物品売買契約書とは?主な記載事項や注意点などを弁護士が解説

企業同士が物を売買する際には「物品売買契約書」を締結します。
物品売買契約書には、売買代金や引渡しの方法、検品の手続きや契約不適合責任などを定めます。契約条件が自社にとって不利益でなく適切であることを確認したうえで、明確な文言で物品売買契約書を作成しましょう。
本記事では物品売買契約書について、主な記載事項や注意点などを弁護士が解説します。
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「物品売買契約」とは、物を売買する際に締結する契約です。「物品売買契約書」は、物品売買契約の内容を明記した書面に当たります。
物品売買契約は口頭でも成立しますが、口約束だけではトラブルの原因になりかねません。合意の事実や内容を明確化するためには書面の作成が強く推奨されます。
実際に企業間で物品を売買する際には、トラブル防止の観点から物品売買契約書を締結するケースが大半です。

「物品売買契約書」を締結はトラブル防止に役立つ
物品売買契約書の締結に当たっては、売主・買主それぞれの立場で、契約条件が適切か、文言に曖昧な部分がないかなどをよく確認しましょう。
物品売買契約書の主な記載事項|例文も紹介
物品売買契約書には、主に次の事項を定めます。
②売買代金
③引渡し(納入)
④検品・所有権の移転
⑤契約不適合責任
⑥その他
各事項について、条文例を示しながら解説します。
売買をする旨・目的物
第1条 (物品の売買)
甲は、下記の物品(以下「本物品」という。)を乙に売り渡し、乙はこれを買い受けた(以下「本売買」という。)。
記
品名:○○
数量:○個
仕様:別紙記載のとおり
目的物を特定するための情報(品名・数量・仕様など)を記載したうえで、売主・買主間で売買する旨を定めます。
仕様については、詳細にわたる場合は別紙にまとめるのがよいでしょう。
売買代金
第2条 (売買代金)
1. 本売買の代金(以下「本代金」という。)は総額○○円(本物品1個当たり○○円、消費税及び地方消費税を含む。)とする。
2. 乙は甲に対し、○年○月○日(以下「売買実行日」という。)において、本物品の引渡しと引き換えに、別途甲が指定する銀行口座に振り込む方法によって本代金を支払う。振込手数料は乙の負担とする。
売買代金の金額や内訳、支払いの期日や方法などを定めます。
売買代金の支払いと物品の引渡しは、同時履行とするのが原則です。ただし、当事者の関係性や取引の性質などによっては、前払いまたは後払い(掛払い)とすることもあります。
引渡し(納入)
第3条 (本物品の引渡し)
甲は乙に対し、売買実行日において、本代金の支払いと引き換えに、甲が乙の事業所に持参又は配送する方法により、本物品を現実に引き渡すものとする。
目的物を引き渡す日時と方法を明記します。
上記の例では、引渡しの方法を買主の事業所への持参または配送と定めています。そのほか、売主の事業所にて買主が引き取る方法などもあります。
検品・所有権の移転
第4条 (検品、所有権の移転)
1. 乙は、甲から本物品の引渡しを受けた日の翌日から○営業日以内(以下「検品期間」という。)に検品(以下「検品」という。)を行い、その合否を甲に対して通知するものとする。
2. 乙は検品において、本物品の種類、品質又は数量が本契約に適合していないと合理的に判断した場合に限り、当該本物品を不合格とし、甲に対して本物品の納入のやり直しを命じることができる。
3. 前項にかかわらず、専ら乙の指示又は責任に起因して、本物品の種類、品質又は数量が本契約に適合しない状態となった場合は、乙は検品において、当該本物品を不合格とすることができない。
4. 検品期間内に、前三項に基づいて有効に行うことができる乙の不合格通知が甲に到達しなかったときは、本物品は検品に合格したものとみなす。
5. 本物品の所有権は、乙が第1項に基づき甲に対して検品の合格を通知した時、又は前項に基づき検品に合格したものとみなされた時に、甲から乙へ移転する。
買主が検品を行う場合は、その手続きやルールを定めます。
買主による検品は、契約で定められた条件に沿っているかどうかの観点から行われるべきです。売主としては、契約外の事情によってむやみに検品不合格を乱発されないように、合否の基準を契約上明記するよう求めましょう(上記2項~4項)。
検品を実施する場合、目的物の所有権は検品合格時に移転させるのが一般的です(上記5項)。
契約不適合責任
第5条 (契約不適合責任)
1. 引き渡された本物品の種類、品質又は数量が本契約に適合していないときは、乙は甲に対し、その責任(以下「契約不適合責任」という。)を追及できる。
2. 契約不適合責任の追及方法は、本物品の修補、代替物の引渡し若しくは不足分の引渡しの請求、本代金の減額の請求、損害賠償の請求又は契約の解除とする。各方法の具体的な要件及び手続きについては、本契約に別段の定めがない限り、民法の定めに従う。
3. 契約不適合責任を追及できる期間は、乙が甲から本物品の引渡しを受けた日の翌日から起算して○年間に限る。ただし、甲が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
「契約不適合責任」とは、売買契約の目的物の種類・品質・数量が契約に適合していない場合に、売主が買主に対して負う責任です。
民法では、買主は次のいずれかの方法によって契約不適合責任を追及できるものとされています。上記の例でも、民法の規定に従う旨を定めています(上記2項)。
・代金減額請求
・損害賠償請求
・契約の解除
契約不適合責任の期間は原則として、買主が不適合を知った時から1年とされています(民法566条)。ただし、契約によって異なる定めをすることもできます(上記3項)。
事業者間の物品売買契約であれば、契約不適合責任の期間の変更について特に制限はありません。これに対し、相手方が消費者(個人)である場合には、消費者契約法などによって期間変更が制限されることがあるのでご注意ください。
その他
上記のほか、物品売買契約書には次の事項などを定めます。
・危険負担
→売主と買主のいずれにも責任がなく目的物が滅失または損傷した場合につき、修補や契約の取り扱いなどを定めます。
・損害賠償
→契約違反によって生じた損害の賠償について、要件や範囲などを定めます。
・秘密保持
→売買に関してやり取りした秘密情報につき、第三者に対する開示や漏えいなどを禁止する旨を定めます。
・反社会的勢力の排除
→暴力団員等に該当しない旨の表明および保証、ならびに暴力的な要求行為などを行わない旨の誓約を定めます。
・準拠法
→契約の解釈および適用に当たって準拠する法を定めます。特に当事者の本国法が異なる場合は、準拠法を明確化することが大切です。
・合意管轄
→物品売買契約について紛争が生じた場合に、訴訟を提起する裁判所を決めておきます。
物品売買契約書を締結する際のチェックポイント
物品売買契約書を締結する際には、特に次に挙げるポイントに注意してください。
②契約不適合責任の条件をよく確認する
売買の条件を明確な文言で定める
物品売買契約書の内容が曖昧だと、契約トラブルに原因になってしまいます。締結する前に、日本語として不自然な部分や、2通り以上の意味に解釈できてしまう部分がないかどうかよく確認してください。
契約不適合責任の条件をよく確認する
物品の売買に関して契約トラブルが生じやすいのは、目的物に欠陥や数量不足などの不備が見つかった場合です。この場合は、物品売買契約書に定められた契約不適合責任の規定に従って処理することになります。
企業間の契約では、契約不適合責任の内容や期間を比較的自由に定めることができます。条文をよく確認しないまま契約を締結したところ、自社にとってあまりにも不利な内容だったことが後から分かるケースも少なくありません。
契約不適合責任の規定は、トラブル発生時の利害得失に直結します。物品売買契約書を締結する際には、特に重点的に確認してください。
物品売買契約書に収入印紙は必要?
通常の物品の売買を単発的に行う場合は、収入印紙の貼付は必要ありません。
ただし、継続的取引(第7号文書)または請負契約(第2号文書)に当たり、かつ紙で契約書を作成する場合は、一部の例外を除いて収入印紙の貼付を要します。
なお、電子契約であれば収入印紙の貼付は不要です。
継続的取引に当たる場合は収入印紙が必要(第7号文書)
継続的に行われる複数の売買取引について、その基本となる物品売買契約書を紙で作成する場合は、原則として印紙税法上の「第7号文書(=継続的取引の基本となる契約書)」に当たります。
第7号文書に当たる物品売買契約書には、1通当たり4000円の収入印紙を貼付しなければなりません。
ただし契約期間が3か月以内であり、かつ更新の定めがない場合は、収入印紙を貼る必要はありません。
請負契約に当たる場合は収入印紙が必要(第2号文書)
「物品売買契約書」という名称であっても、物の所有権移転よりも仕事の完成の方に重きが置かれている紙の契約書は、印紙税法上の「第2号文書(=請負に関する契約書)」に当たります。
たとえば次に挙げるようなケースについては、「物品売買契約書」でも第2号文書に当たる可能性が高いです。
・買主が材料の全部または主要部分を提供し、売主がその材料を用いて物品を製作する場合
・物品の材料は売主が準備するものの、設計や規格の指示は買主が行っている場合
・大型の物品(機械など)を取り付けることによって所有権を移転する場合
など
第2号文書に当たる物品売買契約書には、1通当たり次の金額の収入印紙を貼付しなければなりません。
| 契約金額 | 印紙税額 |
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上10万円以下 | 200円 |
| 10万円超50万円以下 | 400円 |
| 50万円超100万円以下 | 1000円 |
| 100万円超500万円以下 | 2000円 |
| 500万円超1000万円以下 | 1万円 |
| 1000万円超5000万円以下 | 2万円 |
| 5000万円超1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超 | 60万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
電子契約なら収入印紙は不要
紙で契約書を作成する場合は第2号文書や第7号文書に当たる内容でも、電子契約によって締結する場合は、収入印紙を貼る必要はありません。電子契約のファイルは、印紙税法上の課税文書に当たらないと解されているためです。
物品売買契約だけでなく、その他の種類の契約についても、電子契約で締結する場合は収入印紙の貼付が不要となります。印紙税を節約したいなら、電子契約の導入をご検討ください。
まとめ
物品売買契約書を作成する際には、売買の条件を明確な文言で記載することが大切です。特に売買代金や検品のルール、契約不適合責任などの規定は重要度が高いので、重点的に確認しましょう。
物品売買契約書は、電子契約によって締結することもできます。電子契約は管理や検索がしやすく、契約管理の効率化に繋がるでしょう。
紙で締結する場合は収入印紙を貼付すべき契約内容でも、電子契約であれば収入印紙は不要です。特に高額の契約を締結する際には、印紙税の負担がゼロになることで大きなコスト削減を見込めます。
電子契約には多くのメリットがあるので、未導入の企業は積極的に導入をご検討ください。
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ダウンロードする(無料)この記事を書いたライター
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。