契約書のまき直しとは?2つの方法や使い分け方、注意点などを弁護士が解説

すでに締結している契約書の内容を変更することは、「契約書のまき直し」と呼ばれることがあります。契約書のまき直しの方法は、契約内容のうち一部分だけを変更する方法(一部変更)と、全面的に変更する方法(全面変更)の2通りです。
契約書のまき直しをする際には、原契約の取扱いや変更内容を明確に記載するなどの注意点があります。契約トラブルを予防するため、適切な形で契約書のまき直しを行いましょう。
本記事では契約書のまき直しについて、必要となるケース・方法・注意点などを弁護士が解説します。
契約書のまき直しとは
「契約書のまき直し」とは、すでに締結されている契約書の内容を変更することです。契約当事者の合意に基づいて行います。
口約束だけで契約内容を変更すると、変更内容が不明確となり、後にトラブルが起こる原因になり得ます。そのため、何らかの理由で契約内容を変更する必要が生じたときは、その変更内容を書面にまとめて、当事者双方の間で締結しておくべきです。
したがって企業間の契約を変更する際には、契約書のまき直しとして、変更内容を記載した書面(変更契約書や変更覚書など)を作成するのが通例となっています。
契約書のまき直しが必要になるケース
契約書のまき直しが必要となるケースとしては、次の例が挙げられます。
②取引の内容や条件を変更する場合
③法令改正に対応する必要がある場合
契約書の記載に誤りや不備が見つかった場合
契約書の記載が誤っている場合や、記載すべき事項が記載されていない場合には、そのままにしておくと契約内容について疑義が生じ、トラブルに発展するおそれがあります。このようなケースでは、誤りや不備を修正するために契約書をまき直した方がよいでしょう。
取引の内容や条件を変更する場合
取引に関する環境や当事者の関係性は、契約締結当時から時間が経つに連れて変化するものです。
その変化に対応して、取引の内容や条件を変更する必要が生じた場合は、契約書のまき直しを行いましょう。たとえば契約期間の延長、取引価格の変更、委託業務の追加・変更などを行うことが考えられます。
法令改正に対応する必要がある場合
契約締結後に法令が改正されると、既存の契約条項が現行法令に適合しなくなるケースや、新たな条項を追加する必要が生じるケースがあります。
たとえば、個人情報保護法の改正によって個人情報の取扱方法を変更する必要が生じる場合や、電子帳簿保存法の改正によって請求書の記載事項を変更する必要が生じる場合などが挙げられます。
また、業法によっては契約書に記載すべき事項が法定されているものがあるところ(建設業法など)、法定記載事項が変更された場合は、 その変更内容を反映する必要があります。
これらの場合には、法令改正を反映するために契約書をまき直しましょう。
契約書をまき直す2つの方法と使い分け方
契約書をまき直す方法としては、次の2つが挙げられます。
②契約内容を全面的に変更する(全面変更)
それぞれの変更覚書(変更契約書)に記載すべき事項や、両者の使い分け方を解説します。
契約内容のうち、一部分だけを変更する
契約内容のうち、一部分だけを変更する場合は「一部変更」と呼ばれます。
一部変更に関する変更契約書や変更覚書では、変更前の条文と変更後の条文を並べて記載することにより、どの部分が変わったのかが一目で分かるようにします。削除する条項や追加する条項については、その旨を明記します。
○○(以下「甲」という。)と△△(以下「乙」という。)は、甲乙間の×年×月×日付□□契約書(その後の変更等を含み、以下「原契約」という。)に関して、次のとおり一部変更契約書(以下「本変更契約」という。)を締結する。第1条(原契約の変更)
- 原契約第○条を以下のとおり変更する。
(変更前)
甲は乙に対し、本業務の委託料として、毎月30万円(消費税及び地方消費税別途)を支払う。
(変更後)
甲は乙に対し、本業務の委託料として、毎月40万円(消費税及び地方消費税別途)を支払う。 - 原契約第○条第○項を削除する。
- 原契約第○条として、以下の条文を追加する。
……
一部変更のメリットは、どの条項がどのように変更されたのかが分かりやすい点です。その反面、変更点が多すぎるとかえって読みにくくなります。変更点が数か所に限られる場合は、一部変更が適しているケースが多いと考えられます。
契約内容を全面的に変更する
契約内容全体を変更する場合は「全面変更」と呼ばれます。全面変更といっても、実際に変更されている条文は一部のみであるケースが多いです。
全面変更に関する変更契約書や変更覚書では、最初に全面変更をする旨を宣言したうえで、契約書の本文全体を記載します。従前からどこが変わったのかについては、特に摘示しないのが一般的です。
下記の例では、契約書の本文は別紙にまとめる形としています。
○○(以下「甲」という。)と△△(以下「乙」という。)は、甲乙間の×年×月×日付□□契約書(その後の変更等を含み、以下「原契約」という。)に関して、次のとおり全面変更契約書(以下「本変更契約」という。)を締結する。本変更契約で用いられる用語は、本変更契約で別途定義される場合を除き、原契約において定義された意味を有する。第1条(原契約の変更)
原契約を、別紙の内容へと全面的に変更する。
……別紙第1条(目的)
……
全面変更のメリットは、変更後の契約条項全体が添付されるため、それを見るだけで現在の契約内容が分かる点です。その一方で、従前からの変更点は摘示されないことが多いので、自分で変更前後の内容を比較して確認しなければなりません。
変更点が多いため、一部変更ではかえって煩雑で読みにくくなる場合は、全面変更を行うのがよいでしょう。
また、過去に何度も一部変更を行っている場合は、現在の契約内容を把握するために複数の契約書を比較しなければならず、多大な手間がかかることがあります。
このようなケースでは、全面変更契約書に現在の契約条項をまとめて記載したうえで締結し、1通で確認できるようにしておくのが便利です。
契約書をまき直す際の注意点
契約書をまき直す際には、特に次に挙げるポイントに注意してください。
②変更内容を明確に記載する
③変更の効力が生じる範囲を明記する
④契約金額が変わるときは、収入印紙の貼付を要する場合がある
原契約(旧契約)の取扱いを明確に定める
契約書をまき直す際には、変更後の契約において、原契約(元となる契約)の条項がどのように取り扱われるかを明確に定めることが重要です。
たとえば、原契約の定義語をそのまま用いる場合は、次のように記載します。
本変更契約で用いられる用語は、本変更契約で別途定義される場合を除き、原契約において定義された意味を有する。
特に一部変更の場合は、変更しない部分は原契約の規定が維持されるため、次のように記載します。
本契約に定めのない事項は、原契約の定めに従う。
原契約と変更後の契約の内容を比較対照しつつ、疑義が生じ得るポイントについては、変更契約書(変更覚書)においてどのように処理するかを明記しましょう。
変更内容を明確に記載する
契約書をまき直す際には、どの内容が従前から変更されたのかを明確に記載することが大切です。
全面変更であれば、変更後の契約条項全体を記載(添付)することになるため、変更後の契約内容について疑義が生じるおそれは少ないでしょう。
これに対して一部変更の場合は、対象となる条項を条文番号で特定し、変更後の内容を具体的に記載することが重要です。変更箇所や変更内容が曖昧だと、当事者間で契約内容の認識に食い違いが生じるおそれがあるので十分注意してください。
変更の効力が生じる範囲を明記する
変更契約書(変更覚書)には、まき直した契約書の効力がいつから効力が生じるのかを明記しておきましょう。
一般的には、変更契約書(変更覚書)の締結時以降の将来にわたってのみ効力を生ずると定めるケースが多いです。その場合は、次のように記載します。
本変更契約に基づく原契約の変更の効力は、本変更契約の締結日(以下「変更効力発生日」という。)から将来に向かって生じるものとする。当該変更は、原契約に基づき変更効力発生日より前に行われた行為の効力に何らの影響も与えないものとする。
これに対し、何らかの理由で変更の効力を過去に遡らせたい場合は、次のように記載します。
本変更契約に基づく原契約の変更の効力は、本変更契約の締結日にかかわらず、○年〇月〇日(以下「変更効力発生日」という。)から将来に向かって生じるものとする。当該変更は、原契約に基づき変更効力発生日より前に行われた行為の効力に何らの影響も与えないものとする。
効力発生日が曖昧だと、変更前と変更後のどちらの契約内容が適用されるのか不明確となり、当事者間のトラブルに発展するおそれがあります。契約内容を変更する場合は、変更の効力発生日を明確化することを意識してください。
契約金額が変わるときは、収入印紙の貼付を要する場合がある
次の①~③をいずれも満たすときは、変更契約書(変更覚書)の原本に収入印紙の貼付を要する場合があります。
②契約の内容(種類)が印紙税法上の課税文書に該当する
③契約金額を変更する
印紙税法上の課税文書に該当する契約書の主な種類は、次のとおりです。
| 号 | 契約書の主な種類 | 印紙税額 |
| 第1号文書 | 不動産売買契約書 土地賃貸借契約書 土地賃料変更契約書 金銭消費貸借契約書 運送契約書 など |
200円~60万円 ※契約金額が1万円未満 の場合は非課税 |
| 第2号文書 | 工事請負契約書 広告契約書 業務委託契約書 (成果物の作成・納入 を内容とする場合) など |
200円~60万円 ※契約金額が1万円未満 の場合は非課税 |
| 第5号文書 | 合併契約書 吸収分割契約書 新設分割契約書 |
4万円 |
| 第7号文書 ※契約金額が3か月 以内で、かつ更新の 定めのないものは除く |
売買取引基本契約書 特約店契約書 代理店契約書 業務委託契約書 など |
4000円 |
| 第12号文書 | 信託契約書 | 200円 |
| 第13号文書 | 債務保証契約書 | 200円 ※身元保証契約書 は非課税 |
| 第15号文書 | 債権譲渡契約書 債務引受契約書 |
200円 ※契約金額が1万円未満 の場合は非課税 |
原契約において契約金額が記載されている場合、変更契約書(変更覚書)の記載金額は次のようになります。変更前の金額を記載しないと、印紙税額が高くなることがあるので注意が必要です。
【契約金額が増加する場合】
増加金額(差額)が記載金額となります。
【契約金額が減少する場合】
記載金額はないものとして扱われます。(b)変更後の金額のみが記載されている場合
変更後の金額が記載金額となります。
参考:No.7123 契約金額を変更する契約書の記載金額|国税庁
なお、電子契約によって変更契約書(変更覚書)を作成する場合は、その内容にかかわらず収入印紙を貼る必要がありません。印紙税を削減 したいなら、電子契約による締結を検討しましょう。
契約書のまき直しには電子契約の利用がおすすめ
契約書をまき直す際には、電子契約サービスを利用するのが便利です。
電子契約サービスを利用すれば、遠隔地からでも簡単な操作で変更契約書(変更覚書)を締結できます。締結した文書のファイルはシステム上で管理でき、検索性も優れています。アクセス権やパスワードを適切に設定すれば、セキュリティ対策も万全です。
また前述のとおり、電子契約によって変更契約書(変更覚書)を締結すれば、収入印紙の貼付が不要になります。契約金額の変更を伴うまき直しを繰り返し行う企業にとっては、印紙税の負担を継続的に抑えられる点が大きなメリットです。
電子契約サービスの導入は契約事務の効率化に繋がるため、未導入の企業は積極的に導入をご検討ください。
まとめ
契約書のまき直しは、すでに締結している契約書の内容に誤りや不備が見つかった場合、取引の条件や内容を変更する場合、法令改正に合わせた変更が必要な場合などに行います。一部変更と全面変更の2通りがあるところ、読みやすさなどの観点から使い分けましょう。
通常の契約書と同様に、契約書をまき直す際に締結する変更契約書(変更覚書)も、電子契約サービスを使って締結することが可能です。高い検索性やセキュリティ、その他の便利な機能によって契約実務を効率化・適正化することができます。
契約書を取り扱う頻度が高まってきた企業は、ぜひ電子契約サービスの導入をご検討ください。
なお、当社の提供する電子契約サービス「クラウドサイン」の詳しい機能や導入メリット、料金体系がわかるサービス紹介資料は、以下のフォームより無料でダウンロードいただけます。電子契約による業務効率化を進めたい方は、ぜひお気軽にダウンロードしてご活用ください。
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ダウンロードする(無料)この記事を書いたライター
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
