UberアプリのUIデザインにおける利用規約同意の有効性

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Webサービスやアプリサービスを展開するにあたり、利用規約やプライバシーポリシーを適切に定め、それらに対するユーザー同意を適切に取得する必要があることは、いまや企業にとっては常識となっています。

2009年に創業した自動車配車サービスUberも、そのことは十分わかっており、利用規約の内容も、法律の専門家たちを唸らせるほどの念入りなものになっています。

しかし、Uberほどの世界的人気サービスとなると、運営会社に対するツッコミの厳しさは生半可なものではありません。価格改定に対する不満をきっかけに、利用規約の中に定められた仲裁(訴訟とは異なる手続きの紛争解決方法)条項の有効性について集団訴訟が提起され、一審では、Uberが定めた仲裁条項への同意を無効とする判決が下されました。

ところが、今回の2017年8月17日の控訴審判決では、問題となった仲裁条項を含む利用規約の同意は有効と結論づけ、破棄差し戻しとなっています。

▼ Meyer v. Uber Technologies, Inc.
https://law.justia.com/cases/federal/appellate-courts/ca2/16-275016-2750-2017-08-17.html

この裁判で主な論点となっているのが、判決でも引用されているこのアプリ画面での同意取得の有効性です。

スクリーンショット2枚めの、[REGISTER]ボタンの数センチ下にある

By creating an Uber account, you agree to the TERMS OF SERVICE & PRIVACY POLICY.

この同意文言と[REGISTER]ボタンの組み合わせが、仲裁条項への同意=訴訟をする権利の放棄という重要な契約条件について合意するものとして十分であるかが争われましたが、

The Payment Screen is uncluttered, with only fields for the user to enter his or her credit card details, buttons to register for a user account or to connect the userʹs pre‐existing PayPal account or Google Wallet to the Uber account, and the warning that ʺBy creating an Uber account, you agree to the TERMS OF SERVICE & PRIVACY POLICY.ʺ The text, including the hyperlinks to the Terms and Conditions and Privacy Policy, appears directly below the buttons for registration. The entire screen is visible at once, and the user does not need to scroll beyond what is immediately visible to find notice of the Terms of Service. Although the sentence is in a small font, the dark print contrasts with the bright white background, and the hyperlinks are in blue and underlined.

(中略)

notice of the Terms of Service is provided simultaneously to enrollment, thereby connecting the contractual terms to the services to which they apply. We think that a reasonably prudent smartphone user would understand that the terms were connected to the creation of a user account.

裁判所はこのように述べて、Uberの同意取得画面のデザインとアプローチは、
・綺麗に整頓されており
・必要最小限のボタンが設置され
・利用規約が(文字のポイントは小さいが)ハイパーリンクで強調表示され
・これらの要素を含む画面全体がスクロールの必要なく一覧できる
といった全体の印象を捉えて、スマートフォンユーザーがその重要性を理解するには十分なものである、と認めました。

スマートフォンの画面という限られた面積の中で、どのようなデザインを施して法的に有効かつスムーズな同意を取得するか?この問題は企業法務担当者だけでなく、美しさも担保したいUIデザイナーや、少しでも会員登録フローへの障害を無くしコンバージョンレートを上げたいマーケッターにとって、最大の関心事となっています。

一方で日本の企業法務の実務では、経済産業省がとりまとめた「電子商取引準則 」の影響が強く、
・利用規約へのハイパーリンク部分にさらにチェックボックスを設ける
・[利用規約に同意して登録]のようにボタンにはっきりと明記する
といったアプローチが実務として浸透しています。これと比べると、今回のUberのケースでは、かなり緩やかな基準が採用されているようにも見えます。もし本件と同じような画面構成での利用規約同意の適法性・有効性が日本で争われたならば、場合によっては会社側が負けるケースもあるかもしれません。

あくまで本件は米国の裁判例であり、ただちに日本の実務が変わるとまでは言い切れませんが、新しいデバイスに対するユーザーリテラシーの向上も踏まえながら、画面デザイン全体を捉えて評価した裁判例が現れだしたのは、大変興味深いところです。

(橋詰)

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