「利用規約に同意」画面のUIデザインについて言及された日本の裁判例まとめ

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先日、Uberアプリの利用規約同意画面のUIデザインに関する米国の裁判例を紹介しましたが、デザイナーであり、クラウドサイン立ち上げ時にUI・UXを監修していただいたTHE GUILD代表の深津貴之(@fladdict)さんが、

日本のサービスって「ユーザー規約」に同意させるけど、海外のサービスって同意させないの多いやん? それで裁判とか大問題になったの聞いたことないんだけど、ユーザー規約にチェックボックスで同意ってどれくらいリスクがヘッジできる機能なの?

法律的にはあったほうがいいはずなんだけど、なくて訴訟で死んだとか、雑で訴訟で死んだ…という事例の実数を知りたい

twitterでつぶやいていらっしゃったので、あらためて、日本の裁判例で「利用規約に同意」画面のUIデザインが争点に関わった事例を調べてみました。

結果、本日現在公知になっている裁判例におけるその件数はどうやら

たったの3件
(うち、チェックボックスの有無が争点になったものは0件

であることがわかりました。

かろうじて見つけた3件のうち、1件がサービス開始時の利用規約同意について、2件がサービス中の利用規約変更に対する同意についての争いとなっています。以下その3件について、裁判所の事実認定でこの点に触れている箇所を抜粋します

東京地判平成21年9月16日 損害賠償等請求事件


本件規約承諾の際には,画面上に本件規約の一部とスクロールボタンが表示された上で,「GAMECITYの市民登録をおこない,サービスをご利用頂くためにはコーエーネットワーク利用規約(本件規約)をご承諾頂くことが必要です。以下の規約をお読みください。」及び「ご承諾頂ける場合には「承諾する」ボタンをクリックし,登録ページにお進みください。そうでない場合は「承諾しない」ボタンをクリックしてください。「GAMECITY市民登録」トップへ戻ります。」との注意書きが記載されており,本件規約全文を読むには画面をスクロールして表示する必要があるところ,本件規約をスクロールして全文を表示せずとも,「承諾する」のボタンをクリックすることができるようになっている。

原告は,本件規定が本件契約の内容には含まれておらず,仮に含まれるとしても錯誤により無効であると主張し,原告本人もこれに沿うような陳述をしているけれども(甲41),前記1(1)認定の本件ゲームの利用方法を前提とすれば,原告は,GAMECITY市民登録の際,本件規約の一部とスクロールボタンが表示され,本件規約を読んで承諾できる場合には「承諾する」のボタンをクリックするよう注意書きがされた画面を見た上で,「承諾する」とのボタンをクリックしたものと認めるのが相当であるから,仮に原告が本件規約の各条項に目を通していなかったとしても,本件規約の内容に従うことに同意して本件契約を締結したものと認めるのが相当であり,また,その点において原告に真意と表示の不一致はなく,要素の錯誤を認めることもできないから,原告は,本件契約の内容となるべき本件規約に拘束されるものと解するのが相当である。

1件目は、伊藤雅浩(@redipsjp)先生からtwitterで情報を提供いただいた裁判例です。昔ながらの、利用規約がスクロールするテキストボックスの下に、承諾ボタンがレイアウトされたもの。裁判所は、このレイアウトなら規約に目を通すのは当然でしょう、と断じています。

なお、現在のmyGAMECITY市民登録画面を見てみると、[新規登録する]ボタンの下に利用規約ページへのハイパーリンクを設置しただけの、シンプルなものに変更されています。

東京地裁平成27年3月26日 損害賠償請求事件


被告において本件サイト利用契約の締結を担当した証人Dは,本件サイトで本件規約を閲覧した平成23年6月3日当時は本件違約金規定が存在していなかった旨被告の主張に沿う供述をするが,同証人は,本件サイトで本件規約を閲覧した際の状況について,規定を逐一確認していったのではなく,本件サイト上で規定をスクロールしてざっと目を通したにすぎず,本件違約金規定が存在していなかったとは言い切れないものの,自分の中ではそれが存在していなかったと思う旨供述するのみであること(同証人尋問調書13,14頁),これに加えて,本件違約金規定の存否は本件訴訟において被告の利害に大きく影響するところ,同証人が被告理事長の子で被告事務局長という立場にあることも考え合わせると,かかる同証人の供述によって,上記認定は左右されないというべきである。

判例データベース(判例秘書とwestlaw)で「利用規約 同意or承諾」のキーワード検索を行い、ヒットした裁判例を目検でチェックして抽出したもの。医療・介護系の求人・求職情報を提供するインターネットサイトで、サイト上で数画面スクロールさせて閲覧させる形式だったようです。

ユーザー企業(被告)は、変更後の利用規約を閲覧はした際に違約金規定が追加されたことに気づかなかった(同意時に存在しなかった)と主張したものの、裁判所はこれを認めませんでした。

東京地判平成27年8月17日 アマゾンこっそり規約変更事件


 3 被告が原告に係る本件プログラムのアソシエイトアカウントを停止した平成26年11月11日時点において有効であった本件規約(同年5月15日発効のもの)には,以下の趣旨の規定があるところ,これらの規定は同年2月15日時点においても存在した。
   (1) プログラム参加要件(4条)
 本件プログラムの参加により,加入申込者は,アソシエイト・プログラム参加要件,並びに本件規約において言及される一切のページ,別表,ポリシー,ガイドライン等(総称して「運営文書」)を遵守することに同意したものとする。
 加入申込者がアソシエイト・プログラム参加要件に記載された要件又は制限に従っていない,あるいは,本件規約に違反していると被告が判断する場合には,被告の判断により,解除,紹介料の支払拒絶,又はその両方の措置をとることがある。
   (2) 修正(15条)
 被告は,本件規約及び運営文書に含まれる条件を,○○.co.jpのサイトに変更のお知らせ,修正済み規約又は修正済み運営文書を掲載することにより,いつでも,被告の独自裁量にて修正する場合がある。
 ○○サイト上に変更のお知らせ,修正済み規約又は修正済み運営文書が掲載された後も引き続き本件プログラムに加入している場合は,加入申込者がその修正を拘束力あるものとして承諾したものとみなす。
  4 本件規約の一部となるものとして,Amazonアソシエイト・プログラム参加要件があり,被告は,あらかじめ,本件規約に基づき,同参加要件も随時変更する場合があると告知していたところ,平成26年8月12日,同参加要件6条を次のとおり変更した(以下「本件参加要件変更」という。)。
   (1) 修正前の6条
 お客様は,当方の事前の書面による同意なしに,いかなるセットトップボックス(例えば,地上・BS・CATV受信用ボックス,デジタルビデオレコーダー,ストリーミングビデオプレイヤー,ブルーレイプレイヤー,DVDプレイヤー等)または,インターネットテレビ(例えば,GoogleTV,ソニーBravia,パナソニックViera Cast,Vizioインタネットアプリケーション等)での使用を目的とした,もしくは意図したアプリケーション上で,またはこれらに関連して,商品関連コンテンツを使用することはできません。
   (2) 修正後の6条
 甲(注:被告)および乙(注:加入申込者)間において,別途本参加要件を参照した書面による合意がない限り,乙は,以下の媒体上でまたはそれに関連して,甲のコンテンツまたは特別リンクを使用したり,○○サイトにリンクしたりしないものとします。(a) コンピューター,携帯電話,タブレット,その他の携帯端末を含むいかなるデバイス上の,[事前に承認されたモバイル端末を除く],いかなるクライアントソフトウェアアプリケーション(ブラウザプラグイン,ヘルパーオブジェクト,ツールバー,エクステンション,コンポーネント,その他エンドユーザが実行またはインストール可能なアプリケーション,(b) いかなるセットトップボックス(地上・BS・CATV受信用ボックス,デジタルビデオレコーダー,ストリーミングビデオプレイヤー,ブルーレイプレイヤー,DVDプレイヤー等)または,インターネットテレビ(GoogleTV,ソニーBravia,パナソニックViera Cast,Vizioインタネットアプリケーション等)
  5 被告は,「Amazonアソシエイトプログラムからのお知らせ」欄に,平成26年8月12日,「運営規約変更のお知らせ」と題して,次のとおり告知するとともに,修正済みの参加要件を掲載した。
 「この度,Amazonアソシエイト・プログラム運営規約の一部であるAmazonアソシエイト・プログラム参加要件の変更を行いましたので,お知らせいたします。主な変更箇所は下記の通りです。
 ・ Amazonアソシエイト・プログラム参加要件:6,8,21などを中心に言い回し,表記を変更しました。」
  6 被告は,平成26年11月11日,原告に対し,許可なく被告のコンテンツを使用し,○○サイトへリンクするアプリケーションを作成すること,被告関連のブラウザプラグインを作成することは,本件参加要件変更後の参加要件6条に抵触するとして,原告のアソシエイトアカウントを削除すること,紹介料の支払をしないことを通知した。これを受けて,原告は,被告に対し,違反するリンクを削除するので,アカウントの再開や紹介料の支払をしてほしいと求め,原被告間で交渉が行われた結果,同日までの紹介料が支払われることについては原被告間の合意が整ったが,原告のアソシエイトアカウントを復旧することについては,被告が応じなかった。
 Ⅱ 上記認定のとおり,原告が行った行為は,本件参加要件変更後の参加要件6条に違反するばかりではなく,本件規約2条(注:使用するサイト(乙のサイト)を特定し,その情報を完全,正確,最新のものにする義務を規定)にも違反する行為である。原告は,自らが本件規約2条に違反する行為をしたことは認めつつ,その違反の程度が軽微であるから,アカウントの停止措置は許されない旨主張するが,本件規約に違反した場合には,被告の判断により,解除(アカウントの停止),紹介料の支払拒絶,又はその両方の措置がとられることは,あらかじめ加入申込者に告知されており,原告もそれに同意して本件プログラムのアソシエイトになったことが認められるから,この点に関する原告の主張を採用することはできない。

3件目も2件目同様判例データベースから抽出したものになります。ご存知の方も多いであろうAmazonアソシエイト(アフィリエイト)の利用規約変更に関する紛争です。Amazonは、変更のポイントを抜粋して説明を加えた上で通知し、「引き続き本件プログラムに加入している場合は,加入申込者がその修正を拘束力あるものとして承諾」したものとみなす方法を採用しています。

この方法についても、裁判所はほぼ疑問をさしはさむことなく、利用規約の定めに従った変更手続きにより同意があったと評価しています。

クレーマー対応を容易にするために、念には念を入れて同意チェックボックスを実装しておいたほうがよい、という判断もあるでしょう。しかし、これだけオンラインサービスが普及した中でも、そもそも利用規約の同意について争われた事例が少なく、争われても裁判所がそれほどシビアに評価していない傾向を見ると、法的に有効な同意とするためのデザイン要件として、チェックボックスまでは不要と考えてよいのかもしれません。

同意を取得しタイムスタンプをとるためのボタンを押下させる前に、画面遷移上、必ず利用規約がユーザーの目に入る導線を設計する。これが最低限守るべきラインといえるのではないでしょうか。

上記以外で、Webやアプリサービスの「利用規約に同意」画面のUIデザインについて言及された日本の裁判例をご存知の方は、ぜひ情報を @takujihashizume までお寄せください。

(橋詰)