IT重説解禁+電子契約の普及による不動産賃貸借契約の変化と課題

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2017年10月より、賃貸借契約における重要事項説明義務が緩和されました。ITを活用したオンラインでの重要事項説明(IT重説)が認められるようになったメリットは大きく、取引の円滑化やコスト削減が期待されます。

その一方で、契約手続のすべてのIT化が認められたわけではない点、注意も必要です。この記事では、今回認められたIT重説の法的ポイントと今後の課題について、解説をします。

賃貸借契約における重要事項説明義務とは

ビジネスパーソンに限らず多くの方が一度は経験したことがあるはずの大きな契約が、ご自身の住まいの賃貸借契約でしょう。

家賃月額5万円前後の小さなワンルームの賃貸借契約だとしても、2年も住めば5万円×24か月=120万円もの出費になります。私たちが生きているうちに締結する契約の中でも、かなり重みのある契約であることは間違いありません。

そうした重要な契約だけに、借主保護を目的とした取引規制はいくつも存在します。そのうちの一つが、宅地建物取引業法第35条に基づく「重要事項説明」に関する規制です。

第三十五条 (重要事項の説明等)
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。(以下略)

この規定により、不動産賃貸借契約にあたっては、書面を交付した上で、取引士が「対面」で借主に契約内容等の重要事項を説明する必要がありました。みなさんも、不動産会社に出向いて、賃貸借契約書とは別の書面を見せられながら長々とした説明を聞かされたご経験があるのではないでしょうか。

オンラインによる重要事項説明「IT重説」が解禁

賃貸借契約におけるこの重要事項説明義務を緩和し、ITを使った効率化を認める 「IT重説」 が、2017年10月1日からスタートしました。

ITを活用した重要事項説明等に関する取組み(国土交通省)

IT重説とは何か?これは、いままでは宅地建物取引士が対面で行うことが義務化されていた重要事項説明を、一定の条件のもとオンラインで行うことを認めた制度です。

国土交通省のリードで2015年8月末からおよそ1年半以上、303社が参加して行われた社会実験(パイロットテスト)を経て、2017年10月1日から正式に全面解禁されています。

百聞は一見にしかず、株式会社いい生活さんが不動産事業者さま向けに開催したセミナーで披露された実際のIT重説の様子がYouTubeにアップされていますので、ご覧になってみてください。

この動画でも紹介されているように、インターネットによるテレビ会議・電子ファイル共有システムを使って、借主が不動産事業者のオフィス等に出向く必要がなくなります。

夜間など仲介業者のオフィスが閉まってしまうような時間帯であっても、個人は自宅で・取引士は在宅勤務で重説を実施できるようになり、働き方改革にもつながる、借主と事業者双方の負担が軽減される規制緩和策 なのです。

不動産賃貸借契約の完全IT化は可能か?

とはいえ、まだ残念な点・見直していただきたい点もあります。

一番大きなポイントが、せっかく重要事項の説明工程をITにより対面不要としたにもかかわらず、そこで用いる

2つの文書については現段階でも書面による交付が必須とされ、電子化が認められていない(宅地建物取引業法35条および37条)、という点です。

①35条書面 ②賃貸借契約書 ③37条書面
書面 交付が必要 不要
(電子契約可能)
交付が必要
書面交付すべき時期 契約が成立するまでの間 契約後遅滞なく
取引士による説明 必要 不要 不要
取引士による記名押印 必要 不要 必要

上記表のとおり、双方押印する契約書については電子契約に置き換えることができます。それにもかかわらず、35条書面と37条書面については、IT重説導入後もわざわざ書面をプリントして交付(郵送)しなければなりません。

この書面交付義務を緩和する法改正の可能性はないのでしょうか?この点、国土交通省が発行した「賃貸取引に係るITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」P8にも、

「なお、重要事項説明書は、取引士が記名押印をした上で、書面にて交付する必要があり、PDFファイル等による電子メール等での送信は認められません」

とあえて記載されているあたり、事業者や借主の要望が強くあることは、国土交通省も認識されているのだと思います。国土交通省にはぜひ、電子契約プラットフォームを利用した押印の電子化も認めていただきたいと思います。

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(2018/06/13橋詰修正)

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