電子契約の基礎知識

紙の契約書を電子化するやり方とは?メリットや法的な有効性も解説

業務の効率化やコスト削減を目的としてペーパーレス化を推進するために、紙の契約書の電子化を検討している方もいるでしょう。当記事では、紙の契約書を電子化するやり方をわかりやすく解説しますので、契約書の電子化を検討している方は参考にしてみてください。

なお、契約書の電子化の概要や紙の契約書と電子契約の違いを知りたい方は「契約書の電子化とは?種類や流れを解説」も参考にしてみてください。

電子契約サービスを利用して紙の契約書を電子化するやり方

契約書を電子化するためには、何らかの電子契約サービスを用いて契約を締結する必要があります。電子契約サービスは「当事者署名型」と「事業者署名型(立会人型)」の2つの種類に大きく分かれます。紙の契約書を電子化したい方はそれぞれのやり方を確認しておきましょう。

当事者署名型の電子契約サービスの場合

「当事者署名型」とは契約する当事者の双方が署名用の「鍵」と鍵に対応する「電子証明書」を事前に準備しておくタイプの電子契約サービスです。

署名鍵をICカードやユーザーのPC内で管理する場合は「ローカル型」、事業者のサーバー上で管理する場合は「リモート型」と呼ばれます。

当事者署名型の電子契約サービスを利用する場合、契約当事者の両者それぞれが自分で「認証局」と呼ばれる第三者機関で手続きをして、事前に身元確認を受けた上で署名鍵と電子証明書の発行をする必要があります。

電子証明書の発行にかかるコストは1枚につき数千円程度ですが、契約の送信者だけでなく、契約相手となる受信者側でも電子証明書を準備してもらう必要があるため、双方で準備の負担が重くなる傾向があります。

このように、当事者署名型では認証局が契約当事者の身元確認をするため一定の安心感はありますが、契約相手に認証局での手続きを依頼する必要があるため、相手方から利用を拒否される可能性もあります。

また、当事者署名型の場合は有効期限(通常1〜3年)のたびに電子証明書の更新手続きに対応しなければならないため、契約締結後も定期的に手続きが発生する点に留意しましょう。

事業者署名型の電子契約サービスの場合

「事業者署名型」とは、契約を締結する当事者ではない第三者が、当事者の指示に基づき電子署名を付与するタイプの電子契約サービスです。

事業者署名型の場合、契約当事者は署名用の鍵や電子証明書を用意する必要がありません。
そのため「当事者署名型」に比べると契約当事者には準備の負担がかからず、契約を締結する双方がインターネットを通じて電子契約サービスに接続する環境さえ用意していれば、紙の契約書を電子化することが可能です。

事業者署名型の電子契約サービスを利用して契約を締結するやり方は、利用する電子契約サービスによって異なりますが、一般的には、既に交渉が終わった契約書をアップロードし、相手方が電子メールなどで契約内容を確認・承認することで契約が成立します。

当社の提供しているクラウド型の電子契約サービス「クラウドサイン」も同様の流れで紙の契約書の電子化が可能です。書類の受信者はクラウドサインに登録せずに契約を締結することができます。

クラウド型電子署名サービスを用いた電子契約のイメージ図

クラウド型電子署名サービスを用いた電子契約のイメージ図

このように「事業者署名型(立会人型)」は契約当事者が締結する際の負担が軽減されるため、現在では「事業者署名型(立会人型)」の電子契約サービスが世界的にも主流になっています。

なお、当事者署名型と事業者署名型の違いをより詳しく知りたい方は「「事業者署名型(立会人型)」と「当事者署名型」の違い—電子契約サービスの分類と選び方」をご覧ください。

紙の契約書を電子化するメリット

紙の契約書を電子化するメリットとして「収入印紙が不要」「郵送費用を削減できる」「文書管理・保管が効率化できる」「コンプライアンス強化につながる」の4点が挙げられます。各メリットを詳しく確認しておきましょう。

収入印紙が不要になる

紙の契約書を電子化した場合、紙の契約を締結する際に購入していた収入印紙が不要になります。電子契約には印紙税が課税されないため、契約書を電子化する場合には収入印紙を準備する必要がありません。そのため、紙の契約で必要だった収入印紙代の削減にもつながります。

郵送費用を削減できる

紙の契約書を電子化することで、従来発生していた郵送費用を削減できます。レターパックライトで郵送していた場合であれば、1契約あたり370円の郵送費用削減につながるでしょう。

文書管理・保管が効率化できる

紙の契約書を電子化することで、書類や契約相手の名前、締結日などから契約内容を容易に検索できます。契約を紙で締結していた場合に発生していた手作業で契約書を探す手間もかからないため、事務作業にかかる時間的なコストも削減可能です。

コンプライアンス強化につながる

紙の契約書を電子化した場合には契約内容に応じてアカウントの閲覧権限を設定できるため、契約に無関係なメンバーが契約内容を確認できるといった権限上の不備が回避可能です。契約書の書き換えや流出などの不正行為も防げるため、コンプライアンスの強化を期待できるでしょう。

紙の契約書を電子化するデメリット

紙の契約書を電子化することでさまざまなメリットを得られますが、一方で「電子化できない契約書の種類もある」「契約相手から理解を得るために説明が必要な場合がある」というデメリットもあります。各デメリットを詳しく確認しておきましょう。

電子化できない契約書の種類もある

電子契約の普及は進んできているものの、一部には電子化できない契約書の種類があります。紙の契約書での締結を法令で義務づけられている種類の契約の場合は、電子化に対応していないためです。

電子化できない契約書の種類を確認したい方は「電子契約にできない契約書とできる契約書の違いとその見分け方」も参考にしてみてください。

契約相手から理解を得るために説明が必要な場合がある

電子化による契約締結を進める場合には、契約相手に電子契約サービスの利用を理解してもらう必要があります。相手方が電子契約サービスを利用した経験がなければ、契約書の電子化に対して不安を抱いている可能性もあるため、紙の契約書を電子化するメリットや仕組み、進め方などを説明することが重要です。

契約書の電子化を進める場合は契約締結時の相手方とのコミュニケーションを大切にし、不安や疑問を解消するための十分な説明を行いましょう。

契約書を電子化する際のメリットやデメリットをさらに詳しく知りたい方は「電子契約のメリット・デメリット|注意点も解説」も参考にしてみてください。

電子化された契約書の法的効力

電子化された契約書の法的効力は、主に民法、電子署名法、民事訴訟法により支えられています。

たとえば、民法では「契約方式の自由」として契約の成立に書面は必要ないという大原則が明文化されており(民法522条2項)、これによりほとんどの契約において電子契約が利用可能となっています。

電子化された契約書の法的効力について詳しく知りたい方は「電子契約の法律—電子契約の有効性と規制を理解するために知っておくべき法律まとめ」もご一読ください。

電子契約サービスを比較検討する際のポイント

電子契約サービスを比較検討する際は、電子契約サービス事業者に以下の3つの質問をし、その回答を確認することで、より安全で持続可能性の高いサービスかどうかが分かります。

(1) 作成者をPDF署名パネルに表示するデジタル署名サービスか?
(2) 固有性を担保するための2要素認証等には対応可能か?
(3) PAdESに準拠した長期署名フォーマットを採用しているか?

とくに、「合意を電磁的に証拠化する」という最も基礎的で重要な部分をおろそかにしたサービスを選択してしまうと、「必要な契約書の電子ファイルが手に入らない」「ファイルは手元にあっても署名検証が正常にできず、法的効力が認められない」といった事態にもなりかねないため、注意が必要です。

電子契約サービスを比較検討する際のポイントを詳しく知りたい方は「電子契約サービスを比較する際の3つのポイント —おすすめの電子契約サービス比較サイトも紹介」をご覧ください。

なお、電子契約サービスを選定する際はGoogleやyahoo!、Bingなどの検索エンジンから「電子契約 比較」というキーワードで調べた際に表示される電子契約サービスの比較サイトを参考にするのも一手です。信頼のおける比較サイトについても上記の記事で紹介しているので、電子契約サービスを比較検討中の方は参考にしてみてください。

紙の契約書を電子化する際は社内の運用体制の整備も必要

紙の契約書を電子化することで、業務プロセスの効率化や金銭的・時間的コストの削減など、さまざまなメリットが得られますが、電子化を進めるにあたって、社内の運用体制の整備も必要になります。

たとえば、電子契約サービスの導入や、契約担当者の役割や責任を明確にするといった対応が考えられます。

また、電子契約サービスの利用方法や利用上の注意点などを従業員に教育・研修し、電子契約に対する理解を深めることも重要です。このような社内の運用体制の整備が行われなければ、電子契約サービスを導入しても効果を十分に発揮することができない場合があります。

紙の契約書を電子化する際には、社内の運用体制の整備も慎重に行い、電子契約を効果的に活用していきましょう。

なお、クラウドサインではこれから電子契約サービスを比較検討する方に向けて「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しています。「電子契約を社内導入するための手順」や「クラウドサインの利用手順」「よくあるご質問」など、導入前に知っておきたい情報を網羅して解説しているため、導入検討時に抱いている疑問や不安を解消することが可能です。下記リンクから無料でご入手できますので、ぜひご活用ください。

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