電子契約の同意書のひな形と書き方|承諾が必要な契約・不要になった契約を整理【2026年 取適法改正】

2026年1月1日に施行された改正法(通称:取適法(とりてきほう)/正式名称:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)により、企業間取引における書面の電子化ルールが大きく変わりました。
特に、受発注業務で発生する「発注書面(旧3条書面→新4条書面)」の電子提供において、相手方の事前承諾が法令上必須ではなくなった点は、実務上の大きな転換点です。
しかし、すべての契約で承諾が不要になったわけではありません。不動産や建設、金融などの特定領域では、依然として法律による同意取得が義務付けられています。この記事では、最新の法改正を反映した「電子契約・書面電子化の同意書」の作成方法と、実務で使えるひな形を解説します。
目次
【2026年最新】電子化に「相手方の承諾」が必要な書面・不要な書面
2020年以降のデジタル改革関連法に加え、2026年の取適法施行により、ビジネス文書の電子化は「原則自由」の時代に入りました。しかし、コンプライアンス遵守の観点からは、「法律で承諾が義務付けられている文書」と「緩和された文書」を明確に区別して管理する必要があります。
1.取適法(旧下請法)改正で「承諾不要」になった書面
これまで下請法第3条に基づき交付していた発注書面は、取適法第4条に基づく書面(以下、4条書面)となりました。この4条書面については、改正により以下のルールが適用されます。
書面等の交付義務において、承諾の有無にかかわらず、電磁的方法による提供を認容。
つまり、中小受託事業者(旧下請事業者)に対して発注書をメールやクラウドサインで送る際、法的な要件としての「事前承諾」は不要となりました。これにより、受発注業務のスピードと効率は大きく向上します。
なお、法改正による具体的な変更点や、それに伴う「契約の巻き直し」の実務フローについては、以下の記事で詳しく解説しています。
2.引き続き「相手方の承諾・同意」が必要な主な書面
一方で、以下の契約類型や業界法においては、電子契約や電磁的交付を行う際に相手方の承諾・同意取得が法律で義務付けられています。
※法令は2026年時点のものです。最新の情報は各所管官庁のWebサイト等でご確認ください。
| 文書名 | 根拠法令 | 必要な手続き |
| 建設工事の請負契約書 | 建設業法19条3項、施行規則13条の4 | 承諾 |
| 設計受託契約・工事監理受託契約の重要事項説明書 | 建築士法24条の7第3項 | 承諾 |
| 設計受託契約・工事監理受託契約成立後の契約等書面 | 建築士法24条の8第2項 | 承諾 |
| 不動産売買・交換の媒介契約書 | 宅建業法34条の2第11項、同12項 | 承諾 |
| 不動産売買・賃貸借契約の重要事項説明書 | 宅建業法35条8項、同9項 | 承諾 |
| 不動産売買・交換・賃貸借契約成立後の契約等書面 | 宅建業法37条4項、同5項 | 承諾 |
| 定期建物賃貸借の説明書面 | 借地借家法38条4項 | 承諾 |
| マンション管理業務委託契約書、重要事項説明書 | マンション管理適正化法72条6項、同7項、73条3項 | 承諾 |
| 不動産特定共同事業契約書面 | 不動産特定共同事業法24条3項、25条3項 | 承諾 |
| 投資信託契約約款 | 投資信託及び投資法人に関する法律5条2項 | 承諾 |
| 貸金業法の契約締結前交付書面 | 貸金業法16条の2第4項 | 承諾 |
| 貸金業法の生命保険契約等に係る同意前の交付書面 | 貸金業法16条の3第2項 | 承諾 |
| 貸金業法の契約締結時交付書面 | 貸金業法17条7項 | 承諾 |
| 貸金業法の受取証書 | 貸金業法18条4項 | 承諾 |
| 割賦販売法の契約等書面 | 割賦販売法4条の2、35条の3の22第1項 | 承諾 |
| 旅行契約の説明書面 | 旅行業法12条の4第3項、12条の5第2項、施行令1条等 | 承諾 |
| 労働条件通知書面 | 労働基準法15条1項、施行規則5条4項 | 希望(同意) |
| 派遣労働者への就業条件明示書面 | 派遣法34条、施行規則26条1項2号 | 希望(同意) |
注意:中小受託事業者(旧下請事業者)への発注書面の電子化について
前述の通り、2026年1月に施行された「取適法」により、中小受託事業者に対する発注書面(新4条書面)の交付については、原則として相手方の承諾なく電子化(メールやクラウドサイン等での交付)が可能となりました。
ただし、相手方から「書面(紙)の交付を求められたとき」に限り、遅滞なく書面を交付する義務が生じます(中小受託事業者の保護に支障を生じない場合を除く)。そのため、無用なトラブルを避けるために事前に交付方法について合意しておくことは引き続き有効です。
これらの法律に関わる書面を電子化する際には、以下に解説するポイントを抑えた同意書・承諾書を作成し、相手方から取得しておく必要があります。
電子契約利用の同意書・承諾書作成 4つのポイント
上記で記載したように、建設業や不動産業など特定の領域では、依然として「相手方の承諾」が電子化の必須要件となっています。法的効力を確実に担保し、後々の「言った言わない」のトラブルを避けるために、同意書・承諾書を作成する上で最低限網羅しておくべき4つのポイントを解説します。
電子化の対象となる書面について明示する
電子化の同意を相手方から取得する文書を作成する際には、第一に、電子化の対象とする書面を特定し、相手方の認識と齟齬のないようにすることが重要です。
たとえば、不動産の賃貸借契約における重要事項説明書の電磁的交付を行うのであれば、
「宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項説明について」
といったように、
- 交付義務を定めた根拠法令
- 条文番号
- 文書の内容
を明示して特定するとよいでしょう。
電子化承諾文言をはっきりと記載する
その上で、相手方によるその文書の電子化に対する同意・承諾する意思を文言ではっきりと記します。
たとえば、あなたの会社(甲)が電子化を提案し、相手方(乙)がこれを承諾するケースでは、
「乙は、電磁的方法により契約を締結することを/交付を受けることを承諾します。」
のように、承諾者が誰であるか、主語をはっきりと記載するようにします。
相手方(承諾者)にかかるコスト負担の有無を明らかにする
電子化の承諾を得る過程で、最もトラブルとなりやすいのが、電子化コストを承諾者に負担させる場合です。
特に、当事者署名型の電子契約サービスを利用する場合、承諾者にも電子証明書の取得コスト等の負担があることを伝えないまま承諾を取ったために、後で「コスト負担が有るなら承諾しなかった」といったクレームを受け、契約無効を主張されるリスクも残ります。
相手方(承諾者)のコスト負担の有無について、同意書上で明らかにしておくと安心です。
なお、クラウドサインの場合、受信者(相手方)に費用は一切発生しません。この点を同意書や案内文で強調することで、回収率向上につながります。
中小受託事業者(個人・小規模企業)へのIT環境の配慮
取適法が対象とする中小受託事業者(資本金3億円以下の法人や個人事業者、または今回の改正で追加された『従業員数300人(または100人)以下』の事業者)との取引では、法的には発注書面の電子化に関する承諾が必須ではなくなりましたが、相手方が必ずしもPC環境を持っているとは限りません。「スマホしか持っておらず、添付ファイルが開けない」といったケースも想定されます。
電子化に関する承諾が法的に不要であっても、同意書や確認メールを通じて「この形式のファイルを送りますが閲覧可能ですか?」と確認を入れる運用が、「中小受託事業者の保護」の観点からも推奨されます。
たとえば、「PDFファイルの閲覧が可能な環境を有していること」「電子メール(クラウドサインであれば@cloudsign.jpのドメイン)の受信が可能であること」のように、相手方の環境で閲覧可能かを確認する項目を設けましょう。
【ひな形】電子契約利用・電磁的交付の同意書(兼 環境確認書)
取適法対応の実務においても使える、汎用的なひな形です。
不動産・建設など法的に承諾が必須な契約にはもちろん、承諾が不要になった受発注業務においても、相手方のIT環境を確認しトラブルを防ぐための「環境確認書」としてご活用ください。
--------------
電磁的方法による書面交付・契約締結に関する承諾書
〇〇株式会社御中
私は、貴社との取引(発注、契約締結等)において、関係法令に基づき交付される書面および契約書について、以下の通り電磁的方法により提供を受けることを承諾します。1.対象となる書面
基本契約書および個別契約書
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第4条に基づく書面(発注書)
その他、取引に関連して交付される書類2.電磁的方法の種類
電子契約サービス「クラウドサイン」を用いた送信
電子メールによるPDFファイルの送信
3.確認事項
私は、上記方法により提供された電磁的記録を閲覧・保存するための機器およびソフトウェア(PC、スマートフォン、PDF閲覧ソフト等)を有しています。
本承諾による私(受領者)側のシステム利用料等の費用負担が発生しないことを確認しました。
年 月 日住所:商号または氏名: 印
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【参考】官公庁・民間企業の同意書ひな形と実務事例
前述の通り、2026年施行の「取適法(改正下請法)」においては、発注書面の電子化に対する厳格な承諾書は不要となりました。しかし、「IT環境の確認」を丁寧に行いたい場合や、依然として法令で承諾が必須とされる業界(不動産・金融等)においては、以下の官公庁や民間企業の公開事例が参考になります。
公正取引委員会・中小企業庁の書式例(旧法対応)
多くの会社で下請事業者(現在は中小受託事業者)との取引に利用されていた「承諾書」のひな形について解説します。
改正前の下請法(旧3条書面)に基づき作成された、官公庁の公式な書式例です。現在は法的な必須要件ではありませんが、「使用するOS・ソフトウェアのバージョン」や「ファイル形式」などを細かく確認する項目が設けられており、トラブル防止のための「環境確認シート」として活用する価値があります。

国土交通省が作成する重要事項説明等の電磁的交付同意書ひな形
2022年5月に改正宅建業法が全面施行され、売買・賃貸借ともに完全電子化が可能になりましたが、その検討にあたり、国土交通省が賃貸借契約における重要事項説明書の電子化について社会実験を行った際の書式例です。
費用負担について書式例上明記されていない点は留意が必要ですが、電子契約システムを利用する際に相手方から取得する同意書については、これにならう形でひな形を作成し相手方から取得するのがよいでしょう。

なお、国土交通省が新たに公開した「重要事項説明実施マニュアル」11ページには、承諾を得るための具体的方法として、
- 承諾する旨を記載した書面(紙)を受領
- 承諾する旨を電子メール等で受信
- Webページ上で、重要事項説明書等の電子書面を提供する方法(表1におけるいずれかの方法)及び重要事項説明書等の電子書面のファイルへの記録の方式を示し、Webページ上で承諾する旨を取得
- 承諾する旨を記録したCD-ROMやUSBメモリ等の受領
の4つのうち、いずれかを選択するよう求めています。
民間企業による電子契約利用同意書・承諾書の参考事例
上記では、法令が求める最低限の要件を満たすための官公庁ひな形を紹介しました。
コンプライアンスが厳しい業界では、法律要件だけでなく「具体的なサービス名(クラウドサイン等)」や「システム利用料などの費用負担」まで踏み込んで合意をとっているケースがあります。
金融機関の電子契約締結に関する同意書の事例
下記例の金融機関では、融資契約の電子化にあたり、当事者署名型の電子契約サービスを利用することの同意を、相手方にわざわざ署名捺印をさせて確認しています。
なお当事者署名型の電子契約サービスを利用する場合のデメリットとして、相手方(この事例の場合、融資の申込人・連帯保証人・担保提供者の全員)が、電子証明書発行手数料やシステム利用料を負担しなければならないという欠点があります。そのため、この同意書第4条では、「ご利用料金」として、電子契約事務取扱手数料が発生する旨の同意を求めています。
クラウドサインのような事業者署名型(立会人型)の電子契約サービスを利用する場合には、こうした相手方が負担する費用が発生しないため、その分同意取得もスムーズになります。

また、クラウドサイン公式サイトでは約1,000件の同意書をほぼ100%電子化したりそなデジタルハブ株式会社の導入事例も掲載しています。運用面での工夫についても伺っていますので、同意書の電子化を検討している方はぜひ以下のリンクをご一読ください。
まとめ:改正法対応も安心。スムーズな電子化はツール選びから
2026年の取適法施行により、受発注業務の電子化は法的にも強力に後押しされています。しかし、法律が「承諾不要」としたからといって、相手方の事情を無視して一方的に送りつければ、信頼関係を損なう恐れがあります。
- 法的に承諾が必要な領域(不動産・建設等)では、確実な同意書取得を。
- 承諾が不要になった領域(受発注等)でも、相手方への配慮ある案内を。
このように、契約の種類や相手方のIT環境に応じて、「法律で求められる手続き」と「信頼関係を守るためのコミュニケーション」を適切に使い分けることが大切です。
契約書面の完全電子化によって目指す業務効率化と生産性向上は、自社だけでなく相手方にも電子契約の利用を気持ちよく・スムーズに受け入れていただくことで、はじめて実現します。
クラウドサインは、日本の法律・商慣習に深く配慮して設計された、弁護士監修の電子契約サービスです。相手方はアカウント登録不要・費用負担ゼロで、届いたメールをクリックするだけで契約や受領確認が完了します。取適法(改正下請法)で求められる「保存義務」や「書面交付請求への対応」といったコンプライアンス課題も、クラウドサインならスマートに解決可能です。
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この記事を書いたライター
弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
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