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電子契約の基礎知識

署名とは?記名との違い・法的効力・電子署名との関係をわかりやすく解説

日々のビジネスシーンで当たり前に行っている「署名」という行為ですが、「署名」と「記名」はどう違うのか、押印は必要なのか、電子署名でも同じ効力があるのかと聞かれたらなかなか回答が難しいのではないでしょうか。とくに、契約書の作成・確認業務を担当するバックオフィス担当者の方は一度は疑問に思ったことがあるはずです。

本記事では、署名の定義から記名との違い、法的効力、押印との関係、そして電子署名との接続までを解説します。契約書の署名運用に課題や疑問をお持ちの方は、ぜひご一読ください。

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<この記事のポイント>

  • 署名と記名の違い:署名は本人が自筆で氏名を書く行為、記名は印刷・ゴム印・代筆など本人以外の方法でも氏名を記せる行為
  • 署名の法的効力:民事訴訟法228条4項により、本人の署名または押印がある文書は「真正に成立したもの」と推定される
  • 押印は法律上の必須要件ではない:契約は当事者の合意で成立し、2020年6月の政府見解(押印についてのQ&A)でも押印の有無は契約の効力を左右しないと確認されている

署名とは何か

署名(しょめい)とは、本人が自分の氏名を自筆で書き記す行為を指します。ペンや筆を使い、自分の手で名前を書くという点がポイントです。

日常会話で使われる「サイン」も、法律上はほぼ同じ意味で扱われており、日本語の「署名」と、カタカナ語の「サイン」は言い換え可能な表現と考えて問題ありません。

一方で、「署名」という言葉には単に名前を書くだけでなく、「その文書の内容に本人が同意した、あるいは本人がその文書を作成した」という意思を示す機能があります。契約書の末尾にいわゆる「署名欄」が設けられているのは、このためです。

署名が求められる主な場面

署名が求められる代表的な場面として、次のようなものが挙げられます。

  • 契約書・合意書への署名(当事者間の合意内容を確認する場面)
  • 念書・誓約書への署名(一方的な意思表示を明確にする場面)
  • 委任状などの公的な書類への署名(本人の意思にもとづく手続きであることを示す場面)
  • クレジットカード利用時の署名(利用者本人による利用であることを示す場面)

いずれの場面でも、「本人が自らの意思でその行為を行った」ことを示す点に共通点があります。

契約書のどの欄が署名を求めているのか、記名でよい欄はどこかを社内で区別できるようにしておくと、契約実務のミスを防ぎやすくなるでしょう。

署名と記名の違い

ここでは、署名と混同しやすい「記名」の定義と、それぞれの用語の違いを改めて確認しておきましょう。

記名とは

記名(きめい)とは、本人による自筆以外の方法によって氏名を記す行為を指します。具体的には、パソコンで作成した文書に印刷された氏名、ゴム印によって押された氏名、第三者による代筆などが記名に該当します。

記名は「誰の氏名であるか」を示す点では「署名」と同じですが、「本人が自らの手で書いた」という要素がない点が異なります。契約書のテンプレートに会社名や担当者名が印刷されているケースは、記名の典型例です。

署名と記名の比較表

署名と記名の違いを整理すると、以下のようになります。

署名 記名
行為の主体 本人が自筆で記載 印刷・ゴム印・代筆など本人による自筆
以外の方法でも可
押印との関係 押印がなくても証明力が認められやすい 押印を伴うことで証明力を補強すること
が一般的
証明力の強さ 比較的強い
(筆跡が本人性を示す)
単独では弱い
(押印との組み合わせが実務上多い)
主な利用場面 契約書、念書、委任状などの重要書類 社内文書、大量発行の書類など

実務上は、「記名+押印(記名押印)」という組み合わせで契約書が作成されるケースも多くあります。これは、記名だけでは証明力が弱くなりやすい部分を、押印によって補強する運用です。

署名の法的効力

ここでは関連する法律と記名との証明力の差から署名の法的効力を確認しておきましょう。

民事訴訟法228条4項が定める「推定効」とは

署名の法的効力を考えるうえで重要なのが、民事訴訟法228条4項です。この条文は「本人またはその代理人の署名または押印がある私文書について、真正に成立したもの(本人の意思にもとづいて作成されたもの)と推定する」という趣旨を定めています。

ここでいう「推定する」とは、反対の証拠(反証)が出てこない限り、その文書は本人の意思にもとづいて作成されたものとして扱われる、という意味です。裁判などで契約書の有効性が争われた際に、署名があることで「この契約書は本人が作成したものだ」という前提を、比較的スムーズに立証できる仕組みになっています。

署名の場合は、筆跡そのものが本人性を示す材料になるため、自署であると認められればこの推定効が働きやすいという特徴があります。

記名だけの場合との証明力の差

一方、記名のみ(押印なし)の文書は、署名や記名押印と比べて証明力が弱くなる傾向があります。印刷された氏名だけでは「誰が作成したのか」を筆跡から判断できないため、契約内容について争いが生じた場合、本人が作成・承認したことを別の方法で立証する必要が出てくる可能性があります。

そのため、重要な契約書ほど、記名だけで済ませるのではなく、署名または記名押印の形式を選ぶことが実務上のセオリーとなっています。

契約書における押印の必要性

ここでは、契約書における押印の必要性を詳しく確認しておきましょう。

押印がなくても契約は有効という原則

日本の民法では、契約は当事者の意思表示が合致することで成立します(民法522条1項)。そして同条2項は、法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立に書面の作成その他の方式は必要ないと定めています。つまり、署名や押印そのものは契約成立の条件ではありません。

口頭での合意でも契約は成立しますが、後になって「言った・言わない」の水掛け論にならないよう、契約書という形にして署名・押印を行うのが実務上の慣習です。

この点は、2020年6月19日に内閣府・法務省・経済産業省が連名で公表した「押印についてのQ&A」でも明確化されています。同Q&Aは、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けたテレワーク推進を背景として作成されたもので、押印の有無そのものが契約の効力を左右するものではないという政府見解を示しています。

押印を全面的に禁止する内容ではなく、「押印がなくても契約は有効に成立し得る」という原則を確認したものである点に留意してください。

押印(印影)が証明力を高める仕組み:「二段の推定」

では、押印にはどのような意味があるのでしょうか。押印の証明力を理解するうえで欠かせないのが、「二段の推定」という考え方です。

先述の民事訴訟法228条4項は、「本人の署名又は押印があるときは真正に成立したと推定する」と定めていますが、この条文が働くための前提として、そもそも「本人が押印した」ことが必要です。実務・判例では、次の2段階の推定を積み重ねることで、押印の証明力が支えられています。

  1. 一段目の推定(判例にもとづく推定):印影(押された印鑑の跡)が本人の印章(実印・認印など)と一致していれば、その印影は本人(またはその意思にもとづく者)が押したものと推定する。この考え方は、最高裁昭和39年5月12日判決(民集18巻4号597頁)に示された判例上の解釈にもとづくものです。
  2. 二段目の推定(条文にもとづく推定):一段目の推定によって「本人が押印した」ことが認められれば、そこに民事訴訟法228条4項の推定が重なり、「その文書は真正に成立した」と推定される。

この二段階の構造があるからこそ、押印は「本人の意思にもとづく契約締結」を裏付ける材料として機能しています。なお、署名(自署)の場合は、本人が自筆で書いたものだと認められれば、そのまま民事訴訟法228条4項の推定が働きます。押印のように「印影が本人の印章によるものか」という一段目を経る必要がない、という構造的な違いです。ただし、自署であること自体が争われた場合は、筆跡鑑定などによる立証が必要になります。

印影と印鑑・実印・認印などの用語がやや混同しやすいという方は、以下の関連記事もあわせてご確認ください。

それでも押印が求められる理由

法律上は署名だけで契約が有効に成立するとしても、実務上は押印を求める場面が多く残っています。理由としては、次のようなものが挙げられます。

  • 社内規程で「重要な契約には社印を押す」ことが定められているケース
  • 取引先の慣習として、押印のある契約書でなければ受け付けてもらえないケース
  • 会社としての意思決定を示すために、代表者印や社印での確認を重視するケース

バックオフィス担当者としては、「法律上は押印が不要」という知識だけでなく、「なぜ自社・取引先が押印を求めているのか」という実務的な背景も理解しておくと、社内外への説明がしやすくなります。

印鑑・印章・実印・認印の違い

契約書の押印にまつわる用語は、意外と混同されやすいポイントです。簡単に整理すると、次のようになります。

  • 印章:印鑑そのもの(ハンコの本体)を指す言葉
  • 印影:紙に押されたあとに残る、朱肉の跡
  • 印鑑:日常語としては印章と同じ意味で使われることが多いが、本来は印影を登録・照合する際の基準となるものを指す言葉
  • 実印(個人):住所地の市区町村に印鑑登録をした印章。印鑑登録証明書によって本人のものであることを証明できる
  • 実印(法人):法務局(登記所)に印鑑を提出した代表者印。印鑑証明書によって会社の実印であることを証明できる
  • 認印:印鑑登録をしていない印章。実印に比べると証明力は弱い

用語の詳しい整理や、印影の証明力についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

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電子署名は「署名」として認められるのか

紙の契約書における署名・押印の効力を理解したところで、次に気になるのが「電子契約における電子署名は、同じように法的な効力を持つのか」という点です。

電子署名とは、紙の契約書における「印影(ハンコ)」や「手書きの署名」に代わり、電子データに対して行われる技術的な証明措置のことです。ここでは電子署名も署名として効力があるのかどうかを確認しておきましょう。

なお、電子署名の定義を詳しく確認したい方は下記記事もご一読ください。

電子署名法が定める効力

電子署名が「署名」として認められるのかについては、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)第3条が根拠となります。

同条は、本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書について、真正に成立したものと推定する旨を定めています。わかりやすく言い換えれば、民事訴訟法228条4項が紙の文書における署名・押印に与えている効力と同様の推定効が、電子署名が付与された電子文書についても認められるということです。この点についてより詳しく知りたい方は「電子署名の法的な有効性に関する政府見解とは?デジタル庁の「電子契約サービスQ&A」から解説」もご一読ください。

「電子署名だから法的効力が弱い」というのは誤解であり、要件を満たす電子署名であれば、紙の署名と同じように契約の証拠力を支える機能を持ちます。

なお、電子署名法について詳しく知りたい方は弁護士監修の下記記事も参考にしてみてください。

電子署名の種類

電子署名は、大きく下記2種類に分けられます。

  • 当事者型:契約当事者本人が、自分の電子証明書を用いて署名を行う方式
  • 事業者署名型(立会人型):電子契約サービスの事業者が、利用者本人の指示にもとづいて署名を行う方式

近年広く使われているクラウド型の電子契約サービスの多くは、後者の「立会人型(事業者署名型)」にあたります。この方式では、ユーザー自身が暗号鍵を管理するのではなく、クラウド事業者がユーザーの指示にもとづいて電子署名を施す仕組みになっています。

そのため、かつては「これで電子署名法が求める『本人性』(電子署名法2条1項1号の要件)を満たすと言えるのか」という点について議論がありました。事業者側が署名鍵を管理している以上、本人が行った措置と評価できるのか、という疑問です。

この疑問に対しては、2020年7月17日に総務省・法務省・経済産業省が連名で公表した公式見解(Q&A)により、事業者署名型(立会人型)の電子署名も一定の要件を満たせば電子署名法2条1項の「電子署名」に該当し、本人性の要件を満たし得ることが明確化されました。

さらに、同年9月4日には同じ3省庁が(令和6年1月9日の改定版ではデジタル庁・法務省の2省庁)電子署名法3条(真正な成立の推定効)に関するQ&A(「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」(令和2年9月4日付、令和6年1月9日一部改定))も公表しており、一定の要件のもとで立会人型サービスにも推定効が及び得ることが示されています。

これらのQ&Aによって、立会人型の電子契約サービスが法的に不安定なものではなく、要件を満たせば紙の署名・押印と同様の証拠力を持ち得ることが政府見解として整理されました。

なお、電子署名法の本体は2001年の施行以来、大きな改正は行われていません。上記のQ&Aはあくまで既存条文の解釈を明確化したものであり、条文そのものが改正されたわけではない点に注意が必要です。

紙の署名との実務上の違い

紙の署名・押印と電子署名を実務面で比較すると、次のような違いがあります。

  • 締結スピード:郵送や訪問による押印の受け渡しが不要になり、締結までの時間を大幅に短縮できる
  • 保管:紙の原本を保管するスペースやファイリングの手間が不要になる
  • コスト:契約書に貼付する印紙税が不要になるケースが多く、印刷・郵送コストも削減できる

署名・記名・押印の法的な意味を理解したうえで、「では自社の契約業務をどう効率化するか」を考えると、電子契約サービスへの切り替えは有力な選択肢の一つになります。

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署名に関するよくある質問

Q1. 署名があれば、記名は不要ですか?

はい、署名(自署)だけでも法的な証明力は認められるため、あらためて記名を加える必要はありません。ただし実務上は、会社名や代表者名を印刷した記名欄に押印や署名を組み合わせる「記名押印」の形式もよく使われています。契約の重要度や社内規程に応じて、どちらの形式を採用するか判断すれば問題ありません。

Q2. サインペンや万年筆でなければ署名として無効になる?

筆記具の種類によって署名の有効性が左右されることはありません。本人が自筆で氏名を記載していれば、ボールペンや鉛筆であっても署名として扱われます(ただし消えやすい筆記具は実務上避けられる傾向があります)。

Q3. 電子署名があれば印鑑は一切不要になる?

電子契約では、朱肉と印章による押印は行いません。サービスによっては印影の画像を文書上に表示できるものもありますが、その画像自体に法的な効力があるわけではなく、効力の根拠はあくまで電子署名法の要件を満たす電子署名です。 押印に相当する証拠力は、電子署名によって担保される仕組みになっています。

Q4. 代表者以外の担当者が署名してもよい?

権限を委任された担当者が、その権限の範囲内で署名すること自体は可能です。ただし、契約の内容や重要度によっては、代表者名義での締結が求められる場合もあるため、社内の権限規程を確認したうえで対応することをおすすめします。

まとめ

署名とは本人が自筆で氏名を記す行為であり、記名(印刷やゴム印など)とは本人性の示し方が異なります。

署名・記名押印には民事訴訟法228条4項の推定効が働き、押印にはさらに「二段の推定」という判例上の仕組みが証明力を支えています。そして、電子署名法が定める要件を満たす電子署名は、紙の署名・押印と同様の法的効力を電子文書にも与えるものです。

契約書の署名・押印ルールを社内で見直すタイミングであれば、法的な裏付けを保ったまま業務を効率化できる電子契約サービスの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いたライター

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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部

電子契約サービス「クラウドサイン」を運営する、弁護士ドットコム株式会社の編集部です。電子契約・電子署名法・電子帳簿保存法のほか、契約管理、契約審査・レビュー、AIを活用した法務業務の効率化について解説しています。法令の解釈にかかわる記事で弁護士等の専門家による監修を受けている記事には、記事末に監修者名を表示しています。

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