導入事例

官公庁・自治体

都道府県で初めて立会人型電子契約サービスを導入した茨城県庁。スピーディーなデジタル化の成功要因は?

  • 2022年9月6日(火)

茨城県庁
政策企画部 県北振興局長 兼 DX推進監 菊池睦弥様
総務部 総務課 浅川瞭様

 

2021年1月、地方自治法施行規則が改正され、自治体で立会人型電子契約サービスの利用が可能になりました。県知事のデジタル化、DXに向けた強いリーダーシップを背景に、茨城県は、立会人型電子契約サービスを都道府県で初めて導入しました。

そこで選ばれたのがクラウドサイン。アナログな業務が多いと思われがちな日本の行政で先進的にDXに取り組んできた茨城県がどのようにして立会人型電子契約サービスを導入し、活用してきたのか。導入に至るまでの経緯と、その後の運用の詳細についてお話しいただきました。

2018年から始めていた数々の電子化の取り組みが国をも動かす

立会人型電子契約サービスの導入を自治体のなかでいち早く進めてこられましたが、それまでの経緯について教えていただけますか。

菊池様

茨城県庁では、庁内における決裁事務の電子化を進めるため、「電子決裁率100%」を目指して2018年度から取り組みを始めました。4カ月ほどで決裁の電子化は100%に近いレベルを達成でき、さらに2019年度からは行政手続きの電子化の取り組みもスタートし、電子納付にも対応しました。テレワークなどの働き方改革も進めつつ、2020年度には政府で押印廃止の動きも出てきたため、知事が「押印廃止」や「電子申請」、「電子契約」などを推進する旨の記者会見を行い、押印を可能な限り廃止したうえで、県庁業務のデジタル化進めてきました。

電子契約については、当事者型であればすでに自治体でも利用可能でした。しかし、当事者型は我々だけでなく事業者も電子証明書を持たなければならず、高額な維持費用もかかります。そのため、利便性の高さも踏まえると、当時すでに民間で普及し始めていた立会人型(事業者署名型)の電子契約サービスを採用すべきだと考えていました。

ところが、自治体においては地方自治法施行規則に制約があり、そのままでは立会人型の電子契約サービスを利用できませんでした。そこで、2020年10月、内閣府の規制改革推進室に出向き、自治体においても立会人型(事業者署名型)の電子契約サービスを利用できるように法令改正等を行うことと、電子署名法の要件を満たす立会人型電子契約サービスを国が明示することを要望しました。

その結果、翌年2021年1月に地方自治法施行規則が改正され、自治体において立会人型電子契約サービスが利用可能になり、さらに経済産業省からは「グレーゾーン解消制度」によって、電子署名法の要件を満たす立会人型電子契約サービスを明らかにするとの見解が示されました。そのようにして、ようやく立会人型電子契約サービスの導入に踏み切れることになりました。

電子契約が可能な環境を整えること自体、大変な苦労だったかと思います。そこでクラウドサインを選んだのはなぜでしょうか。

菊池様

導入当時は、グレーゾーン解消制度を利用して電子署名法の要件を満たすことが明らかになっていたのが弁護士ドットコムのクラウドサインだけだった、というのが一番の理由です。内閣府からグレーゾーン解消制度により電子署名法の要件を満たすサービスを確認するようにとの事務連絡が発出されており、茨城県では、これに基づいてまず1年間の契約を前提に公募型プロポーザルを実施したわけです。翌年度には、再度公募型プロポーザルを行い、電子署名法の要件を満たす数社のなかから、費用対効果の観点からも検討し、改めてクラウドサインを選定しました。

政策企画部 県北振興局長 兼 DX推進監 菊池睦弥様

いきなりの実践導入にも不安なし。普及拡大は可能な限り丁寧な説明で

クラウドサインの導入はどのように進めてこられたのでしょう。

菊池様

通常、こうした新しい取り組みを始めるときは実証実験からスタートすることが多いのですが、民間での導入事例を見ると、実証実験をするほどでもないなと。まずは公印を所管する総務課が、導入時における実務上の課題やリスクを洗い直し、その対応策を講じたうえで導入し、もし新たな課題があれば、実務を回しながら、必要があれば改善していく、という流れにしたほうが良いと考え、最初から実戦導入しました。

多くの民間事業者がすでに活用されているサービスですから、運用で大きな問題が生じることはないだろうと思いましたし、ある意味チャレンジと捉えて進めてきましたね。庁内で運用を開始したのは2021年5月末で、実質的には6月からとなりましたが、6月は年を通じて契約が少ないタイミングで、契約が増えてきたのは2021年の後半からでした。

現在、クラウドサインを活用している書類はどういったものになりますか。

菊池様

契約が発生するのは主に事業課で、特に現時点では土木部が多くなっています。例えば建設工事、道路工事、測量など、建設コンサルタントや工事業者と結ぶ工事請負契約ですね。あとは道路交通量調査のようなものもあります。導入から2022年3月末までの期間で、電子契約で対応する旨の公告を行った契約が少なくとも約1,700件あったのですが、そのうち約1,200件を電子契約で締結できました。残りは契約相手側の事業者が紙での契約を敢えて希望したものです。

導入や運用を進めていく中で苦労したことはありますか。

菊池様

現状では、土木部における電子契約の利用がほとんどを占めていますが、弁護士ドットコムにサポートをいただきながら庁内の職員や取引先の事業者向けに説明会などの情報発信を行った結果、いくつかの部局からは操作方法等について自発的な問い合わせがありました。2:8の法則と言いますか、新しいものに率先して反応してくれる2割の人達を中心にしてまずは庁内に普及させ、ある程度まで広まれば、あとは横のつながりでどんどん広がっていくものと考えています。

事業者への利用促進については、もう少し地道にやっていく必要があると感じています。使い始めるにあたり、実体験をともなった説明を求める方が多い印象でしたが、2021年はコロナ禍ということもあり、対面で説明しながら利用体験していただくような機会が多く取れませんでした。紙での契約締結を希望している事業者に対しては、今後、個別に説明し、デモやレクチャーなども行っていく予定です。

テレワーク、非対面、低コストの実現で「メリットしかない」

導入の効果として実感されているところはありますか。

菊池様

紙書類のやりとりがなくなり、非常に素早く契約締結できるようになりました。今までは事業者がわざわざ書類を持って来庁されたり、互いに郵送したりしていましたが、そういったやりとりをしている間に1週間はたってしまいます。それに対して立会人型電子契約では当日中に契約できてしまうこともあります。契約書への押印や製本の手間がなく、郵送費用も削減できています。普通にメールをやりとりするだけで契約が成立しますので、立会人型電子契約サービスであるクラウドサインはかなり効率的なツールだなと改めて実感しているところです。

また、工数削減で浮いた時間の分、他のプロジェクトをじっくり考えたり、県民サービスの向上に向けた取組にもつながっていると思います。コロナ禍でも対面の必要なく契約を締結ができたのは助かりましたし、押印が不要なのでテレワークでも処理できます。効率的でコストを低く抑えられることもあって、もうメリットしかないですよね。

浅川様

事業者にとっては、契約締結がスピードアップしたこともそうですが、印紙税が不要になったのも大きなところだと思っています。印紙税額は契約金額などに応じて変わるため、事業者側が貼るべき印紙を間違う可能性もあり、自治体としても確認作業が必要になっていました。契約を電子化したことで、その確認作業がなくなり業務負荷は軽減されています。

菊池様

電子契約をはじめ、デジタル化による業務効率化の影響はやはり大きいですね。今回は既存業務をデジタルに置き換えただけですので、DXとして新しい価値を生み出せたかというとまだわからないところもありますが、テレワークや非対面を容易に実現できるようにはなりました。クラウドサインのような立会人型電子契約はメリットしかないサービスですし、茨城県庁が知事の記者会見でかかげている「県庁業務のデジタル化に向けた挑戦」には確実に貢献しています。

県庁業務のデジタル化に向けた挑戦

総務部 総務課 浅川瞭様

スピーディーな電子契約導入のポイントは、公印を管理する総務課が所管したこと

運用してきたなかで新たな気付きみたいなものはありませんでしたか。

菊池様

いざ立会人型電子契約サービスを導入するとなると、各サービスごとにどのような機能があるのかを比較検討しなくてはと考えると思います。しかし、我々が実際に電子契約を導入し、運用してみてわかったことは、少なくとも地方自治体に関しては、電子署名法の要件を満たす以外には、そんなに難しく考える必要はないということです。

地方自治体と事業者との契約は、通常は「入札」を経て行われます。つまり、応札している時点で事業者は公告されている取引条件に合意している状態です。従って、入札で落札者が決まって以降に、契約内容の確認に関するやり取りは通常は必要としません。地方自治体にとっての立会人型電子契約サービスは、実質的には、落札時点で合意済みの内容を契約書という形にして締結することで、強固な証明書を発行するだけものなのです。

つまり、電子署名法の要件を満たす電子署名とタイムスタンプが付与されていて、「落札時に合意済みの契約書を事前に登録された事業者の署名人に送って契約を締結することができる」という機能さえ整っていれば、他に余計な機能は不要ということです。ファイルを保管する機能さえなくても良いくらいです。

敢えて必要な機能を付け加えるならば、一括して電子契約書をダウンロード・アップロードできる機能だと思います。役所は基本的に永久契約ができません。電子契約サービスを変更する可能性もあることを考えると、サービス変更の際に契約データをすべてダウンロードできるか、ダウンロードしたデータを変更後のサービスに取り込むことができるのか、という点は見ておいたほうがいいかもしれません。

最後に、立会人型電子契約サービスの導入を考えている他の自治体に向けてメッセージがありましたら

菊池様

新たにデジタル部局のようなセクションを作ってデジタル化を進めようとしている自治体もあります。しかし、茨城県にはデジタル部局は存在していません。組織ありきでは進めておりません。デジタル部局を作ってしまうと、デジタル部局の職員が既存業務を担当している部署に横から入って業務内容や業務フローを1から学ぶことになります。そうするとスピード感は落ちますし、実際に業務を行っていないで、何が本当の課題か、どこにリスクがあるのかもわかりません。茨城県がここまでスピーディーに立会人型電子契約サービスを導入できたのは、デジタル部局主導ではなく、公印を管理している総務課が、導入時における実務上の課題やリスクに事前に目配りしながら導入したからです。ここが一番の成功要因だと思っています。担当課が主導するDXが一番問題が起きにくくスピーディーです。

我々のような行政の場合は、ごく一部の例外を除いて立会人型電子契約サービスはメリットしかありません。タイムスタンプと電子証明書が適法に使えることなど電子署名法の要件を満たす立会人型電子契約サービスであることと、契約相手となる事業者の署名人のメールアドレスを事前登録制にしておくこと、そのあたりに留意すれば無権代理のリスクもほとんどありませんし大丈夫だと考えています。自治体が契約を電子化することで事業者の業務のデジタル化を後押しすることにもなりますので、ぜひ多くの自治体が導入にチャレンジしてほしいですね。

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