不動産取引の印紙税と電子契約化

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国土交通省が旗振り役となる「重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験(令和元年度~)」が2019年10月1日より開始。電子契約サービスの利用が拡大する中、不動産取引に係る印紙税について整理しました。

不動産取引と印紙税課税

不動産取引の印紙税区分を判定するときは、“建物”と“土地”に分けたうえで、大まかな契約類型で捉えて課税・不課税を判断することがポイントです。

なお、印紙税法上、「不動産」には立木・登記された工場財団等・登録された鉄道財団等もみなし不動産として含まれますが、ここでは省略します。

国税庁「収入印紙の形式改正について(平成30年6月1日)」別紙1より

(1)不動産の譲渡

不動産の譲渡に関する取引を証する契約書は第1号の1文書 にあたり、印紙税が課税されます。ここでいう譲渡には、売買・交換・贈与いずれも含みます。

契約金額1万円未満の場合は不課税となります。

(2)不動産の賃貸借

賃貸借の場合、家屋・マンション・アパートのような 建物の賃貸借に関する契約書は不課税文書 であり、印紙税はかかりません。

従来は課税文書でしたが、平成元年3月31日をもって廃止された経緯があります。

一方、地上権または土地の賃借権を設定・譲渡する契約書は第1号の2文書 にあたり、売買等同様に印紙税が課税されます。

こちらも契約金額1万円未満の場合は不課税です。

(3)不動産の使用貸借

無償で建物・土地の使用を認める片務契約である 使用貸借に関する契約書は不課税文書 であり、印紙税は課税されません。

以上をまとめると、下表のとおりとなります。

譲渡 賃貸借 使用貸借
建物 第1号の1文書 不課税 不課税
土地 第1号の1文書 第1号の2文書 不課税

印紙の取扱いに注意したい文書

一般事業会社のビジネス上でも取り扱うことの少なくない不動産関連取引の中で、特に印紙税の取扱いに迷いやすい5つの文書 につき、ピックアップしてみたいと思います。

駐車場使用契約書は何号文書?

(1)不動産売買予約契約書

「予約」や「仮」の契約書であっても、印紙税法上は通常の契約書と同様に取り扱われるため(印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則5)、第1号の1文書として課税されます。

5  この表の第一号、第二号、第七号及び第十二号から第十五号までにおいて「契約書」とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含む。以下同じ。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」という。)を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとする。

(2)不動産贈与契約書

自己の不動産を無償で与える贈与に関する契約書については、負担付贈与契約でなければ、第1号の1文書となります。

贈与契約なので契約金額はないはずですが、しばしば「土地の評価額」が贈与契約書内に記載されるケースがあります。このような場合についても、譲渡の対価ではないため契約金額に当たりません。

(3)土地転貸借契約書

賃貸している土地を第三者に転貸する契約書は、第1号の2文書に該当します。なお、建物の転貸借の場合は不課税です。

(4)駐車場使用契約書

「土地」を駐車場として賃貸借する場合は、第1号の2文書に該当します。

一方、車庫や一定の区画といった「施設」に特定の車両を有料で駐車させる場合は、建物の賃貸借契約同様に不課税文書となります。

(5)重要事項説明書

不動産の売買契約書締結の前に宅地建物取引士が書面で交付する重要事項説明書については、宅建士からの説明によっても売買契約自体が成立するものではないため、課税文書には当たりません。媒介契約書も同様です。

軽減税率が適用される不動産譲渡取引

第1号の1文書、すなわち不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和2年(2020年)3月31日までの間に作成されるものについては、印紙税負担が下表の通り軽減 されています。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円を超え 50万円以下のもの 400円 200円
50万円を超え 100万円以下のもの 1千円 500円
100万円を超え 500万円以下のもの 2千円 1千円
500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え 5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え 10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え 50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円

なお、これらの契約書に該当するものであれば、土地・建物の売買の当初に作成される契約書のほか、売買金額の変更等の際に作成される変更契約書や補充契約書等についても、軽減措置の対象となります。詳細は国税庁ウェブサイトで確認できます。

国土交通省の社会実験で進む電子契約の利用推進と印紙コストの削減

原則として公正証書作成等書面化が求められる定期賃貸借契約を除き、不動産取引については法律上は契約書を書面で作成する必要はなく、電子契約でも締結できます。これにより高額な 印紙税も課税されずスピーディな取引が可能 です。

しかし現実には、宅建業法に定められた重要事項説明書等の書面交付義務があるために、契約書本体の電子化も進んでいないのが現状です。そこで国土交通省では、不動産取引の電子化を進めるため、令和元年10月1日より以下2つの社会実験を並行して開始しています。

  1. 個人を含む売買取引におけるITを活用した重要事項説明に係る社会実験
  2. 賃貸取引における重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験

クラウドサインは、このうち2の電子書面交付実験でご利用をいただいています。

国土交通省「賃貸取引における重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験のためのガイドライン概要」P7より

まずは2の重要事項説明書等の電磁的方法による交付実験を成功させ、次いで1の個人間売買取引も電子化をすすめていくことで、不動産取引全体のさらなる電子化が推進されることが期待されます。

画像: ふじよ / PIXTA(ピクスタ)、7maru / PIXTA(ピクスタ

(橋詰)