契約実務

基本契約と個別契約の違いは?基本契約書なしでもいいケースや両方結ぶケース、民法改正による変更点も解説

ビジネスにおいては、1回限りの取引だけでなく、継続的な取引が前提となるケースも多くあります。

こうした場合、取引全体のルールを定める「基本契約」と、個々の取引内容を定める「個別契約」の両方を締結するのが一般的です。

基本契約や個別契約のどちらか一方しかないと、毎回の契約締結に手間がかかったり、契約条件が曖昧になったりして、トラブルに発展することも考えられます。

この記事では、基本契約と個別契約の違いや役割、活用方法、実務での具体例などをわかりやすく解説します。

なお、基本契約・個別契約は電子化することでさまざまなメリットがあります。電子契約を導入するメリットや注意点、電子契約に関する法令など、知っておくべき基礎知識をまとめた資料を無料でダウンロードができますので、ぜひ参考にして活用してみてください。

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基本契約と個別契約の違い

基本契約と個別契約の違いを説明します。「飲食店」と「飲食店に飲み物を納品する酒屋」における具体例も紹介しますので、参考にしてください。

基本契約とは

基本契約とは、反復的・継続的な取引を行なう前提で、取引全体の共通ルールを取り決めておく契約です。支払方法、納期、所有権の移転時期、瑕疵対応、損害賠償の範囲、契約解除の要件などを一括して定めることで、取引のたびに基本条件を確認し直す手間を省けます。

基本契約があることで、個別契約では最低限の内容だけを記載すれば済むため、契約実務が効率化されます

【飲食店と酒屋の基本契約の具体例】月に何度も発注することを前提に、「納品は注文から3日以内」「請求は月末締め翌月末払い」などのルールをまとめて基本契約として結びます。

なお、基本契約がどのような契約なのか詳しく知りたい方は下記記事もご一読ください。

個別契約とは

個別契約とは、特定の取引内容に基づいて、その都度結ぶ契約を指します。基本契約で共通ルールを定めていても、実際にどの商品をいくらで、いつ納品するかといった取引の具体条件は毎回異なるため、別途合意を交わす必要があります。

発注書や注文書、見積書・請書などが、実質的な個別契約の役割を果たすことも多いです。

個別契約は、単発取引だけでなく、基本契約と併用することで実務を円滑に進める役割も果たします。

【飲食店と酒屋の個別契約の具体例】「今週金曜にビールを10ケース納品してください」などの注文ごとのやり取りが、個別契約にあたります。商品内容や納期が毎回違うため、個別に条件を確認する必要があります。

取引時に基本契約書の作成が必要な理由

基本契約と個別契約の締結を直接義務付ける法律はありません。では、なぜ多くの企業が基本契約書を作成するのでしょうか。

ここでは、基本契約書を作成した方がいい理由を説明します。

共通ルールは基本契約にまとめた方が効率的だから

継続的な取引では、支払条件や瑕疵対応など共通する項目が多くなります。こうしたルールを毎回の契約書に記載すると煩雑になり、内容も冗長になります。

共通ルールを基本契約にまとめておけば、取引のたびに同じ条件を記載する手間が省けます。

個別契約書に記載する内容を最小限にできるから

基本契約で取引ルールをあらかじめ決めておけば、個別契約には納期・品名・数量などの必要事項だけ記載すれば十分です。

「本契約は基本契約に基づく」と明記するだけで、多くの条文を省略でき、記載ミスや表記ゆれも減らせます。契約書の簡素化により、実務もスムーズに進みます。

法務部門の業務負担を少なくできる

すべての契約条件を個別契約書に記載する方式では、毎回すべての契約書を法務部門が詳細にチェックしなければなりません。

基本契約と個別契約を分けることで、基本契約は一度チェックすればよくなり、個別契約は内容が簡潔なため確認作業も容易になります。業務効率と確認精度の両立が可能です。

基本契約書に記載する内容

基本契約書は、継続的な取引を前提とし、今後取り交わす個別契約の基礎となるルールを定めたものです。支払方法や契約の有効期間、解除の条件など、あらゆる取引に共通する条項をあらかじめ明記しておくことで、個別契約書の記載を簡素化できます。

代表的な記載項目は以下の通りです。

・契約の目的
・支払条件・支払期限
・検収・納品条件
・瑕疵担保責任の範囲
・契約期間と更新条件
・契約解除の要件と手続き
・損害賠償や遅延損害金
・秘密保持条項
・反社条項
・紛争解決方法(管轄裁判所の定めなど)

これらを基本契約書にまとめておくことで、毎回の交渉・確認の手間を減らし、法務・実務両面での効率化が期待できます

なお、契約書の記載内容は個別ケースによって解釈が異なる場合もあるため、とくに取引金額が大きい場合やこれまで扱っていない契約を締結する場合などにおいては弁護士や専門家に相談し作成することが望ましいでしょう。

なお、クラウドサイン レビュー」は、AIで質の高い契約書レビューを誰でも行える契約書チェック支援サービスであり、リーガルチェックにかかるコストを大幅に削減してくれます。さらに、契約書のレビューから締結までDX化するには「クラウドサイン」の利用もあわせてご検討ください。

個別契約書に記載する内容

個別契約書は、基本契約に基づき実際に行なう取引ごとの詳細を記したものです。取引のたびに発生する内容、たとえば数量や納期、単価などを明記し、具体的な履行義務を確定させます

個別契約書があることで、後のトラブル時に明確な証拠として機能します。主な記載項目は以下の通りです。

・商品・サービスの名称
・数量・単価・金額
・納品日・納品場所
・納品方法(手渡し、郵送、データ納品など)
・請求・支払日
・遅延時の対応(違約金等)
・「本契約は基本契約に基づく」ことの明記

これらの項目を簡潔に記載することで、基本契約と組み合わせた明確な契約体系が構築され、トラブル防止や業務の円滑化に役立ちます。

基本契約と個別契約を両方結ぶケース

取引内容が継続的または案件ごとに変動するビジネスでは、基本契約と個別契約を併用することで、効率的かつ明確な契約管理が可能になります。

以下では、代表的な契約タイプごとにその使い方を紹介します。

業務委託契約の場合

業務委託契約では、案件ごとに作業内容や成果物が異なるため、基本契約と個別契約の両方を結ぶのが一般的です。

たとえば、システム開発を外注する場合、基本契約で報酬体系・著作権・納品形式・秘密保持などの共通ルールを定めておきます。そして、案件ごとの仕様書や納期、金額などの詳細を個別契約で取り決めます。

こうすることで、秘密保持や著作権の帰属などの、毎回同じになる条項について交渉や確認をして契約書を作らずに済むため、実務もスムーズになります。

業務委託契約書について知りたい方は下記記事もご覧ください。

取引基本契約の場合

継続的に商品を仕入れたり販売したりするような商取引では、取引基本契約書をあらかじめ締結し、都度の発注は個別契約で処理するケースがよくあります。

たとえば、飲食店と酒屋の取引では、支払条件や返品対応などのルールは基本契約に定め、各納品ごとの品目・数量・納期・単価は注文書などの個別契約に記載します。

こうすることで、日々の取引にスピード感と一貫性が生まれます

デザインやライティングなどのクリエイティブな業務に関する契約の場合

デザインやライティングなどのクリエイティブ系業務では、案件ごとに納品物の仕様や使用範囲が異なるため、基本契約と個別契約の併用が有効です。

基本契約では、著作権の帰属や修正対応の条件、報酬の支払い方法などを定めておきます。

一方、個別契約で納品物の種類(ロゴ、記事など)、納期、文字数やページ数といった具体的内容を取り決めることで、発注や納品、請求といった実務がスムーズに進みます

SES契約の場合

SES(システムエンジニアリングサービス)契約は、エンジニアを一定期間派遣する業務形態で、基本契約と個別契約の使い分けが必須です。

基本契約では、契約期間や支払いサイト、秘密保持、責任範囲などの全体ルールを定めます。

個別契約では派遣する技術者の氏名、スキル、単価、稼働期間といった具体的な条件を明記します。

複数の技術者を随時アサインする現場では、この形式が非常に実務的です。

基本契約書と個別契約書はどちらが優先される?

基本契約書と個別契約書の両方を結んでいる場合、両者の内容に矛盾や食い違いが生じることがあります。

その際、どちらの契約内容が優先されるかは重要な問題です。通常は、契約書内に優先順位条項が設けられています。

「本契約と個別契約が矛盾した場合は、個別契約の内容を優先する」といった文言が記載されます。このような条項がある場合は、当然それに従うのが原則です。

一方で、契約書に優先順位が明記されていない場合、一般的には「後法優先の原則」が適用され、あとから締結された契約、つまり個別契約書の内容が優先されるとされます。これは、個別契約の方が具体的かつ時点的に新しい内容と判断されるためです。

ただし、ケースによっては例外もあるため、トラブルを未然に防ぐためにも、優先順位条項は契約書に明記しておくことが重要です。

【【基本契約と個別契約で矛盾が生じるケースの例】・基本契約書では支払サイトを「月末締め翌月末払い」としているのに、個別契約書では「納品後7日以内の支払い」となっている
・基本契約書では著作権を発注者に譲渡すると定めているが、個別契約書では制作者が著作権を保有する旨が記載されている
・基本契約書でキャンセル料は「納品予定額の50%」と定めているが、個別契約書では「キャンセル料なし」となっている
・基本契約書に「第三者への再委託は禁止」とあるが、個別契約書には「一部業務の再委託を認める」と記載されている

2020年の民法改正による基本契約書への影響

2020年4月1日に施行された民法改正により、契約のルールにもさまざまな変更が加えられました。

とくに継続的な取引を前提とする基本契約書には影響が大きく、見直しや修正が求められるケースもあります。

民法改正による変更点

2020年の改正では、契約に関連する多くのルールが見直されました。以下、変更点の代表例です。

・瑕疵担保責任の廃止 → 契約不適合責任への対応が必要
・無催告解除が可能に → 条件や手続の記載が求められる
・債権譲渡制限に関する効力の見直し
・連帯保証契約には「極度額(上限金額)」の明記が必須
・保証契約の一部に公正証書による意思確認が必要
・法定利率が年5%から年3%に変更(変動制に)
・時効の完成猶予・更新に関する規定の新設

基本契約書で広く使われる瑕疵担保責任や契約不適合責任、保証人の設定などについては、旧民法に沿ったまま放置していると、契約内容の認識にズレが生じ、トラブルにつながるおそれがあります。

契約書を作成・更新する際には、改正内容に即した条文設計が必要です。

施行日前の契約は従来の民法が適用される

2020年4月1日以前に締結された契約には、基本的に改正前の民法が適用されます。しかし、それ以降に契約を更新したり、個別契約を結び直した場合などには、改正民法が適用されることになります。

つまり、古い契約でも無関係とはいえず、状況によっては新しい民法の影響を受ける可能性があるのです。

過去の契約書も放置せず、見直しが必要かどうか定期的にチェックしておくと安心です。

改正内容を反映させないと契約が無効になる恐れもある

改正民法に反する内容の契約書をそのまま使い続けると、一部の条項が無効と判断されたり、当事者が意図しない解釈をされてしまうリスクがあります。

たとえば、瑕疵担保責任の取り扱いや損害賠償に関する条文が旧法のままだと、契約者間での認識に食い違いが生じる可能性が高くなります。

とくに企業間取引では、契約内容に不備が原因で損害賠償責任や納期遅延トラブルに発展することも考えられます。

改正に対応した契約書の整備が欠かせません。必要に応じて専門家に確認し、適切な修正を行ないましょう

基本契約と個別契約を電子化するメリット

契約書を電子化することで、業務効率化やコスト削減をはじめとするさまざまなメリットがあります。とくに、継続的な取引で発生する基本契約と個別契約のセットを電子化することで、よりメリットを感じられるでしょう。

ここからは基本契約と個別契約を電子化するメリットについて、さらに詳しく解説します。

契約締結が早くなる

電子契約を導入すれば、契約書の印刷・押印・郵送といった事務作業の手間が不要になり、契約締結までのリードタイムが短くなります。

オンラインで即時に合意が取れるため、テレワーク中でもスムーズに契約を締結可能です。

急な案件にもスピード感を持って対応できるのが大きなメリットです。

印紙代が不要になる

紙の契約書では課税文書として印紙税が発生しますが、電子契約には印紙代がかかりません

契約数が多い企業ほどコスト削減の効果は大きく、導入のきっかけのひとつになっています。経費の見直しをしたい企業にも有効な手段です。

なお、電子契約で収入印紙が不要になる理由を知りたい方は下記記事をご一読ください。

契約書の紛失・改ざんリスクを防げる

電子契約はタイムスタンプや電子署名といった技術によって、契約締結の正確な日時や当事者を特定し、文書の非改ざん性を担保します。これにより、紙の契約書で起こりうる意図的な改ざんや、日付の遡及といった不正行為を防止可能です。

誰がいつ契約の内容に同意し、締結したのかの履歴も自動的に記録されるため、万が一のトラブルが発生した時の証拠としても有効です。

保管・検索が簡単

電子契約の場合はクラウド上に契約書の電子ファイルが保管されるため、ファイル名やキーワード、契約日などで簡単に検索できます。

紙の契約書のようにキャプネットや倉庫などの保管場所を確保したり、探す手間もかからないため、契約管理の効率化にも大きく貢献します。

基本契約・個別契約の電子化にはクラウドサインがおすすめ

基本契約と個別契約は、それぞれ異なる役割を持つ契約ですが、両者を併用することで効率的かつ明確な取引が可能です。

基本契約で全体のルールを定め、個別契約で具体的な取引条件を取り決めることで、業務の効率化とトラブル防止に貢献します。

なお、契約の電子化を検討している場合は、操作性・法的有効性ともに信頼性の高い電子契約サービスの導入がおすすめです。

当社の運営する電子契約サービス「クラウドサイン」は電子署名を電子ファイルに施し、スピーディーかつ安全に当事者間の合意の証拠を残すことのできる電子契約サービスです。導入社数250万社以上、累計送信件数 1000万件超の国内シェア・認知度が高い電子契約サービスとして、業界業種問わず多くの方にご利用いただいております。

契約締結はもちろんのこと、締結した契約の管理も可能なため、契約書管理ツールとしても利用可能です。

なお、クラウドサインではこれから電子契約サービスを比較検討する方に向けて「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しています。

「電子契約を社内導入するための手順」や「クラウドサインの利用手順」「よくあるご質問」など、導入前に知っておきたい情報を網羅して解説しているため、導入検討時に抱いている疑問や不安を解消することが可能です。下記リンクから無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

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