支払い方法、いつまでに支払うのかを記載する。 トラブル防止のために着手金の有無など、支払いに関する詳細を記載する場合もある |
諸経費の負担 | 業務遂行時の諸経費を委託側と受託側のどちらが負担するかを記載する |
知的財産権の所在 | 成果物が発生する場合には知的財産権が誰に帰属するのかの所在を明確に記載する |
損害賠償の有無および範囲 | 委任契約で定めた内容から逸脱した行為や何らかの不正を防ぐために、 損害賠償の有無や条件などを記載する |
契約解除の方法 | 契約締結後に契約の解除が発生する場合に備えて、 契約解除に関する取り決めを記載する |
委任契約に記載する項目としては上記の7項目が挙げられますが、委任契約を締結する場合、自社の秘密情報が外部に漏洩することを防ぐために、秘密保持契約(NDA)も締結するのが一般的です。
秘密保持契約(NDA)について詳しく知りたい方は下記記事もご一読ください。
業務範囲が不明確なまま契約を締結した場合、後々のトラブルへと発展する可能性があるため、契約当事者間の事前協議を通じて、契約書内に業務の詳細な範囲を具体的に設定するように心がけましょう。
委任契約書の電子化で送付・締結・管理の効率化を
委任契約書を電子化することで、送付・締結・管理業務の効率化が実現可能です。
紙の書類の場合、印刷や郵送、ファイリングといった事務作業が必要になりますが、電子化することでこれらの事務作業を省略できるメリットがあります。
また、紙の書類の場合は紛失のリスクもありますが、電子化によりオンライン上に委任契約書のデータを保管できるため、万が一の紛失も避けられます。
ファイル名や日付での検索も可能になり、書類管理の側面でもメリットがあるため、電子化への対応を検討するのも選択肢のひとつです。電子化の際に利用するサービスによっては契約の有効期限や更新時期を自動で通知する設定ができるため、書類管理の効率化にも貢献します。
委任契約書の電子化は効率的かつ効果的な契約管理を実現するため、ビジネス全般において競争力を高める一助となるでしょう。
電子契約サービスでも委任契約書を送付・締結・管理できる
電子契約サービスでも委任契約書を電子化し、送付・締結・管理が可能です。電子契約サービスとは、インターネットなどの情報通信技術を用いて、契約を電子データとして作成し、締結する方法です。
電子契約サービスを導入することで、場所や時間にとらわれず契約を締結できるようになるうえ、締結から保管に至るまでのプロセスをオンラインで完結できるようになります。この結果、時間や費用コストの節約だけでなく、人為的ミスの軽減も期待できます。
【電子契約を導入するメリット】
- コスト削減できる
- 業務効率化につながる
- コンプライアンスが強化される
- 契約書保存・管理が効率化される
当社の提供する電子契約サービス「クラウドサイン」は導入社数250万社以上、累計送信件数1000万件超の実績を持つ電子契約サービスです。書類の受信者側はクラウドサインに登録する必要がないため、同意書の提出先に準備の負担をかけることなく契約締結が可能になります。
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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
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