誓約書の正しい書き方とは?法的効力や注意点を解説
誓約書は、取引の際に相手方に対して約束事を遵守するという意思を示すために作成する書類です。昨今では、従業員の入社時や退職時においても誓約書を交わす傾向があります。
当記事では、主にビジネスシーンにおいて誓約書の書き方や注意点を解説します。誓約書を正しく作成することはお互いの信頼関係の構築にも役立つので、参考にしてみてください。
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誓約書とは
誓約書とは、相手に対して特定の約束を厳守する意志を示すために作成される文書です。契約書と同様に法的効力を持ちますが、誓約書は契約書とは異なり、意思表示を行う側(差し入れ側)が署名または捺印を行い、相手方にはその署名や押印が求められない性質の書類です。
誓約書に記載した内容に違反した場合、誓約書の差し入れ側に債務不履行に基づく損害賠償責任が生じる可能性があるため、誓約書に署名捺印する場合は必ずその内容を把握するようにしてください。
誓約書の重要性
誓約書は特定の約束事を文書化するものであり、単なる形式的な手続きではなく「トラブルを未然に防ぐ」という意味で非常に重要なものです。口頭での約束は後になって「言った、言わない」という水掛け論や、約束内容の認識のずれが生じる原因となりがちです。誓約書があることで当事者間の共通認識を形成し、将来的なトラブルを大幅に軽減することができます。
万が一、約束が守られずにトラブルへと発展し、法的な場で争うことになった場合、誓約書は当事者間でどのような合意があったのかを示す重要な「証拠」となります。契約書とは異なり一方的な約束であることが多いものの、トラブルが発生した場合に誓約書の有無は重要となります。
また、従業員の入社時に就業規則遵守に関する誓約書や入社時・退職時に秘密保持に関する誓約書を取り交わすことで、コンプライアンス意識の向上や内部統制の強化にも繋がります。
誓約書の法的効力
誓約書は一定の法的効力を持つ書類です。誓約書の内容が破られた際には誓約書を受け取った側が損害賠償を請求する権利があります。しかし、内容や状況によっては法的効力が無効となるケースもあり、すべての誓約書に法的効力があると一概には言えません。たとえば、誓約書の内容が強行規定や公序良俗に反する場合は、その部分または誓約書全体が無効と判断される可能性があります。さらに、脅迫されたり騙されたりして署名・捺印した場合(強迫・詐欺)や、内容について重大な勘違いがあった場合(錯誤)なども、後から取り消しや無効を主張できる可能性があります。
法的効力の有無を確認したい場合は、弁護士などの専門家に相談するのがよいでしょう。
なお、昨今の電子契約サービスの普及に伴い、誓約書を電子契約サービスで交わす企業も少なくありません。ここで注意したいのが、電子署名法において「電子署名」として認められるためには、最低限「本人性」と「非改ざん性」の要件を満たす必要があるという点です。
本人性や非改ざん性が認められないタイプの電子契約サービスや電子印鑑を利用した場合、電子署名として認められず法的効力が弱くなるため、オンラインで誓約書を交わす場合は注意してください。
「クラウドサイン」は法的効力を認められた電子契約サービスとなりますので、サービスの詳細について知りたい方はこちらの資料を無料ダウンロードしてご覧ください。
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ダウンロードする(無料)誓約書の利用シーン
誓約書の主な利用シーンとして、以下の5つが挙げられます。利用シーンによって誓約内容は変わるため、どのような誓約書が必要なのか検討しましょう。
入社時誓約書
入社時誓約書とは、企業に入社する新入社員が企業に対して提出する書類です。入社にあたって従業員が守るべき重要なルールや義務を確認し、それらを遵守することを約束させるものです。企業秩序の維持、機密情報の漏洩防止、その他の労務トラブルを未然に防ぐことにつながります。
秘密保持誓約書
秘密保持誓約書とは、主に従業員や業務委託先などが情報を開示する側(企業など)に対して、職務上知り得た秘密情報を目的外に利用したり第三者に漏洩したりしないことを一方的に約束する文書です。
退職誓約書
退職時誓約書とは、従業員が会社を退職する際に会社に対して提出する書類です。在職中に知り得た秘密情報を退職後も保持することや競業避止義務の遵守を約束してもらうことで、退職後の情報漏洩やトラブルを防ぐ目的で用いられます。
個人間の金銭貸借時の支払誓約書
個人間の金銭貸借における支払誓約書とは、お金を借りた人が貸主に対し、借りたお金の返済を正式に約束するために作成する文書です。親族や友人同士など個人間でお金を貸し借りする際に作るケースもあり、借入金額、返済期日、返済方法などを具体的に明記し、返済の意思を示すことでトラブルを防ぐために作られます。特に、返済期間が長期に渡る場合や、金額が大きい場合などは、トラブルを避けるためにも誓約書を作っておくのがおすすめです。
離婚時に夫婦間で交わす誓約書
離婚時に夫婦間で交わす誓約書とは、離婚に伴う財産分与、養育費、慰謝料、子供との面会交流など夫婦間で決めた約束に関する誓約書のことです。離婚時は、慰謝料や養育費の支払い、財産分与や親権についてなど、金銭面でのトラブルが非常に起こりやすいため、「言った・言わない」といったトラブルを防ぐためにも誓約書を作っておきましょう。
誓約書についてより詳しく知りたい方、念書や他の書類との違いについて知りたい方はこちらの記事もご一読ください。
誓約書の書き方
誓約書に含めるべき事項は法律によって明確に定められているわけではなく、記載方法や形式に関する規定は存在しませんが、ここでは一般的な誓約書の書き方、必要な項目について解説します。
タイトル、提出先の社名や名前、日付
まずは書類の冒頭に「誓約書」と明確なタイトルを記載しましょう。レイアウトにもよりますが、タイトルの上下や右側等に誓約書を提出する相手の社名や肩書き、名前を記載します。個人宛ての場合は「〇〇様」と記載するだけでよいですが、提出先が企業の場合は「〇〇株式会社 御中」、特定の部署や担当者宛ての場合は「〇〇株式会社 △△部 部長 □□様」のように役職名と氏名を正確に記しましょう。
誓約書を作成した日付、または提出する日付を明記しましょう。この日付は、いつ誓約がなされたかを示す証拠となります。西暦・和暦どちらでも構いませんが、他の書類と形式を合わせるようにしましょう。
誓約内容
誓約内容の項目は、誓約書の中で最も重要な部分になるため、「誰が」「誰に」「何を約束するのか」を、具体的かつ明確な言葉で記載する必要があります。
一般的には「私は貴社に対し、以下の事項を遵守することを誓約いたします。」といった書き出しののち、約束する具体的な事項を箇条書きで分かりやすく記載します。ここでは就業規則の遵守、機密情報の保持、物品の返却など、誓約する事項を丁寧に記載しましょう。必要に応じて、「いつまでに」「どのように」といった詳細も加えたり、万が一、誓約に違反した場合の措置(損害賠償など)を定めることもあります。
差出人(誓約者)の署名、押印
誓約書の最後には誰がその内容を誓約するのかを示すために、差出人(誓約者)の情報(誓約者の住所、氏名)を記載します。法人が誓約する場合は所在地、会社名、代表者の役職と氏名を記載します。
また、誓約者本人の意思を示すための署名または押印も必要です。法的には押印が必須でないケースもありますが、慣習上、押印をすることが一般的であるため押印をしておくことが望まれます。
誓約書を作成・提出する際の重要チェックポイント
誓約書の内容などに不備があると、法的効力が認められなかったり、かえって新たなトラブルが発生する原因となったりする可能性もあります。そのため、誓約書を作成する側はもちろん、提出を求められ署名・押印する側も内容を十分に理解し、以下の点を慎重にチェックすることが必要です。
内容は具体的か?曖昧な表現はないか?
「誰が」「誰に対して」「何を」「いつまでに」「どのように」約束するのかが、誰でも一義的に理解できるよう、具体的かつ明確な言葉で記載されている必要があります。「できる限り努力します」「誠意をもって対応します」といった曖昧な表現は、後になって解釈の違いを生み「言った・言わない」のトラブルに発展する典型的な原因となります。内容が具体的で明確であればあるほどリスクは減るため、曖昧な表現で作成しないようにしましょう。
公序良俗に反する内容ではないか?
誓約書の内容が一般的な道徳観念や社会秩序に反するものである場合、民法第90条により、公序良俗に反する法律行為は無効と定められています。たとえ当事者双方が合意の上で署名・押印した誓約書であっても、その内容が公序良俗違反と判断されれば法的効力は認められません。
誓約書に署名する側も署名前には、その内容が社会的に見て妥当な範囲を超えた不当なものではないかなど冷静に確認することが重要です。
出典:民法 e-Gov法令検索
強行法規に反する内容ではないか?
強行法規とは、公の秩序に関する規定のことで、当事者間の合意の如何を問わずに適用される規定のことをいいます。
たとえば、労働基準法で定められている最低賃金以下の給与で働くことを約束させたり、法律で禁止されている違約金や損害賠償額の予定を労働契約に盛り込んだりする誓約などは強行法規違反として誓約書は無効となります。誓約書の内容が、関連する法律の強行法規に抵触していないか、しっかりと確認しましょう。
未成年者が作成していないか?
民法第5条により、未成年者が法定代理人(親権者)の同意を得ずに行った契約などの法律行為は原則として後から取り消すことができると定められています。したがって、未成年者が単独で作成し署名した誓約書は、たとえ本人が内容を理解していたとしても後日、本人または法定代理人によって取り消される可能性があります。企業が新入社員に誓約書を求める際など、相手が未成年者である場合は必ず親権者などの法定代理人の同意(誓約書への連署・押印など)を得るようにしましょう。
出典:民法 e-Gov法令検索
日付、氏名、住所に誤りはないか?
これらの基本情報は、誰がいつ、どのような内容を誓約したのかを特定するための重要な要素であり正確性が求められます。日付に誤りや記載漏れがあると、いつの時点で誓約が有効になったのか不明確になる可能性があります。提出する前に日付、氏名、住所の確認をしましょう。
署名・押印のし忘れはないか?
署名・押印は誓約書の内容を確認し、同意したことを示す最終的な意思表示となります。もし署名や押印がされていないと、本人の最終的な同意があったかどうかが不確かとなり誓約書が無効と判断されたり、効力が争われたりする可能性もあります。誓約書を提出する前には確認をしましょう。
電子契約ならオンラインで誓約書を交付できる
誓約書はその内容に関わる当事者を同じ場所に集めて署名捺印を行なうイメージが強いかもしれませんが、電子契約サービスを使うことでオンライン上でも誓約書を交付することができます。遠方にいる人へ送付する場合は郵送費や印刷費がかかりますが、電子契約サービスであればそれらのコストが削減可能です。
身近な例として入社時誓約書を挙げると、入社者が増えれば増えるほど、入社時誓約書を作成・締結するための郵送費や印刷代といった金銭的コストに加えて、誓約書の郵送や投函といった事務作業にかかる時間的コストも増えてしまいます。また、過去に締結した誓約書を確認する場合にも、大量の紙の誓約書から該当の書類を探すのは非効率です。
なお、クラウドサインでは「入社時誓約書のひな形」を無料配布しています。ひな形を入手したい方は下記のダウンロードフォームに必要情報を入力の上、ご活用ください。
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この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
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