株式会社千葉ステーションビル
マーケットデザイン部 長柴亮様
総務部 主任 井口明日香様
導入後の効果
・相手側での承認を含めても1、2日程度で契約締結できるようになり、締結期間が大幅に短縮
・従来のExcelを使用した手動の管理方法だとミスしやすかったところ、契約期限のアラート機能によりシステマチックな管理が可能に
「ペリエ(Perie)」をはじめとする千葉県内の駅ビル、およびエキナカ施設の管理・運営などを行っている千葉ステーションビル。JR東日本グループの一員として、テナントとして入居する店舗や催事スペースに出店する事業者とともに、千葉をはじめとする地域の魅力を伝える役割を担っています。
そうした駅ビル等の管理・運営において大きな課題となっていたのが、大量に発生している取引先との契約締結や更新業務でした。しかし2022年に定期建物賃貸借契約の電子化が可能になったことから、業務負担軽減に向けクラウドサインの検討を開始。あわせてスムーズな導入と運用を実現するべく、「導入支援コンサルティング」も活用しました。
定期建物賃貸借契約更新の度に発生する大量の契約業務の効率化が課題に
電子契約サービスの導入を検討することになったきっかけを教えてください。
長柴様
当社では千葉県内の駅ビルの「ペリエ」にテナントとして入居される事業者様、もしくは催事スペースでイベント等を開催される事業者様との契約が多く発生しています。そうしたなかで2022年5月、借地借家法などが改正され、定期建物賃貸借契約については電磁的記録、つまり電子契約サービスの利用が可能になりました。
定期建物賃貸借契約は当社が扱っている契約のなかでもとりわけ数が多いですし、ちょうどその頃に社内の組織改編で契約書管理を担当していた方が他へ異動したこともあって、電子化による業務効率向上は不可欠だと考えていました。
紙書類による契約業務において課題感はありましたか。
長柴様
契約書の製本、郵送、保管に膨大な時間や手間がかかっていました。契約の相手方となる事業者様は数百社あり、契約件数としても年間1000件をゆうに超えます。定期建物賃貸借契約は1~5年間隔で再契約することが多く、施設ごとにおおよそ同じタイミングでの更新になりますから、決まった時期に一斉に大量の契約業務が発生します。そのため以前は他部署にも協力してもらいながら契約業務をこなすこともありました。
JRグループの厳しいセキュリティ基準にも適合
電子契約サービスを選定する際には何がポイントになりましたか。
長柴様
まずは安心して使用できるツールであることと、総合的なコストダウンが期待できることでした。電子契約についてはほとんど何も知識がない状況から調べ始めましたので、検討していくうちにセキュリティや法的な面で信頼のおけるツールかどうか、という点も重要だと考えるようになりましたね。
そのため、国内シェアNo.1で、大企業や行政での導入実績があり、セキュリティや法律面での対応についても安心感があるクラウドサインを選びました。そんな風にメリットが多く、導入企業社数も多いことから導入の際に社内を説得しやすいですし、契約の相手方に電子契約を受け入れてもらえる可能性も高くなります。費用面についても従来の紙契約の実績から見てコストダウンが期待できると判断しました。
井口様
当社はJRのグループ企業ですので、クラウドサインのセキュリティについてもJRの設ける厳しい基準に適合していることが求められます。クラウドサインはそうした点も問題なくクリアしていたので安心して運用できると思いましたし、実際に問題なく運用できていますね。
導入にあたって大変だったこと、苦労したことはありませんでしたか。
井口様
当初は電子契約サービスを社員が使いこなせるだろうか、という不安がありました。導入したとしても全社員が問題なく使えなければ意味がありません。ですので、電子契約とは何か、どの書類に使えるのかなど、電子契約の仕組みや新たな社内規程、作業フローなどをまずは正しく理解してもらうことに努めました。
そのために、契約件数の多い部署の担当者を導入準備の段階からプロジェクトチームに加えて、社内での先行事例を作ることにしました。それによって「クラウドサインを使ったことがある人に他部署の人が使い方を聞きに行って学ぶ」という動きが活発になり、全社的に電子契約に対する心理的ハードルが下がったと思います。
業務の効率化やコストダウンが主な目的でしたから、各部署がモチベーションをもって前向きに取り組んでくれたところもあるかもしれません。実際にクラウドサインを操作してみると「紙書類を扱うより簡単に締結できる」という声もありましたし、結果的にスムーズに導入できたと思います。
弁護士ドットコムのコンサルタントが進捗管理を行う「導入支援コンサルティング」が導入推進の鍵に
今回は弁護士ドットコムの「導入支援コンサルティング」もご利用いただきました。
長柴様
担当していただいたコンサルタントの方の力も大きかったと思います。おそらく我々だけで導入しようと思ったら、検討開始から数カ月程度では運用を始められなかったと思いますし、もしかしたら導入そのものを諦めていたかもしれません。
弁護士ドットコムとの定例会議では、毎回次の会議までにこなすべきタスクが与えられ、たびたび進捗確認してもらえたのがありがたかったです。社内メンバーだけではどうしても進捗管理が滞る恐れもありますので、コンサルティングという形で外部から支援いただくことで、導入が円滑に進むように思いました。
社内説明会を開催してもらえたことも社員の理解促進につながり、説明会の資料や録画データも提供していただけましたので、それらのデータは全社で共有していつでも見直せるようにしています。
実際の運用フローはどういった流れになっていますか。工夫された点も教えてください。
長柴様
できるだけ簡潔でわかりやすくなるように社内規程や運用フローを整理していきました。具体的には、契約条件が固まった段階で先方にいったんメールで契約書案を送り、それで合意を得られたら、社内のワークフローツールで決裁に回します。そのタイミングで相手方に電子契約にするかどうかを確認し、電子契約がOKであればMicrosoft Formsで作成した簡単なWebフォームを通じて決裁に関わる方のメールアドレスをいただきます。
最後は、各部署の上長の決裁が得られたらクラウドサインを使って契約書を送付する、または電子契約ができない場合は郵送する、という流れになります。総務部のメンバーを決裁者の1人として加えることも考えましたが、そうすると必ず総務部がチェックしなければならず負担が非常に大きくなってしまいますので、もともと社内にあった押印規程の見直し・改定を行った上、部署内で完結できるフローに変更したことで、スピードアップも可能になりました。
井口様
運用における工夫としては、一定期間の契約件数が何件で、そのうち何件に電子契約を提案し、最終的に電子契約できたのは何件かを随時確認していくモニタリング体制を整えたことです。それによってどこがボトルネックになっているかが可視化され、社内普及に向けた対策も打ちやすくなりました。
各部署で印紙税にいくらかかっているのかなど、普段の業務ではあまり意識することのない契約絡みのコストを明らかにしていったことも、社内の電子契約の利用と理解の促進につながったように思います。
長柴様
コストを可視化したことによって、上層部も会議等で導入の必要性を説くようになり、各部署の部長や現場にもその必要性が浸透しました。その結果、全社で電子契約に対するモチベーションが高まったように思います。実際に、運用開始後は各部署で何件程度が電子契約で締結されているか確認するようになりました。
ただ、単に上からの指示で導入を進めるだけですと、現場の契約の実態に沿わない形で運用設計されてしまう可能性もありました。
「全体のルールは総務で決め、実際の運用をどうするかは契約主体であるマーケットデザイン部が設計する」という風に2つの部署が協力しあって導入を進めていったことで、実態に沿った形で電子契約の導入を実現できたように思います。
契約期限前のアラート機能でシステマチックに管理できるメリットも
クラウドサインにしたことで、契約締結までのスピードはどう変わりましたか。
長柴様
紙書類の契約書だと、社内での押印手続きに1、2日は待たなければならず、送付までに3、4日はかかっていました。決裁完了後に郵送して相手方から戻ってくるのに1週間、遅いと1~2カ月かかることもありました。それに対してクラウドサインでは、社内決裁が完了してから上長に送付を依頼するだけですので、実質5分から10分程度で相手方に契約書を送付できます。相手側での承認を含めても1、2日程度で締結できていますね。
特に便利に感じている機能はありますか。
長柴様
契約期限のアラート機能ですね。テナントとの定期建物賃貸借契約では期限の6カ月前に相手方に通知しなければいけませんので、その前に期限が迫っていることを自分たちに通知するように設定しています。従来のExcelを使用した手動の管理方法だとミスしやすいところがあるので、クラウドサインのアラート機能でシステマチックに管理できるのはありがたいです。
クラウドサインの導入について社外からの反応はありますか。
長柴様
しばらくは今まで通り紙の契約書で、というところもありましたが、電子契約の世の中への浸透が進んでいることもあって、すでにクラウドサインを導入しています、という企業も増えてきています。互いにクラウドサインを利用していれば、話はすごくスムーズに進みますね。新たなシステムの導入やユーザー登録が必要になるのか、といった質問を受けることもありますが、「メールアドレスだけあればOKです」とお話しすると、あっさり快諾してくれるところも多いです。
自発的に電子化しにくい事業者のためにも率先して対応を
今後のクラウドサインの運用や活用の方針についてお聞かせください。
長柴様
全社での電子化率を上げていくのが第一です。工事関連の契約も多いので、電子化率が高まるほど印紙代などのコストダウンも期待できます。また、弊社では「PERIE Online」というECサイトも運営しており、消化仕入契約や商品売買契約などが発生しています。印紙が数千円かかっていますから、そこでもクラウドサインの利用が進めばコスト削減ができそうです。ゆくゆくは既存の紙の契約書もクラウドサインに取り込んで一元管理したいですし、API連携で社内システムからシームレスに利用できるような仕組みも構築したいですね。
最後に、テナントとの契約が多い企業様などに向けて、御社としてメッセージがありましたらいただければと思います。
長柴様
ご出店頂いている取引先様のなかには、我々のような不動産デベロッパーからの求めがあって初めて電子契約サービスに対応する、というところも少なくありません。そういった取引先様は、相手からの要求があればすぐに対応できるけれど、自発的に電子化を進めるのが難しいというお声も耳にします。ですので、我々のような不動産デベロッパーから率先して電子契約を導入し、取引先様に働きかけるといいかもしれません。
クラウドサインは実際に使ってみると全然難しくありませんし、法改正をきっかけに定期建物賃貸借契約での利用ハードルも下がりました。電子契約の事前承諾を得るという手続きだけは必要になりますが、それ自体も難しいことでは決してありませんので、みなさん積極的に電子契約サービスを導入していってほしいですね。