委任状の書き方完全ガイド 必要なケース・記載例・押印のルールを解説

委任状という言葉は日常的に耳にする一方で、その法的な位置づけや、委任契約書との違いを正確に理解している人は意外と多くありません。
本記事では、委任状の基本的な書き方から、個人・法人それぞれのケース別のポイント、押印のルールまでを解説します。
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目次
委任状とは
「委任状」とは、本人がすべき手続きや権利の行使を第三者に任せたことを、提出先に示すために作成する書類です。「誰に、何を、どこまで任せたか」を証明することが委任状の役割です。
例えば自動車の名義変更や郵便物の受け取り、、契約の締結や株主総会における議決権の行使など、幅広い場面で委任状が登場します。会社の業務においても、委任状が登場する場面はよく見られます。
まずは委任状がどのような文書なのかを整理しておきましょう。
委任状の法的な位置づけ
委任状は、その作成者(=委任者)が受任者に対して一定の行為(=委任事項)を委任した事実、およびその範囲を証明する書類に当たります。委任事項の例としては、契約などの法律行為の代理や、法律行為以外の事務の代行などが考えられます。
委任状を確認することにより、記載された委任事項については、受任者が処理権限を有することを一応推認できます。委任状が偽造・変造されているなどの可能性も完全には否定できないものの、明らかにその痕跡が認められる場合でない限り、提出を受けた側が責任を問われるリスクは低くなります。
そのため、相手方本人以外の者が手続き等を行おうとする場合は、委任状の提出を求めるのが安全といえます。
委任状と委任契約書の違い
委任状と委任契約書にはどちらも「委任」という言葉が用いられていますが、その性質は大きく異なります。
委任契約書は、「委任(=法律行為の委託)」または「準委任(=法律行為でない事務の委託)」を内容とする契約です。委任者・受任者がその合意に基づいて共同で作成します。委任する業務の内容や範囲のほか、報酬・契約期間・秘密保持義務・契約解除など、詳細な契約条件が定められます。当事者以外の者への交付は、基本的に想定されません。
これに対して委任状は、委任者が単独で作成する書面です。委任者・受任者の情報や委任事項など、必要最小限の情報が記載されます。手続きの窓口や取引先など、委任者・受任者以外の者に対して提出することが想定されています。
| 委任状 | 委任契約書 | |
| 作成者 | 委任者(本人)が単独で作成 | 委任者・受任者双方が合意して作成 |
| 目的 | 委任の事実や範囲を第三者に証明する | 委任者・受任者間の権利義務を定める |
| 当事者以外の者に 対する開示(提出) |
窓口・取引先などへ提示 | 想定されない |
| 記載される内容 | 委任者・受任者の情報や委任事項 など最小限の事項 |
業務範囲、報酬、契約期間、秘密保持、 契約解除などの詳細な契約条件 |
委任契約について詳しく知りたい方は下記記事もご一読ください。
委任状の書き方・記載例
委任状は書式が厳密に定められているわけではありませんが、記載すべき項目や書き方については押さえておくべきポイントがあります。ここでは、委任状に記載すべき項目や委任事項の書き方、押印の要否などを解説します。
記載すべき基本項目
委任状には、主に以下の項目を記載します。
| 項目 | 概要 |
| 委任者・受任者(代理人) の氏名・住所等 |
委任者と受任者(代理人)が誰であるかを特定する情報。 個人の場合は氏名と住所、法人の場合は名称・住所・代表者名を記載する |
| 委任する事項(委任事項) | 何を委任するのかを具体的に記載する |
| 委任状の作成日 | 委任状を作成した日付を記載する |
| 委任者の押印 | 委任者本人の意思によって作成したことを示す。 押印の要否は手続き先によって異なる |
| 生年月日・電話番号 | 役所窓口では、委任者・代理人の生年月日や委任者の電話番号の 記載を求められることが多い |
| 使用目的・提出先 | 自治体に提出する委任状には記載を求められることが多い |
なお、提出先がひな形などを配布している場合は、その様式を使うのが確実です。自治体は窓口備え付けとダウンロードの両方を用意していることが多く、自動車登録では各運輸支局のサイトからダウンロードできます。もっとも、異なる書式を用いる場合でも、必要事項が記載されていれば基本的には受理されます。
記載例
委任状私は、下記の者を代理人と定め、次の事項を委任します。
【代理人】
住所 東京都○○区○○1-2-3
氏名 ○○ ○○
生年月日 ○年○月○日
【委任事項】
1. 私の住民票の写し(世帯全員・本籍記載なし・個人番号記載なし)2通の
交付申請および受領に関する件
2. 上記に付随する手数料の支払いに関する件
【使用目的・提出先】
○○の申請のため/○○株式会社に提出
作成日 20○○年○月○日
【委任者】
住所 東京都○○区○○4-5-6
氏名 ○○ ○○(自署) 印
生年月日 ○年○月○日
電話番号 00-0000-0000
委任事項の書き方のコツ
委任事項は、できるだけ具体的に、対象を限定して記載することが重要です。「一切の事項を委任する」といった包括的な書き方は、代理人の権限があいまいになり、想定外の行為まで行われてしまうリスクや、窓口で受理されないリスクにつながります。
「××との間の〇〇契約書の締結」「××社の株主総会における議決権行使」など、対象となる行為を明確にしましょう。
証明書の受領や手数料の支払いといった付随行為については、具体的に列挙する方法のほか、「上記に付随関連する事務」などと包括的に記載する方法もあります。提出先によっては付随行為の記載を求めないケースもありますが、不安であれば事前に提出先へ問い合わせましょう。
押印のルール(実印・認印・会社印)
委任状への押印に関するルールは法令で一律に定められているわけではなく、手続き先によって取扱いが異なります。一般的には、不動産の登記や商業登記、自動車の名義変更のように財産や重要な権利に関わる手続きでは、実印と印鑑証明書の添付が求められる傾向があります。
一方、郵便物の受け取りなど日常的な手続きでは、認印で足りる、あるいは押印自体が不要とされるケースもあります。押印の要否等は、手続き先へ事前に確認するのが確実です。
委任状への押印が求められるのは、その有効性を確実なものとするためです。本人の印章による押印がなされていれば、委任状は真正に成立したものと推定されます(民法228条4項)。もっとも、本人の署名によっても同様の推定効が生じるため、近年では押印を要せず署名で足りるとする手続きが増えています。
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委任状作成・運用時の注意点
委任状を作成する際には、作成後の運用についても気をつけたいポイントがあります。以下の点をチェックしておきましょう。
有効期限を確認する
委任状には、特に記載されていない限り有効期限はありません。ただし、提出先によっては独自に有効期限を定めていることがあり、作成日がかなり前である場合は受理されない可能性があります。基本的には、提出直前に委任状を作成するのが確実です。
捨印は原則使用しない
捨印を押すと、委任状の内容を後から書き換えられてしまうリスクがあります。委任状の訂正が必要な場合は、新たに作成し直すか、二重線・訂正印などによる訂正を行いましょう。
委任状の写しは保管する
委任状の改ざん等が疑われる際に検証できるように、委任者・受任者の双方が委任状の写しを保管しておきましょう。特に法人では、社内での保管ルールを決めておくとよいでしょう。
印紙は原則不要
委任状は原則として印紙税法上の課税文書に当たらず、収入印紙の貼付は不要です。
ただし、課税文書に該当する内容が委任状に記載されている場合は、収入印紙の貼付を要することがあります。実務上、委任状に収入印紙を貼るべきケースはほとんどないと考えられますが、不安であれば税理士などに確認してください。
白紙委任状のリスクと偽造の罰則
委任事項や受任者(代理人)名を空欄にしたまま渡す「白紙委任状」は、委任者が想定していない使われ方をしても、その結果について委任者が責任を負うことがあります。
民法では、本来は無権代理に当たる行為につき、例外的に本人に効果が帰属する「表見代理」のルールを定めています。白紙委任状を交付した場合は、代理権授与の表示による表見代理(民法109条)および権限外の行為の表見代理(民法110条)の規定が適用される可能性があるので注意が必要です。
委任者が白紙委任状を交付した者が、第三者にその白紙委任状を交付して転々流通した場合には、原則として代理権授与の表示による表見代理は成立しないと解されています。白紙委任状は、次々と第三者に転々流通することを予定した文書ではないためです(最判昭和39年5月23日)。
一方で、委任者から直接白紙委任状の交付を受けた者が権限外行為をした場合に、表見代理が成立し得るとした判例があります。本事案では、委任者Yが受任者Aに対して所有権移転登記手続きの代理権を授与するため、Aの代理人であるBに対して白紙委任状と名宛人白地の売渡証書などの登記関係書類を交付しました。ところが、白紙委任状等はB→A→Bと移動した後、Bは白紙委任状等を濫用して自らがYの代理人であるかのように装い、第三者(X1・X2)が所有する山林とYが所有する山林の交換契約を締結しました。最高裁は、相手方(X1・X2)が代理権があると信じたことに正当の事由があれば、民法109条・110条により表見代理が成立し得るとしました(最判昭和45年7月28日)。
表見代理が成立すると、本来は無権代理であるはずの行為の効果が本人に帰属します。不動産の売買であれば本人は所有権を失い、あとは無権代理人に損害賠償等を請求するしかありません(民法117条)。
なお、委任状を偽造・変造する行為は「有印私文書偽造等罪(刑法159条1項・2項)」や、偽造・変造された委任状を行使する行為は「偽造私文書等行使罪(刑法161条)」に該当し、刑事罰の対象になります。有印私文書偽造等罪および偽造私文書等行使罪の法定刑は、いずれも3月以上5年以下の拘禁刑です。
委任状はいつまで有効か、撤回できるか
委任状につき、特に有効期間は定められていません。また、作成者(委任者)は委任状をいつでも撤回することができます。
なお、委任状に基づいて付与された代理権は、委任者の死亡、代理人の死亡または代理人が破産手続開始の決定もしくは後見開始の審判を受けたことによって消滅します(民法111条1項)。ただし例外的に、登記申請者の委任による代理人の権限は、登記申請者が死亡しても消滅しません(不動産登記法17条1号)。
【ケース別】委任状が必要な場面と書き方のポイント
委任状が必要になる場面は、個人の行政手続きから法人の業務まで多岐にわたります。ここでは代表的なケースを個人向け・法人向けに分けて、それぞれの注意点を解説します。
個人の手続きで委任状が必要になるケース
自動車の登録手続き
新車購入時の新規登録申請や中古車購入時の名義変更申請を代理人に依頼する場合には、委任状が必要です。委任事項は「下記自動車の○○登録申請に関する権限」などとし、対象車両の車台番号または自動車登録番号を特定して記載します。国土交通省が公開しているフォーマットを利用することもできます。
郵便物の受け取り
本人または同居している家族以外の人が郵便局窓口で郵便物を受け取る際には、委任状が必要です。委任事項には受け取る郵便物の種類や差出人を明記します。郵便局所定の様式を用いるのが確実です。
不動産の相続登記
不動産の相続登記は、相続人が自らの権利について申請する場合は、委任状は必要ありません。
法定相続分どおりに登記する場合、共有物の保存行為(民法252条5項)にあたるため、各相続人が単独で相続登記を申請できます。他の相続人の同意も委任状も必要ありません。ただし、申請人となる相続人の持分だけを切り出して登記することはできず、共有者(相続人)全員分をまとめて申請することになります。
遺産分割協議の結果に基づいて登記する場合も、必要になるのは他の相続人の委任状ではなく、遺産分割協議書と各相続人の印鑑証明書です。
委任状が登場するのは、司法書士などに登記手続きを依頼するケースです。委任状には、委任者と受任者の情報、登記の目的や原因、相続人、対象となる不動産の表示、委任の年月日などを記載します。
法人の業務で委任状が必要になるケース
株主総会での議決権の代理行使
株主が総会に出席できない場合、委任状によって代理人に議決権行使を委任することができます。会社法310条1項は、株主が代理人によって議決権を行使できるとしたうえで、株主または代理人が代理権を証明する書面を会社に提出しなければならないと定めています。
議決権行使に関する代理権の授与は、株主総会ごとに行う必要があります(310条2項)。複数の株主総会で1通の委任状を使い回すことはできません。
会社は総会の日から3か月間、代理権を証明する書面を本店に備え置く義務があり、株主は営業時間内にその閲覧・謄写を請求できます(310条6項・7項)。
会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限できます(310条5項)。
代理人の資格については、定款で「株主に限る」と定めている会社が多くあります。最高裁は、この定款規定を、株主以外の第三者によって総会が撹乱されることを防ぐ合理的な理由による相当程度の制限として有効と判断しました(最判昭和43年11月1日)。一方で、株主である法人が、その指揮命令に服する職員や従業員に議決権を代理行使させることは、この定款規定に反しないとされています(最判昭和51年12月24日)。
官公庁への許認可申請・登記手続きの代理
行政書士や司法書士などに許認可や登記の申請手続きを依頼する場合、委任状が必須となります。申請の種類ごとに委任事項を正確に記載する必要があり、記載漏れがあると受理されないことがあります。商業登記など会社の重要な変更を伴う手続きでは、代表者印の押印と印鑑証明書の添付を求められることが一般的です。
委任状の作成・管理を効率化する方法
委任状は一度限りではなく、契約締結や手続きなどのたびに繰り返し作成することになる書類です。紙の運用では原本の郵送・保管や押印のための出社などの手間がかかるところ、「電子委任状」を利用すると業務の効率化に繋がります。
電子委任状とは、代表者から委任された代理権の内容を電子的に記録し、書面での作成・承認の手間を省く仕組みです。2017年公布・2018年施行の「電子委任状の普及の促進に関する法律(電子委任状法)」で制度化されました。同法に基づく指針では、以下の3方式が定められています。
| 方式 | 概要 |
| 委任者記録ファイル方式 | 委任者自身が、必要事項を記載した電磁的記録を作成する |
| 電子証明書方式 | 電子委任状取扱事業者が委任者から委託を受け、受任者の 電子証明書に必要事項を記録する |
| 取扱事業者記録ファイル方式 | 電子証明書方式と同様の委託を受けるが、電子証明書とは 別の電磁的記録に必要事項を記録する |
国の認定を受けた「認定電子委任状取扱事業者」が発行する電子委任状は「特定電子委任状」と呼ばれ、一覧はデジタル庁のWebサイトにある「電子委任状取扱業務の認定について」で確認できます。
よくある質問
委任状の作成・運用にあたって、よく寄せられる疑問をまとめました。
Q. ネットの委任状テンプレートをそのまま使ってよいですか?
A.テンプレートの体裁は参考になりますが、委任事項の内容は手続きに応じて個別に検討する必要があります。提出先が委任状の様式を配布している場合は、その様式を使うほうが確実です。
Q. 有効期限を書き忘れた委任状はどうなりますか?
A.提出先から特に求められない限り、委任状に有効期限を記載する必要はありません。有効期限の記載がない委任状も、原則として有効です。
Q. 委任状は電子データで作成・送付してもよいですか?
A.手続き先によって対応状況が異なります。事前に電子データでの提出が可能かどうかを確認することをおすすめします。
Q. 委任状に記載した代理人以外が手続きを行ってもよいですか?
A.本人以外の人が行う場合に委任状の提出を求められる手続きについては、委任状に記載されていない人が代理人として手続きを行うことは通常認められません。
Q. 一度渡した委任状を取り消せますか?
A. 作成者はいつでも、委任状を撤回することができます。ただし、受任者(代理人)が委任状を持ったままだと勝手に使われてしまうリスクがあるため、必ず代理人から委任状を回収し、提出先にも撤回した旨を伝えましょう。
Q. 白紙の委任状を渡すよう求められました。応じてよいですか?
A. 委任事項や代理人名が空欄の白紙委任状は、想定していない使われ方をされる危険があります。濫用された場合には、相手方が代理権があると信じたことに正当の事由があれば、表見代理によって本人が責任を負うと判断された最高裁判例があります(最判昭和45年7月28日)。白紙委任状ではなく、すべての事項を記載した委任状を渡してください。
まとめ
委任状を作成する際には、委任者や受任者(代理人)に関する事項、委任事項、作成日などを明確に記載することが大切です。個人の手続きから法人の業務まで幅広い場面で委任状が必要になりますが、いずれも「誰に何をどこまで委任するか」を具体的に書くことがトラブル防止の鍵になります。
委任状は繰り返し作成を要する書類のため、法人の業務で作成・確認に手間を感じている場合は、電子委任状という方法も選択肢のひとつとして知っておくとよいでしょう。まずは自社で委任状が発生している場面を洗い出し、電子化になじむものがあるかを確認してみることをおすすめします。
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ダウンロードする(無料)この記事の監修者
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
この記事を書いたライター
弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
電子契約サービス「クラウドサイン」を運営する、弁護士ドットコム株式会社の編集部です。電子契約・電子署名法・電子帳簿保存法のほか、契約管理、契約審査・レビュー、AIを活用した法務業務の効率化について解説しています。法令の解釈にかかわる記事で弁護士等の専門家による監修を受けている記事には、記事末に監修者名を表示しています。