業務提携契約書とは?業務委託との違いや主な記載事項を弁護士が解説

他社と業務提携を行う際には「業務提携契約書」を作成します。役割分担や利益・損失の分担などを明確に定めることが大切です。
本記事では業務提携契約書について、業務委託との違いや主な記載事項などを弁護士が解説します。
業務提携契約書とは
「業務提携契約」とは、企業間で業務提携を行う際に締結する契約です。当事者の役割分担や利益・損失の分担など、業務提携の条件を定めます。
「業務提携契約書」は、業務提携契約の内容を記載した書面に当たります。トラブルの未然防止、およびトラブル発生時のリスク軽減などの観点から、業務提携契約書を作成して契約条件を明確化することが大切です。
業務提携契約と業務委託契約の違い
企業間では「業務委託契約」も締結されることがありますが、業務提携契約とは異なるものです。ただし業務提携の内容が、実質的には業務委託に近い形となっているケースもあります。
「業務委託契約」は、当事者の一方が相手方に対して業務を委託し、相手方がその業務を受託する契約です。「委託者(発注者)」「受託者(受注者)」という形で、当事者の立場が明確に分かれます。業務を行うのは受託者で、委託者は業務に対する報酬を支払います。
これに対して業務提携契約では、当事者双方がそれぞれの強みを活かした業務を担い、得られた利益や損失を互いに分担します。
ただし、たとえばAが商品の企画、相手方であるBがその商品の製造を行い、製造された商品をAが販売するという場合は、商品製造に関する業務委託契約に近い内容となります。
結局のところ、契約の名称ではなく、どのような内容の契約であるかが重要と言えるでしょう。
業務提携契約書の主な記載事項|例文も紹介
業務提携契約書には、主に次の事項を記載します。
②提携業務の内容
③役割分担
④第三者に対する責任
⑤知的財産権の帰属等
⑥利益の分配・損失の負担
⑦競業避止義務
⑧その他
各項目につき、条文例を示しながら解説します。
目的
第1条 (目的)
本契約は、甲乙間の業務提携に係る基本事項を定めることを目的とする。
業務提携の条件を定める契約である旨を、契約書の冒頭で宣言します。
提携業務の内容
第2条 (提携業務の内容)
本契約に基づき、甲乙間で提携を行う業務(以下「本業務」という。)の内容は、次に掲げるものとする。
① ○○事業に係る企画、研究、開発、設計、製造及び販売の業務
② 前号に定める業務に付随関連する業務
提携を行う業務の内容を定めます。
提携業務は利益・損失や第三者に対する責任の分担の対象となるため、その範囲を明確に定めることが大切です。事業の名称を明記するなどして、できる限り提携業務の範囲を具体的に特定しましょう。
役割分担
第3条 (甲乙間の役割分担)
本業務のうち、甲は次に掲げる甲の業務(以下「甲の業務」という。)、乙は次に掲げる乙の業務(以下「乙の業務」という。)を、それぞれ主導的に担当する。ただし、甲乙間の合意によって別段の定め又は取扱いをすることを妨げない。
【甲の業務】
① 研究、開発、設計及び製造に係る業務
② 前号に定める業務に付随関連する業務
【乙の業務】
① 企画及び販売に係る業務
② 前号に定める業務に付随関連する業務
提携業務における当事者の役割分担を定めます。
各当事者の強みを活かせる分担方法を協議のうえで決定し、契約書に明記しましょう。特に、第三者に対する責任の範囲を役割分担に従って定める場合は、役割分担をできる限り明確化することが重要です。
第三者に対する責任
第4条 (第三者に対する責任)
- 本業務に起因して第三者に損害を与えたときは、当該損害が甲の業務に起因して生じた場合は甲、乙の業務に起因して生じた場合は乙が、それぞれ当該損害を賠償する責任を負う。
- 前項に定める損害が、甲の業務又は乙の業務のいずれに起因して生じたか明らかでないときは、甲乙が折半して当該損害を賠償する責任を負う。
- 甲及び乙は、前二項に基づき自らが負担する損害の額を超えて、第三者に対して損害賠償を支払ったときは、相手方に対し、当該超過額を求償することができる。
提携業務に起因して第三者に損害を与えた場合に、その責任をどのように分担するかを定めます。
基本的には、役割分担をベースに責任を分担するのが適切と考えられますが、実際の分担割合をどのように定めるかは検討の余地があるところです。また、発生原因が明らかでないケースも想定しておく必要があります。当事者間でよく協議したうえで、適切な分担方法を定めましょう。
知的財産権の帰属等
- 本業務に関し、甲又は乙が単独で創出した発明、考案、著作物その他一切の成果物(以下「成果物」という。)に係る知的財産権(知的財産権を受ける権利を含む。著作権については、著作権法第27条及び第28条に掲げる権利を含む。以下同じ。)は、当該創出をした者に帰属する。
- 本業務に関し、甲及び乙が共同で創出した成果物に係る知的財産権は、甲に帰属する。乙は、当該知的財産権の取得、維持及び行使に必要な手続きにつき、実務上合理的な範囲内で協力しなければならない。
- 甲及び乙は、相手方に対し、前二項に基づき取得した知的財産権につき、本契約の目的の範囲内で無償かつ非独占的に使用することができる通常使用権を許諾する。
提携業務に関して生み出された成果物につき、知的財産権がどちらの当事者に帰属するかを定めます。
知的財産権の帰属は、役割分担の内容や当事者の力関係などを考慮して決められることが多いです。いずれにしても、自社にとって不当に不利とならないように注意する必要があります。
利益の分配・損失の負担
第6条 (利益の分配及び損失の負担)
- 本業務によって生じた利益(以下「本利益」という。)は、甲50%:乙50%の割合で分配する。甲及び乙は、自らにおいて本利益が発生したときは、当該本利益が発生した月の翌月末日までに、当該本利益の50%に相当する額を相手方に支払うものとする。
- 本業務によって生じた損失(以下「本損失」という。)は、甲50%:乙50%の割合で負担する。甲及び乙は、相手方において本損失が発生したときは、当該本損失が発生した月の翌月末日(第5項に基づく相手方の報告が期限を徒過したときは、当該報告を受けた日が属する月の翌月末日)までに、当該本損失の50%に相当する額を相手方に支払うものとする。
- 前二項に基づく支払いに要する振込手数料その他の費用は、当該支払いを行う者の負担とする。ただし、甲乙間の合意により、相殺若しくは交互計算又はその他のこれらに類する方法による精算を妨げない。
- 本利益及び本損失の額は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従って計算するものとする。
- 甲及び乙は、自らにおいて発生した本利益又は本損失の額を毎月末日締めで集計し、翌月1日以降同月15日までに相手方に報告しなければならない。
- 甲及び乙は、本利益及び本損失の計算に係る帳簿(以下「本帳簿」という。)を作成し、有効期間(第8条第1項で定義する。)中及び有効期間の満了後3年間保存しなければならず、相手方から本帳簿の閲覧を請求されたときは、速やかに当該本帳簿を閲覧させなければならない。
提携業務から生じる利益の分配と、損失の負担について定めます。上記の例では、利益も損失も折半(50%:50%)としています。
利益と損失の状況については、当事者間で互いに報告を行って共有し、その内容に基づいて精算します。報告義務や帳簿の作成・保存・閲覧などについても、契約書に明記しておきましょう。
競業避止義務
第7条 (競業避止義務)
甲及び乙は、本契約の有効期間中及び有効期間の満了後2年間、相手方の書面による承諾がない限り、本業務と競合する業務、事業その他の活動を行ってはならない。
提携業務と競合する業務等を行ってはならない旨の競業避止義務を定めます。上記の例では、契約終了後も2年間は競業避止義務を負うものとしています。そのほか、競業避止義務の対象地域を限定することも考えられます。
競業避止義務の期間が長すぎるなど、その負担が過度に重い場合には、公序良俗違反(民法90条)によって無効となるおそれがあるので注意が必要です。
その他
業務提携契約書には上記のほか、次の事項などを定めます。
→契約の有効期間を定めます。・契約の解除
→契約を解除する要件および手続きを定めます。
・損害賠償
→契約違反による損害賠償責任の範囲を定めます。
・秘密保持
→契約に基づいて授受した秘密情報の開示等を原則として禁止します。
・反社会的勢力の排除
→暴力団員等に該当しないこと、および暴力的な要求行為をしないことの表明・確約などを定めます。
・準拠法
→契約の解釈に用いる法の種類を定めます。特に国際取引においては、準拠法を明確化することが重要です。
・合意管轄
→契約に関する紛争が生じた場合に、訴訟を提起する裁判所を指定します。
業務提携契約書を締結する際のチェックポイント
業務提携契約書を作成する際には、次のポイントに注意しながら内容を検討してください。
②経済的な条件を明確に定める|利益・損失の分担など
役割分担と責任の所在を明確化する
業務提携契約書においては、各当事者が担う役割(業務)の範囲を具体的かつ明確に定めることが大切です。担当領域が曖昧になっていると、業務の抜け漏れや重複が生じたり、トラブル発生時に責任の所在が不明確となったりするおそれがあります。
トラブルに備える観点からは、第三者に損害を及ぼした場合の責任分担や求償関係についても、業務提携契約書において事前に整理しておきましょう。
経済的な条件を明確に定める|利益・損失の分担など
提携業務から生じる利益や損失の分担は、業務提携契約書の中でも特に重要な事項です。分担の割合や精算の方法などを明確に定めておきましょう。
相手方において生じた利益や損失については、相手方から報告を受けて把握する必要があります。報告義務を定めるとともに、報告内容が適正かどうかを検証する方法(帳簿の閲覧など)についても明記しましょう。
業務提携契約書に収入印紙は必要?
業務提携契約書を紙で作成する場合は、収入印紙が不要であるケースが多いものの、内容によって収入印紙が必要となることがあります。
請負に当たる場合は収入印紙が必要(第2号文書)
業務提携の内容が実質的に請負である場合、紙の業務提携契約書は印紙税法上の「第2号文書」に当たり、収入印紙の貼付が必要となります。貼付すべき収入印紙の額は、次のとおりです。
| 契約金額 | 印紙税額 |
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 1000円 |
| 300万円超500万円以下 | 2000円 |
| 500万円超1000万円以下 | 1万円 |
| 1000万円超5000万円以下 | 2万円 |
| 5000万円超1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超 | 60万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
たとえば、業務提携契約書によって種類や数量などが指定された商品を、一方当事者が製造したうえで相手方に納品するとします。このような取引は(「業務提携契約書」という名称であっても)実質的に請負なので、その契約書は第2号文書に当たると考えられます。
継続的取引の基本となる契約書の場合は収入印紙が必要(第7号文書)
紙の業務提携契約書が「継続的取引の基本となる契約書」である場合は、原則として印紙税法上の「第7号文書」に当たり、収入印紙の貼付が必要となります。貼付すべき収入印紙の額は4000円です。
「継続的取引の基本となる契約書」に当たるのは、主に売買・売買の委託・運送・運送取扱い・請負に関する複数取引を継続的に行うため、基本的な取引条件を定めている場合です。業務提携の内容がこれらのいずれかに該当し、かつ継続的な取引を予定している場合は、第7号文書に当たる可能性が高いと考えられます。
ただし、契約書に記載された契約期間が3か月以内であり、かつ更新の定めのない場合は、収入印紙の貼付は不要です。
電子契約なら収入印紙は不要
業務提携契約書を電子契約によって締結する場合は、内容にかかわらず収入印紙を貼る必要はありません。電子契約で締結した契約書は、印紙税法上の課税文書に当たらないと解されているためです。
電子契約で収入印紙が不要になる理由を知りたい方は下記記事もご一読ください。
なお電子契約は印紙税の節約だけでなく、リモートでも締結できる、契約管理がしやすいなどのメリットがあります。まだ電子契約を導入していない企業は、積極的に導入をご検討ください。
まとめ
業務提携契約書は、企業間における業務提携の内容や条件を定めた書面です。役割分担や利益や損失の分担などを明確に定め、トラブルのリスクの軽減に努めましょう。
業務提携契約書は電子契約によって締結することもできます。内容にかかわらず収入印紙が不要となるほか、管理がしやすくなる点などが電子契約の大きなメリットです。未導入の企業は、電子契約の導入をご検討ください。
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ダウンロードする(無料)この記事を書いたライター
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
