撮影者を面倒で腐らせる「撮影許可」ルールの現実

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一瞬のタイミングとひらめきが勝負となる写真撮影。しかし、施設内や公共空間で撮影した写真をビジネスで利用するための許諾を取り付けるのは、一筋縄ではいかない。カメラマンの視界から見えるロケハンと撮影許可の現実。

撮影許可は面倒くさい

面倒くさい。撮影許可は実に面倒くさい。今回振り返り、調べてみれば、もう地獄の様相だった。

バズが起こせればSNSでの拡散による広告効果は大きいだけに、人の感情を揺さぶるような写真を撮影し拡散してもらうためにどうするか、各企業の広報はきっと頭を悩ませているだろう。そんな状況ゆえ、撮影禁止のマークが貼ってなければ、僕たちも気軽に撮影し投稿する。

ただし個人利用とは違い、商用利用になると話は一転、途端に面倒臭いことになってくる。面倒の理由は、権利がレイヤードし複数に重なっているからだ。それをひも解いていくだけで一苦労である。

今回はその中で特に複雑なロケーションと許諾について、自らの体験を振り返ってみたい。

商業施設の撮影許可は「権利者へのお伺い」

商用利用での撮影許可とは、ざっくり言えば「その土地や施設の権利者へのお伺い」だ。

百貨店やショッピングモールの撮影許可

商業施設であれば、施設管理権を持つ管理者の許可が必要になってくる。

百貨店やショッピングモールなど、施設が大型化すると、個人での許可を取るハードルは非常に高くなるだろう。向こうも商売だ。

試しに、GINZA SIXあたりの、地権者やデベロッパーが複数関わる象徴的な大型施設ではどうかと問い合わせてみると、案の定、PR専門会社のサニーサイドアップがロケーション許諾を代行していた。

それだけで、ハードルの高さを感じざるを得ない。

駅や鉄道関連施設の撮影許可

鉄道やそれにまつわる施設についての撮影許可も非常に厳しい。例えばJRは個人での撮影許可は不可としているし、法人であっても与信の問題などでNGとなるケースも有る。

京王グループについては、細かい条件はあれど商用利用を含めた個人においても撮影は可能となっている

撮影料を考えた際にどこまでペイできるかという点でも悩ましい。駅構内の撮影だけでも、以下のようなコストが発生する。

(1)駅構内での撮影 : ①+②+③の合計金額
  ① 使用料(税抜)30,000円×時間
  ② 立会料(税抜)5,000円×1~2人×時間
  ③ 入場料130円×人数

駅構内は、安全面、時には生死に関わる問題となるケースに発展しかねない。電車の遅延などを発生させてしまった場合などを含めて、トラブルが発生した際には個人の責任では負えかねないこともある。

撮影スポットとしては、ドラマティックなロケーションであるのも間違いないが、リスクという面でも、撮影する側も撮影を認める側も、お互いが慎重にならざるを得ないといえる。

公共空間の撮影も行政による許諾が必要

公園、河川、道路など、商業施設ではない公の場については、行政が撮影許可を申請する相手となる。これはさらに複雑、かつ紙の書類にまみれるという面倒さを生む。

公園の撮影許可

公園に関しては、管理が国、地方自治体(特別地方公共団体を含む)、またその中でも地域やケースによって申請方法が変わってくる。

そもそも営利目的での撮影には利用できないケースも有る。環境庁が管轄する新宿御苑は、個人法人問わず営利目的での撮影は禁止となっている。

一方で国営昭和記念公園では、事前に申請書を提出、許可が得られれば撮影可能だ。

特別地方公共団体や地方自治体が管轄する公園も、許可があれば可能になるケースがほとんどではないだろうか。ただし、インターネットでお手軽に申請とは行かないばかりか、

など、様々なハードルが加わってくる。もちろん、区や市などその管轄する地域によって条件は変わってくる。

河川の撮影許可

河川はどうだろうか。河川法の24条(土地の占用の許可)によると

第24条 河川区域内の土地(河川管理者以外の者がその権原に基づき管理する土地を 除く。以下次条において同じ )を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。

となっており、その河川を管理する河川事務所の利用案内に従うことになる。

江戸川では、機材がほぼなく、人も少ないような小規模な撮影方法においては、特に届出や許可などの手続きは必要ないこと、商用利用の撮影も可能であることは確認している。

ただし、河川敷には運動場・公園などもあるため、さらにそれぞれの施設管理者への確認が必要となる。

道路の撮影許可

道路での撮影に関しても制限はある。ベースとなるのは道路交通法77条だ。

第七十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可(当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可。以下この節において同じ。)を受けなければならない。
(略)
四 前各号に掲げるもののほか、道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者

東京都道路交通規則18条が準用する道路交通法第77条第1項4号によれば、一般交通に著しい影響を及ぼすような場合は、所轄の警察署への許可が必要になってくる。

第18条 法第77条第1項第4号の規定による警察署長の許可を受けなければならない行為は、次に掲げるとおりとする。
(略)
(4) 道路において、ロケーション、撮影会その他これらに類する行為をすること。
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00002199.html

静止画の撮影であっても、カメラマン、モデル、メイク、レフ板をやライトなど持つアシスタントといった複数人で撮影するようなケースになると許可を取ったほうが無難だろう。

その一方で観光客の如く、場所も専有せず散歩がてらにふらっと一人で撮影する、というようなケースでは、「届け出は必要ないと思う」との回答をいくつかの警察署で得ている。

ここでも例外はある。江戸川区内の道路上で作業等を行う場合は、所轄の警察署への道路使用許可とは別に、同区への届出が必要になるというのだ。

望まれる撮影許可の一元化とデジタル化

ここまででわかるように、申請方法やそもそもの撮影許可を出す管理者であるかなどの確認を試みても、その対応は縦割りそのもので、一元化は期待できない

2020年は押印廃止に湧いた年だったが、行政から撮影許可を得る手続きは、まだまだデジタル申請にはほど遠い状況だ。おまけに、その申請プロセスのほとんどが日本語表記になっており、外国人にとってはさらに面倒なものとなっている。

理屈として整理できたとしても、実際にどこの(誰の)管轄であるか、はっきりしないケースも有る。

など後から指摘され、気が付くミスの代償は非常に大きい。

できることは一つ一つサイトを巡り、条件を確認し、紙で必要な書類を送って許可が出るのを祈ることだけだ。

面倒は文化の発展も妨げる

僕らが享受している エンターテインメントにおいての負の影響も大きい

世界歴代興収でトップになった映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』には、東京のシーンがある。しかし、これは結局セットでの撮影になった。劇中ではせっかくの真田広之さんの熱演も、看板の謎のフォントなんかからくる違和感のせいで、とても良いシーンなのに、明らかに没入感が削がれたシーンになってしまった。

同シリーズの『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』での韓国でのシーンは、現地ロケを行っており、その事実と比較すると少し寂しい気持ちになる。

この手のロケ話の悲劇としては、人気カーアクションムービーのワイルドスピードシリーズの3作目『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』も忘れてはいけない。同作は日本が舞台であり、TOKYOとタイトルに冠しているにも関わらず、そのほとんどはアメリカで撮影している。

監督のジャスティン・リンは、どうしても日本で撮影したかったが、許可が降りなかったようだ。ただし、それでも諦めきれない監督は、無許可で撮影を敢行。身代わりでスタッフが逮捕されるといった報道もあった。

いまや両タイトルとも超ドル箱の人気シリーズなだけに、非常にもったいない話。この件で得をしている人間が見当たらないのも、また悲劇 だろう。

「Google Mapで権利者や管轄が簡単に見れたら」
「iPhoneのAR機能・ARグラスで分かればいいのに」
「申込み、支払いなんかも一気通貫にデジタルでできないものか」

なんてことを、紙の許可申請書とにらめっこをしながら、つい考えてしまう。

(写真・文 宗田)

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