【無料ひな形付き】債権譲渡契約書とは?主な記載事項や作成時の注意点を弁護士が解説

他人に対して債権を譲渡する場合、または他人から債権を譲り受ける場合には「債権譲渡契約書」を締結します。譲渡する債権を明確に特定したうえで、代金や表明保証などの契約条件を適切に定めましょう。
本記事では債権譲渡契約書について、主な記載事項や作成時の注意点などを弁護士が解説します。
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ダウンロードする(無料)債権譲渡契約書とは
「債権譲渡契約」とは、一方当事者が相手方に対して債権(=他人に対して一定の行為を請求できる権利)を譲渡し、相手方がこれを譲り受ける契約です。
債権を譲渡する側は「譲渡人」、譲り受ける側は「譲受人」などと呼ばれます。債権譲渡の実行後は、譲渡人に代わって譲受人がその債権を行使できるようになります。
「債権譲渡契約書」は、債権譲渡契約の内容を記載した文書です。当事者間のトラブルを予防するため、債権譲渡の条件を明確に定めることが求められます。
【例文あり】債権譲渡契約書の主な記載事項
債権譲渡契約書には、主に次の事項などを記載します。
②譲渡代金
③書類の交付
④対抗要件の具備
⑤表明保証
⑥債務者の支払能力に関する事項
⑦その他
各事項につき、条文例を示しながら解説します。なお条文例では、甲が債権を譲渡する側(=譲渡人)、乙が債権を譲り受ける側(=譲受人)を指します。
債権の譲渡
第1条 (債権の譲渡)
- 甲は乙に対し、下記の債権(以下「本債権」という。)を譲り渡し、乙はこれを譲り受ける(以下「本譲渡」という。)。
記
① 債権の発生原因
○○と△△の間の〇年〇月〇日付「○○契約書」(以下「原契約」という。)
② 債務者
△△(以下「債務者」という。)
③ 債権の範囲
原契約に基づき、甲が債務者に対して現に有し、又は将来において取得する一切の債権 - 本譲渡の効力は、乙の甲に対する譲渡代金(次条第1項で定義する。)の支払いの完了と同時に生ずるものとする。
債権を特定したうえで、その債権を譲渡する旨を記載します(1項)。発生原因・債務者・債権の範囲など、他の債権と区別するために必要十分な情報を明記しましょう。
債権譲渡の効力発生は、譲渡代金の支払いと同時履行とするのが一般的です(2項)。
譲渡代金
第2条 (譲渡代金)
- 本譲渡に係る譲渡代金(以下「譲渡代金」という。)は〇〇円とする。
- 乙は甲に対し、本契約締結日において、甲が別途指定する銀行口座に振り込む方法により譲渡代金を支払うものとする。振込手数料は乙の負担とする。
譲渡代金について、金額・支払期日・支払方法などを定めます。銀行振込の場合は、振込手数料の負担者も明記しておきましょう。
書類の交付
第3条 (書類の交付)
- 甲は、本譲渡に先立ち、乙に対し、本債権に係る一切の重要な書類(原契約に係る契約書を含むが、これに限らない。)を交付しなければならない。
- 乙は、甲から前項に定める書類の交付を受けない限り、甲に対して譲渡代金を支払う義務を負わない。
譲渡人から譲受人に対し、譲渡する債権に関する重要な書類の交付を義務付ける旨を定めます(1項)。主には債権の発生原因である契約に係る文書(契約書など)が挙げられますが、それ以外にも重要な書類があれば交付する必要があります。
重要な書類の交付は、譲受人の代金支払義務発生の前提条件としておきましょう(2項)。
対抗要件の具備
第4条 (対抗要件の具備)
- 甲は、本譲渡に係る対抗要件を具備するため、本譲渡の効力が発生した日(以下「効力発生日」という。)と同日付で(当該日における通知が実務上不可能又は困難である場合は、当該日の翌営業日付で)、債務者に対し、確定日付のある証書により、本譲渡をした旨を通知するものとする。
- 甲は、前項の通知をしたときは、直ちに乙に対し、当該通知に用いた確定日付のある証書の写し(謄本を含む。)を交付しなければならない。
譲受人が債権を譲り受けたことを債務者その他の第三者に対抗するためには、対抗要件を具備する必要があります。債権譲渡に関する対抗要件具備の方法は、次のとおりです。
・譲渡人の債務者に対する通知
・債務者の承諾【第三者対抗要件】
・確定日付のある証書による、譲渡人の債務者に対する通知
・確定日付のある証書による、債務者の承諾
・債権譲渡登記(法人が金銭債権を譲渡する場合に限る)
譲渡人が確定日付のある証書によって債務者に通知すれば、債務者対抗要件と第三者対抗要件をいずれも満たすことができます。
上記の条文例では、確定日付のある証書による債務者への通知(1項)、および通知に用いた証書の写しの譲受人に対する交付(2項)を譲渡人に義務付けています。
表明保証
第5条 (表明及び保証)
- 甲は乙に対し、本契約締結日及び効力発生日の各時点において(ただし、別途時点が明示されているときは当該時点において)、次に掲げる事項がいずれも真実かつ正確であることを表明し、保証する。
① 本債権は適法かつ有効に成立及び存続している。
② 甲は、本譲渡を適法かつ有効に行うために必要な一切の本債権に係る処分権限を有している。
③ 本債権に係る保全処分は行われておらず、又は本債権に係る強制執行若しくは担保権実行の手続きは開始されていない。
④ 本債権の行使に関し、債務者が法的に主張し得る相殺その他の抗弁は存在しない。
⑤ 本債権に関し、債務者は支払拒絶その他の異議を述べていない。
⑥ 本債権には、担保権その他の負担は設定されていない。
⑦ 前四号のほか、本債権の行使を法的に妨げる事象は発生していない。
⑧ 甲は、第3条第1項に基づき、乙に対し、本債権に係る一切の重要な書類を交付した。
⑨ 甲は、本契約の締結及び履行のために必要な権限及び権利能力を有している。
⑩ 甲は、本契約の締結及び履行について、適用ある法令等及び定款その他の社内規則上必要となる手続を全て履行している。
⑪ 本契約は、甲により適法かつ有効に締結されており、他の当事者により適法かつ有効に締結された場合には、甲の適法、有効かつ法的拘束力のある義務を構成し、法令等によりその履行が制限される場合を除き、各条項に従い甲に対して強制執行が可能である。
⑫ 甲による本契約の締結及び履行は、甲に適用される法令等、甲の定款その他の社内規程、甲に対する司法若しくは行政機関等の判断、又は甲が当事者となっている他の契約等に違反するものではない。 - 乙は甲に対し、本契約締結日及び効力発生日の各時点において(ただし、別途時点が明示されているときは当該時点において)、次に掲げる事項がいずれも真実かつ正確であることを表明し、保証する。
① 乙は、本契約の締結及び履行のために必要な権限及び権利能力を有している。
② 乙は、本契約の締結及び履行について、適用ある法令等及び定款その他の社内規則上必要となる手続を全て履行している。
③ 本契約は、乙により適法かつ有効に締結されており、他の当事者により適法かつ有効に締結された場合には、乙の適法、有効かつ法的拘束力のある義務を構成し、法令等によりその履行が制限される場合を除き、各条項に従い乙に対して強制執行が可能である。
④ 乙による本契約の締結及び履行は、乙に適用される法令等、乙の定款その他の社内規程、乙に対する司法若しくは行政機関等の判断、又は乙が当事者となっている他の契約等に違反するものではない。
「表明保証」とは、契約当事者が相手方に対し、一定の事項が真実かつ正確であることを表明・保証する条項です。
債権譲渡契約においては、特に債権の有効性や帰属(=譲渡人が完全な権利を有していること)などが取引の前提となります。したがって、これらの事項について譲渡人が表明保証を行うのが一般的です。
そのほか、契約を締結できる権限・能力や、契約締結に必要な手続きの履行などの一般的な事項を、譲渡人・譲受人の双方が表明保証します。
上記の条文例では、1項で譲渡人の表明保証、2項で譲受人の表明保証を定めています。債権に関する事項が含まれるため、譲渡人の表明保証の方が手厚くなっています。
債務者の支払能力に関する事項
第6条 (債務者の支払能力に係る免責事項)
本契約における他の定めにかかわらず、甲は乙に対し、債務者が本債権に係る債務を支払うために十分な支払能力を有することを保証しない。本譲渡の効力発生後、債務者の支払能力が不足することに起因して、本債権の回収に支障が生じたことにより乙に生じた損害は、乙が自ら負担するものとする。
債務者が支払能力を有しないために、譲渡した債権が回収不能となってしまうこともあります。その場合に、回収不能による損失を譲渡人・譲受人のどちらが被るかは重要な論点です。
一般的には、債権譲渡後の回収不能リスクは譲受人が負担するものとするケースが多いと考えられます。上記の条文例でも、譲渡人が債務者の支払能力を保証しない旨を定めることにより、回収不能リスクを譲受人に負わせています。
これに対し、譲渡債権が回収不能となった場合は譲渡人が補填する旨など、譲渡人に回収不能リスクを負わせることもあり得ます。
いずれにしても、回収不能リスクを考慮したうえで譲渡代金などを適切に定めることが求められます。
その他
債権譲渡契約書には上記のほか、次の事項などを定めます。
- 秘密保持
- 契約上の地位の譲渡等の禁止
- 印紙税の負担
- 損害賠償、危険負担
- 契約の解除
- 反社会的勢力の排除
- 合意管轄
など
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債権譲渡契約書を締結する際のチェックポイント
債権譲渡契約書の内容を検討する際には、特に次に挙げるポイントに留意してください。
②表明保証の内容・範囲をよく検討する
譲渡する債権を明確に特定する
債権譲渡契約では、譲渡する債権を他の債権と区別するために、必要十分な情報を記載しなければなりません。
発生原因・債務者・債権の範囲などによって特定するのが一般的ですが、債権の性質などに応じて個別に検討する必要があります。曖昧な領域が残らないように注意してください。
表明保証の内容・範囲をよく検討する
特に譲受人にとっては、譲り受けた債権を実際に行使できるかどうかが重要な関心事となります。債権の有効性や帰属などについて、充実した表明保証を定めることが望ましいです。
他方で譲渡人にとっては、表明保証の範囲が広すぎると、債権の行使について何らかの問題が生じた場合に予期せぬ損失を被ってしまうおそれがあります。債務者の支払能力など、自社ではコントロールできない部分の表明保証はできる限り拒否すべきでしょう。
このように表明保証の内容や範囲は、当事者双方の立場で慎重に検討することが求められます。
債権譲渡契約書に収入印紙は必要?
債権譲渡契約書を紙で締結する場合は、契約金額(=譲渡代金の額)が1万円未満である場合を除き、200円分の収入印紙を貼る必要があります。
これに対し、電子契約によって債権譲渡契約書を締結する場合は、収入印紙の貼付は不要です。
債権譲渡契約書についてよくある質問(FAQ)
契約によって譲渡が禁止されている債権でも、譲渡できますか?
契約で譲渡が禁止または制限されている債権も、有効に譲渡することができます(民法466条2項)。
ただし、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者はその債務の履行を拒むことができます(同条3項)。
また、預貯金債権については例外規定が設けられています。譲渡制限の意思表示がされたことを知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、預貯金債権の債務者(金融機関)は譲渡制限を対抗できます(ただし、その預貯金債権に対して強制執行をした差押債権者を除きます。民法466条の5第1項・第2項)。
譲渡した債権が回収できなかった場合、譲渡人は責任を負いますか?
債権が回収できなかった原因や、債権譲渡契約の定めなどによって取扱いが異なるため、一概に言えません。債権の有効性や帰属の不備、債務者の支払能力など回収不能の原因を特定したうえで、それを契約条項に当てはめて検討する必要があります。
まとめ
債権譲渡契約書を締結する際には、譲渡する債権を明確に特定したうえで、代金や表明保証などの条件を適切に定めましょう。特に回収不能リスクの分担については、表明保証条項や免責条項などを通じて明確化しておくことが大切です。
債権譲渡契約書は、電子契約によって締結することもできます。電子契約なら収入印紙を貼付する必要がなく、管理もしやすいので契約業務の効率化に繋がります。未導入の企業は、電子契約の導入を積極的にご検討ください。
この記事を書いたライター
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
