テスラの利用規約にみる「モノのサブスクリプション」時代の消費者契約トラブル

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テスラから購入したクルマをライドシェアで貸し出し、スーパーチャージャー(充電器)を利用させると、テスラ社が定める利用規約に違反することになるのをご存知でしょうか?

モノを所有するために対価を払う時代から、利用するために対価を支払うサブスクリプションの時代へと移行しつつある今、利用規約は目的に応じてモノの利用を制限できるのか、問題となってきそうです。

テスラというイーロン・マスクワールド

テスラ社のCEOであるイーロン・マスクが、

「俺、テスラ株を420ドルで買い戻して非上場会社にしようと思ってるんだよね。金のアテもあるよ。」

とつぶやき、テスラ株が急上昇というニュースで大騒ぎになっています。

記者インタビューか何かでほのめかしちゃったのかな?と思ったのですが、調べてみるとイーロンマスク本人の公式マーク付アカウントで、こんなにもはっきりと言及していました。日本時間で2018年8月8日17時現在も、まだ削除されていません。日本でこんなことやったら、さすがに相場操縦でアウトなのではと思うのですが、大丈夫なのでしょうか。

イーロンマスク公式アカウント https://twitter.com/elonmusk/status/1026872652290379776 より

イーロン・マスクのように、普段から俺様ワールド全開な方の発言だと許されるのかもしれない、などとうらやましく思いつつ、そういえば数年前、まだテスラカーの商用販売を始めたころの利用規約の一部分について、イーロンマスクの世界観が全開過ぎると話題になっていたことを思い出しました。

当社が提供するテスラをライドシェア目的で利用するなら、当社は充電器を貸しません

そのテスラの利用規約で話題となった箇所がこちら。

本来の用途でご利用いただくお客様のためにも、以下のサービスを提供または目的とする車両については、スーパーチャージャーの利用をご遠慮いただきますようお願いいたします。

・タクシー
・ライドシェアリング (UberやLyft、その他類似したサービス)
・商業目的とした商品輸送
・政府関連
・そのほか、商業的企業による利用

当ポリシーに適合しない形で充電が行われた場合、今後改めていただけるよう、注意勧告させていただく場合がございます。また、本来の用途でのご利用を守るためにも、当ポリシーを遵守しない車両による利用を制限するなど、さらなる措置をとらせていただく場合もございます。

新車であれば1,000万円は下回らない金額を支払って購入しているはずのテスラカー。しかし、電気自動車も充電器がなければただのハコということで、テスラ社自らが懸命に、「スーパーチャージャー」と呼ばれるテスラ用バッテリー充電器を全世界に設置しています。

スーパーチャージャーの設置場所 https://www.tesla.com/jp/supercharger より

このスーパーチャージャー、車種にもよるのですが、実は利用料として¥32.00・毎分61kW以上/¥16.00・毎分60kW以下が課金されます。よって、実質的にテスラという車は、買った後の課金もセットとなっている、モノのサブスクリプションサービスとしての性格を持ち合わせているのです。

そして、サブスクリプションサービスである以上、テスラ社として、その利用期間中のテスラカーおよびスーパーチャージャーの使い道は、サービスを提供する事業者の都合で一部制限させていただく必要がある。注意しても聞かなければ、リモートでテスラカーの動作を止めることもありうる。この利用規約は、そんなスタンスでライドシェア等商用利用の原則禁止をうたっています。

テスラという車を「所有」する権利を売買しているようで、「非商用限定の移動手段提供サービス」を利用する権利に過ぎないと言わんばかりに、その利用目的によっては利用規約で使い道を制限するというスタンス。テスラカーオーナーの多い米国では、ユーザーからの反発もあったようです。しかしながら、ある程度事前にそうなることが予想されていたこと、加えて大統領選の前日という絶妙なタイミングでの発表であったことも手伝い、具体的紛争までにはいたっていないようです。

モノを売る時代からサービスを売る時代へとは言うけれど

一括でお金を支払いモノを売り買いする時代から、月額***円を契約期間中継続的に課金しサービス利用権を販売するサブスクリプション型ビジネスの時代へ、時代は変わりつつあると言われています。ウェブサービスに限らず、あらゆるモノがサブスクリプション化するのでは?そんな未来を予想する人たちもいます。

現時点でモノのサブスクリプションモデルを志向し始めているテスラ社は少し特殊な事例としても、身近なわかりやすい例でいえば、AmazonやNetFlixなどは、ちょっと前はモノとして購入していた著作物をサービスとして提供するサブスクリプションモデルと言えます。

これらのサービスでも、何かをきっかけにコンテンツプロバイダーやAmazonらとの契約が終了すれば、ユーザーの意思にかかわらず、ユーザーの端末からは勝手にコンテンツが削除されてしまいます。すでにそうした体験をしたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、いざ自分がダウンロードしたはずのコンテンツが削除されているという体験をしてみると、ショックを受け、クレームの一つも言いたくなるものです。

モノを所有し支配することに慣れていた私たちユーザーが、モノのサブスクリプションの時代に利用規約によってそれを制限されたとき、どのような反発を覚えるのか?契約によってそうした反発を発生させない・防ぐ方法はあるのか?これからの大きなテーマになると予想します。

(橋詰)