これからの100年、新しい契約のかたち。

法律・法改正・制度の解説

【2026年4月・10月施行】労働施策総合推進法改正のポイントを弁護士が解説

2026年には、4月と10月の2回に分けて労働施策総合推進法の改正が施行されます。

特に2026年10月から施行されるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化は、多くの企業が影響を受ける重要事項です。労働施策総合推進法改正の内容を踏まえたうえで、自社の事業内容に応じたカスハラ対策を講じましょう。

本記事では、2026年中に施行される労働施策総合推進法改正の内容や、改正に伴って事業者がとるべき対応などを弁護士が解説します。

【2026年4月・10月施行】労働施策総合推進法改正とは

今回の労働施策総合推進法改正は、2025年の国会で成立し、2026年中の施行が予定されています。改正の主な目的は、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策を強化することです。

公布日・施行日

今回の労働施策総合推進法改正の公布日および施行日は、次のとおりです。

公布日・施行日
公布日:2025年6月11日
施行日:2026年10月1日
※一部の規定は公布日から施行、治療と仕事の両立支援の推進に関する規定は2026年4月1日から施行

主な改正点一覧

今回の労働施策総合推進法改正による主な変更点は、次の2つに大別されます。

【2026年4月施行】治療と仕事(就業)の両立支援の推進
病気やけがを抱えている労働者が、その治療と仕事を両立できるように、事業主に対して支援を行う努力義務を課すなどの改正が行われました。【2026年10月施行】ハラスメント対策の強化
近年問題となっているカスタマーハラスメント(カスハラ)を中心に、企業におけるハラスメントを防止するための改正が行われます。

【2026年4月施行】治療と仕事(就業)の両立支援の推進

2026年4月1日から、治療と仕事(就業)の両立支援の推進に関する規定が施行されました。病気やけがを抱えている労働者が、その治療と仕事を両立できるようにサポートするための規定です。

事業主は、病気やけがなどの治療を受けている労働者について、その治療と就業との両立を支援するために必要な措置を講ずるよう努めなければなりません(法27条の3第1項)。

事業主が講ずべき治療と仕事の両立支援措置については、厚生労働大臣が指針を定めて公表しています(同条2項)。同指針においては、両立支援を行うに当たっての留意事項や求められる環境整備、実際の両立支援の進め方などについての考え方が示されています。

参考:治療と仕事の両立について|厚生労働省

治療と仕事の両立支援措置はあくまでも努力義務であるため、実施しなくても具体的なペナルティはありません。ただし、厚生労働大臣は上記指針に従い、事業主などに対して必要な指導や援助などを行うことができます(同条4項)。

企業としては、働きやすい職場づくりや離職防止などの観点から、適切に治療と仕事の両立支援措置を講じることが求められます。

【2026年10月施行】ハラスメント対策の強化

2026年10月1日から、ハラスメント対策の強化に関する規定が施行されます。特に企業にとって重要となるのは、カスタマーハラスメント(カスハラ)を防止する措置が義務付けられる点です。

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは

今回の改正により、次の(1)(2)の要件をいずれも満たす言動が「顧客等言動」と定義されました(改正法33条1項)。これは一般に「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ばれるものです。

(1)職場において行われる、顧客等の言動であること
(2)事業主の雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること
(3)労働者の就業環境が害されること

「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所を指します。普段就業している場所のほか、取引先の事務所・打ち合わせに用いる飲食店・顧客の自宅なども、業務を遂行する場所であれば「職場」に該当します。

「顧客等」とは、顧客・取引の相手方・施設の利用者など、事業主の行う事業に関係を有する者をいいます。たとえば店舗に来店する客や、取引先の担当者などが「顧客等」に当たります。

「労働者」には、正社員だけでなく、パート・アルバイトや契約社員などの非正規社員も含まれます。派遣労働者については、派遣元事業主だけでなく、派遣先においてもカスハラ防止措置の対象となります。

顧客等言動(カスハラ)に当たるかどうかは、その言動が「社会通念上許容される範囲を超えたもの」であるか否かによって決まります。言動の内容が契約内容からして相当性を欠く場合、または言動の手段や態様が相当でない場合は、社会通念上許容される範囲を超えていると判断します。

たとえば次に挙げる顧客等の言動は、社会通念上許容される範囲を超えており、顧客等言動(カスハラ)に当たる可能性が高いと考えられます。

①言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの
(a)正当な理由がない、または商品やサービス等と全く関係のない要求
(例)性的な要求、労働者のプライバシーに関わる要求(b)契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
(例)契約内容を著しく超えたサービスの提供の要求(c)対応が著しく困難または不可能な要求
(例)契約金額の著しい減額の要求(d)不当な損害賠償の要求
(例)商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償の要求②言動の手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの
(a)身体的な攻撃
(例)殴る、蹴る、叩く、物を投げつける、わざとぶつかる、唾を吐きかける(b)精神的な攻撃
(例)脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要

(c)威圧的な言動
(例)大きな声をあげて労働者や周囲を威圧する、反社会的な言動を行う

(d)継続的、執拗な言動
(例)同様の質問を執拗に繰り返す、話をすり替える、揚げ足を取る、執拗に責め立てる、同様のメールを執拗に繰り返し送り付ける

(e)拘束的な言動
(例)不退去、居座り、監禁、長時間にわたる電話

カスハラ防止措置の義務付け 事業主が講ずべき措置の内容は?

2026年10月1日以降、事業主には顧客等言動(カスハラ)によって労働者の就業環境が害されることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(改正法33条1項)。

事業主が講ずべき措置等に関して、厚生労働大臣は指針を公表しています(同条4項)。同指針では、事業主に対して次の措置を講じることを求めています。

(1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
職場におけるカスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化したうえで、その方針を労働者に対して周知することが求められます。
職場において想定し得るカスハラの内容や、それが発生した場合の対処についても事前に明示し、労働者に対して周知することが期待されます。(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
社内または社外に相談窓口を設置することが求められます。また、相談担当者が適切に対応できるように、関係部門との連携体制や対応マニュアルの整備、研修の実施などが期待されます。(3)職場におけるカスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
実際にカスハラに関する相談を受けた際には、事実関係を迅速かつ正確に確認したうえで、被害者に対する配慮や再発防止に向けた措置をとることが求められます。(4)職場におけるカスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
悪質なカスハラへの対処方針を定めて労働者に周知するとともに、その方針に従った対処ができるような体制を整備することが求められます。
対処の内容としては、警察への通報や警告文の発出、商品販売やサービス提供の中止、出入り禁止、民事保全法に基づく仮処分命令の申立てなどが挙げられます。

(5)(1)から(4)までの措置と併せて講ずべき措置
相談者のプライバシーを保護するための措置を講じたうえで、その旨を労働者に周知することが求められます。
また、カスハラについて相談をしたことなどを理由に、労働者が解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定めて、労働者に周知・啓発することが期待されます。

参考:事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針|厚生労働省

カスハラの相談をした労働者を不利益に取り扱ってはならない

労働者がカスハラについて相談をしたことや、事業主の対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(改正法33条2項)。解雇や降格などを恐れて相談できないといった事態が生じないように、相談者に対する不利益な取扱いの禁止が法定されています。

事業主としては、カスハラ防止方針などにおいて、カスハラの相談等を理由に不利益な取扱いを受けることはない旨を明記し、労働者に対して十分に周知することが求められます。

カスハラ防止に関する事業主や労働者の責務

事業主と労働者はそれぞれ、カスハラ防止に関して次の努力義務を負います(改正法34条2項~4項)。

【事業主の努力義務】

  • 顧客等言動(カスハラ)に起因する問題に対する労働者の関心と理解を深めるとともに、労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をすること
  • 国が実施する広報活動や啓発活動などに協力すること
  • 自らも顧客等言動(カスハラ)に起因する問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うこと

【労働者の努力義務】

顧客等言動(カスハラ)に起因する問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うこと

  • 事業主の講ずるカスハラ防止措置に協力すること

労働施策総合推進法改正に関して、事業主がとるべき対応

今回の労働施策総合推進法改正に伴い、各企業は遅くとも2026年10月1日の施行までに、職場におけるカスハラ防止のための措置を講じる必要があります。厚生労働大臣が策定・公表している指針を参考に、自社の状況や事業内容に適したカスハラ対策を検討・実施してください。

厚生労働大臣の指針においては、カスハラを容認しない方針を明確化することが求められています。その具体策の一つとして、取引先との契約書やサービスの利用規約に「カスハラ禁止条項(不当要求の排除条項)」を新たに盛り込む企業が増えてきました。

しかし、取引先の多い企業では対象となる契約が多数にのぼり、紙の契約書では押印や郵送、保管などに相応の手間がかかります。

このように、既存の契約にカスハラ禁止条項を追加する場合や、カスハラ禁止条項を含む契約を新たに締結する場合は、電子契約サービスを利用するのが便利です。

すでに250万社以上が導入している電子契約サービスの「クラウドサイン」を活用すれば、カスハラ禁止条項を盛り込んだ契約をオンライン上でスピーディかつ安全な形で締結でき、多数の取引先への送付もまとめて行えます。その上、締結済みの契約もクラウド上で一括して管理できるため、条項を追加・変更した契約を後から確認しやすい点もメリットです。

カスハラ対策の実施に当たり、取引先との契約内容を見直そうと考えている企業は「クラウドサイン」の導入・活用をご検討ください。

まとめ

2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法によって企業にカスハラ対策が義務付けられます。

具体的には、カスハラを容認しない方針の明確化と労働者への周知・啓発、労働者向けの相談窓口の設置、カスハラ発生時の迅速かつ適切な対応などが求められます。各企業においては、厚生労働大臣が策定・公表している指針を踏まえつつ、自社の状況や事業内容に合ったカスハラ対策を講じなければなりません。

カスハラ対策の一例として、取引先との契約に「カスハラ禁止条項(不当要求の排除条項)」を盛り込むことが考えられます。

多数の取引先との契約を見直す場面では、「クラウドサイン」などの電子契約サービスを活用することで、契約の締結や管理を効率的に進められます。 契約管理業務の効率化やセキュリティの強化などに役立つので、未導入の企業は「クラウドサイン」の導入をご検討ください。

なお、当社では電子契約の導入から運用までを網羅した資料「電子契約の基礎知識」をご用意しております。

「電子契約のメリットを知りたい」「法的に有効な契約方法を知りたい」といった疑問をお持ちの方は、以下のリンクから無料でダウンロードが可能ですので、ご活用ください。

「電子契約の基礎知識」
無料ダウンロード
無料ダウンロード無料ダウンロード

クラウドサインではこれから電子契約を検討する方に向け、電子契約の基礎知識をまとめた資料をご用意しました。電子契約について詳しく知りたい方はダウンロードしてご活用ください。

ダウンロードする(無料)

icon book

機能や料金体系がわかる

資料ダウンロード(無料)
icon book

詳しいプラン説明はこちら

今すぐ相談

この記事を書いたライター

アバター画像

阿部 由羅

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

こちらも合わせて読む

クラウドサインに関して、
ご不明な点がございましたら
お気軽にお問い合わせください

icon book

お役立ち資料

「3分でわかるクラウドサイン」の資料を
お読みいただけます
資料ダウンロード(無料)
icon mail

お問い合わせ

クラウドサインに関するご不明点や
ご質問にお答えします
問い合わせる
icon pc

お見積もり

お客さまの状況に合わせ、
最適な料金プランをご案内いたします
見積もりを依頼する
icon pc

フリープラン

基本的な機能をお試しいただけます
無料ではじめる