Kiraは条項別リスク分析特化型のAI契約レビューサービス

投稿日:

契約分析テック企業の古参であり、著名法律事務所等の採用実績も豊富なKira。アップロードされた契約書データを囲い込もうとせずAPIも積極的に解放するなど、クラウドサインのコンセプトにも通じるところが多いサービスです。

契約書の条項分析に特化したシンプルなリーガルテック

Kiraは、契約書をアップロードすることで機械学習によりその条項を分析、過去締結した契約書との差異を比較したり、蓄積した契約条項データ資源から条項の検索ができる、企業法務および法律事務所向けエンタープライズサービスです。

https://kirasystems.com/

運営母体のKira,Incは、2018年9月に米国VCから6500万カナダドル(約5300万円)を調達したばかりのカナダ国籍のベンチャー企業。とはいえ起業は2011年と、リーガルテック企業群の中では古参にあたります。

アップロードした契約書の機械学習による分析を補助する教師データとして、SkaddenやReed Smithといった名門法律事務所出身のエキスパートが作成した条項集をあらかじめ内蔵しています。このあたりは、日本では森・濱田松本法律事務所や西村あさひ法律事務所出身の弁護士らが立ち上げたAI契約レビューサービス「LegalForce」の立ち位置やブランディングにも似た印象があります。

スマートコントラクト作成機能などの複雑な機能を搭載していない分、シンプルなUIも印象的です。

https://kirasystems.com/how-it-works/contract-analysis/

たとえば、この画像にあるように、dispute(紛争)という単語を検索ボックスに入れると、

といったさまざまな切り口で検索結果にPDFやWordファイルが並ぶところなどは、非常に使いやすい作りだと思います。

M&A契約の分析事例を公開

Kiraの条項分析力を垣間見ることができる情報として、M&A契約の分析実験結果が公開 されています。これは、2017年・2018年に締結されEDGAR上で公開されたM&Aの契約書をKiraの分析にかけ、そこに「Materiality Scrape」条項がどの程度含まれていたかという調査を実施したものです。

https://info.kirasystems.com/blog/the-prevalence-and-associations-of-materiality-scrape-provisions-in-ma-agreements

M&Aの売主企業は、売り主としての表明保証条項に「“重大な”悪影響を与える又はそのおそれのある事由又は事象(は存在しない)」といった限定文言を付けくわえ、自己の責任を限定しようとします。これに対し、買主としては、責任を制限されないよう、たとえば「ただし、Materiality qualificationが付された表明保証の場合には、すべての点において正しいことを必要とする」といった文言で、これを無効化しようとします。これが「Materiality Scrape」条項です。

こうした条項がどれくらいの割合で含まれていたかを分析したところ、81%→90%と1年で10%近く増加しており、買主がこうした条項に意識を尖らせていることが詳らかになったとのこと。公開されているレポートでは、どのような免責文言が設定されているのか等の詳細について分析されています。

少々マニアックな分析ではありますが、自社での契約書リスクを分析する際の利用イメージをふくらませるのに、参考になるレポートではないでしょうか。

データのエクスポートやAPI連携も可能

リーガルテックを導入する際、ユーザーがしばしば心配・懸念するのは、そのシステムに自社業務を囲い込まれてしまうロックイン・リスク でしょう。契約マネジメントを一つの企業のシステムに依存するのは一見便利なようでいて、そのシステムの機能や設計に自社の業務フローが縛られてしまい、導入後不自由を感じるようになる例は枚挙に暇がありません。

この点Kiraは、契約メタデータのすべてについて、APIを通じてエクスポートや外部連携できる ことを特長としてうたっています。こうした点は、クラウドサインのAPIエコシステムのコンセプトにも通じるところがあります。

https://kirasystems.com/how-it-works/contract-analysis/

分析機能以外を担うリーガルテック、たとえば電子契約サービス等との連携がしやすい点や、万が一のサービス終了時に溜め込んだ契約データが無に帰することはないという点は、一つ安心材料として評価できるのではないでしょうか。

関連記事

(橋詰)