経験者は語る—クラウドサインを社内稟議の電子化に活用するとどうなるか

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本記事では、クラウドサインを契約締結だけでなく、社内稟議でも活用する方法とそのメリット・デメリットについて、実際に2年以上運用した経験談を紹介します。これから社内稟議の業務フローの変更を検討される方は必見です。

クラウドサインの社内稟議活用

せっかく電子契約サービスを導入したのに、契約締結に至るまでの社内稟議に紙の稟議書を使用していては、デジタル・トランスフォーメーションはおろか、電子化をしたうちにも入りません。

ブラウザベースでどこからでもデジタル決裁できる社内稟議(ワークフロー)ツールは世の中に多数存在しており、それらとクラウドサインをAPI連携することも可能ですが、そもそも 複数人が同意・承諾したことを記録するサービスであるクラウドサインそのものを社内稟議に活用することも可能 です。

筆者は実際にこれを2年以上運用していますので、そのコツや具体的方法を紹介します。

社内稟議活用を成功させるコツ

クラウドサインでは、申請者が承認者を複数名設定することができます。

一般的には自社と相手方それぞれの権限者を設定するところ、申請者の上長や自社の法務部を追加することも可能ですので、そうした方々をクラウドサインの承認フローに加えてしまうことで、そのまま社内稟議としても活用することができるというわけです。

なお、電子契約の場合でも紙の契約書の場合でも、契約書に対して社内規定上の適切な承認者により承認がされるという事実は同じであり、かつ電子契約と紙とで稟議システムが異なることは管理やオペレーションの効率化の観点から避けるべきだと考えます。

クラウドサインを社内稟議に活用すると決めた以上、 後工程が紙の契約書での押印になる場合についても、社内稟議はクラウドサインに統一し、すべてをクラウドサインに寄せてしまうのが成功の秘訣 です。

具体的な設定方法

具体的な設定方法を、ケーススタディでご紹介します。

例えば、電子契約の場合において社内の承認者が上長、法務部長、事業本部長であるような場合には、クラウドサイン上で

  申請者 → 上長 → 法務部長 → 事業本部長 → 自社の権限者 → 相手方の権限者

という承認フローを設定することになり、紙の契約書の場合には

  申請者 → 上長 → 法務部長 → 事業本部長

という承認フローを設定し、事業本部長が承認をした後に押印担当者により押印がされることになります。

具体的な設定方法と各送付先の役割(クラウドサインの送付先設定画面)

クラウドサインを社内稟議に利用するメリット

私自身、クラウドサインを実際に社内稟議で活用していますので、実体験としてメリットを十分に感じていますが、いったんその 効果を客観的にブレイクダウン してみたいと思います。

メリット1:社内稟議から締結までの効率化

この方法を活用するメリットの1つ目は、社内稟議から契約の締結までのプロセスが一気通貫となることで真の効率化が図られる ことです。

社内稟議と電子契約とでツールが異なる場合、一般に業務フローとしては、

  1. 申請者が社内稟議を申請する
  2. 社内稟議完了後に電子契約で送信する

といった二段階の手続きが必要になります。それぞれの手続きにおいて、「契約相手の名称」などの契約書に関する諸情報を入力する必要があるため、重複する作業が出てきます。また、上記の①が終わってから②をするまでの間に申請者の状況によっては時間が空くことも考えられ、締結までのスピードに時間がかかることが予想されます。

クラウドサインを社内稟議に使用する場合は、社内稟議と締結プロセスが一緒になっているために重複する作業は発生せず、また稟議終了後に自動的に各社の権限者へと承認フローが進むため時間がかかりません。

このように、本来は異なるはずの「社内稟議プロセス」と「契約締結プロセス」をクラウドサインという1つのシステムにまとめてしまうことで、社内稟議から締結までのプロセスの効率化を図ることができます。

メリット2:締結後の管理時における効率化

メリットの2つ目は、締結後の管理における効率化が図られる ことです。

まず前提として、クラウドサインは契約書を管理するツールとして活用することができます。

締結後の管理における効率化を図ることができる https://help.cloudsign.jp/ja/articles/2749580

さらに、クラウドサインによる契約書の管理は、「書類インポート機能」を使用することで紙の場合でも一元管理ができます。そこで、クラウドサインを契約書管理のツールとして活用する場合は、

  1. 電子契約の場合は締結後にそのまま管理下に移行し
  2. 紙の契約書の場合は締結後にスキャンしてインポートする

という方法が一般的かと思います。

しかし、クラウドサインを社内稟議に使用している場合は、紙の契約書であってもクラウドサインで申請がされているため、そのままクラウドサインの管理下に移行されることになります。そのため、上記②のインポート作業をする手間が発生しないことになります。

このように、「社内稟議プロセス」と「契約書管理プロセス」をクラウドサインにまとめてしまうことで、締結後の手間が無くなり、効率化を図ることができます。

メリット3:改ざんや不正の防止

電子署名ですから、改ざんを防止する効果 ももちろんあります。一度電子署名をすれば、内容を改ざんすることはできません。

加えて、タイムスタンプもで年月日だけでなく秒単位で打刻されるため、バックデートもできませんから、内部統制上社内稟議のプロセスで不正を疑う余地がほとんどなくなります

しばしば、タイムスタンプによって決裁日が可視化されることについて「デメリット」と捉えられることがあります(関連記事:電子契約の締結日—タイムスタンプとのズレは「バックデート」にあたるか)。そうした考え方に対する反論はありますが、少なくとも、内部統制上はメリットしかないと言ってよいでしょう。

デメリットとのバランス

一見するとメリットばかりのように見える本方法ですが、この方法には残念ながら1つデメリットが存在します。それは、紙の稟議書の場合には本来かからないはずの送信費用が発生する ことです。

具体的な金額としては、送信1件ごとに200円であるため、仮に月100件の契約書のうち50%の50件が紙であるとすると、毎月税別10,000円(200×50=10,000)のコストがかかることになります。

このコストをどのように考えるかは各社次第です。しかし、既に説明した2点のメリットから得られる手間の削減だけでも十分に元が取れると思いますし、社内稟議用にツールを導入するとその分のコストもかかるはずです。それらを踏まえると、筆者個人の見解としてはかかるコストを考慮しても十分に実施すべき方法なのではないかと考えます。

実際に2年超クラウドサインを社内稟議に活用してみて

本記事ではクラウドサインを社内稟議に活用する方法と、そのメリット・デメリットについて説明しました。

ポイントは、

  1. 社内稟議として活用するなら紙の場合であってもクラウドサインを活用すること
  2. 稟議プロセスと締結プロセスをまとめることで効率化を図ること
  3. 稟議プロセスと契約書管理プロセスをまとめることで効率化を図ること
  4. コスト以上の価値が得られる

ことの4点です。

筆者の所属企業ではこの方法を実施しています。正直なところ、この方法に至るまでに法務部内ではかなり長い時間にわたり打合せがなされました。元々の自社の業務フローを分解し、一つ一つのプロセスの意味を考え、それらを考慮して最適な方法はなにがあるだろうかという模索を何度も繰り返し、ようやくたどり着いた方法です。

その甲斐もあってか、この方法の活用を始めてから2年以上経過した今に至るまで、特に問題はなく進められています。効率化の度合いの可視化は難しいものの、契約書管理担当者の筆者としては明らかに効率化ができていると実感しています。

リーガルテックにかぎらずではありますが、それらのテクノロジーをどのように使用するかは、最終的にはユーザー側の判断になります。一般的な使用方法として推奨されるものを使用することはもちろん有益ですが、その機能自体に着目し、自社にどのような価値をもたらすかを考えることも重要だと思います

(文:あいぱる、画像:uusan / PIXTA)

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