介護業

Microsoft Teams上で「そのままクラウドサイン」。連携により、さらなる時間・手間・スペースの削減

  • 2022年5月9日(月)

社会福祉法人美芳会
理事 大塚渉爾様

 

特別養護老人ホームの運営やデイサービスの提供をはじめとする高齢者向け介護保険事業を展開している社会福祉法人美芳会。静岡県に4つの施設を構え、高齢者の困りごと解決をサポートする地域包括支援センターや、災害時における福祉拠点の役割も担うなど、地域に根ざした公益法人として活動しています。

法人では、職員の「働きやすさ・働きがい・成長を大事にする」という考え方から、女性活躍や子育て支援に積極的に取り組んでおり、近年ではテレワークに代表される働き方改革にも着手。その一環として契約業務の電子化を進めるべく、コラボレーションツール「Microsoft Teams」との連携が可能な「クラウドサイン for Microsoft Teams」を導入しました。

契約プロセスは半月がかり、さらに紛失による再発行も

契約の電子化を検討することになった経緯と、紙の契約書で感じていた課題について教えてください。

押印や紙の文化をなくしてデジタル化していきたいという思いは以前からありました。かつては効率化のために、職員が記入した雇用契約に関する書類をメールで送ってもらったり、施設利用者様のご家族に書類をPDFで送付し、それを印刷してから記入してもらったりなど、デジタル化にチャレンジしたこともあります。しかし、そうした方法では紙を物理的に省略することが困難で、効果も薄かったんですね。

たとえば職員の契約更新時期には150人分の書類を用意しなければなりませんし、封入するのにかかる作業量も膨大でした。封筒に記載した宛先と中身が合っているかどうかを確認するのもかなりの手間です。施設利用者様との契約時には、そのご家族とも契約が必要なので書類を郵送する形になりますが、発送してから記入された書類が返却されてくるまで半月程度はかかってしまいます。

そしてそのリードタイム以上に大きかったのが、書類紛失の問題です。100件送付したとすると10件は戻ってきません。電話で確認してみると、紛失や破損・汚損したというケースが多く、たびたび再発行が必要になっていました。紙の書類を使い続ける以上は、直接窓口にお越しいただいて、その場で記入・押印していただくようなことにしない限り改善できないという悩みがあり、電子契約サービスでデジタル化しようと考えました。

業務ツールにMicrosoft 365をお使いですが、そもそもこれを選択したのは何が理由だったのでしょうか。

生産性向上のために、2015年頃からグループウェアなどのツールをテスト導入してきました。そんななかでOffice 365(現Microsoft 365)や、社内ポータルツールであるSharePointの便利さに気づいたのがきっかけです。他にもいろいろなツールを試してみたなかでも、Microsoft 365とSharePointは最もパフォーマンスが高いと感じました。

決め手は既存業務システム上でシームレスに利用できること

今回、Microsoft 365に含まれるTeams上で動作するクラウドサイン for Microsoft Teamsを導入されましたが、何が決め手になりましたか。

以前、私が勤めていた人材派遣会社がクラウドサインを利用していて、自分が直接触れることはなかったものの、画面などを見て使いやすそうだなとは思っていました。美芳会でも電子契約用のツールとして活用したいと思っていましたが、クラウドサイン単体を導入するのは難しいのではないか、とも感じていました。

というのも、現場の職員が契約業務のためにそれ専用のツールにログインして使ってもらうのは大きなハードルになると思っていたからです。業務ごとに1つ1つ異なるサービスを使う形になってしまうと業務のパフォーマンスが低下してしまいます。ですので、その頃すでに業務ツールとして定着していたTeamsと連携されている クラウドサイン for Microsoft Teamsを導入しました。料金面は納得できるものでしたし、提供されているベンダーさんの実績や信頼もありましたので、迷うところはなかったですね。

デジタルに親しむ下地づくりがスムーズな導入につながる

クラウドサイン for Microsoft Teamsで扱っている書類はどういったものになりますか。

職員との間でやりとりする人事関連の書類と、施設利用者様と交わす書類の2つの用途で利用しています。職員とは、雇用契約書、労働条件通知書、給与明細書、同意書などで利用しています。施設利用者様とそのご家族とは、介護サービス利用契約書、重要事項説明書、料金に関する説明書、介護保険外のサービスの料金表、そして個人情報取得同意書で活用しています。

契約時のフローを簡単に教えていただけますでしょうか。

施設利用者様と交わす契約については、我々法人と、ご利用者様本人、そのご家族という3者間での契約になりますので、まずは我々とご利用者様本人が必要事項を記入します。それをスキャンしてPDFファイルにし、私が中身を確認して、問題がなければTeamsからクラウドサインを通じてご家族宛に契約書を送信します。ご家族が承認すると、SharePointのストレージに署名済みの契約書が自動で保管され、同時にチャットに通知されるようにもしています。

導入にあたり苦労されたこと、もしくは工夫されたことはありますか。

最初にネックになりそうだと思っていたのは、契約される施設利用者様の年齢でした。施設を利用されるご本人の平均年齢は84~85歳ですし、ご家族の平均年齢も60~70歳と高く、電子契約のことを理解していただけるだろうか、という不安がありました。職員についても、平均年齢は44~45歳ではありますが、もちろん電子契約のことを熟知しているわけではありません。

ただ、Teamsを業務ツールとして使い始めた2018年から、SharePointや企業向けSNSのMicrosoft Yammerなどを活用してきましたし、Teamsのビデオ会議機能を使ったオンライン面会を取り入れるなどして、デジタルに慣れ親しむ下地づくりは長く続けてきました。それによって職員のITリテラシー向上を図ることができ、コロナ禍で利用者ご本人やご家族にWeb会議を推奨してきたことで、遠隔コミュニケーションについてもご理解いただけるようになりました。そうやって早いうちから種まきしていたのが、結果的にクラウドサインの運用がスムーズにいく要因になったのかなと思います。

導入時にシステム面で戸惑うようなところはありませんでしたか。

クラウドサインに限らずどんなツールでもそうなんですが、自分自身のシステムへの理解を深めるために最低限の資料をいただいて、設定などはすべて自社内で完結するようにしています。その意味では、ベンダーさんからいただいたクラウドサイン for Microsoft Teamsの資料はわかりやすかったですし、設定自体も難しくなかったので、つまずくようなことはありませんでしたね。

なぜ自社で設定を行うようにしているのでしょう。

ツールを日常的に扱う職員は、全員がパソコンやネットワークに強いわけではありません。使ってみてわからないことがあると、システム周りを担当している私に相談がきます。導入やトラブル対応をベンダーさん任せにしてしまうと解決に時間がかかってしまうことがあるので、自分で素早く対処できるようにしておきたい。そのためにはトラブルのないシステムを選ぶことが重要なのはもちろんのこと、システムに対する最低限の理解も必要だと考えているんです。

電子化、保管スペース削減で、行政による監査や災害時対応も円滑に

クラウドサイン for Microsoft Teamsの導入によって実感されている効果はありますか。

まず職員とやり取りする人事関連の書類については、150名分の印刷・押印・封入作業がほぼなくなりました。進捗確認や、返送された契約書のファイリング・保管にかかる時間も大幅に圧縮できています。誤封入などのリスクがなくなっただけでも効果としてはかなり大きいと感じています。

また、施設利用者様との契約では、これまで契約書の発送から返却まで半月ほどかかっていたのが1~2日で済むようになりました。現在はおよそ300名の方に介護等のサービスを提供していて、法律の改正で契約書に文言を追加することもたびたびありますし、サービス内容の追加・変更によって料金表が変わったりして、年に何度も契約を締結し直すことも珍しくありません。契約される方の年齢のこともあり、メールを使えない・電子契約の理解を得られないということはどうしてもあるので、完全電子化とはいきませんが、たとえ全体における30%程度の電子化だったとしても、時間短縮や手間の削減の効果はものすごく高いと感じています。

電子化によって紙書類の保管が不要になる、という点についてはいかがですか。

今は契約書類の保管のために5~6畳の部屋を少なくとも1つ占有しているので、電子化が進んで保管スペースを削減できれば他のことに有効活用できるようになります。介護事業を営む施設として、書類だけでなく介護用品なども大量に保管しなければいけませんし、福祉災害拠点として、要介護の方の災害時の避難場所として活用する機会もありますから、万一のときに定員以上に受け入れられるよう適切なスペースを余裕をもって用意しておくことは大事なんです。

また、介護保険事業は行政からの許認可が必要で、年に2、3回の監査が実施されます。その際に契約書の内容や管理方法の提出・確認が求められるのですが、紙書類だとその都度書庫から引っ張り出すことになるので大変です。しかし電子化していれば、保管状態の確認作業が簡略化されますし、契約書の検索・提出も楽になります。そんな風に監査対応を簡易化できるというところでも役に立っていますね。

Microsoft 365とクラウドサインの組み合わせでリスク・コスト低減が可能

クラウドサインやデジタルツールの活用拡大には、今後どのように取り組んでいこうと考えてらっしゃいますか。

我々の業界では、ようやく電子化を生産性向上の文脈で考えられるようになったばかりです。今回、クラウドサインを導入してそれを公表したときには、同業者から敏感に反応をいただいて、周囲もこうしたツールを導入することの重要性に気付いていることが改めてわかりました。しかし、やはりまだまだ足踏みしているような段階です。今後は業界として導入する組織をどんどん増やし、施設利用者ご本人やご家族にも利便性の高いサービスだとご理解いただけるような活動を広げることが必要になってくると思っています。

クラウドサインの導入を検討している同業の方に向けてメッセージなどありましたら。

社会福祉法人などの非営利団体の方には、Microsoft 365とクラウドサイン for Microsoft Teamsの2つを導入することをおすすめしています。Teamsと連携することで契約書データがSharePointに自動で保管されるようになるのが本当に便利で、それによってオンプレミスでファイル管理するリスクはなくなります。

また締結済み契約書のリスト化なども簡単で、それを活用することで契約締結の進捗管理が効率的になります。Microsoft 365には非営利団体向けの料金プランがあり、ランニングコストを低く抑えることもできます。導入ハードルは決して高くないので、ぜひ試してみていただきたいですね。

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