Clubhouse利用規約がユーザーに課した禁止事項

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Twitterにも似たUIを持つ音声SNSアプリとしてブームになっている「Clubhouse(クラブハウス)」。テキストでも動画でもない「音声」というコンテンツに支えられるユーザー参加型プラットフォームだけに、ユーザーに課した禁止事項にもポイントがありそうです。

音声だけのSNS「Clubhouse」がブームに

通信も4Gから5Gへと進化し、Netflixの4K動画をはじめとするリッチなコンテンツがインターネット回線の中を行き交うようになりました。

そんな折、動画はおろかチャットのようなテキストすらも交わさず、会話・音声だけで交流するという一風変わったSNSサービス が、静かなブームとなりつつあります。それが「Clubhouse(クラブハウス)」です。

そんな「不便」さが逆に、いまその会話を聞かないともう二度と聞けない・私だけが話題に乗り遅れるかも…という焦燥感を煽るというしかけになっています。

音声だけのSNS「Clubhouse」がブームに

さらに現在は、誰もがこのサービスに参加できるわけではありません。自分の携帯電話番号を知っている友達からの招待が必要で、しかも一人あたり2名しか招待枠がないというシビアな条件。

それが希少性をさらに煽り、IT業界のアーリーアダプター層がわれ先にと飛びついているのが現状です。

音声オンリーSNSがユーザーに課す一風変わった禁止事項

この一風変わったアプリサービスClubhouse(クラブハウス)を利用するにあたって、同意を求められるサービス利用規約にも、何か特徴はあるのでしょうか?

今回は、サービス提供者側のスタンスを把握しやすい「ユーザーに対する禁止事項」 に関する規定をGoogle Docsに抜き出し、和訳を加えてみました。

clubhouse利用規約_User Conduct/ユーザーの禁止行為_日英対照表

Clubhouse利用規約がユーザーに課した禁止事項とは?

禁止事項に違反すれば、そのユーザーのアカウントはBANされ、参加できなくなります。実際すでに違反行為が発見されてBANされているユーザーも確認されているとのこと。現状登録には電話番号が必要なことから、アカウントの一意性はかなり高く、事実上サービスにアクセスする手段を将来的にも失うので、このプラットフォームがユーザーを集めるほどに強力なペナルティとなります。

ここに規定された 12項目の禁止事項のうち、「不意打ち」と感じるユーザーも少なくないだろう特徴的な3つの項目 について、詳しく解説していきます。

(1)してはいけない「会話」の曖昧なボーダーライン

禁止事項の冒頭、このアプリサービス上でしてはいけない会話・アップロード等をしてはいけないコンテンツが、(i)〜 (vii)に7分類されています。

他人の知的財産を侵害するコンテンツはだめ、といった当たり前のことはここでは省略しつつ、会話を楽しむアプリだけに、下品、わいせつ、ポルノ的な会話が禁じられている のですが、微妙なボーダーラインになりそうな規定です。

「その他運営会社が問題ありと判断したもの」といったバスケット条項はあっても、流れていく会話の一部分を捉え、運営会社の一存でその判定がなされることになるのは、いままでのSNS以上に、物議を醸すことはまちがいないでしょう。

1 engage in any conversation or otherwise upload any content that …(vi) is unlawful, harmful, threatening, abusive, harassing, tortious, excessively violent, defamatory, vulgar, obscene, pornographic, libelous, invasive of another’s privacy, hateful racially, ethnically or otherwise objectionable; or (vii) in the sole judgment of Alpha Exploration Co., is objectionable or which restricts or inhibits any other person from using or enjoying the Service, or which may expose Alpha Exploration Co. or its users to any harm or liability of any type;
(「以下のようなものについて会話したり、コンテンツのアップロード等を行うこと… (vi)違法な、有害な、脅迫的な、口汚い、ハラスメント的な、不法行為にあたるような、明らかに暴力的な、下品な、わいせつな、ポルノ的な; または (vii) 他者が本サービスを利用しもしくは楽しむことを妨害し、もしくは Alpha Exploration もしくはそのユーザーを危害または責任問題に晒し、またはAlpha Explorationがそれらのおそれがあると判断するもの)

Clubhouseでは、「room」と呼ばれる部屋・2ちゃんねるのスレッド的な集まる場をモデレータが作成するのですが、私が観測した日本のroomの中にも、いわゆるセクシー女優をゲストに招いたもの・性行為に関するものをテーマにしたところがありました。

どこまでのわいせつさを取り締まりの対象とするのか?取り締まりの対象が対象が写真や文字でないだけに、ボーダーラインの引き様がかなり難しいはず です。

(2)録音はもちろん手元のメモも禁止

TwitterやFacebook等の文字や動画ベースのSNSと違い、フローで流れて消えていく会話なので後で巻き戻して聴き直したいこともあるかもしれません。

しかし、本サービスでは、スピーカーとなる 他のユーザー全員からの書面による同意を取らない限り、録音を含む「record」が禁止 されています。

2 record any portion of a conversation without the express written consent of all of the speakers involved
(関係するスピーカー全員の明示的かつ書面による同意なく会話を記録すること)

ここで注意したいのは、日本人がrecordと聞くと音声的な録音だけをイメージしがちな点。辞書を引かなくてもわかるとおり、英語の「record」はテキストで残す「記録」をも含むことになります。

しかし、会話をスピーカーフォンで流しレコーダーに録音することはもちろん、自分の手で打ち込む・書く手元のテキストメモもNG ということになりますが、果たしてどう取り締まるつもりなのか。実効性があるといえるかは疑問です。

(3)「オフレコを他で話すな」が参加者全員のルールに

最後に取り上げておきたいのがこちら。

3 share information (on Clubhouse or elsewhere) that the speaker explicitly stated was to be treated as “off the record”
(「オフレコ」として扱うよう明示的に表明されたにもかかわらず情報を(Clubhouse内または他の場所で)共有すること)

居酒屋の飲み会でも、会話上での「これオフレコなんだけどさあ」ではじまる業界裏話はつきもの。そんな話を聞けば、特定企業や個人の名前は伏せたとしても、明日にはうわさとして広まっているものです。

本来はその会話に参加した人同士の信頼関係の中で処理されるべきこの「オフレコ」プロトコルですが、Clubhouseでは、運営がこれをわざわざこれを「ルール」としてあらゆるユーザーに課している のがポイントです。

私が昨日参加した部屋では早速、「昨日の晩参加した◯◯についてのroomで、あの△△さんがオフレコでこんなこといってて面白かった」なんていう会話を耳にしました。Twitterにそれを書き込んでいる人も、すでにたくさんいらっしゃるようなのですが。

音声SNSらしさを暗に訴求するサービス内容と利用規約の矛盾

リアルな世界では出会えない・会う機会が限られる人たちの「秘密の会話」に参加したい。聞くだけでも聞いてみたい。そんな気持ちをそそのかすSNSであることを暗に訴求するClubhouse。

しかし、運営会社としては、そのらしさは利用規約上おくびにも出さず、建前にも見える禁止事項を振りかざす、おきまりのパターンに陥っているように見えます。「音声だけ」と奇をてらったサービスを展開するなら、むしろ、「人の口に戸は立てられない」「ここで会話したことは全世界公開の覚悟をもち、会話した以上は秘密はないと思え」と、自己責任を振りかざしてもよかったかも しれません。

そうしなかった運営会社の判断を、ユーザーがどう捉えるのか(支持するのか)、そしてTwitterのように発展していくのか、注目しています。

(橋詰)

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