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契約実務

マンション管理委託契約とは?標準契約書のチェックポイントなどを弁護士が解説

マンションの管理組合と管理会社の間では「マンション管理委託契約」を締結します。国土交通省が公表している「マンション標準管理委託契約書」をベースに、実際のマンションの状況を反映した適切な内容の契約書を作成しましょう。

本記事ではマンション管理委託契約について、標準契約書のチェックポイントなどを弁護士が解説します。

マンション管理委託契約とは

「マンション管理委託契約」とは、マンションの管理に関する事項を定めた契約です。管理組合と管理会社の間で締結します。

マンション管理委託契約では、管理事務の内容や実施方法、管理組合が管理会社に支払う費用、管理会社による報告などを定めます。マンション管理の条件を明確に記載し、管理組合と管理会社の間のトラブルを予防しましょう。

マンション標準管理委託契約書とは

国土交通省は「マンション標準管理委託契約書」を作成・公表しています。典型的な住居専用の単棟型マンションに共通する管理事務につき、標準的な契約内容を定めたものです。

マンション管理委託契約の内容を検討する際には、基本的にはマンション標準管理委託契約書をベースとするのがよいでしょう。ただし実際の契約書を作成する際には、個々の状況や必要性に応じて、適宜内容の追加・修正・削除を行うことが求められます。

参考:「マンション標準管理者事務委託契約書」、「マンション標準管理委託契約書」、管理業者管理者方式を採用した場合における「マンション標準管理規約(書き換え表)」の策定・改正について(令和7年12月12日)|国土交通省

【2026年4月施行】法改正でマンション管理委託契約書はどう変わった?

2026年4月1日から、改正区分所有法(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)が施行されました。区分所有法の大規模な改正は約20年ぶりで、老朽化マンションの増加や区分所有者の高齢化といった問題に対応すべく、マンションの管理・再生を円滑化するための変更が盛り込まれています。これに伴い、管理組合の運営ルールを定める「マンション標準管理規約」も改正されました。

また、同じく2026年4月1日には、マンション管理の適正化の推進に関する法律(適正化法)の改正法も施行されています。この適正化法改正に対応する形で、従来からあるマンション標準管理委託契約書が改正されるとともに、新たに「マンション標準管理者事務委託契約書」が策定・公表されました(※参考:国土交通省・令和7年12月12日公表)。

マンション標準管理委託契約書は、管理業者(管理会社)が管理組合から管理業務を受託するケースを想定したものです。これに対し、今回新設されたマンション標準管理者事務委託契約書は、管理業者が自ら管理組合の管理者に就任するケース(=管理業者管理者方式)を想定しています。マンションの管理業務の状況に応じて、標準契約書を使い分けましょう。

従来型のマンション標準管理委託契約書を用いる場合も、今回の改正によって内容が変更されていることに注意が必要です。改正前の標準管理委託契約書をベースとしている管理組合においては、契約内容の見直しを検討しましょう。

なお、マンション標準管理委託契約書は過去にも改訂されています。2023年9月11日から施行された改訂では、書面の電子化・IT総会・理事会等DXに対応するための規定が整備されました。古いものをベースにマンション管理契約書を作成している場合には、見直しの機会を設けることをお勧めします。

マンション管理委託契約のチェックポイントを標準契約書に沿って解説

マンション管理委託契約を締結する際、特にチェックすべきポイントとしては次の事項が挙げられます。

①マンションの表示・管理対象部分
②管理事務の内容・実施方法
③管理事務に要する費用の負担・支払方法
④管理事務の報告等
⑤有効期間・契約の更新等

各事項につき、マンション標準管理委託契約書の条文を示しながら解説します。

マンションの表示・管理対象部分

(本マンションの表示及び管理対象部分)
第2条 本マンションの表示及び管理事務(本マンションの管理に関する業務のうち、甲が乙に委託する業務をいう。以下同じ。)の対象となる部分は、次のとおりである。
一 名称 ○○
二 所在地 ○○
三 敷地
面積 ○○㎡
権利形態 ○○
四 建物
構造等 ○○造地上○階建地下○階建共同住宅
建築面積 ○○㎡
延床面積 ○○㎡
専有部分 住宅○戸
五 管理対象部分
イ 敷地
ロ 専有部分に属さない建物の部分(規約共用部分を除く。)
エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、共用トイレ、屋上、屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、内外壁、床、天井、柱、バルコニー、風除室
ハ 専有部分に属さない建物の附属物
エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、テレビ共同受信設備、消防・防災設備、避雷設備、各種の配線・配管、オートロック設備、宅配ボックス
ニ 規約共用部分
管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、集会室、トランクルーム、倉庫
ホ 附属施設
塀、フェンス、駐車場、通路、自転車置場、ゴミ集積所、排水溝、排水口、外灯設備、植栽、掲示板、専用庭、プレイロット

マンション管理委託契約の対象となるマンションの情報(名称・所在地・敷地・建物)と、管理対象部分の範囲を記載します。

マンションの敷地・建物に関する情報は、登記事項証明書に合わせて記載しましょう。管理対象部分の範囲については、実際のマンションの状況や設備などに応じて、適宜追加・修正・削除を行ってください。

管理事務の内容・実施方法

(管理事務の内容及び実施方法)
第3条 管理事務の内容は、次のとおりとし、別表第1から別表第4に定めるところにより実施する。
一 事務管理業務(別表第1に掲げる業務)
二 管理員業務(別表第2に掲げる業務)
三 清掃業務(別表第3に掲げる業務)
四 建物・設備等管理業務(別表第4に掲げる業務)(別表省略)

管理会社が行う管理事務の内容と、その実施方法を定めます。マンション標準管理委託契約書では、別表第1~第4にて詳細が示されています。

管理事務の内容・実施方法については、実際に管理会社が行う事務に合わせて追加・修正・削除を行いましょう。

管理事務に要する費用の負担・支払方法

(管理事務に要する費用の負担及び支払方法)
第6条 甲は、管理事務として乙に委託する事務(別表第1から別表第4までに定める事務)のため、乙に委託業務費を支払うものとする。
2 甲は、前項の委託業務費のうち、その負担方法が定額でかつ精算を要しない費用(以下「定額委託業務費」という。)を、乙に対し、毎月、次のとおり支払うものとする。
一 定額委託業務費の額
合計月額○○円
消費税及び地方消費税抜き価格 ○○円
消費税額及び地方消費税額(以下、本契約において「消費税額等」という。) ○○円
内訳は、別紙2のとおりとする。
二 支払期日及び支払方法
毎月○日までにその○月分を、乙が指定する口座に振り込む方法により支払う。
三 日割計算
期間が一月に満たない場合は当該月の暦日数によって日割計算を行う。(1円未満は四捨五入とする。)
3 第1項の委託業務費のうち、定額委託業務費以外の費用の額(消費税額等を含む。)は別紙3のとおりとし、甲は、各業務終了後に、甲及び乙が別に定める方法により精算の上、乙が指定する口座に振り込む方法により支払うものとする。
4 甲は、第1項の委託業務費のほか、乙が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担するものとする。

管理組合が管理会社に対して支払う費用につき、金額や支払方法などを定めます。

マンション標準管理委託契約書では、毎月定額の費用(=定額委託業務費)を定めたうえで(2項)、定額委託業務費に含まれない業務の費用の精算についても定めています(3項)。

管理事務の報告等

(管理事務の報告等)
第 10 条 乙は、甲の事業年度終了後○月以内に、甲に対し、当該年度における管理事務の処理状況及び甲の会計の収支の結果を記載した書面を交付し、管理業務主任者をして、報告をさせなければならない。
2 乙は、毎月末日までに、甲に対し、前月における甲の会計の収支状況に関する書面を交付しなければならない。
3 乙は、甲から請求があるときは、管理事務の処理状況及び甲の会計の収支状況について報告を行わなければならない。
4 前3項の場合において、甲は、乙に対し、管理事務の処理状況及び甲の会計の収支に係る関係書類の提示を求めることができる。

管理会社の管理組合に対する報告について、スケジュールや方法などを定めます。特に報告期限(1項)は、管理組合の集会(総会)の開催時期などを考慮し、その運営上支障がないように定めましょう。

有効期間・契約の更新等

(本契約の有効期間)
第 22 条 本契約の有効期間は、○○年○月○日から○○年○月○日までとする。(契約の更新等)
第 23 条 甲又は乙は、本契約を更新しようとする場合、本契約の有効期間が満了する日の三月前までに、その相手方に対し、書面をもって、その旨を申し出るものとする。
2 本契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議が整う見込みがないときは、甲及び乙は、本契約と同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができる。
3 本契約の更新について、甲乙いずれからも申出がないときは、本契約は有効期間満了をもって終了する。
4 乙は、本契約の終了時までに、管理事務の引継ぎ等を甲又は甲の指定する者に対して行うものとする。ただし、引継ぎ等の期限について、甲の事前の承諾を得たときは、本契約終了後の日時とすることができる。

マンション管理委託契約の有効期間は、管理組合の会計期間や総会開催時期、重要事項説明時期などを考慮して設定しましょう。

有効期間の満了が近づいたら、契約更新の可否が問題となります。

管理会社には、契約更新に当たってあらかじめ重要事項説明を行うことが義務付けられています(マンションの管理の適正化の推進に関する法律72条)。そのスケジュールを踏まえ、マンション標準管理委託契約書では、契約更新の申入れを有効期間満了日の3か月前に行うべき旨を定めています(1項)。

管理組合・管理会社の双方とも、更新申入れの期限を踏まえて、マンション管理委託契約の更新について検討を行うようスケジュールを組みましょう。

マンション管理委託契約に収入印紙は必要?

マンション管理委託契約を締結する際に収入印紙を貼るべきか否かは、紙の契約書と電子契約のどちらであるか、および契約内容によって決まります。

紙の契約書で請負業務が含まれる場合は、収入印紙が必要

マンション管理委託契約書を紙で作成し、かつ管理会社の業務に請負に当たるものが含まれている場合は、原本に収入印紙を貼る必要があります。

「請負」とは、当事者の一方が仕事の完成を約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です(民法632条)。

管理会社側が何らかの仕事を完成する義務を負っており、その完成をもって管理費用の支払義務が確定する場合には、その業務は請負に当たります。請負に当たるかどうかは、業務の内容や費用の精算方法などを踏まえて個別に検討する必要があります。

たとえば、個別に費用がかかる修繕工事は請負に当たると考えられます。

清掃業務や保守点検などの業務については、請負ではなく準委任(=法律行為以外の事務の委託)と解する余地もあります。業務を行うこと自体に報酬が発生するなら準委任、一定の状態や結果を実現することに対して報酬が発生するなら請負に当たると考えられます。

第2号文書と第7号文書

収入印紙を貼るべきマンション管理委託契約書は「第2号文書(請負に関する契約書)」と「第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)」のいずれかに該当します。

管理会社が行う請負業務のうち、少なくとも1つ以上について契約金額が記載されていれば、その契約書は第2号文書に当たります。
第2号文書の印紙税額は、契約金額に応じて次のとおりです。複数の請負業務について契約金額が記載されている場合は、その合計額を基準とします。

<第2号文書>

契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上100万円以下 200円
100万円超200万円以下 400円
200万円超300万円以下 1000円
300万円超500万円以下 2000円
500万円超1000万円以下 1万円
1000万円超5000万円以下 2万円
5000万円超1億円以下 6万円
1億円超5億円以下 10万円
5億円超10億円以下 20万円
10億円超50億円以下 40万円
50億円超 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

管理会社が行う請負業務につき、いずれも契約金額が記載されていなければ、その契約書は第7号文書に当たります。第7号文書の印紙税額は4000円です。

ただし、契約期間が3か月以内で更新の定めがないときは、収入印紙を貼る必要はありません。

電子契約なら収入印紙は不要

マンション管理委託契約を電子契約によって締結するときは、契約内容を問わず、収入印紙の貼付は不要です。印紙税を節約したいなら、電子契約の導入を検討しましょう。

マンション管理委託契約を電子化するメリット

マンション管理委託契約は、有効期間が定められ、期間満了のたびに更新の申出や重要事項説明が必要となる、典型的な継続的契約です。書面での締結には相応の事務負担が伴うため、電子契約への切り替えによって次のようなメリットが得られます。

収入印紙が不要になる

前述のとおり、マンション管理委託契約を電子契約で締結する場合、契約内容にかかわらず収入印紙は不要です。契約金額が大きい場合や、複数棟のマンションを管理する管理会社が多数の契約を締結する場合、印紙税の節約効果は無視できません。

押印・郵送の手間がなくなり、更新手続きがスムーズになる

マンション管理委託契約書では、有効期間満了日の3か月前までに更新の申出を行うべき旨が定められています(マンション標準管理委託契約書23条1項)。書面で契約を締結している場合、管理組合側の記名押印には理事長の実印手配が必要となることが多く、理事が輪番制で交代する管理組合では、そのたびに手続きが煩雑になりがちです。

電子契約であれば、押印のための対面や郵送のやり取りが不要になり、理事長が交代した場合でもオンライン上で速やかに締結手続きを進められます。更新期限の管理についても、システム上でリマインドを設定できるサービスを利用すれば、失念のリスクを抑えられます。

契約書の管理・検索がしやすくなり、紛失リスクを防げる

マンション管理委託契約は、更新を重ねながら長期間にわたって運用されるものです。書面で保管していると、担当者の異動や管理組合役員の交代に伴い、過去の契約書が所在不明になるケースも少なくありません。

電子契約であれば、契約書はクラウド上で一元管理され、過去の契約内容や締結日をいつでも検索・確認できます。管理組合の総会や重要事項説明の際に、契約内容をすぐに参照できる点も実務上のメリットです。

標準管理委託契約書が示す方向性にも合致する

前述のとおり、マンション標準管理委託契約書は、書面の電子化やIT総会・理事会等のDXに対応するための規定整備を重ねてきました。マンション管理委託契約の電子化は、こうした国の標準的な指針とも方向性を一にするものといえます。

管理組合・管理会社の双方にとって事務負担の軽減につながる電子契約の導入は、契約更新のたびに発生する手続きの見直しを機に検討する価値があるといえるでしょう。

まとめ

マンション管理委託契約は、マンションの管理に関して管理組合と管理会社が締結する契約です。国土交通省が公表している「マンション標準管理委託契約書」をベースとして、実態に合わせた追加・修正・削除を行い、適切な内容の契約書を作成しましょう。

マンション管理委託契約を電子契約によって締結すると、契約内容にかかわらず収入印紙を貼る必要がなく、管理や検索もしやすくなります。電子契約は契約業務の効率化に繋がるので、未導入の企業は積極的に導入をご検討ください。

なお、当社の提供する電子契約サービス「クラウドサイン」の詳しい機能や導入メリット、料金体系がわかるサービス紹介資料は、以下のフォームより無料でダウンロードいただけます。電子契約による業務効率化を進めたい方は、ぜひお気軽にダウンロードしてご活用ください。

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この記事を書いたライター

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阿部 由羅

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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