不動産業

導入1年で数千件の契約を電子化。三菱地所が電子契約をスムーズに社内普及させた理由とは。

  • 2022年7月27日(水)

三菱地所株式会社
DX推進部 マネージャー 上田走太様
DX推進部 マネージャー 藤江篤史様

 

東京・丸の内を発信地として、オフィスや商業施設の開発・運営などを手がける総合不動産会社の三菱地所。新しい都市開発のあり方を提案するとともに、他社と連携して互いのアセットを持ち寄り、新規事業を創出するオープンイノベーションの取り組みを積極的に進めるといった先進的なビジネスを展開していることでも知られています。

DXを推進する専門部署をもつだけに、契約業務を電子化するのも当然の成り行きでした。従業員が多い大企業は、スムーズな社内普及は難しいことが多いです。ただ三菱地所は、同部署が自ら率先して電子契約を活用し、使い方に不安のある従業員向けにはいつでも相談できるチャットサポートを社内に用意することで、年間数千件に及ぶ契約書類の電子化に成功しています。

細かな閲覧権限設定、直感的な操作ができるUIが決め手

電子契約サービスの導入のきっかけについて教えてください。

藤江様

近年、世の中では電子契約の利用が広まってきており、当社も電子契約サービスを導入することによって業務効率化、コスト削減などの観点で大きなメリットがあるのではないかと考えました。電子化によって契約処理のためだけに出社する必要がなくなり、テレワーク環境下でも業務に継続性をもたせられること、さらには働き方改革やBCP(事業継続計画)対策の意味でも有効だと考え、導入を検討し始めました。

三菱地所株式会社 DX推進部 マネージャー 藤江篤史様

上田様

当社の場合、コロナ禍になってから比較的早い時点でテレワーク体制を整えられました。Microsoft Teamsを導入しており、オンラインでチャットやファイル共有ができるので、スムーズに在宅勤務に移行できました。ところが、契約書の処理についてはアナログなところがまだあって、担当者が週1日だけ出社してハンコを押す業務がしばらく残っていました。出社しなければ対応できないという問題に直面して、在宅勤務でも業務を継続するには電子化が不可欠だと改めて気付きました。

クラウドサインの導入の決め手はどんなところだったのでしょうか。

上田様

当社がシステムを導入するにあたってはいくつかの要件があります。たとえば、各部署それぞれで契約締結するフローになっていますので、別の部署の書類を閲覧できないようにしたい。署名者を限定して厳格な運用を行うため、署名者を特定の人物のみに制限できる機能がほしい、といったことです。あとは電子帳簿保存法などに準拠していることも要件にあり、クラウドサインはそれら全てを満たしていました。

他社サービスでも要件を満たすものはありましたが、クラウドサインはそれだけでなく国内シェアや認知度が高いこと、使いやすい直感的なユーザーインターフェースであること、ヘルプページやチャットなどサポート体制も整っているところが決め手となりました。契約は相手方が必ず存在するため、自社だけではなく契約書を送られた側も使いやすさや信頼感を感じることが重要だからです。

実際、導入時にわからないことがあったときはチャットなどでクラウドサインのサポート担当の方と密にコミュニケーションさせていただき、迅速に対応してもらえました。今運用しているなかでは、社内から問い合わせがあったときにヘルプページに書いてある内容をそのまま送るだけでまかなえる部分も多く、本当に助かっていますね。

電子化することで業務フローが複雑化しないように運用で工夫

クラウドサインは現在どの用途で活用されていますか。

上田様

秘密保持契約、業務委託契約など、主に取引先企業との契約です。他には従業員と締結する雇用契約、当社で運営しているサービスの申込書など、特に用途を限定せずに利用しています。2022年5月には宅地建物取引業法の改正もありましたので、不動産関係書類でクラウドサインを利用するフローも検討しています。

当社では多岐にわたる事業を展開していて、部署によっても契約書の性質や扱うものが異なりますから、確認しながら徐々に活用範囲を広げているところです。総務や法務などのコーポレート部門と連携して、事業部ともコミュニケーションを取り、課題があるときは1つ1つ解決していきながら導入を進めています。

クラウドサインで契約書を送るときの業務フローを教えてください。

上田様

先ほど申し上げた通り契約締結は各部署で行っていますので、部署ごとの担当者に個別のアカウントを割り当てています。最初に事業部の担当部署と先方との間で契約内容をメールや電話、打ち合わせなどで調整します。その後、当社の決裁システムで契約締結の社内決裁をとったうえで、クラウドサイン上で社内決裁の情報を記入して契約書を完成させ、社内の署名権限をもつ者から先方に送付するという流れです。

三菱地所株式会社 DX推進部 マネージャー 上田走太様

そういった運用のルールを決める際に工夫したことはありますか。

上田様

当社としてはできるだけ多くの契約書の電子化を目指していますが、相手のいることでもありますので、紙の契約書が残ってしまうことは念頭に置いていました。特に、紙契約と電子契約とで運用の差が大きくなり、業務フローが複雑になって混乱が生じることのないように、という点を意識しました。電子契約では既存の一部の手続きを簡略化した、というのが工夫の1つです。たとえば紙の契約書で押印する際には、帳簿にその旨を記帳する手順になっていますが、電子契約では記帳は不要にしています。

社内チャットサポートを用意し、いつでも相談できるように

社内推進をしていくところで難しかったところはありますか。

上田様

クラウドサインの始め方、使い方を知ってもらい、積極的に活用してもらえるようにするのは工夫が必要でした。クラウドサインの操作方法についてはオンライン説明会を実施して丁寧な説明を心がけましたし、その説明会の様子を動画にして従業員全員が見られるようにしました。クラウドサイン側で用意されているヘルプページやマニュアル、チャットサービスも活用しつつ、社内からのよくある質問はFAQにまとめていつでも見られるようにしています。

弁護士ドットコム社にご協力いただき、社内イベントを開催してクラウドサインのノウハウや活用事例を社内発信する活動も行って、社内への普及と定着化も図りました。また、疑問があったときに社内からすぐに問い合わせられるよう、Microsoft Teams上に専用のチャットルームを開設して、気軽に相談できる環境も整えています。

質問から回答までになるべく時間をかけないように運営できたこともあって、チャット相談に対する不満の声は今のところはないですね。

電子契約の導入に反発するような声もなかったでしょうか。

上田様

導入にあたっては幸いにもネガティブな声は全然なく、むしろ電子契約を利用したいという声が多かったですね。すでに電子契約にデメリットがないことを知っている従業員もいましたし、契約相手となる企業様の方でもコロナ禍になって紙の契約業務でフラストレーションを感じていたこともあり、抵抗なく受け入れていただけました。

ただし、最初の使い始めにどうすればいいのか、という部分ではなかなか踏み出せない従業員もいましたので、チャットなどで相談に乗ったり、クラウドサインのサポート担当の方に相談したりしながら対応しました。また、デジタルに強い我々DX推進部がまずクラウドサインを積極的に使い、成功体験を作って社内発信していくことで、他の部署の人も簡単に使えるものだと感じてもらう、という活動は、社内普及をうまく進められた1つの要因だったのかなと思います。

年間数千件の契約を電子化し、圧倒的な締結のスピードアップを実現

導入後の効果はいかがですか。

上田様

当初目的としていたテレワークへの対応は問題なく達成できていますし、印紙代や郵送費が省けるので、コスト面の削減効果も実感しています。日常的に発生している社外への書類の郵送や社内便も、電子契約化したことで件数が減り、事務作業の削減も進んでいます。

郵送がなくなったことで通常1週間程度かかっていた契約締結までのスピードが、早ければ当日のうちに完了できるようになったので、業務がはかどるようになりました。

また、以前は契約書のやり取りに想定以上の時間がかかり、予定していた締結日を過ぎてしまったことで、契約書の内容を再調整しなくてはいけないこともあったのですが、電子化してからはそういう問題がなくなりました。

藤江様

2021年4月からのおよそ1年間で数千件を電子契約で締結しました。ただ、たくさん利用している部署もあれば、まだあまり使っていない部署もあります。利用していない部署の従業員に対しては、うまく使えない、と最初の段階で思ってしまわれないように、一歩目をしっかりサポートすることはまだまだ大事だなと感じています。

社内や社外からはクラウドサインについてどんな感想が届いていますか。

上田様

クラウドサインの操作に関しては、直感的で非常に使いやすく、社内からも社外からも質問はほとんどありません。もちろん弁護士ドットコム社が用意している受信マニュアルを事前にご案内していますが、使い方を教えてください、のような問い合わせは1件もなく、いい意味で反応がないです。

電子契約を進めるにあたっては最初に先方との事前調整が必要なので、そこで戸惑いがあって時間がかかる場面もあるのですが、契約締結自体はすごくスピーディーで驚いた、とても便利だ、という声が上がっています。

当社では他社との協業による新規事業創出等により、オープンイノベーションを積極的に進めています。新しいことを始める企業様はスピーディーにやっていきたいと考えていることが多いので、契約締結が早いクラウドサインは活躍していますね。

スモールスタートで知見を貯めてから、少しずつ電子化すべき

後のクラウドサインの活用方針について教えてください。

藤江様

電子契約する類型や領域の拡大は進めていきたいと思っていますし、既存の業務フローとの連携をさらに強化することで、より一層の効率化を図っていきたいと思っています。現在利用している他のクラウドサービスとの連携も検討しています。たとえば一部の部署でお客様の情報管理のためのCRMとの連携の検討を進めています。さまざまな既存の業務ツールと連携し、クラウドサインをより活用できるようにしていきたいですね。

これからクラウドサインを導入・活用しようと考えている企業に向けてメッセージをいただけますでしょうか。

藤江様

まずはスモールスタートで始めること、小さな成功体験を作っていくことが導入成功の秘訣ではないかと考えています。いきなり社内の全ての業務を電子化するのは難易度が高いので、たとえばIT部門がイニシアチブをとり、少しずつ利用を広げて実績を作り、知見を蓄積する。それから社内に展開していくような流れにすることで、電子契約の社内普及がスムーズに進むのではないでしょうか。

上田様

まだリモートワークではない企業がたくさんあって、手間も時間もかかる押印作業が発生しているのではないかと思うのですが、それによるビジネス機会の損失も考えられます。圧倒的にスピーディーに、便利に契約締結できるツールですので、積極的に電子契約ツールを使った方がいいと思いますね。

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