電子契約の末尾文言「後文(こうぶん)」の書き方は?おすすめの記載方法と、具体例サンプル付き

「後文(こうぶん)」とは、契約書の末尾に記載される定型的な文章のことです。本記事では、電子契約書の末尾に記載する後文の書き方を詳しく解説します。
背景として、電子契約の後文は、書面の契約書で使われる文言のままでは実際の運用にそぐわない面があります。では、どのような文言に書き換えれば電子契約に合った後文になるのでしょうか。
この記事では、後文の構成要素、書面の契約書との違い、そして状況別の例文まで、そのまま使える形で解説します。契約実務をスムーズに進めるための参考にしてください。
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目次
契約書末尾の「後文(こうぶん)」の意味と役割
契約書を読み慣れると、末尾にいつも1〜2行程度の決まった文言が記載されていることに気づきます。ここではまず、この末尾の文言「後文」について解説します。
契約書の「後文(こうぶん)」とは?
「後文(こうぶん)」とは、契約書の末尾に記載される一文で、その契約書を誰が・何通作成し・どのように締結し・その後どう保管するのかを記した文章のことです。本文の内容が当事者間の合意に基づいて成立したことを明確にするための定型文であり、契約書のなかで重要な役割を果たします。
書面(当事者双方が記名押印して締結するスタイル)の契約書の多くは、次のような一文で締めくくられています。
【書面の契約書の後文例】
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自記名押印の上、各1通を保有する。
2026年7月1日
甲 住所/氏名
乙 住所/氏名
後文の役割とは?
後文は、本文の内容が当事者間の合意に基づいて成立したことを明確にする役割を持ちます。当事者が契約内容を認識し、合意に至ったことの証拠となり、契約後のトラブルを予防する効果があります。
末尾に定型文を置くことで契約締結の完了を示す慣習的な意味合いもありますが、基本的には契約の信頼性を高め、手続きをスムーズに進めるために記載します。
電子契約に後文は必須?
電子契約に後文は法的に必須ではありません。電子契約では一般に、電子署名やタイムスタンプといった技術によって「契約の成立」と「当事者の真意」を確認します。これにより書面の契約書と同等の法的効力を持たせることができるため、後文の有無自体が契約の有効性を左右するわけではないのです。
ただし、電子契約であっても「お互いが合意したことの確認」や「万が一の裁判に備えた証拠としての役割」は依然として重要であり、実務上は文面の末尾に電子契約に適した後文を記載するのが一般的です。
なお、電子署名やタイムスタンプについて詳しく知りたい方は、あわせて以下の記事や資料をダウンロードしてご覧ください。
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後文を作成する際の構成要素

契約書の後文は、一般的なひな形を見てもわかるとおり、ほぼテンプレート化されているため、そこに何が書かれているのかを普段は意識しないことが多いものです。しかし要素を分解してみると、この一文には重要な情報がいくつも詰め込まれています。
ここでは、先ほどの後文例に沿って構成要素を解説します。
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自記名押印の上、各1通を保有する。
2026年7月1日
1. 契約書作成の目的を記載する
書き出しには、なぜこの契約を書面に残すのか、その目的を書きます。契約書を作成する意味は、「交渉の結果合意に至った取引条件を文字にして、契約が成立したことを当事者が確認し、紛争に備えて証拠とすること」です。これを短く表現します。
なお、合意によって成立するのは目に見えない「契約(合意)」であって「契約書(紙)」ではありません。そのため、「本契約“書”の成立を証するため」と書かないよう注意しましょう。例文では次の部分がこれにあたります。
「本契約の成立を証するため」
2. 契約書の作成通数を記載する
次に、その契約書を合計で何通作成するかを書きます。基本は当事者の人数分を作成しますが、印紙税などのコスト削減を目的に1通だけ作成し、一方はコピーを保有することもあります。例文では次の部分です。
「本書2通を作成し」
3. 契約書の作成者および保有者(保管者)を記載する
契約書の作成者(当事者)を記載するとともに、そのうち誰が契約書を保有・管理するのかを記載します。例文では次の部分です。
「甲乙…、各1通を保有する」
4. 契約締結の方法について記載する
一文の末尾に、契約締結の方法を記載します(電子契約の場合の記載例は後述します)。電子契約が普及する前は、記名に印影を重ねる「記名押印」が一般的でしたが、個人との契約や連帯保証人をとる契約では、手書きの「署名」や、署名の上にさらに押印する「署名捺印」が採用されることもあります。例文では次の部分です。
「各自記名押印の上」
5. 契約締結日を記載する
後文そのものには含まれませんが、その直後に後文と一体で記載されるのが日付です。法的には和暦でも西暦でも構いませんが、管理表などに入力する際は西暦で統一したほうが便利で、ミスも減らせます。例文では次の部分です。
「20yy(令和yy)年mm月dd日」
この日付については、「実際に合意が成立した日」なのか「証としての書面を作成した日(書面作成日)」なのか、当事者間でも認識が一致していないことがあるため注意が必要です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
契約書後文で用いられる「本書」「正本」「原本」の意味と違い
契約書の後文で何気なく使われる独特の語句に「本書(ほんしょ)」や「原本(げんぽん)」、「正本(しょうほん)」などがあります。法律や契約実務の世界では、これらは以下のように意味が厳密に区別されています。
- 本書(ほんしょ)
その契約書(文書)自体を指す言葉です。書面契約の後文で「本書」を用いる場合は、基本的には「原本」の意味合いで使っていると解釈されます。 - 原本(げんぽん)
契約当事者の合意(一定の思想)を表現する目的で、最初に、かつ確定的に作成された最初の文書のことです。 - 正本(しょうほん)
原本の「全部」の写し(謄本)の一種であり、裁判所書記官や公証人など、法律上の公証権限のある者が原本に基づいて作成し、法令によって原本と同一の効力を与えられた写しのことです(例:判決書正本、公正証書正本など)。
※なお、原本の一部を書き写した文書は「抄本(しょうほん)」と呼び、正本とは区別されます。
紙の契約書を複数作成して、当事者間で「正本(オリジナル)」「副本(コピー・控え)」と呼んで分け合うことがありますが、これらは双方が手書きの署名や実印の押印をしているため、法的な性質としては双方とも「原本」にあたります(契約実務では「原本二通」と呼びます)。
後文で「本書」や「原本」という文言を使う際は、このような違いを理解しておくと、より適切な文言設計が可能になります。あわせて以下の記事もご覧ください。
電子契約の後文と書面の契約書の後文との違い・チェックポイント
ここまで書面の契約書をベースに後文の書き方を確認しました。電子契約の場合、後文は次のようになります。
【電子契約書の後文例】
本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲乙合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。
2026年7月1日
甲 住所/氏名/メールアドレス
乙 住所/氏名/メールアドレス
書面契約の後文との違いを、以下のポイントで確認しておきましょう。
電子契約では作成通数・保有通数を記載しない
電子契約では、紙と違って、最初に生まれた電子ファイルと完全一致した改ざん不能な複製をコストなしに作成できます。そのため、「1通、2通」と数える物理的な概念が存在せず、通数の記載は不要です。あわせて、作成した通数にかかわらず印紙税も非課税になるというメリットがあります。
電子契約で収入印紙が不要になる理由は、以下の記事で詳しく解説しています。
契約締結の方法は「電磁的記録を作成し…電子署名を施し/措置し」と記載する
電子契約では、物理的なハンコによる押印を一切行わず、代わりに電子署名(事業者署名型など)を付与します。そのため、「記名押印の上」と書いたままにすると、実際の締結手続きとの不整合が生じ、将来的に「契約が正しく締結されていない」と不成立を主張されるトラブルを招きかねません。
電子契約では、書面に代えて意思内容を表示するものが「電磁的記録(電子ファイル)」、記名押印に代わるものが「電子署名」となります。したがって「電磁的記録を作成し…電子署名を施し」と記載します。
「電子署名を施し」の部分は、少し固い言い回しでよければ「電子署名を措置し」でも構いません。電子署名法第2条が、電子署名を電磁的記録に対して行うことを「措置」と表現しているためです。
第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
メールアドレスを署名欄に併記する
電子契約において、誰が合意したのかという「本人性の証明」を支える重要なログ情報が、署名者の「メールアドレス」です。そのため、署名欄の住所・会社名・氏名の下に、署名に利用した「メールアドレス」を併記しておくことで、電子署名のログと契約書上の人物との結びつきをより強固にし、証拠力を高めることができます。
タイムスタンプがあるため契約締結日欄を記載しない場合もある
電子契約では、文面上の契約締結の日付欄を不要とする考え方もあります。文面に日付がなくても、電子署名とともに記録されるタイムスタンプによって、両当事者がいつ電子署名を施したかが年・月・日・時・分・秒単位で記録されるためです。
一方で、タイムスタンプが記録するのはあくまで電磁的記録を作成した作業日であり、当事者が実際に合意に至った日とは違う可能性もあるため、その点を明示する意味で日付欄を設けるべきだという考え方もあります。現状の電子契約実務では、タイムスタンプとは別に、文面上に日付欄を設けて締結する例が一般的です。
なお、電子契約では、契約締結日と電子署名のタイムスタンプの日付がズレてしまうことがあります。その際に、バックデートして契約書を作ったように見えてしまう点に問題がないのか?といった疑問については以下の記事で解説していますので、あわせてご確認ください。
【状況別】電子契約作成時のおすすめ後文 例文集
ここでは、後文の記載例をパターン別に紹介します。電子契約に関する専門書なども参考にしています。そのまま下書きに使える形で並べていますので、自社の状況に近いものを選んでご利用ください。
なお、以下はあくまで記載例です。実際の契約書で使用する文言の法的な妥当性については、顧問弁護士などにご確認ください。
パターン1:双方が電子契約サービスを利用する通常のケース
クラウドサインのような同一の電子契約サービスを利用して、双方がオンライン上で電子署名を行う、最も一般的でシンプルな形式です。
本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、○○○(以下「甲」という)および●●●(以下「乙」という)が合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。なお、本契約においては本電磁的記録を原本とし、本電磁的記録を印刷した文書は写しとする。
パターン2:書面と電磁的記録に分かれるケース
相手方が電子契約に同意せず、相手方は書面で締結し、自社分だけを電子契約で締結する場合の記載例です。
本契約の成立を証するため、本書を書面および電磁的記録として作成し、○○○および●●●が合意の後記名押印および電子署名を施し、○○○は書面を、●●●は電磁的記録をそれぞれ保管する。
この方法では、電子署名されたデータ(PDF)と、それを印刷して押印した紙の契約書がセットになって1つの契約を証明する証票となるため、基本的には双方がデータと紙の両方を原本として保存する必要があります。
クラウドサインとしては、このような締結方法を推奨するものではありませんが、実務上の対応策として、自社分だけ電子署名をするという契約締結がイレギュラーとして行われることはあります。ただし、紙の原本には収入印紙の貼付(納税)が必要になり、事前に印紙代の費用をどちらが負担するか協議し、合意しておくなどの注意点やデメリットもあります。詳しくは以下の記事をご確認ください。
パターン3:当事者が3者以上のケース
当事者が3者以上になる場合は、当事者の呼称(甲・乙・丙…)をすべて挙げたうえで、全員が電子署名を施す旨を記載します。
本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲、乙および丙が合意の後、各自電子署名を施し、それぞれがその電磁的記録を保管する。なお、本契約においては本電磁的記録を原本とし、本電磁的記録を印刷した文書は写しとする。
後文の書き方を確認できたら、実際の契約書に落とし込む段階に入ります。
なお、クラウドサインでは、各種契約書ひな形(Word形式)を無料で提供しています。ゼロから作る手間を省きたい方は、あわせてご活用ください。
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電子契約移行時に見直すべき「印章管理規程」と「電子署名管理規程」
電子契約の導入にあたって、契約書の後文を「電子署名を施し」と書き換えるだけで安心してはいけません。実務において最も盲点になりやすいのが、「社内規程(ルール)のアップデート」です。
従来の「紙の契約書・物理的なハンコ」を前提とした印章管理規程のまま電子契約をスタートしてしまうと、「社内の誰が電子署名(アカウント・パスワード・2要素認証など)の実行権限・管理責任を持つのか」が曖昧になり、内部統制やセキュリティ上の重大なリスク(権限なき従業員による勝手な署名、なりすまし等)を招いてしまいます。
詳しくは以下の記事をご確認ください。
クラウドサインでは、こうした社内ガバナンスをスムーズに構築できるよう、すぐに実務で使用できる印章等管理規程のサンプルWordファイルを無料で提供しています。自社の運用に合わせてダウンロードしてご活用ください。
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ダウンロードする(無料)後文に関するよくある質問(FAQ)
Q. 後文の読み方は?
「こうぶん」と読みます。契約書の末尾に置かれる定型的な一文を指し、「末文(まつぶん)」と呼ばれることもあります。
Q. 後文と前文の違いは?
前文は契約書の冒頭に置かれ、当事者や契約の趣旨を示す導入文です。後文は末尾に置かれ、契約の成立・作成通数・締結方法・保管について記します。位置と役割が異なります。
Q. 電子契約に後文は必須ですか?
必須ではありません。電子署名やタイムスタンプで契約の成立と意思を確認できるためです。ただし証拠としての意味合いから、記載しておく例が多いです。
Q. 後文と収入印紙の関係は?
紙の契約書では作成通数分に印紙が必要になる場合があります。電子契約は課税文書の「作成」にあたらないと整理されおり、印紙税は非課税です。そのため電子契約の後文では作成通数を記載しません。
Q. 後文がない契約書は無効ですか?
無効にはなりません。契約は当事者の合意で成立し、後文は必須の要件ではないためです。ただし、成立の確認や証拠の観点から記載しておくことが望ましいといえます。
まとめ
本記事では、電子契約における「後文」の正しい書き方と変更のチェックポイント、そして並行して進めるべき社内規程(印章等管理規程・電子署名管理規程)の重要性について解説しました。
後文を「電磁的記録を作成し、電子署名を施す」というデジタル時代に適した表現にアップデートすることは、契約書が持つ信頼性や法的証拠力を最大限に引き出すための、基本的かつ重要な対応です。
また、書面と電子が混在する過渡期の管理や、電子署名における内部統制を維持するためには、社内規程の整備が必要です。
ここまで解説した後文の見直しや社内規程の整備は、電子契約をスムーズに導入・運用するための土台となります。
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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部