その契約書、法律上の保存期間は何年間?

投稿日: 最終更新日:

会社が業歴を重ねれば重ねるほど増えていく紙の契約書。法人税法・電子帳簿保存法等が定める法定保存期間を把握し、社内規程上の文書保存期限を含めた契約のライフサイクルを管理して、保管の必要がない契約書はすぐに処分しましょう。

企業が年数と成長を重ねるにつれて増え続ける契約書の保管スペース

企業が紙で契約書を締結している場合、年数と成長を重ねると現実として問題になるのは、文書を保存する物理的なスペースを確保しなければならない 点です。

会社の創業初期はそれほど気にならなくても、2年、3年…と事業を継続していくと、増える一方で減らない契約書がスペースを圧迫していくことに気づきます。いざというときには重要な書類であることは間違いないものの、毎日のアクセス頻度は高くありません。契約書の保管スペースは、文字通りのデッドスペースになりがちです。

不要になった書類は捨てるに限るわけですが、法律上ポイポイ捨てるわけにもいかないのが契約書のつらいところでもあります。

契約書の保存期限と法定保存期間一覧

結局のところ、契約書は何年間保存しておけばよいのでしょうか?

そこで、法律に最低ラインとして保存期間が法定されている主な契約関連書類 につき、以下一覧表にまとめてみました。

文書 起算日 年限 根拠条文
効力存続中の契約書 - 永久 -
効力存続中の重要な権利に関する文書 - 永久 -
建築士事務所の業務に関する図書
(契約書、設計図書等)
作成日 15年 建築士法施行規則21
製品の製造・加工・出荷・販売記録 製品引渡日 10年 PL法5,6
建設業の営業に関する図書
(完成図、打合せ記録、帳簿、契約書等)
当該建設工事の目的物の引渡しをした日 10年 建設業法施行規則28
取引証憑書類
(請求書、注文請書、契約書、見積書)
帳簿閉鎖日および書類作成日・受領日の属する事業年度終了の翌日から2か月を経過した日 7年 法人税法施行規則59,67
有価証券の取引に際して作成された証憑書類
(受渡計算書、預り証、売買報告書等)
帳簿閉鎖日および書類作成日・受領日の属する事業年度終了の翌日から2か月を経過した日 7年 法人税法施行規則59,67
現金の収受に際して作成された取引証憑書類
(領収書、預金通帳、借用書等)
帳簿閉鎖日および書類作成日・受領日の属する事業年度終了の翌日から2か月を経過した日 7年 法人税法施行規則59,67
産業廃棄物処理の委託契約書 契約終了日 5年 廃棄物処理法施行規則8の4の3
雇入れ又は退職に関する書類
(雇用契約書、労働条件通知書、解雇通知等)
労働者の退職又は死亡の日 5年 労働基準法施行規則56
賃金その他労働関係に関する重要な書類 最後の記入をした日 5年 労働基準法施行規則56

この表にも多数出てくるように、紙の契約書の最低保存期間を定める主な法律が、法人税法 です。効力存続中の契約関連書類が廃棄できないのは当然として、法人税法上の取引証憑書類としては 最低7年保存が原則 となります。

さらに、建築士・建設業者・製造物責任を負うメーカーなど、仕事のアウトプット(成果物)に長期的な法的責任を負うべきビジネスについては、特別な保存義務が規定されていることがわかります。

中でも目立つのは、「15年」の保存義務を定めた建築士法です。2006年までは保存期間は5年だったところ、耐震等安全性に関する構造計算書を偽造したいわゆる「姉歯事件」が社会問題となったことを受け、義務が強化された経緯があります。

電子契約の最低保存期間を定める電子帳簿保存法

紙の契約書の最低保存期間を定めている法人税法に対し、電子契約の最低保存期間を定める主な法律が、電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律) です。

クラウドサインのようなインターネットを用いた電子契約は、税務上の用語で「電子取引」と呼ばれます(電子帳簿保存法2条1項6号)。この法律によって、電子契約のデータ(電磁的記録)も、紙の契約書と同じ期間、保存する義務が課されます(同法10条)。

電子帳簿保存法に定められた電子契約のデータ保存義務

この電子帳簿保存法の要件を満たさない電子契約サービスを利用すると、プリントアウトした書面を物理的に保管しておかなければならなくなる点、注意が必要です。

そのため、電子帳簿保存法の保存要件を満たすクラウドサインのような電子契約サービスを利用することが、契約書保管に関する税務上のコンプライアンス要件を満たす近道となります(関連記事:契約書の「データ保存」と電子帳簿保存法—電子契約データ保管の注意点

必要以上の期間に渡って保管されがちな契約書に要注意

さて、法律上の最低保存期間がわかったところで、実務上注意したいのは、保存期間を超えて必要以上に長期保管されがちな契約書の放置です。

特に気をつけたい契約書の類型として、

の2つが挙げられます

秘密保持契約では、当時交換した情報がすでに秘密ではなくなっているのに、契約書上で秘密保持期間が「期限なし」と定められているという理由で、契約書が後生大事に保管されているケースが多くあります。

加えて、いわゆる自動更新条項が置かれていることが多いのが、取引基本契約です。取引実態がすでになくなっているにもかかわらず、契約書だけが漫然と自動更新され続けているケースは少なくありません。

ここまでチェックを行おうとすると、形式的な契約終了期日管理だけでなく、実質的にその契約書が生きているか、定期的に棚卸しをする必要 があります。

紙で締結した契約書のスキャン→PDF化では解決できない問題を電子契約が解決

7年の最低保存期間を超え、定期的に棚卸しをしたとしても、いざ紙の契約書を捨てるのは勇気がいるものです。そこで、取引証憑書類の電子化について定めた電子帳簿保存法の要件を遵守したうえで、紙の契約書をスキャナ保存し、物理的なスペースを圧縮するというアイデアが考えられます。

これを行った場合、スペースの節約になるのは間違いありません。ところが、法律的にはデメリットが発生する可能性があります。紙の契約書をスキャンしたデータは、民事訴訟法上の証拠としての評価・取扱いは、ただの「コピー」扱いとなってしまう 点です。紙の契約書を原本としている限り、結局データ化はできても廃棄はできないのです。

これに対し、電子契約により電子取引の「データ保存」を行う場合はデータが原本として扱われるため、そうしたリスクはありません。

そもそも原本が電子ファイルであるために紙文書が発生せず、期日管理もシステムアラートにより容易になり、訴訟上の証拠力も有する 電子契約のメリットは、証拠としての価値を失わずに、ローコストに契約書の法定保存期間を遵守できる点でも発揮 されます。

画像:Makes / PIXTA(ピクスタ)

(橋詰)

契約のデジタル化に関するお役立ち資料はこちら